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2009年12月10日 (木)

TILLINGでアミロースフリー・ポテトの育種

 以前、ドイツでは遺伝子組換えでアミロース・フリーのバレイショが育成されていました。

 その対抗馬として、半数体育種&突然変異育種&マーカー選抜&交配の組み合わせ(TILLING)でアミロース・フリーのバレイショが育成されました。論文はこちら

# よく見ると私の論文を引用してくれてました。どうもありがとう。

 バレイショは同質4倍体なので、突然変異育種は大変なです。まず半数体育種で倍数性を減らして、次に化学変異原処理(EMS処理)とGBSS遺伝子のマーカー選抜を繰り返し、最後に染色体を倍加あるいは変異体同士を交配してGBSS遺伝子の4重劣性変異体を作出します。製造にかかわる手間とコストを考えると、よほどのメリットが無ければ取らない育種戦略なのですが、育成者はそれでも後の品種の普及を考えると組換え体よりはメリットが大きいという判断をしたということでしょう。

 ちなみに、ニュースサイトでは"Super potato"と呼んでいますが、他の作物でのデンプンの変異体という意味ではにモチ米のようなものです。トウモロコシやイネ、オオムギでは珍しくない変異体ですが、バレイショでは作るのは非常に大変です。それでもドイツ国内の産業界のニーズが有る、というところに若干の驚きを感じます。日本であれば間違いなくアメリカ産のワキシー・コンスターチを輸入してそのまま使うか、でなければ化工澱粉にして使います。その方がおそらく安上がりなので。
 ドイツでは国産のバレイショ・デンプンの方が工業原料としては米国産コーン・スターチより安上がりということなのでしょう。・・・となると、区分栽培と分別流通が必要な遺伝子組換えバレイショを避けたがるのも、わかる気がします。

 ドイツにおいて"Super potato"がSuperで居られる理由は、遺伝子組換え作物に対する社会環境と、輸入コーンスターチの調達コスト、国内のデンプン産業がバレイショに依存している、という状況に関連していると考えられます。逆に、同じもの(加工デンプン用アミロース・フリーバレイショ)を日本で作っても、モチ性コムギほどに珍重されることはないでしょう。

# モチ性のコメをわざわざTILLINGで作っても意味はないし・・・。

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2009年12月 8日 (火)

デスクトップにスーパー・シーケンサーが載る時代

昨日、"受託DNAシーケンスも価格破壊"というエントリーで、

これは、ダイターミネーターの最後の一花なのだろうか? 今の蛍光シーケンサー用の試薬は製造を止めて売り切れ御免か? 近く、従来型のシーケンサーでワンパス\500といわず、次世代シーケンサーで、環状のテンプレートならカバレッジ80Xで\500という時代が来るのだろうか?

と書いたのですが、どうも本当にそんなことになりそうです。 ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社から"GS junior"という新型のDNAシーケンサーが発表されました(ホームページはこちら。プレスリリースはこちら)。

デスクトップに乗るサイズ(HWD = 40 x 40 x 60 cm)で、1ラン=10時間あたり約4000万塩基(40,000 kbp = 40 Mbp = 4.0 x 107 bp)解析できて、平均読み取り長さは400 bp(モードは500 bp)、お値段は、

“GS FLX”に比べ、本体価格(約1/5)およびランニングコスト(約1/10)を低減
  参考: GS FLX  7,500万円(税別)

なので、本体価格で1,500-2,000万円くらいになりそう・・・つまり、ABI 3130xlの価格帯にほぼ匹敵します。これで1回の運転で大腸菌ゲノムが9Xくらい読めてしまいます。

驚いたなぁ。

プラスミドのシーケンスの確認には勿体無い位の性能ですが、複数サンプルの処理ができるか、読み取り時間を短縮できれば、トランスクリプトーム解析の分野ではマイクロアレイを駆逐する可能性があります。GS juniorは454 FLXと同じ反応系なので、発現解析用にはすこしばかり読み取れる長さが長いため、この用途にはIlluminaやSOLliDの方が向いているかもしれません(cDNAをコンカテマーにしても読み取り時間は変わらないようなので)。

おそらく、数年以内に他社もこの分野に参入するでしょうから、従来型のキャピラリーシーケンサーが"STR解析専用機"になってしまう時代も近いでしょう。

# いずれ、デスクトップ・シーケンサーでパーソナルゲノムを解析する日は来るのだろうか?それとも、臨床検査センターのような受託解析が一般化するのだろうか。さてさて。

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2009年12月 7日 (月)

受託DNAシーケンスも価格破壊

受託DNAシーケンスも、ちょっと前まで1パス\1,000位が相場だったが昨年から\700位になっていた。

で、今日教えてもらったのが、インビトロジェンのサービスで96穴1プレートでシーケンス反応からの受託で\46,000、サンプルあたり約\479(ただしキャンペーン価格)。インビトロジェンはダイターミネーターとシーケンサーのマトリックスの供給元であるABIを吸収したので、サービスで利益を出せば良いということだろうか。

日本の試薬の価格は国際比較では異常に高いのだが、受託シーケンスの価格がこの水準まで下がると、研究所で数千万円する中スループットのDNAシーケンサーを維持しておく必要性が低くなってしまう。

次世代シーケンサーはあまりに能力が高いので、どの程度普及するのか私は疑問に思っている。受託シーケンスを支える道具としては有効なのだが、普通の研究所で求められる要求性能を軽く超えてしまうので、大抵は手に余るのだ。しかも、シーケンサーが吐き出すデータ量は膨大でストレージ・ファームが要るくらいだし、アセンブルにはちょっとしたスパコンが要る。

それに対して、プラスミドを構築した際の確認作業等に使われる3100xl位のスループットのシーケンサーは日常の業務ではまだまだ必要な装置なのだが、最近メーカーから更新機種が出ないなぁ、と思っていた。しかし、ここまで受託シーケンスの価格破壊がここまで進むと、1シーケンスの単価が普通に調達する際のシーケンス試薬+精製キットの代金とあまり変わらなくなるので、シーケンサー自体を維持する必要がなくなる。消耗品のキャピラリー、レーザー、バッファー、ポリマーなどのランニング・コスト+維持管理の人件費も勘案すれば、もう受託の方が安いかもしれない。

これは、ダイターミネーターの最後の一花なのだろうか? 今の蛍光シーケンサー用の試薬は製造を止めて売り切れ御免か? 近く、従来型のシーケンサーでワンパス\500といわず、次世代シーケンサーで、環状のテンプレートならカバレッジ80Xで\500という時代が来るのだろうか? ・・・等々いろいろ邪推してしまう。

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2009年9月28日 (月)

イネのGenome-wide association analysis

育種学会第116回講演会を聞きに行った。

で、Association analysisあるいはAssociation mappingに関する発表があったのだけれど(ひょっとしたら、このblogをご覧になっているあなたの発表かもしれません)、どうも”煮込み方”が足りないという印象。

とある発表では、日本稲112品種、10栽培環境、ゲノム上の観測ポイント2132点。解析ソフトは、集団構造解析にはStructure Ver. 2.2を、血縁度はSPAGeDi Ver. 1.2を、Genome-wide association study(GWAS)にはTASSEL Ver. 2.1を使用した、とある。

研究の目的は、日本の水稲品種にGWASを適用できうるか?という命題に対する条件検討で、目標形質は”出穂期”。

以下、私の感想。

  • こういう場合、栽培環境 x 遺伝子型の相互作用をみるので、出穂期よりは"到穂日数"を指標にした方が良かろう。
  • イネの登穂日数に関わる遺伝子と言えば、構造が決められていて、作用力の大きい感光性遺伝子、Hd1, Hd2, Hd3a, Hd5, Hd6がすぐに思いつく。この辺のハプロタイプと登穂日数のassociation analysisもやっておいてベンチマークにしておかないと、GWASの検出力や検出精度を議論するのは難しいのではないか(AICのような情報量基準を採用してモデルの妥当性を議論するにはGWAS以外の方法によるassociation analysisとの比較が要るだろう)。
  • TASSELでは家系や集団構造を考慮した混合線形モデルを採用できる・・・が論文をな斜め読みした範囲では、分析の際に家系(kinship)に関する分散は、外部から与えるケースと、マーカー情報から計算するケースの2通りが用意されているので、どちらを採用したのかを明らかにしておいた方がよいだろう。
  • TASSELではマーカー間の相加効果や優性効果は見ない。・・・出穂性の場合をモデルケースにすると、いくつかのHd遺伝子のハプロタイプで相加・優性効果を組み込んだGLMの方がモデルのフィットネスが高くなるかも?
  • いえね、なんでこんなことを気にするかというと、新しいモデルを提唱する場合、従来の方法と比べて、第一種過誤、第二種過誤がどのくらい起こり易いかが重要だと思うから。スクリーニング目的で、第二種過誤は大目に見ても良い場合もあるが、新しいQTLを見つけて遺伝子単離をしようという場合、第一種過誤で生じた擬陽性を信じて研究資源を注ぎ込むとえらいことになってしまう。新しいモデルがものの役に立つかどうかを判断するのは、モデルを採用する側が決めること。しかし、そのモデルを採用した場合どの程度のリスクがあるのかを、あらかじめ明らかにするところまでは、モデルの適否を検討する側の責任だと思う。

ということで、Hd遺伝子のハプロタイプで登穂日数のGLMをやった場合と比べて、GAWSの有効性と統計的過誤のリスクはどうなのよ?というのが私の疑問。

# 私がこの研究論文の査読をすることは無いと思うけど、もし来たら上記の理由で追加データを求めることは必定 ・・・。

こういうアプローチって面白いんですけどね。変異体を作ると死んでしまうような”あって当たり前”の形質-作物としてはむしろ重要な形質-を分子生物学の射程に捉えるにはQTLの検出が最も有効な方法なのだから。

QTLもいずれは、時間との関わりでどんどん変化する表現型を、”表現型の変化速度”に微分して解析できるようにならないといけないのだろうな。作物学的には、栄養生長と生殖生長に分けて、登穂日数=幼穂形成までの日数+幼穂分化後の日数とする見方は当たり前だ(観測の手間が大変だけど)。いずれは、時々のサンプリング時点の”表現型の変化速度”は、サンプリングの前日までの生育に影響されるという意味で、前日の日照や気温、生育状態を考慮したベイズモデルへと進化していくのかもしれない。

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2009年3月 3日 (火)

Quantile Normalization: 訂正

マイクロアレイのデータ処理方法の解釈を間違ってた。以前のエントリーでは、聞きかじりでQuantile normalizationの操作を、

  1. シグナル強度を対数変換(底は2)する
  2. 75%点のシグナル強度の対数値でシグナル強度の対数変換した強度を割る
  3. 個々のプローブの価をアレイ間で中央値が0になるようにシフト

と書いてしまったのだが、2.はpercentile shiftという操作で、分布の分位点を揃えるために行うもの。
ステップ3.は、正しくは

  1. アレイごとに、個々のプローブをシグナル強度で順位付けして、同じ順位のプローブのシグナル強度のアレイ間の平均値を求める。
  2. 個々のプローブのシグナル強度データを、同じ順位のシグナル強度の平均値に置き換える。
  3. データをもとの順番に並べ替える。

という操作だった。オリジナルの論文はこちら(フリーアクセス)。

Quantile normalizationについて、この論文では、

1. given n arrays of length p, form X of dimension p × n where each array is a column;
2. sort each column of X to give X sort;
3. take the means across rows of X sort and assign this mean to each element in the row to get X' sort;
4. get X normalized by rearranging each column of X' sort to have the same ordering as original X

こう書いてあった。うーん聞きかじりは良くない。反省。

しかし、こうするとたしかに分布は揃うけど、生物学的には関連のない遺伝子の発現強度で規準化してるのでどうなのだ・・・ま、RT-PCRでもアクチン等をスタンダードにしていることもあるので、そう間違ってはいないのだが、解析するデータセットに依存して発現強度の順番は入れ替わるため、分布の形がグニャグニャかわるというイメージなのであまり気持ちの良いものではない。インフォマティクスの人は気にしないのだろうか。

こういう形で任意の変換(しかも、ほぼ不可逆的)をしてしまうと、変換後のシグナル強度のfold changeにどれほどの意味があるのかと考え込んでしまう。また、分散分析がどうのと言っても算術的には計算できて、統計的に有意かどうかも議論できるが、もとのデータの信頼性を考えるとちょっと心許ない。できるだけ、Normalizationをしないで済むように実験の精度を高める努力をするべきなのかもしれない。

# その場合、系統誤差には目をつぶる他ないが。

---

マイクロアレイの散布図を描くとき、なぜデータを対数変換しないと収まりが悪いのか?

話は変わるが、シグナルの分布については、マイクロアレイという検出系の特性で対数変換しないと収まりが悪いのではないか、と考えた時期もあった。しかし、アラビ ドプシスやイネのMPSSのデータの分布を眺めても、やはり対数変換しないと散布図の収まりが悪い(えーと、収まりが悪いというのは、正規分布に近似でき ないという意味です)。

異なる原理で測定する検出系で同じデータの分布が見られるのであれば、それは細胞内で行なわれる遺伝子発現において、発現量の少ないmRNAに対して、発現量の多いmRNAは指数関数的にコピー数が多いと考えるべきだろう。

本来、細胞の中である遺伝子の転写が起きるとはどういう状況だろうか。一つの細胞に注目してみると、個々の遺伝子の発現には基本的にはOnとOffの2つの状態としてとらえる(本当は二値的なスイッチングだけではないことは、出芽酵母の同調培養のアレイのデータを眺めればよく分かる)。Onの際にはOffの際と比較して指数関数的にmRNAのコピーが作られると考えられる。つまり、個々の細胞内ではOn/Offの際のmRNA量の比が2倍だの3倍だのという違いではない。

アレイのシグナル強度は、測定時に細胞内に”蓄積している”mRNAのコピー数を反映している。その時の瞬間的な転写の速度ではない。また、分解の速度でもない。

そして、ある遺伝子のシグナル強度はサンプル中に含まれる、ある遺伝子を発現して、そのmRNAを蓄積している細胞の数にも依存する。この割合は試料中の細胞数(一定重量のサンプルに占める割合)に比例するので、fold changeがたかだか数倍でも生物学的には意味がある違いだと考えるべきだろう。問題は、検出系や実験誤差を超えて、何倍位の違いまで確からしいと言えるか・・・だ。経験的には、1回のマイクロアレイの実験で2倍以下の変動は、試料の組織の切り出し方や、生育の度合いというノイズを拾っているのかもしれない。微妙な違いは反復を取ってANOVAで確認するか、実験のコストを勘案して、数十遺伝子以下であればRT-PCRで定量するほうが良いのだろう。どこまでもアレイだけで煮詰めなくてはいけない理由はない。

イネを材料にこういう現象を追いかけるのが正しいアプローチか、という疑問はある。イネは多細胞だし、精密な環境制御はしにくいし。しかし、酵母でもこういう”なぜ?”を追いかけた研究は見たことがない。これは、私にとっては、この10年来の解けない謎だ。

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2009年2月17日 (火)

Quantile Normalization

今週は9年ぶりくらいにマイクロアレイを使った実験をしている(昔の仕事。今では主成分分析は当たり前になっていますが、実に原始的ですなぁ)。

今回は、複数の処理間の比較を相互にしたいので一色法(One color)で実験した。

実験は生物研のマイクロアレイラボでさせていただいた。ハードもソフトも初期のものから見ると比較にならないほど進歩している。実際に異なるスライドグラス間で3反復したデータを見比べてみると、r2=0.995位の再現性がある。いやはや大した進歩です。

データ解析も然り。AgilentのアレイはOne colorの実験ではQuantile normalizationによるスケール調整を推奨している。手順は次の通り。

  1. シグナル強度を対数変換(底は2)する
  2. 75%点のシグナル強度の対数値でシグナル強度の対数変換した強度を割る
  3. 個々のプローブの価をアレイ間で中央値が0になるようにシフト

Gene springでこれを一気にやって頂いたのだが、12組のデータセットのうち3組は全く同じサンプルで反復をとったので、3.のステップでは若干バイアスがかかってしまう。

そこで、研究室に戻ってからSASインスティチュートのJMP7を生のシグナル強度から再計算させた。

アジレントの推奨するQuantile normalizationは、75%点のシグナル強度の対数値で、対数変換した個々のシグナル強度を割る。算術的には、処理Xの個々のSignal強度をSxとすると、Normalizeしたシグナル強度Sxnは次の通り。

Sxn = Log2(Sx)/Log2(Col Quantile(Sx, 0.75))

”Col Quantile(Sx, 0.75)”というのはJMPの関数で、カラムの分位点を返す。この場合は0.75を指定する。これって、結局

Sxn = Log(Col Quantile(Sx, 0.75))Sx

75%点のシグナル強度を底にした対数変換と同じことだ。が、JMPの関数では対数の底は10かeしか選べないので、計算上はLog10で処理する。プログラム上の数式は実はけっこう面倒くさい。こんな案配になる。

Sxn = (Log10(Sx)/Log102)/(Log10(Col Quantile(Sx, 0.75))/Log102)

簡略化すれば、

Sxn = Log10(Sx)/Log10(Col Quantile(Sx, 0.75))

Log10(Col Quantile(Sx, 0.75))は定数なので、結構マシではある。

ともあれ、底がシグナル強度の実測値に依存した任意の価だと、比べたいシグナル強度の比がわかりにくい。こういう変換は良いような悪いような・・・。結局、生のシグナル強度に返ってt検定やANOVAをする場合には、Sxnから逆変換をしておかないといけないのだな。

シグナル強度のヒストグラムを見ると、Z変換じゃいかんだろうにというデータを無理矢理正規化している論文も時折見る。が、どう見たって正規分布に近似できないものを、何も考えないで正規分布にねじ込むのは宜しくない。

このQuantile normalizationが妥当かどうか・・・もう少し考えてみないとわからない。

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2008年11月27日 (木)

[業務用覚書] Rolling Circle Amplification (RCA) 産物で酵母の形質転換

世間ではインド、ムンバイ市でおきた同時多発的テロ事件のニュースが流れている。280人以上死傷(うち101人死亡)とのこと。大惨事だ。
---
Ding et al. (2003)によれば、RCAで増幅したプラスミドの分枝状コンカテマーで酵母の形質転換が可能とのこと。Two-hybridにも使える。恐らく酵母菌体内での相同組換えで環状になるのだろう。
上手く使えば実験のスループットが少し上げられる。

現在の実験のスキーム

  1. PCR産物+線状ベクターバックボーンで酵母の形質転換。Transformation Associated Recombinationでベクターを構築。(2-3日間培養)
  2. プレート上のコロニーをグラスビーズで掻き取ってプラスミド抽出(液体培養から見ると抽出効率が悪い)。
  3. 大腸菌の形質転換(1日)
  4. コロニーPCRでベクターの構築を確認
  5. コロニーを液体培養で増やす(1日)
  6. 液体培養からプラスミドを抽出してシーケンスの確認
  7. 目的のプラスミドで酵母の形質転換(1.とは異なる株)(2-3日)

全工程で足掛け2週間(1.の最初の形質転換を木曜か金曜に行うと楽しい月曜日を迎えられるので)。問題は3.のステップで、プラスミドの収量が少ないので形質転換大腸菌があまりとれてこない。とれたとぬか喜びしてたらフレームシフト変異が入っていて全部のクローンが使い物にならなかったということもある。 これが、

  1. PCR産物+線状ベクターバックボーンで酵母の形質転換。Transformation Associated Recombinationでベクターを構築。(2-3日間培養)
  2. プレート上のコロニーからDNAを簡易抽出して、安いTaqでベクターの構築を確認
  3. 同じDNAをRCAで増幅(4hrs-1日)
  4. シーケンスの確認
  5. 目的のプラスミドで酵母の形質転換(1.とは異なる株)(2-3日)

という具合に、酵母のプラスミド抽出と大腸菌の形質転換のステップを省略できる。実験全体が早くなる上、ベンチタイムが非常に短いことも魅力的だ。

RCA用のキット(TempliPhi)だと1サンプル\470-\254(large constraction kitの場合)なので、コストもそれほどでもない。サンプル数にもよるが酵母のプラスミド抽出、大腸菌の形質転換とプラスミド抽出のコストで相殺されるのではないだろうか。大腸菌の形質転換自体の手間はたいしたことは無いのだけれど、廃棄物が結構出るし。

ただ、酵母のコンピテントセルの調製に一晩かかるので、シーケンスを確認しつつ、同時に次のコンピテントセルの調製を始めておかないとやっぱり1サイクル足掛け2週間かかる。
# 大腸菌のW株のようにむちゃくちゃ増殖が早い株ってないものだろうか。

phi29 DNA polymeraseを単体で買う場合は、
New England Biolabs (1,250U, \44,000)
AR Brown (10,000U, 価格不詳)
だが、exonuclease-resistant hexamerが別途必要。PNA-DNAハイブリッドのランダムヘキサマー等特注品になる?Dingらの論文でも使っているので、おとなしくTampliPhiを使った方が良いだろう。

このシステムを使うと酵母用の複製開始点を持ったベクターを線状にしておいて、大腸菌用のベクターのRCA産物と一緒に形質転換すればコンストラクトの載せ換えも簡単にできるはずだ。今度やってみよう。

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[業務用覚書] 酵母のBiFC

タンパク質の相互作用を調べるのに、Yeast Two-hybrid system (YTH)が使われてきた。もともと転写因子など核タンパク質の相互作用を調べるためのシステムなのだが、トウモロコシの種子貯蔵タンパク質間の相互作用 解析などにも応用範囲は広がってきている。

だが、原理的に核移行シグナルを持たないタンパク質の相互作用解析には向いていないはずであり、その点の克服を意図してLexA-VP16を利用したシステムも開発されている。

近年、緑色蛍光タンパク質(GFP)を2つの部分に分割すると蛍光を発しなくなるが、再び会合させると蛍光を発するようになる性質を利用して、bimolecular fluorescence complementation (BiFC) というタンパク質分子間の相互作用を調べる実験系が開発されている。

Barnerdらは酵母の任意の核遺伝子のC末端側にGFP分子の一部を導入するベクターシステムを開発した。図で見るとこんな感じ。酵母の複製開始点を持たないタイプのベクターでNBRP酵母のサイトから入手できる。

出 芽酵母の栄養素要求性ura3やtrp1を相補するのに近縁の酵母Kluyveromyces lactis由来のURA3やTRP1をマーカーとして使用している。これらのサイトで予定外の相同組換えがおきることを防ぐ意味で有効な手段だ。選抜 は、Trp, Uraで行えば2つの遺伝子のC末端側にGFP分子の一部が導入された株が単離できる。
この論文では、酵母本来のオルガネラでの局在の異なるタンパク質遺伝子にsplit-GFPを導入してタンパク質の局在が一致して相互作用が見られる場合に緑色蛍光が観察されることが示されている。

相互作用を調べたいタンパク質の細胞内での局在が自由な所は、これまでのYTHにはない自由度の大きさだ。

一方、この論文のシステムでは酵母のタンパク質に専ら焦点を絞っており、異種生物のタンパク質には着目していない。ある意味、ライブラリーをスクリーニングできるYTHに見られる規模のメリットには目をつぶっているとも言える。使い分けが肝心と言うことか。

古典的なYTHのベクターのGAL4の代わりにsplit-GFPを入れると比較的簡単に汎用型のBiFC検出システムが作れそうだ。

この論文
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18493658?ordinalpos=2&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_DefaultReportPanel.Pubmed_RVDocSum

では、恐らく酵母用の発現ベクターにsplit-GFPを組み合わせている。残念ながらAbstractしか読めない。

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2008年10月23日 (木)

KOD FXで出芽酵母のコロニーPCR

東洋紡の耐熱性DNAポリメラーゼでKOD FKで出芽酵母のコロニーPCRをしてみた、というお話。

これまで同じく東洋紡のBlend Taqで大腸菌や酵母のコロニーPCRをしていました。大腸菌は問題が発生することはまずありませんでしたが、酵母は冷蔵庫で数日プレートを保存するとど うにもPCRがかからない、とか発現ベクターを入れてガラクトース培地で発現を誘導した際に弱い増殖阻害がおきる株では、なぜかコロニーPCRに失敗する ことが多い、と悩んでいたところ。

KOD FXのアプリケーションに酵母のコロニーPCRが 寄せられていたのでZymolyase処理無しの方法を試してみたら、これまでにないくらい良く増えてびっくり。増幅率は、DNA断片の定量はしていませんが電気泳動像を見る限りでは、15-20 μLの反応系でPCRして2 μL泳動して増幅を確認、残りをPEG沈してシーケンスできるくらい良く増えていました。

あとはランニングコストの問題ですが、定価ベースでは20 μLのPCR1本で70円と、価格はちょっと高めなので(\35,000/10,000 μL反応ボリューム、研究所の調達価格はもっと安いけれども公表できない・・・)、用途を選びそうです。ここ一番、絶対に失敗はしたくないという場合につかいま しょう。どこまで安定にスケールダウンできるかが検討課題ですが。

普通にPlasmidを抽出してPCRをすればまず失敗はないのですが、本数が多い場合には時間と試薬コストがコロニーPCRよりも高く付いてしまいます。そこでZymolyase処理で簡易抽出する方法もあるのですが、これは増殖期の酵母 の細胞壁には良く効くのですが、コロニーが古くなってくるとなかなかうまく分解してくれない。また、Zymolyaseもそう安くはない。

時間と手間、失敗のリスクを踏まえたコストを考えると、KOD FXで出芽酵母のコロニーPCRというのは現実的な選択です。

定価ベースで低コストなその他の製品には、島津のアンプダイレクトという製品があります。使用している酵素が普通のTaqなので、エラーはそこそこ入るはずですし、伸長速度はあまり速くなりません。形質転換の確認など、用途を選べばそれなりに使えるとは思います。
# が、KOD FXで良い。あんまり色々買って無駄にするのはいやなので。

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2008年10月20日 (月)

[業務用覚書] 酵母の迅速タンパク質抽出法

SDS-PAGE用のサンプル抽出法としての酵母タンパク質のalkaline prep.

オリジナル

Kushnirov, V. Rapid and reliable protein extraction from yeast

http://www3.interscience.wiley.com/journal/72504790/abstract?CRETRY=1&SRETRY=0

改良版

von der Haar, T. Optimized protein extraction for quantitative proteomics of yeasts.

http://www.plosone.org/article/info:doi/10.1371/journal.pone.0001078

試してみたら簡単便利。培養液150-200 μL相当(OD600=2.0-5.0)までスケールダウンして、細胞をボイルするステップにサーマル・サイクラーを使えば大量処理もできる。粗タンパクの抽出効率はグラスビーズによる破砕よりは劣るが、きわめて簡便でチューブ1本で処理できる点では非常に優れている。

ただ、アルカリでポイルすると膜タンパクは凝集するので、その用途には向いてないとの情報あり。しかし、電気泳動の際にwellにスタックすることは無かったので、まずは試してみる価値はある(膜タンパクが完璧に不溶化して沈殿している可能性は否定できないが)。

オリジナルを見るとbeta-MEの効果が絶大なことがわかる。あるのと無いのとでは細胞からのタンパク質のリリースの効率が格段に違う。プラスミド抽出や形質転換の際にもbeta-MEやDTTで効率が上がるという論文もあり(大抵入れているし)、酵母の細胞壁をゆるめるには、この種の還元剤が良く効くのかもしれない。

・・・けど、酵母のコロニーPCRに還元剤を入れると言う話は聞かないな。今度入れてみよう。多分、beta-MEの0.1-1%で十分だろう。細胞壁を緩くするというのが本当なら、それなりの効果はあるはずだ。

澱粉の多い植物組織からのタンパク質抽出からみると、酵母は簡単です(特殊なものはわかりませんが)。
 

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