本年もよろしくお願い申し上げます
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さようなら2012年。
今年は、ミャンマーへ行ったり、インドへ二度行ったり、ドタバタしながら過ぎていきました。振り返ると、1ヶ月以上海外に行っていて、ひょっとすると2ヶ月近く出張で移動していたのではないかと・・・。
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3月末に訪れたミャンマーでは、ハイウェー沿いの広大な山林が焼き払われ、ゴムの植林が進められていました。農地の所有が認められていないミャンマーではプランテーション開発は今なお進行中で、決して過去の帝国主義の時代の物語ではありません。ただ、開発を行なっているのは西欧の先進国の資本ではなく中国海南島の会社らしい(伝聞)とか、昔とは違う部分もあるようですが、開発で小農が土地を追われて野生動植物が住処を失い急速に遺伝資源が消失しつつあるところは今も昔も同じ。
7月、10月に訪れたインドでは、毎日会議場。週末はどうにか出歩けたものの・・・仕事なので、それは仕方が無いけれど。日中の気温は40度近い一方、ホテルや会議場は25度以下まで冷房を入れていて寒いくらい。外に出ると何だか温度差で、くらっと来るくらい。そして毎日恒例の数分の停電。地元の新聞記事には、もう1週間乾季が続くと水力発電所が止まって電力が足りなくなりそう、という記事がある一方で、南インドでは原子力発電所の建設反対運動が激化など・・・別の角度からみれば日本の電力事情の綱引きと似たような構図が恒常化していました。
酷暑の中、冷房があれば路上で死なずに済む人が居る一方で、国際会議場では過剰な冷房。このアンバランスはどうにかならないのかと思うけれども、電力の配分の問題は直ちに富の配分の問題であることに思い至りました。日本でも、扇風機だけで暑さをしのごうとして年金暮らしのお年寄りが熱中症で亡くなっていたり。たしかに、インドと日本では程度の差はあるのだけれど、豊かなはずの日本がまだこの程度で済んでいるのは、少しばかり緯度が高いという幸運のおかげもあるのかもしれないなと思ったり。
世間では政権交代もあったり、今年は動きの大きな年でしたが、私の2012年は日本ではあまり目にすることのない物事を見聞きした、ずいぶんとインパクトの大きな1年でした。
改めて、さようなら2012年。そして、こんにちは2013年。
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セイヨウナタネと在来ナタネの自然交雑に関するニュース。朝日新聞より。
遺伝子組み換えナタネ、在来種と交雑 環境省確認
2009年8月17日7時21分
遺伝子組み換えセイヨウナタネが在来ナタネと交雑したとみられる個体を、環境省が国内で初めて確認した。ナタネの輸入港や輸送路を対象とした昨年の調査で、三重県松阪市の河川敷から採取した個体を分析してわかった。
遺伝子組み換えで作られ、特定の除草剤をまいても枯れなくした除草剤耐性ナタネは、年間200万トン程度輸入されるナタネの8割ほどを占める。これがこぼれて、港周辺などで自生していることは5年前から確認されてきた。
環境省が在来ナタネと思われる個体を分析したところ、組み換えナタネの特徴である除草剤耐性に関係するたんぱく質が検出された。その種子から育てた芽にも除草剤耐性を示すものがあり、染色体数が29本で、在来ナタネ(20本)と組み換えナタネ(38本)の中間だったことから、交雑によると考えられた。
環境省外来生物対策室は、「組み換えナタネの利用承認の際に交雑の可能性は予想されていた。在来ナタネも元は外来植物で日本産の野生種と言えない」などとして生物多様性に悪影響を与える事例とはみなしていない。
一方、組み換えナタネの監視を続ける河田昌東・遺伝子組み換え情報室代表は「組み換えナタネがはびこってしまってからでは、悪影響があった場合に回復不能となりかねない」と対応の必要性を主張している。(米山正寛)
環境省の報告はこちら。結論の肝心な部分は以下の通り。
このボールドから「従って」までの間には、以下のようなロジックが省略されている様に思う。除草剤耐性の遺伝子組換えナタネは、除草剤耐性であること以外は、一般のセイヨウナタネと生育特性等に差がないことが確認されているためです。従って、除草剤耐性ナタネが、現在生育しているセイヨウナタネ以上に生育範囲を広げ、日本在来の野生動植物の生物多様性に影響を及ぼす可能性は考えにくいと判断しています。
休暇中は山形県下を訪れ寝たきりの老父の見舞い。疲れました。
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ウナギの産地偽装事件で、今度はマラカイトグリーンと代謝産物であるロイコマラカイトグリーンが検出されたと報道されている。 NHKではアナウンサーが発がん性が云々、安全性を犠牲にした金儲けがどうの、と言っている。
しかし、本当にウナギから検出された微量濃度のマラカイトグリーンに発がん性があるのか?詳しくは食品安全情報blogを見ていただきたい。 変異原性があるか?といえばある。発がん性があるか?と言えばそうとも言い切れない。確実性の高い試験が行なわれていないためだ。正しくは、 「発がんの疑いがある物質」と言うべきだろう。
発がん性の疑われるマラカイトグリーンについては、 発がんメカニズムが明らかでは無いことから日許容量を想定することは適当でないので、法律上は食品から検出されてはならないとされている。
つまり、これまで発がん性が明らかにされてきた様々な物質と比較すると、危険性は低いのだ。
今回、ウナギからマラカイトグリーンが検出されたことの問題点は、その違法性にあるのであって、 直ちに安全性に問題があると言う問題ではなく、食べてしまったのだがどうしたらよいか?と不安になるような問題でもない。
現状の報道では、マラカイトグリーンを含む可能性のあるウナギを食べてしまった方の不安を解消することはできない。 もっと報道の仕方を考えていただきたいものだ。
漠然とした不安の方が健康には良くない。
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4月4日、毎日新聞より。
異物混入:花王「ヘルシア」から除草剤成分 何者か混入か
「花王」(東京都中央区)が販売する清涼飲料水のペットボトル「ヘルシア緑茶」(350ミリリットル) を飲んだ練馬区の会社役員の男性(43)が下痢の症状を訴え、花王が成分を調べたところ、除草剤の成分が検出されたことが分かった。 花王に脅迫などはないものの、警視庁捜査1課は何者かが意図的に混入した疑いもあるとして威力業務妨害容疑で捜査を始めた。【川上晃弘、 古関俊樹、山本太一】
調べでは、男性の妻が3月26日に練馬区内のスーパーでヘルシア2本を購入。31日にそのうちの1本を男性が飲んだところ、 洗剤や薬のような味がしたため、のどに指を入れて吐き出したという。男性は下痢を訴えたが、既に回復しており入院などはしていない。
男性によると、ペットボトルのキャップが少し緩かったといい、混入経路を調べている。 男性はもう1本のヘルシアを27日に飲んだが異常はなかった。他の客からの被害の訴えはないという。
花王によると、除草剤の成分が検出されたものを含むヘルシアは3月5日に山口県の委託先の工場で33万本が製造され、 14日に出荷された。物流拠点には約2万本が残っているが、開封して確認したところ異常はみられなかった。 練馬区のスーパーには20日に納入され、翌21日から26日まで陳列されていた。
除草剤は一般に市販されているものとみられる。花王は、除草剤は多量に入っていたとみられるものの、 1本すべて飲んでも致死量には達しないと説明している。
除草剤はヘルシアの原材料には含まれておらず、製造段階ではなく流通過程で混入されたとみている。
もう一つ。
除草剤混入:内閣府の情報把握は、通報から4日後
岸田文雄国民生活担当相は7日の記者会見で、花王の清涼飲料水「ヘルシア緑茶」への除草剤混入事件に関し、 被害者の男性が3月31日に花王に連絡したが、内閣府が情報を把握したのは4日後だったことを明らかにした。 政府は先の中国製冷凍ギョーザによる中毒事件を受け、情報収集・伝達体制の見直しに乗り出したばかり。 今回は格好の試金石となったが、「合格点」とはいかなかったようだ。
内閣府によると、東京都内の男性がヘルシア緑茶を飲んだ後に下痢の症状を訴え、3月31日夜に花王に連絡。 同社は4月1日に現品を回収し、異物の混入を確認した3日に保健所と警視庁に通報した。東京都は4日に厚生労働省に連絡し、 同省が内閣府に伝えた。
これに関連し、岸田氏は会見で「厚労省に報告のあった1件しか(被害が)確認されなかったので、 緊急事態には当たらないと判断した」と釈明。そのうえで「省庁間の情報共有もギョーザ事案に比べてかなりスピードアップした」 と自賛した。ただ、厚労省は「下痢と緑茶に因果関係が疑われる状態だったので、速やかに保健所に通報してほしかった」(監視安全課) と同社の対応を疑問視している。
政府は7日夕、ギョーザ事件を踏まえた緊急時対応訓練を実施したが、今回の緑茶事件によって一足先に「実戦」 での対応力を問われた形だ。【木下訓明】
毎日新聞 2008年4月7日 18時39分
えーと、事実関係を整理すると、
事実関係が明らかになってからの連絡は、特に遅くないのでは?保健所から厚労省への連絡が1日縮まるかどうかというところだが、 これ以上早くしようとすると事実関係の確認はともかくとりあえず通報、ということになりはしないか?
たとえば、
・・・という感じでしょうか。これでは危機管理にも何もあったもんじゃありません。毎日新聞社はどうしてほしいんでしょうか。 危機に際しては通報が早ければそれに超したことはありませんが、緊急事態かどうかの見極めも重要です。このタイムコースを見ると、 政府が情報を把握してから後は遅いとは言えないでしょう。
それを、”緊急事態には当たらないと判断した」と釈明。”だの、” ギョーザ事案に比べてかなりスピードアップした」と自賛した。”だのと書く。
事実関係としては、質問に対して”緊急事態には当たらないと判断した」と回答”、 対応状況については”ギョーザ事案に比べてかなりスピードアップした」と感想を述べた。” と言えば済むものを、あえてこの言葉を選んだセンスが、私は残念でならない。とりあえず政府を叩いておけば、 国民が喜ぶと思っているのだろうか。それとも、毎日新聞はメーカーによる異物の分析を早くしろと言うのだろうか。そう言う主張なら、 記事の見出しは不適切です。
なお、この件について政府の対応に矛先を向けたのは、ざっと見たところ毎日新聞一社のみなのは少し安心した。独自の視点ではあるが、 明後日の方を向いている。また、毎日新聞社は食品安全にかかわる内閣府の機能を何だと思っているのだろう? 食品衛生法に基づいて回収などの措置命令を出すのも、注意喚起の呼びかけをするのも結局は厚労省の仕事だ。犯罪の場合は警察庁だし。 とりあえず、今の食に関する危機管理体制は、このようになっているらしい。
どう見ても、事実関係の把握に時間がかかったものの、内閣府に情報が入るのが遅いと批判される理由はないように思う。どこが、 「合格点」とはいかないのかさっぱりわからない。
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畜産草地研究所(農業・食品産業技術総合研究機構)は平成16年からという農水省の「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」 という予算で安全性評価試験を実施してきた。 その成果と、内外の科学的安全性評価結果が出そろったところで、食品安全委員会に諮問する運びとなった。
朝日新聞より。
クローン牛、食べられる? 「一般牛と差異なし」報告
2008年04月01日
農林水産省所管の畜産草地研究所は体細胞クローン技術で作った牛とその子の肉質や乳の成分が一般の牛と比べて 「生物学的な差異はない」との調査結果をまとめた。クローン技術では米国や欧州でも安全とする評価が相次いでおり、 厚生労働省は1日、クローン技術で作った牛や豚とその子について、内閣府の食品安全委員会に食品としての健康影響の評価を諮問した。
同委員会が安全と評価すれば、国内で流通する可能性もある。ただ、消費者の不安もあり、厚労省によると、 世界的にも流通実績はない。
体細胞クローンは、 核を取り除いた未受精卵にコピー元となる動物の皮膚などの体細胞から核を移植して代理母の子宮に戻して出産させる技術。 畜産草地研究所の調査では、体細胞クローン牛から生まれたクローン牛を調べ、栄養成分の分析やアレルギー試験などを実施。その結果、 一般の牛から得た乳や肉との差はないと結論付けた。
米食品医薬品局(FDA)は今年1月、クローン技術で作った牛や豚、ヤギやその子から作られる肉・ 乳製品の安全性を従来の家畜と同等と評価。欧州食品安全機関(EFSA)も、 クローン技術で作った牛と豚とその子から作られる食品を安全とする方向で意見集約を進めている。
日本では99年に農水省がクローン牛の国内出荷の自粛を要請。03年に厚労省の研究班は安全性を認める一方で、 食品の安全性には「慎重な配慮が必要」としていた。今回、クローン牛の子についても安全性が確認され、「科学的な知見が出そろった」 (厚労省の担当者)としている。
さて、FDAの評価ではたしかヤギが入っていたが日本ではなし。クローンヤギ肉が輸入されたら・・・ と言う懸念は無いのだろう。まあ、クローン牛そのものは相当高価なものと思った方がよいでしょうから「食べられる?」と言う質問には 「いずれ食べられる。当分はお金持ちに限って。」と答えておこうか。
もう一つ。毎日新聞より。
クローン肉:牛・豚、安全評価へ 厚労省が諮問
体細胞クローン牛や豚と、その子孫の肉や乳などの安全性について、厚生労働省は1日、 国の食品安全委員会に対し健康影響評価を諮問した。農林水産省が3月、「体細胞クローン家畜は通常の家畜と同様に安全」 との報告書をまとめ、米食品医薬品局も同様の評価を公表したことを受けた。今後、米国などで市場に出る可能性もあるとして、 厚労省は評価の依頼を決めた。
クローン技術を使えば、肉質が優れた牛や豚、乳量の多い牛のコピーをつくり出せる。国内でも研究が進み、昨年9月末現在、 体細胞クローン牛535頭、豚256頭が誕生している。
しかし、牛については農水省が出荷自粛を要請しているため、市場には流通しておらず、豚も市場に出た実績はない。
体細胞クローン動物は、流産や死産が多いことが指摘されている。農業・食品産業技術総合研究機構は体細胞クローン牛や、 その子孫計220頭のデータを分析。3月にまとめた国内調査で「生後200日以上生存した牛は、一般牛と同等に生育し、 生理機能も差はなかった」と結論づけた。
厚労省は「評価結果がまとまり次第、必要な対応をとる。米国は出荷を自粛しており、市場には出ていない。現時点で、 輸入などの規制措置をとる必要はないと考えている。評価結果は説明会などを開き、国民に情報提供したい」と話している。 【下桐実雅子】
こちらの記事では、牛と豚と書かれている。 具体的なクローン動物の作出頭数や研究の経過についても言及されており情報量も多い。「ただ、消費者の不安もあり、厚労省によると、 世界的にも流通実績はない。」のような無意味な表現や、ふざけた見出しがない分好感が持てる。
解説記事も一つ。毎日新聞より。
解説:クローン肉・安全評価へ 不安に応える審議を 消費者団体は「時期尚早」
体細胞クローンで作った牛や豚の安全性を認める動きは世界的な流れだ。しかし、 各国とも消費者団体は慎重な姿勢を示しており、国の食品安全委員会には、「解禁ありき」ではなく、 国民の疑問や不安に応える丁寧な審議が求められる。
これまでに豪州、ニュージーランドが安全性を承認。今年1月には欧州連合(EU)と米食品医薬品局が「危険とは考えにくい」 「安全性の点で普通の牛と変わらない」との報告書などを公表した。
農林水産省によると昨年9月末現在、体細胞クローン牛を出生させた研究機関は全国に42機関あり誕生・ 飼育技術は広がっている。
近畿大の入谷明・先端技術総合研究所長は「新しい食品の安全性を確認する手法は確立している。その手法で、 国内の体細胞クローン牛を調べたところ、問題ないとの結果が出た。公聴会や消費者団体への説明会で説明を重ねるべきだ」と話す。
一方、安全宣言が出た米国でも、実際の流通までは数年かかる見通し。日本でも消費者団体などが 「クローン家畜には流産や死産が多く、原因がはっきりしないうちに流通を目指すのは時期尚早」と、「食の安全」 確保の立場からの検討を訴える。【永山悦子、江口一】
毎日新聞 2008年4月2日 東京朝刊
消費者団体のコメントが珍妙。流産や死産した家畜は肉にならないので流通しない。 あるいは死産や流産した体細胞クローンの親動物の方に何らかの安全上の疑念があると言うのだろうか。「食の安全」 と言う観点では議論の対象にならないのはあきらか。これを食品安全委員会に向かって言うのは、専門家に対して失礼だ。
ただ、今回のように、特段の危険性を示すデータがない場合は丁寧な審議といっても議論の争点が定まらない。 科学的には、危険性を示すことは何かの事象が観察されればよいので比較的たやすいのだが、安全性を示すことは容易ではない。 何も起こらない場合は従来の食品と違わないとは言えるが、それはどのくらい安全であるかと言うこととは別の議論だ。
ちなみに、体重60kgの成人が霜降り牛肉を毎日300g摂取すると、摂取しない場合と比較して、 内臓脂肪の蓄積量の増大が見られる事が多く、脂肪肝になるリスクが高まることが知られている。 また血中中性脂肪やコレステロール値も高くなり、冠リスクのバイオマーカーにも悪影響を与える可能性が高い。 これらの悪影響は日常生活における運動量が少ないほど著しいとされている。
# 要するに良いものばかり食べてると太るよ、と言うだけのことだが。
さて、安全性がきちんと評価されれば、今後流通するのはまず間違いないだろう。その段になれば、 今度は表示の問題が出てくるかもしれない。国産和牛のクロ-ンについては堂々と表示すればよいのだ。 その方が最先端技術で作られた高級牛肉として中国にも高値で売れるかも知れない(松坂牛、米沢牛、神戸牛、 近江牛に次ぐ地位とされる佐賀牛などは、割安感からか中国向けに出荷されているという)。飼料価格も高騰しているのだから、 付加価値を付けるには良いチャンスだ。
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2008年04月01日 23:59 発信地:東京/日本 【APF通信】
日本ゲイ(=魚偏に京)類研究所が中核機関となり、日本政府、韓国政府、ノルウエー政府、アイスランド政府の協力を得て、 国際クジラゲノム研究プログラムが発足した。
研究プログラムの初期の目的はミンククジラのゲノム(全遺伝子)を解読することで、ミンククジラの繁殖集団の遺伝的構成の解明や、 非侵襲的個体識別技術の確立に役立てたいとしている。
ミンククジラのゲノムサイズは、ボノボとほぼ同じ。研究は東京都で進め、今後半年間でのゲノム解読を目指す。
ミンククジラの生態に詳しいシー・ハウンド・ジャパンの田所博士は、「鯨類は全体として絶滅の危機にあると言われているが、 実際はその生態がよく分かっていないだけ。日本の調査捕鯨によって個体数の増加が明らかになったミンククジラについて、 各国の研究者が情報を持ち寄って遺伝情報解明のために活動するのは、初めての試みだ。クジラは自然保護の世界的な象徴でもあるので、 このような研究を行う価値はある」と述べた。
中国科学院の王博士は、「ゲノム解読プロジェクトにより、 ミンククジラがどのように進化して今日の生態やキリスト教国における神の使いとしての地位を獲得してきたのか遺伝子レベルで理解するゲノム倫理学への道が開けるだろう」 と話している。一方、シー・シェパー代表ポール・ワットソン氏は「神聖なクジラのゲノムを解読はクジラの神聖を汚す行為。 残虐な捕鯨に科学的根拠をこじつけようとするもので許されない。断固粉砕する」とコメントしている。
生存頭数の増加していると考えられる南氷洋のミンククジラは1990年以降は76万頭程度、 個体数の少ないナガスクジラは1千頭前後と見られている。【APril Fool news agency】
オリジナル記事、パンダ・ ゲノム・プロジェクトにインスパイアされました。中国がパンダ・ゲノムをやるのなら、日本がクジラ・ ゲノムの解読をしても良いのでは・・・と思ってしまいます。
産業としての捕鯨の是非は、クジラが再生可能な資源であるかどうかと言う尺度で見るならば、 種によって対応を変えるのが妥当なところ。歯クジラも髭クジラも、大型も小型も一緒くた、生存している個体数の考慮もせずに、 産業ベースでの捕鯨が全面禁止という対応が国際的に認められているのは合理的ではないと思います(まあ、 合理的なら何でも良いとも思わないのですが)。
我が国には捕鯨の伝統がとか言い出すと、南氷洋まで出張る意義が見いだせない。 クジラは知能が高いから捕殺するのは野蛮だと言う議論は、生物の持つ生命の重みを知能で計ることを絶対視している。 動物の生存権を謳う動物愛護と同根で、新手の動物に偏ったアニミズムだ(アニミズムのくせに、 クジラに食べられるオキアミや植物はどうだって良いらしい)。キリスト教国ではこのようなアニミズムは異端かと思っていたのだが (異端だからと言って火あぶりにしろとも言いません)。
いずれにせよ、国際的な資源管理の問題は、倫理観や文化、 宗教とは切り離して科学ベースで論じるべきだと思います。また、産業としての捕鯨は、一つの産業として成り立ちうるのか、 経済的な視点でよく考えるべきでしょう。元捕鯨国の連中から止めろと言われて止めるのは業腹ですが、それはそれとして、 我が国における捕鯨とクジラに依存した産業は、石炭産業や養蚕がそうであったように役割を終えつつある様に感じます。 クジラを食べたことがない世代、あるいはクジラを特に食べたいと思わない世代がマーケットの主流になってしまえば、 特にクジラを食べなくてはいけない事情が無い限り、もはやクジラ肉が市場を獲得する事は無いのですから。
一方、科学的な見地からクジラの生物学を追究する自由はあって然るべきだと思います。多分、 宇宙科学よりは安上がりです。ファンドが付くかどうかは知りませんけどね。
また、組換え技術が張り込む余地は残念ながらなさそうです(遺伝子組換えクジラにクローンクジラ、 ノックアウト・クジラに病態モデル・クジラetc.)。まあ、組換えクジラが国境を越えて自由に泳ぎ回る事態は、 カルタヘナ議定書でも想定していません。
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北海道新聞より。
ミート社偽装 田中被告に懲役4年 札幌地裁「食の安全脅かす」(03/19 13:43)
苫小牧市の食肉加工製造卸会社「ミートホープ」(破産手続き中)の食肉偽装事件で、 詐欺と不正競争防止法違反(虚偽表示)の罪に問われた元社長田中稔被告(69)=苫小牧市船見町二=の判決公判が十九日、 札幌地裁で開かれた。嶋原文雄裁判長は「会社と自己の利益を計るため、食の安全への信頼を根幹から揺るがした背信的な犯罪」として、 懲役四年(求刑・懲役六年)を言い渡した。
食の安全、安心を脅かし、食品の表示偽装が各地で表面化するきっかけとなった事件で、 判決は田中被告の刑事責任を厳しくとらえ実刑とした。
判決理由で嶋原裁判長は、一九七六年のミートホープ設立から数年後に食肉偽装が始まったと認定。 牛肉以外の肉を混ぜたことについて、「田中被告が長年の経験を悪用し、犯行を主導した。昨今みられる食品偽装の中でも大胆さ、 悪質さは際だつ」と述べた。
また、田中被告が公判で、「(安い肉がほしいとの)取引業者の要望を断りきれなかった」 「安価でおいしい製品を工夫して供給しようとしたため」などと、偽装を繰り返した動機を供述したことに、嶋原裁判長は 「自らが社会に及ぼした影響に対し、悔悟や罪の意識が乏しい」と非難した。
弁護側は、田中被告とミートホープが自己破産し、社会的制裁を受けていることなどから、 執行猶予を含む寛大な判決を求めていた。
判決によると、田中被告は二〇〇六年五月から○七年六月にかけて、 三百二十七回にわたり牛肉に豚肉などを混ぜて製造したミンチ肉に「牛100%」などと表示し、 取引先十数社に約百三十八トンを販売した。このうちの約百トンを納入した北海道加ト吉(赤平市)など三社から、 代金約三千九百万円をだまし取った。
さて、判決理由には「食の安全捨てた」 と言う言葉は使われていないようだな。とすると、この見出しはおかしい。理由は後述する。もう一つ、中国新聞から判決要旨。
食肉偽装事件の判決要旨 札幌地裁
食肉加工販売会社「ミートホープ」の食肉偽装事件で、元社長田中稔被告に対し、札幌地裁が19日言い渡した判決の要旨は次の通り。田中被告はミートホープ設立当初、肉加工の際に出るくず肉の処理に困り、 設立数年後には、牛のほかに豚や羊のくず肉を混ぜた牛ひき肉の製造を始めた。本件各犯行は、 同社で行われていた偽装行為の一環だ。
被告は取引業者や最終的に食品を口にする一般消費者を顧みず、 偽装が容易なひき肉を利用し、安価な原材料費で多額の売り上げを得て、会社や自分の利益を図ろうとした。動機は極めて利欲的、 自己中心的で、厳しい非難を免れない。
牛肉に豚肉、鶏肉、羊肉などを加える犯行は大胆で悪質さは際立っている。 昨今の食肉偽装の中でも、原産地偽装などの事案とは一線を画す。偽装表示、詐取行為は長期間、多数回にわたって繰り返され、 取引業者の信用も傷つけた。
食肉業界での公正な競争を害したほか、 一般消費者に食品表示に対する不安を抱かせ、食の安全への信頼を根幹から揺るがしたことは明らかで、犯情は非常に悪い。
本件各犯行は、会社ぐるみの大規模かつ組織的犯行であり、 代表取締役の被告が専門知識を悪用し、率先して偽装方法を発案し従業員に具体的に指示するなど、自ら中心となって主導した。
さらに、被告は犯行の発覚後、 偽装に使用していた豚の心臓などを工場外に運び出して処分し、証拠隠滅を図るなど犯行後の情状も良くない。
被告は食品の製造・ 加工に携わる者として食の安全に関する規範意識が強く求められる立場にありながら犯行を行っていたばかりか、公判で 「取引業者の要望を断り難かった」「工場間取引には表示義務がなかった」などと述べ、 自らの行為や社会的影響を真摯に省みて悔悟する姿勢がない。
他方で、 ミートホープは偽装牛肉の取引による利益のみに依存していた会社ではなく、捜査・ 公判を通じて事実をすべて認め反省の弁を述べているほか、 被告とミートホープはともに破産宣告を受けるなど一定の社会的制裁を受けており酌むべき事情も認められる。
(初版:3月19日12時40分)
読売新聞、中日新聞でも裁判所の判断は 「食の安全への信頼を根幹から揺るがした」であったと伝えられているので、そうなのだろう。論告求刑の際に、 検察側は「『食の安全』を捨てた恥も外聞もない行為」 と言ったと伝えられている。本件裁判では「食の安全」 に関わる食品衛生法違反が裁判の争点になっていないにもかかわらず、 である。どこかズレている。
一方、裁判所はさすがに「食の安全を揺るがした」とは言っていない。 そのかわり「食の安全への信頼を根幹から揺るがした」と言った。 この犯罪が揺るがしたのは「安全」そのものではなく「安全への信頼」だったと。流石に、 裁判の争点になっていないことを判決理由にはできなかったのだろう。
それを知って、私は少しほっとしているところだ。 司法の公正に対する信頼が少し揺るぎかけていたところだったので。
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uneyamaさんの食品安全情報blog経由。
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2008-03/uoia-uoi030608.php
植物性乳酸菌 Lactobacillus plantarum でダイズを発酵させると、アレルゲン性が低下する。 目標はアレルギーのヒトに対するゼロトレランスの達成だそうです。
乳酸菌は菌体外に酵素を分泌するので、その性質を利用して腎臓病食用のお米の除蛋白に既に使われている。ダイズでもできるという、 当たり前と言えば当たり前の研究。
なお、納豆菌 Bacillus subtilis nattoも菌体外にプロテアーゼを出します。が、 納豆にするとダイズが最終的にアレルゲンフリーになるかどうかは不明です。納豆による遅発性アナフィラキシーの症例もあるので、 よっぽどよく発酵させないとアレルゲンフリーにはならないんでしょうね。
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