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2009年1月14日 (水)

そんなに簡単に品種改良に応用はできない

植物の葉緑体の分裂と核、細胞の分裂はどうにかして同期して行われている。細胞分裂の速度にオルガネラの分裂が追いつかないと言う現象は実際には起こっていないのだが、なぜそれが起こらないのかは謎だった。

酵母などでは細胞周期の制御に関する研究がかなり進んでいるのだが、植物では核、葉緑体、ミトコンドリアの三角関係があって話がややこしくなっていた。

1/11の読売新聞より。

葉緑体が細胞増殖制御 千葉大グループ解明
品種改良など応用期待

 植物細胞の中で、これまで細胞核に活動を支配されているとみられていた小器官の葉緑体が、細胞が増殖する過程において、逆に細胞核のDNA(ゲノム)複製をコントロールしていることを、田中寛・千葉大大学院園芸学研究科教授(分子生物学)らのグループが突き止めた。細胞核が他の小器官を一方的に支配しているとする定説を覆すもので、近く米国科学アカデミー紀要の電子版に論文が公開される。

 バクテリアなどを除く動物や植物、菌類は、細胞の中に核を持つ真核細胞生物とされ、植物の場合、光合成を行う葉緑体と、酸素呼吸を行うミトコンドリアは、バクテリアだったそれぞれが進化の過程で真核細胞に入り込み、核に支配されたとみられていた。

 田中教授によると、研究は、シゾンという細胞核と葉緑体、ミトコンドリアを各1個ずつしか持たない単細胞藻類を用いて行われた。小器官はそれぞれがDNAを持っており、シゾンの増殖過程では、光を当てることでそれぞれDNAの複製が行われるが、葉緑体やミトコンドリアのDNA複製を止める薬剤を加えると、細胞核もDNA複製が起きなかった。

 一方、DNA複製が起きない暗い状態で、葉緑体がDNAを複製する際に放出するテトラピロール類と呼ばれる物質を与えると、細胞核ではDNA複製が起き始めた。

 このことから、葉緑体がDNAを複製する際に信号となる物質を放出し、細胞核のDNA複製を促していることが判明したという。

 田中教授らは、寄生体(パラサイト)が宿主に命令しているようだとして、この信号を「パラサイト・シグナル」と命名した。

 より高等な種子植物であるタバコでも、同様な仕組みで細胞増殖していることを確認、植物全体で同様であると推測できるという。

 田中教授は「植物の増殖制御を通じて品種改良や、農薬、成長促進剤の開発にも生かせるのではないか」としている。
(2009年1月11日  読売新聞)

千葉大学のプレスリリースはこちら。オリジナルの論文はこちら(Kobayashi et al. 2009)。
植物科学関係の記事は、とかく「品種改良など応用期待」と書かれがち。「品種改良など応用期待薄」とわざわざ書かれるよりは良いが、単細胞藻類のテトラピロール・シグナルが核の分裂にGOサインを出すことがようやく分かり始めたところで応用の話をするのはいかにも気が早い。

核の分裂を進める最初の(?)シグナルを捕まえたと言う点では、確かに一歩前進だ。
しかし、高等植物でも実際に同じような効き方をしているのかどうか、もう少し議論の余地がある様に思う。BY-2細胞のように同調できる系だからこそ見えてきた現象なのかも知れないが、核のチェックポイントの解除がどのように進むのか明らかにして行くには、もう少し精密な実験が必要だろう。

話は変わって、tetrapyrroleのシグナル伝達についてはこういう論文もある。

Mochizuki, N. et al. The steady-state level of Mg-protoporphyrin IX is not a determinant of plastid-to-nucleus signaling in Arabidopsis. Proc Natl Acad Sci U S A 105, 15184-9(2008).  

葉緑体と細胞の核の間の信号のやりとりは核の分裂に関わるものだけでなく、葉緑体を形作っている核遺伝子にコードされた多くのタンパク質の合成の制御に関わる信号も含まれている。こちらは、(おそらく、分裂していない組織を中心に据えて)葉緑体の tetrepyrrole signalと遺伝子発現との関連を考えている。Mg-protoporphyrin (MgProto)はtetrapyrroleの中間産物とされている。上記の論文ではアラビドプシスの細胞内のMgProtoのレベルと、葉緑体で機能するタンパク質をコードする核遺伝子(Lhcb1等)の発現レベルの間には相関がないことを示している。

分裂組織の個々の細胞の分裂と、植物体レベルで見た転写産物の蓄積量とでは、精度が異なるのでKobayasiらの研究と単純な比較はできないが、この論文ではカロチノイド合成阻害剤であるNorflurazon(NF)を添加して内生のProto, MgProto, MgProtoMeの含有量を低下させた場合にはLhcb1等の発現レベルは低下するのだが、内生のMgProtoのレベルが低下した突然変異体ではそのような相関は見られていないことを示している。

植物の個体では分裂している部分としていない部分が分かれており、植物体でのMgProtoの定常状態が、分裂組織で分裂している個々の細胞内でのMgProtoの量を反映していない可能性はある。

高等植物では、分裂する細胞では葉緑体からのtetrapyrroleが細胞分裂を促進し、分裂していない細胞では葉緑体から核に対してタンパク質を合成させるためのシグナルは他の物質が担っている、と考えた方が良いのだろう。

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三角関係かと思われていた植物の細胞周期の制御は、実は葉緑体さんと核くんの蜜月時代らしい(というか、もはや葉緑体のカカア天下?)。今のところミトコンドリアさんが寂しく蚊帳の外で泣いている様だが、さてどう反撃に出るか。それとも、酵母や動物細胞と同じようにミトコンドリアはひたすら従属?

# ちなみに葉緑体とミトコンドリアは母性遺伝するので女性扱いです。

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2008年8月15日 (金)

Molecular gastronomy的? トマトソースのレシピ

仕事のメモではありませんが、業務上得た知識と関係なくもありません。

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庭先のクッキングトマトが500 gほど収穫できたのでトマトソースを作ることにした。デルモンテのイタリアンレッドを2株栽培しているのだが、 今年はもう 2 kg以上収穫できた。CMVワクチン接種苗(*) なので少々値段は張ったのだがもう元はとれた。

* 弱毒CMVを農薬だと考えると、農薬登録されていない気がするのでちょっと微妙な技術です。   家庭菜園用なら無登録でも良いのでしょうか。弱毒ウイルス製剤を販売していないにしても、種苗として販売するための育苗は”業”なので、    農薬取締法の使用規制の対象ではないかと思うのですが。ZYMVについては登録農薬があるのですが。

トマトソースの作り方は数々あるが、トマトという植物の化学的組成や生物としての特性に着目した調理法はあまり知られていない。以前、 NHKのためしてガッテンという番組でトマトソースの作り方を特集していたのだが、固形成分の歩留まりに問題がある様に思ったので、 製造プロセスの改良を試みた。

ガッテンのレシピはこちら。 抜粋すると以下の通り。   

  • 材料   
    • トマト 6個
  • 作り方
    1. トマトのヘタをとり八つ切りにし、ミキサーで粉砕する。       
    2. [1] をこしきでこし、フライパンに入れて20分弱火で加熱する。
    3. ヘラで字がかけるくらいになったらできあがり。
      ※冷蔵庫で1週間ほど保存できる

生化学的な実験では細胞を破砕する(こわす)場合には、水溶液のpHを調整するための緩衝液や、 各種の酵素の阻害剤を加える。その目的は、細胞内では糖、有機酸、ポリフェノールといった様々な物質が膜で仕切られており、 酵素と接触しない様になっているのだが、細胞を破壊するとそれらの物質が酵素と接触したり、空気中の酸素と反応して一期に変質するので、 それを防ぐことにある。

たとえば、リンゴをおろし金ですり下ろしてガーゼなどで絞り汁を濾過すると、 絞り汁はリンゴそのものの果肉とは似てもにつかない褐色になる。これは、リンゴの細胞内に含まれるポリフェノールオキシダーゼという酵素が、 空地中でリンゴの細胞が壊れた際に放出されるポリフェノールを酸化した結果、 ポリフェノールの酸化物が私達の目には茶色に見えているのだと考えられている。

もちろん、酸素と接触して成分が変化すること自体が調理する上で必ずしも悪いことではないし、 鍋で加熱するとどのみち酸化するので、今回の製造プロセスの改良の眼目はそこではない。それに、 料理の際に緩衝液や酵素の阻害剤を入れると、それは料理とは”別のもの”になりはててしまって、 もう食べられない。

問題は、ステップ2.にある。生のトマトの細胞は、細胞壁の間にペクチンがあり、 糊のように機械的に細胞をつないでいる。ペクチンは加熱調理によって低分子化する(野菜を煮ると柔らかくなるでしょ?ま、 加熱で変化するのはペクチンだけではありませんが。そういう論文もあるんです)。生のトマトを、 ミキサーで破砕すると、機械的に細胞を壊すことはできるが、この時点ではペクチンの低分子化はまず起こらないだろうと考えられる。

その結果、ミキサーにかけた生のトマトは、塊のままの細胞がトマトジュースに浮遊している状態になる。 これをこしきで漉すのだが、生の細胞が固い上、よほど強力なミキサーでなければ繊維分が十分に切り刻まれないために、 こしきの上に結構な量の残渣が残ってしまう。トマトがあまり熟していない場合や果実内の成熟が不均一な場合には、この残渣が増える。 逆にトマトが完熟している場合は、 トマト自身が生産したポリガラクチュロナーゼ(PG)という酵素によってペクチンの部分分解が起こっているために、 果実が柔らかくなっており残渣は少なくなる。

このような経験を踏まえて考えてみると、ミキサーにかける前にペクチンが低分子化していれば、 こしきで漉す効率が高くなり加工歩留まりが向上すると考えられた。そこで、以下のように加工プロセスの改良を試みた。

  • 材料         
    • トマト 6個
  • 作り方
    1. トマトのヘタをとって4つ切りにし、食塩適量と共に真空パックして95度のお湯で5-10分間加温する。       
    2. 真空パックを50度以下まで水道水で冷却、又は空冷してミキサーで粉砕する。
    3. [2] をこしきでこし、中華鍋に入れて15分中-弱火で加熱する。
    4. ヘラで字がかけるくらいになったらできあがり。
    5. 保存容器に入れ、表面に厚さ1-2 mmのオリ-ブオイルの層を作り、殺菌のため電子レンジで2分間加熱し、自然冷却する。
    • 保存期間は保障しませんが、ガッテンのレシピよりは保つはずです。

裏ごし歩留まりの評価を定量的に行っていないため、 こちらの方がどれだけ歩留まりが良くなったかは評価できないが、裏ごし操作に必要な所要時間は1/2程度にとどまる(それに、 固形分が柔らかくなっているので力が余りいりません)。裏ごしされた液体は、生のままミキサーにかけた場合よりもとろみがある (粘度の測定は行っていない。というか家のキッチンの設備ではできません)。すでにペクチンが可溶化されているためであると考えられる。

加熱にはフライパンではなく中華鍋を使用しているが、中華鍋の方が熱効率が良く、 粘度のあるトマトソースでも対流が起こるため、焦げ付かずに濃縮できる。そのため、加熱時間は若干短縮できる。

一方、お湯を沸かす必要があるため二回加熱することから、 CO2排出量はオリジナルのレシピより増えてしまう欠点があるものの、加工中の食品残渣は改良プロセスの方が少なくなる。

肝心の食味は、変哲のない普通のトマトソースです。もちろん、 生のトマトから作っていますので缶詰では楽しめない香りがあります。

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トマトを栽培していない方が、以上の加工プロセスをより簡便に、かつ安価に行う為には、 ホールトマトの缶詰を買ってきてミキサーにかけるとより簡単です。また国内でのCO2排出量を増やしたくないと言う方は、 本場イタリア産のトマトソースの缶詰がお勧めです。加熱調理の際のCO2排出量はおそらくイタリアが負担してくれますし、 工場で加工する方が家庭のガス器具よりも熱効率は良いでしょう。なお、 缶詰の内側のコーティング剤からは微量のビスフェノールAが溶出されることが知られていますが、 缶詰1個から溶出するビスフェノールAの女性ホルモン活性の方が、 納豆1パックに含まれるダイズ由来のゲニステインの女性ホルモン活性よりも低いのではないかと思います。 どちらも通常の食品として問題のないレベルです。

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2008年7月20日 (日)

へー、遺伝子組換え作物って白眼視されてきたんだ。

7/20の朝日新聞、トップ記事の見出しはこうだ。

遺伝子組み換えに追い風 食糧高騰・温暖化が均衡破る

で、記事はこう書き出している。

長く白眼視されてきた遺伝子組み換え(GM)作物に、追い風が吹き始めている。  

 GM技術の知的所有権を独占し、   世界の主要作物の種子支配を狙っていると批判されてきたモンサント社(米国)は6月、   世界的な食糧高騰や気候変動に立ち向かう「貢献策」を公表した。

・・・もうすこし言いようは無いのか。

長く白眼視されてきた遺伝子組み換え(GM)作物」  

GM技術の知的所有権を独占し、   世界の主要作物の種子支配を狙っていると批判されてきたモンサント社」

こういう枕詞をつけて、物や会社に対する固定的なイメージを読者に植え付けるものの書き方は、 著しく不公平なやり方だ。たとえば、

コラムで法務大臣に”死神”と言う別名をつけて、 良識ある市民の批判にさらされている朝日新聞社」

自分の会社をそう呼ばれたら、このトップ記事の執筆者はどう感じるだろう。事実として遺伝子組換え作物が 「長く白眼視されてきた」にせよ、食料高騰・温暖化が遺伝子組換え作物の普及に追い風になっている情勢を伝えるのに、 このような書き方をする必要はない。

ちなみに、私はモンサント社に知人は居るが利害関係は全く無い。お歳暮・お中元はおろか、 ボールペン一本貰ったことは無い。モンサント社を弁護する理由は無いが、メディアの不公平な報道には抗議する。

私は朝日新聞を購読しているし、複数年まとめて契約している。しかし、 契約期間が切れたら私は二度と朝日新聞を購読しない。ここに宣言する。

読売新聞のオーナーが変わったら即日読売新聞を購読するかもしれない。 読売新聞は、取材記者が高圧的で失礼な取材態度で知られている (業務でなければ取材協力は絶対にしたくない)。しかし、医療や科学関連の記事の品質は高い。

製品としての品質がよければ、企業姿勢には何とか目をつぶってやっても良い。 しかし、記者やオーナーが如何に品行方正でも、製品の品質が低いのでは話にならない。

 


 

さて、署名記事でこのような書き方ができるというのは一種賞賛に値するかもしれない。 腹立ち紛れにどうでも良いことを書いてしまったが、折角なのでこの記事では書かれていない情報も書いておこう。

植物の遺伝子組換え技術の特許について。

特許というのは、投資をして技術開発を行なったものに対して正当な対価を認めて報いるための制度だ。したがって、 一定年限(存続期間という)は保護するが、それを過ぎれば特許の内容は社会全体で共有するべき知的財産となる。

存続期間の間、特許を取得した者の許諾なくその技術を使用してはいけない。その期間は20年あるいは25年間 (農薬分野など)と決められている。植物の遺伝子組換え技術に関する特許は、多くが1980年代に成立している。従って、 多くの技術がそろそろ期限が切れているか、期限切れを迎えることになる(ソースは特許庁) 。

つまり「GM技術の知的所有権を独占し、世界の主要作物の種子支配を狙っている」という表現は、 先駆者として遺伝子組換え作物を開発してきた企業が獲得して当然の、国際的にも認められている独占権に対する批判である。 知的財産権の独占を批判をするならば、特許と言う制度の是非も問うべきではないのか。

作物の種子だって製品である。それが良い製品であれば普及するし、 そうでなければ企業がいくら市場を独占しようとしてもメリットの無い製品は普及しない。「世界の主要作物の種子支配を狙っている」としても、 それは非常に高い目標に向かって企業努力を積み重ねているという意味だ。企業の目標は魅力的な製品で消費者をとりこにして、 より収益を高めることなのだから。

# 大体、具体的にはどんなプランを立てれば、ある市場占有率を達成できるようになると言うのか。

なお、モンサント社は昨年9月にDow Agroscienceと互いの技術を持ち寄って新しいスタック系統を開発することで合意している。 深読みすると、組換え技術の特許切れによってジェネリック医薬品のように先行製品とよく似た後発品種がぞろぞろ出てくる事態に備えて、 品種の幅をより広げておこうとしているようにも見える。今回の件も企業買収をしようと思えばできたのかもしれないが、 互いの独立性を残した方がメリットがあると言う判断での協業だろう。

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2008年3月17日 (月)

「きぼう」への投資を回収する?

宇宙空間に日本の物置小屋ができた・・・今般のシャトルで打ち上げられた「保管室」の取り付け成功は、つまるところそういうことだ。

20年の歳月と巨額のプロジェクト運営経費、最高の製造技術、そしてロボットアームを操作する匠の技をもってして為し得た成果。新聞各紙の書きぶりではそんな感じだ。それを物置小屋と言っていけなければ、倉庫だ。実験室本体ではないので、保管室というユニット自体の機能はきわめて限定的だろう。

私は、ここまでの成果を貶すつもりはさらさら無いが、新聞社の社説を見ていると、早くも成果を口にし 始めているので、私は冷めた目で現状を見直したいのだ。各紙の社説では喧しくも、早く資本を回収しろと言わんばかりの論調が飛び交っている。まだ実験室さえできていないのに、何を言ってるんだろう。寝言を言うのは寝ているときだけにしていただきたいものである。

 


 

読売新聞から。

これまでに政府は、ステーション計画に6000億円以上の予算を投入した。今後、ステーションの維持や日本独自の無人輸送船開発・ 運用などを合わせると、1兆円を超える費用がかかる。

 巨額の投資を無駄にしないよう幅広い活用策を模索し、役立てることも大事だ。国際協力は、そのひとつだ。 宇宙実験にアジア地域の国に参加してもらうなどの取り組みにも期待したい。

朝日新聞から。「「きぼう」―1兆円を生かせるか」

 しかし、肝心なのは、そこをどう使い、どう生かしていくかだ。

 きぼうの建設費は約5500億円、物資の輸送など運用に今後、毎年約400億円かかる。 準備段階も含めれば合計1兆円に達する巨大プロジェクトである。どのようにして巨額の投資に見合う成果を上げるのかが問われている。

(中略)

日本として何をめざすのか。今こそ、しっかりした計画が必要なときだ。

 


 

大新聞社にかかると、JAXAも文科省も、まるでなーんにも考えてない様な言われぶりだ。

 


 

日本経済新聞から。「宇宙実験、夢より成果見せよ(3/12)」

 日本は計画参加に伴い、実験棟の製作などに約7000億円つぎ込み、 2015年まで毎年400億円を投じる。つまり実験棟は総額が1兆円に及ぶプロジェクトである。 当初の経緯に加え各国との付き合いもあっただろうが、さほど深慮もせず計画を続けてきたことは否定できまい。

 実験棟は無重量状態だから、当初は革新的な材料や新薬の開発ができると言われてきた。その期待は薄れつつある。 実験装置の性能が上がり、地上実験で十分との指摘もある。目を見張る成果が出ればいいが、出ないのなら実験棟を見限ることも必要だ。 有人宇宙活動は費用がかさむ。それがどれだけ役立つのか。費用対効果を見極めるべきである。

 


 

さすが投資家向けの新聞です。7年先までにはどれだけ役に立つか示せと・・・。

いずれも、建設までに5,500-7,000億円の巨費を投じたこと自体を問うており、 2015年までの7年間で費用対効果に見合ったかどうか評価しろ、と言っている。短期で資本を回収させるタイプの製品向けの技術開発でもあるまいし、何を考えているのかさっぱり理解できない。だいたい、大雑把な見積金額でも1,500億円も違っちゃってて、彼らは何を見てるのだろう。概算値の端数だけでiPS細胞の研究費(5年で100億)の15倍、単年度20億だとすると75年分の研究費に相当する。年間400億の事業費というところは二社共通だから本当なのだろうが、これだって医学・生物学の分野から見ると桁違いの巨額だ。

※ 書いててだんだん腹が立ってきた。

今のところモノオキが一つできただけで、実験室の完成はこれから控えている大仕事だ。それさえも、研究のための設備が整ったということに過ぎない。宇宙実験室が本領を発揮するためには、そこで研究が行なわれなければならない。それがなければ、”箱物行政”と一緒だ。

ちなみに、私は研究に投じた経費から、それに見合った成果を回収しようと考えてはいけないと思っている。手作りの装置でちまちま実験してノーベル賞を取る人もいれば、スーパーカミオカンデやITERのように巨大装置を建造しないと実験できない人も居る。紙と鉛筆で良い人もいれば、スパコンが必要な人もいる。研究の遂行に必要な資源の投資は、ピンキリだ。

研究のアウトプットも様々。それが世の中に役立つこともあれば、役立たないこともある。すぐに役立つこともあれば、100年を経てようやく役に立つ研究も、1,000年経とうが役に立たない研究もある。研究成果が社会的に意味をもつまでの時間のスパンは様々だし、波及効果の現れ方も様々だ。いずれにしても、短期的な経済的波及効果で研究の真価を計ることは誰にもできないし、人類に対する貢献という意味では、その尺度は適当ではない。

つまり、「投資に見合った成果」というものは、成果自体を評価するための明示的で、なおかつ社会的に合意のある尺度が存在しない以上、幻想に過ぎない。(定量的な議論の前提が成り立たない、ダメな議論、と言う奴だ。)

まして、宇宙空間で行われる実験を必要とする研究に対して、「日本の国際競争力」がどうの、とか「公費で行われる研究なので納税者に対する説明責任」がという戯言は聞きたくもない(後者は耳が痛い)。そんなものに役立つことが予めわかっている研究なんておよそつまらない。また、私の想像力では、国際宇宙ステーションでできる生物学実験が、かつての”宇宙メダカ”以上のどんなインパクトを社会に与えうるのか全くわからない(・・・私の頭が硬くなってきてるのかな)。

私人のblogなので、またしても勝手なことを言うが、科学は、芸術やスポーツと似ているかもしれない。音楽に酔い、絵画を楽しみ、競技者の超絶的な技量を楽しむように、科学を楽しんでほしい。オペラハウスを作るのに巨費を投じたのに、つまらない演奏をしやがってとか、巨大サッカースタジアムを建ててやったのにJ2かよ!などと言ってほしくないのだ。プレイをする場の値段は、そこで行われる演奏、競技、研究の価値とは関係ないのだから。

日本経済新聞風に言えば、「宇宙実験、成果より夢見せよ」だ。すでに建設には巨費を投じてしまった。回収できる目処はまずないのだから、あとはどんな夢を描かせてくれるかが勝負だ。

※ さて、今シーズンはコンサドーレもJ1だ。これを、器に見合ったチームという評価をする人が居るのだろうか?

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2008年2月21日 (木)

Ark of the Arctic

AFP BB Newsで面白い記事を見つけた。

http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2352890/2656103

「既知の全植物種の種子保存庫、写真を公開」という見出しで、

 「食料農業植物遺伝資源条約(International Treaty on Plant Genetic Resources for Food and AgricultureITPGR) 」に基づき建設中の同施設は、別名「ノルウェー種子バンク(Norwegian Seed Bank)」とも呼ばれている。

とある。いわゆるジーンバンクですな。場所は極北のスバールバル諸島! 私の推測ですが、政治的安定と、冷蔵保存のコストが低いのと、地殻が安定してる、 それから地中だと宇宙線の影響を受けにくいというのが立地条件でしょうか。

えーと、ITPGRの対象は、条約の名前の通り食料遺伝資源です。従って記事の見出しの「全植物種」ってのは、明らかに間違い。 種子保存の対象は作物(とその近縁種くらい?)です。

エントリーの表題の”Ark of the Arktic ”(極地の方舟)というのは、私の命名ではなく"Svalbard Global Seed Vault,  ark"でググったときに出てくるイギリスの新聞社テレグラフの見出しから頂きました。 施設の入り口が方舟のような印象、しかも、施設のミッションも種の保存なのでまさに”Ark”だなー、とおもって調べてみたら、 同じ感想を持った人がいたんですね。しかも極地の”the Arctic”をかけている。英国版親父ギャグのセンスに脱帽です。

でもこちらの記事を読むと、 曰く人口と同じくらいのホッキョクグマが居住地の外をうろついてるのでライフルを持たずに出て行っちゃいけない、とか”Shoot to kill”とか、恐ろしげなことが書いてあります。

遺伝資源関係の職場としてはあまり魅力的な場所じゃないですね。Dr. Cary Fowlerにとってはそうではないようですが。

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2005年12月 1日 (木)

Light fied camera

まずは、Hot wiredのこの記事を読んでほしい。

見出しでは、「撮影後にピントを合わせ直す新しいカメラ技術」として紹介されている。技術の詳細は私の説明能力を超えるので、 発明者のホ- ムページを参照していただきたい。

私の見るところ、このLight field cameraという発明の長所は以下のとおりである。

  • ピントあわせの為の機動装置が必要ないので、きわめて振動が少ない。
  • 被写界深度調整のために開口径を絞り込む絞りが要らないので、CCDへの入射光の損失が少ない。 (このカメラで撮った水の映像はシャッター速度がかなり高速であったことを示している)
  • 現在は160万画素を必要とする点が欠点とされているが、現在のスピードでデジカメが進歩するならばいずれは問題にならなくなる。
  • 現在は「撮影後にピントを合わせ直す」といわれているが、データ処理系が高速化すると「撮影後もピントを合わせ直す」 ことができるようになる。

これは、高倍率の顕微鏡にぴったりの特性ではないだろうか。特に超高倍率・大被写界深度の実体顕微鏡や、 ニポウディスク方式の共焦点顕微鏡と組み合わせると、 超絶的な高解像度でZ軸方向のスライス画像を機械的な動作なしで作れるようになるかもしれない。

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