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経済・政治・国際

2010年6月13日 (日)

グリーン・イノベーション関係のアクションプラン改定の見込み

 5月末のエントリーで触れた、総合科学技術会議の平成23年度科学・技術重要施策アクションプランに対する意見募集が先頃締め切られました。寄せられた意見に基づき、グリーンイノベーション関係の課題では”バイオマスによる再生可能エネルギーへの転換の促進”が重点化されることになる見通しです。資料はこちら

 方策としては次の通り

(2-2) 方策「バイオマスによる再生可能エネルギーへの転換の促進」
(ⅰ)推進方針と期待される効果
 バイオマスは、自然循環系の中で森林や樹木などの形でCO2 を吸収・貯留する重要な役割を果たすと共に、熱利用、発電、バイオ燃料など多様な利用技術の開発と普及がなされており、カーボンニュートラルの特徴から再生可能エネルギーの一つとして重要である。バイオマス利用技術の世界市場は大きいが、原材料の収集・運搬コストの低減や、食料と競合しない非食料バイオマスの転換技術などの課題がある。これらの解決に向けて、我が国が強みを有する植物科学、バイオテクノロジーを活かし、バイオマス利用技術の研究開発によるブレークスルー創出、イノベーション創出、さらに、地産・地消型エネルギー需給システムの確立など普及拡大に向けた各種施策を総合的に展開する必要がある。

 課題の設定された領域は、

  • 原材料の収集・運搬コストの低減: エネルギーの地産地消という感じ?
  • 食料と競合しない非食料バイオマスの転換技術: 耕地以外でのバイオマス生産?
  • など: その他少々

 対応する研究分野は、

  • 植物科学
  • バイオテクノロジー
  • バイオマス利用技術の研究開発
  • 地産・地消型エネルギー需給システム

とのことですので、遺伝子組換え+植物科学+発酵技術+プラント製造技術の分野の実用化につながる研究開発に向こう10年間、重点的に研究資金を配分する見込み。

 同じ植物科学でもバイオマス実用化以外の分野は先細りになる模様。私はそちら方面に行く予定はないので先の見通しは明るくない。

 ともあれ、こういう未来予想もある。毎日新聞より。

文科省:「未来予測図」 2031年に宇宙観光、24年にマイカー消える

 文部科学省科学技術政策研究所は10日、今後30年間に実現しそうな新技術を発表した。大学や企業など専門家の意見を踏まえたもので、環境技術や宇宙分野での進展が期待されているのが特徴だ。
 調査は71年から5年おきに行われ、今回で9回目。分野の異なる専門家135人が12分科会をつくり、解決すべき技術課題として計832項目を列挙。2040年までの実現性などを有識者にアンケート調査し、延べ2900人が回答した。
 地球温暖化問題を受け、環境・エネルギーや情報通信の技術に関心が集中。また、「自動車の大部分はリースか共有」(24年)となりマイカーは消えるなど、人々の価値観も変わると予測している。しかし、温暖化の国際交渉で25年に「温室効果ガス半減に向け、途上国を含めた計画策定が実現」と悲観的な結論になった。
 宇宙開発では、31年に宇宙旅行が広まり、40年には有人月面基地が現れる。
 技術発展のため「関係を強化すべき国」には、従来の欧米に加えて中国を挙げる意見が増え、ここでも環境問題などで中国の存在感の大きさが反映した。
 予測には「政策提言や制度設計の際に社会的重要性や国内外での影響などを詳しく分析し、問題点を把握する技術」が33年に実現するという結論も。 「政治を科学する」と訴えた鳩山由紀夫前首相の登場は20年以上早かったようだ。
 一方で、5年前の前回調査に比べ、原子力発電の解体技術や地震予知分野で数年ずつ実現が遅れるという予測になった。【山田大輔】

 この種の予想が当たることはあまりないと思うので、あと14年で”「自動車の大部分はリースか共有」(24年)となりマイカーは消える”ということはないだろうけど・・・まあ都市住民は良いけど地方では日常の足が無くなるという意味なので、これは無理でしょうから。ともあれ、自家用車の台数は多分減るだろうし、電気自動車に転換されるとなると、”バイオマス”をどう利用するのかも考えておかなくてはいけない。

 エネルギー源を分散させるという意味では電気自動車が最も有利だろうから、バイオマス燃料の開発ターゲットも、いずれ電気自動車に代替されてしまう乗用車向けのガソリン代替燃料よりは、物流を支えるディーゼルエンジン向けの軽油代替燃料や、ジェットエンジン向けのケロシン代替燃料を指向する方が良いだろう。となると、植物に蓄積する物質も、アルコール発酵させてから燃料を得るデンプンやセルロースよりも脂質の方がよいことになるだろう。たとえばジャトロファやナタネ、ダイズ、ある種の藻類といったところ。イネ科作物の出番はなさそうだ。

 油量作物の多くは乾燥帯に適応している。ジャトロファは日本で栽培するのに向いた植物ではなさそうだし、ダイズも雨の多い日本の気候にはあまり向いていない。となるとあとはナタネくらいだろうか。しかし、ナタネの研究は日本ではあまり進んでいるとは言えない。さてどうしたものか。

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2009年11月28日 (土)

GPUコンピューティングの時代がやってくる・・・か?

長崎大学の濱田先生がゴードン・ベル賞受賞ということで、ニュースになっています。丁度、スパコンの事業仕分けが行なわれた時期なので注目を集めているようです。

安価スパコン:「事業仕分け」どこ吹く風 3800万円で完成 長崎大助教らゴードン・ベル賞 

 東京・秋葉原でも売っている安価な材料を使ってスーパーコンピューター(スパコン)を製作、演算速度日本一を達成した長崎大学の浜田(剛つよし) 助教(35)らが、米国電気電子学会の「ゴードン・ベル賞」を受賞した。政府の「事業仕分け」で次世代スパコンの事実上凍結方針が物議を醸しているが、受 賞は安い予算でもスパコンを作れることを示した形で、議論に一石を投じそうだ。

 同賞は、コンピューターについて世界で最も優れた性能を記録した研究者に与えられ「スパコンのノーベル賞」とも呼ばれる。浜田助教は、横田理央・ 英ブリストル大研究員、似鳥(にたどり)啓吾・理化学研究所特別研究員との共同研究で受賞。日本の研究機関の受賞は06年の理化学研究所以来3年ぶりという快挙だ。

 浜田助教らは「スパコンは高額をかけて構築するのが主流。全く逆の発想で挑戦しよう」と、ゲーム機などに使われ、秋葉原の電気街でも売られている、コンピューターグラフィックス向け中央演算処理装置(GPU)を組み合わせたスパコン製作に挑戦した。

 「何度もあきらめかけた」というが、3年かけてGPU380基を並列に作動させることに成功。メーカーからの購入分だけでは足りず、実際に秋葉原でGPUを調達した。開発費は約3800万円。一般的には10億~100億円ほどかかるというから、破格の安さだ。そしてこのスパコンで、毎秒158兆回 の計算ができる「演算速度日本一」を達成した。

 26日の記者会見で事業仕分けについて問われた浜田助教は「計算機資源は科学技術の生命線。スパコンをたくさん持っているかどうかは国力にもつながる」と指摘。一方「高額をかける現在のやり方がいいとは言えない。このスパコンなら、同じ金額で10~100倍の計算機資源を得られる」と胸を張った。 【錦織祐一】

ですが、「ゴードン・ベル賞」にも色々な部門がある様子。濱田先生の受賞された部門は「コストパフォーマンス部門」なので、事業仕分けで採り上げられたような絶対性能の追求と同一視してはいけません。

私はスパコンに詳しいわけではありませんが、日ごろパソコンをいじって、なおかつスパコンを計算機資源として利用しているユーザー(Blastなどホモロジーサーチをする人なら誰でもですが)としては、昨今の議論を見ていると奇妙なすれ違いを感じます。

計算機科学の発展には、絶対性能の追求もコストパフォーマンスの追及も大切なのだということで、ともに文部科学省のファンドで、理化学研究所と一緒にすすめめられてきた経緯があるようです。これを、皮肉と見る向きもあるでしょうが、絶対性能とコストパフォーマンスは必ずしも対立する概念ではなく、それぞれの研究成果がいずれは相互に波及しあうと考えるべきでしょう。それは車の両輪なんです。

しかし、3年かけて3800万円でGPUを買い集めなくてはいけなかったというのは結構悲しいものがあります。3年あると、GPUの性能は数倍に上がってしまいますし、同じ規格の製品であれば2年で半値になります。・・・とろとろしてると、すでに組み上げたシステムのGPUと同じ規格の製品が市場で手に入らないという目にあいますが、はしりの製品を買うと調達コストが倍になるという、難しい選択を強いられます。

つまり、2-3倍のコストをかければ1年で必要な数のGPUが調達できたでしょうが、それでは「コストパフォーマンス部門」では受賞できなかったかもしれないと・・・。予算が沢山付いて、さっさとスパコンが出来上がっていたら、かえって評価が高まらなかったかも・・・。

GPUコンピューティングは分岐計算が多いのは苦手といわれているように、分野を選ぶようです。かといって汎用機をスパコン化する「汎用京速計算機」のコストパフォーマンス自体にはちょっと首をかしげるものがあります。

”国策として自力でCPUを開発する能力を維持したい、これはコストではなく投資なのだ”というのなら、それも分からなくはありません。GPUコンピューティングにしてもTOP500に出てくるスパコンにしても、インテルやAMDのようなアメリカの企業が開発したチップを使ったものがほとんどで、地球シミュレーターのSX-9のように単一CPUあたりの性能を追求した独自路線のマシンはあまりありません(中国のマシンも独自路線のようです)。そういう意味では、GPUコンピューティングといえどもNVIDIAのチップを使う限り、野依先生流に言えばアメリカへの隷属ということになってしまうでしょう。

いっそ、昨年スパコン世界一になっていたIBMのRoadrunnerで使われていたCellプロセッサ(ソニー、東芝、IBMの共同開発)のようなものを、「開発後はゲーム機や家電にでも入れて、ばんばん売っていいから。でも売り上げの0.5%は国に返してね」といって、メーカーに資金援助した方が良いかもしれません。CPUはスケールメリットが出ないと投資が回収できませんから、GPUコンピューティングのように最初から汎用品を使うのでなければ、新規開発するCPUを”沢山売って汎用品にする”という方法しかないでしょう。それなら、パソコン用やサーバー用のCPUよりも、携帯端末組込み用のCPUの方が沢山売れますのでスケールメリットが出ます。

# IBMのBlue geneは既に組込み用のPowerPC 440ベースの製品を使っている模様。

しかも、半導体の製造技術は3年もあれば回路の集積度が4倍に上がり、逆に消費電力が下がります。CPUの設計上の耐用年数を5年と考えると、汎用品のCPUの差し替えでメンテナンスできるのであれば運用コストも下げられ、装置の寿命も延ばせます。濱田先生も計算機の台数を問題にされていますが、安くなって台数を沢山作れれば計算機資源としてはそれだけ豊になります(1台のスパコン上で処理できる計算の数には制限がありますから、これを無駄と言ってはいけません)。

どなたか、ルネサスに資金提供して携帯端末用SuperHシリーズのブラッシュアップをしてスパコンに転用するというプランを立てて見ませんかね?単一チップとしては必要以上に多機能ですが、相当省電力になるし。

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2009年11月18日 (水)

[お詫びと訂正] 事業仕分けに対して意見募集、ではなく・・・

私、昨日のエントリーにおいて一つ、大きな誤解をしておりました。

原因は昨日、「文科省、仕分けの“反論”募集 政務三役が指示、HPで 」と言う見出しの記事を読んで事実誤認してしまったためです。今日、分子生物学会から次のようなメールを受け取り、さらに、なんだかしっくりこない感じがして考えてみたのですが・・・

日本分子生物学会 会員の皆様

重要なお知らせ 「行政刷新会議の競争的資金の評価について」

              特定非営利活動法人 日本分子生物学会
                    理事長    岡田 清孝

現在続行されている行政刷新会議の事業仕分け作業の中には、我々研究者にとって研究の支障につながる重大な変更となる可能性のあるものがあります。

<参考>
行政刷新会議ホームページへのリンク

http://www.cao.go.jp/sasshin/index.html

11月13日に行われた行政刷新会議の事業仕分け作業の内に、
事業番号3-20  競争的資金(先端研究)
事業番号3-21  競争的資金(若手育成研究)
事業番号3-22  競争的資金(外国人研究者招へい)
があり、評価コメントには頷けるものもありますが、評価結果はいずれも厳しく、競争的資金(先端研究)については「一元化も含めシンプル化」と「予算の縮減」を、競争的資金(若手育成研究) と競争的資金(外国人研究者招へい)については「予算の縮減」となっています。

これらの評価結果は直ちに来年度予算に反映すると思われます。
文科省の担当部署でも危機感を募らせており、研究者からの意見を求めています。

(文部科学省ホームページへのリンク)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/sassin/1286925.htm

意見のある方は、担当副大臣・政務官(中川正春・後藤斎)へのメール
(宛先: nak-got@mext.go.jp)で意見を連絡して下さい。
(様式自由、必ず「メールの件名(タイトル)」に事業番号、事業名を記入してください)とのことです。

また、文科省のホームページでは、意見送付の期限を「予算編成にいたる12月15日までに」としていますが、効果のあるのは、今週末までの意見分布だとのことです。

”意見送付の期限を「予算編成にいたる12月15日までに」としていますが、効果のあるのは、今週末までの意見分布だとのことです。 ”という情報は非常に重要ですが、このメールでも、「行政刷新会議の競争的資金の評価について」として、文部科学省が”行政刷新会議の評価に対する意見募集”をしているように読めます。

しかし、それは違うんです。

文部科学省の意見募集の表題は、

行政刷新会議事業仕分け対象事業についてご意見をお寄せください

・・・文科省の行なう「対象事業」に対する意見募集なんです。他省庁の業務に対して意見募集なんてできませんから、事業仕分けのコメントそのものに意見募集する訳が無い。

なので、メールで文科省に対して、事業仕分けのやり方がどうのとか、対象の選定方法が不明瞭とか、仕分け人の選定がけしからん、と言ってもノイズにしかならないんです。そうではなくて専門的な視点から、(事業仕分けの論点とコメントを意識しつつ)その事業の意義を強調する意見を寄せるのではなければ。

昨日の時点で新聞各社の報道が少ないと思っていたのですが、今日になって各誌で報道されています。しかも、

  • 仕分け事業の意見募集=文科省 (時事通信): これはまとも。
  • 事業仕分け、一般から意見募集…文科省 (読売新聞): ×
  • 文科省:仕分けに抵抗? HPで国民の意見募集  (毎日新聞): ×
  • 文部科学省、“事業仕分け”に関する意見募集ページを公開  (RBB Today): ×
  • 事業仕分けに反撃?文科省、HPで意見募集 (朝日新聞): ×

といった具合に事業仕分けに対する意見募集のように読めてしまいます。もし、あえて読者を誤読させるように誘導しているのであれば非常に悪質な報道です。

皆様も誤解のないようにご用心!

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2009年11月17日 (火)

事業仕分けに対して意見募集

「求む応援団」と言ったところでしょうか。文部科学省が行政刷新会議の事業仕分けに対する国民意見の募集をホームページでしています。

文部科学省の意見募集

行政刷新会議事業仕分け対象事業についてご意見をお寄せください

(募集期間は予算編成にいたる12/15まで、とありますが早めの方が文科省の理論武装に役立つでしょう)

新聞であまり取り上げられないところに新聞社の阿りを感じましたので、このblogではあえて取り上げます。

文科省、仕分けの“反論”募集 政務三役が指示、HPで

 文部科学省は16日、「廃止」など厳しい判定が相次ぐ行政刷新会議の事業仕分けの結果について、ホームページ(HP)で意見募集を始めた。川端達夫文科相ら政務三役が指示。ネットで“反論”を集め、年末の来年度予算の編成で巻き返しを図りたいとの思惑があるようだ。

 HPには、今月11日と13日に仕分け対象となった文科省の16事業と行政刷新会議の判定結果を記載。意見の提出先として副大臣と政務官のメールアドレスを明記しており、締め切りは12月15日。   

 文科省は募集の理由について「国民の声を財務省との折衝など予算編成に生かしていくため」と説明している。

  文科省の事業では、これまでに次世代スーパーコンピューター開発事業(来年度概算要求267億円)が「予算計上見送りに限りなく近い削減」とされたほか、 子どもの読書活動の推進事業などが「廃止」と判定された。省内では「短時間の議論での乱暴な判定だ」などと不満が高まっている。

2009/11/16 22:12   【共同通信】

事業仕分け対象のステークホルダーに研究者が多い文科省では、これは有効な対抗手段だと思います。一般のパブコメの場合も関連学会や業界団体などから意見が寄せられる場合もありますが、それもまた国民の意見の一つのかたちです。

「短時間の議論での乱暴な判定だ」という見解自体は間違っては居ないと思いますが、問題はむしろ一種の見せ物めいた議論のプロセスではなく、議論の結論です。短時間の議論だから判定が乱暴なのではなく、ものの見方自体がそもそも乱暴なものが混じっています。

”競争的資金(若手研究育成)”に対するコメント、

●若手研究者が安定して働き研究できる場所を見つけるための国の政策を若手にこだわらず再構築。

これなどは、研究者も何時まで若手で居られる訳ではないので、もっともな意見だと思いますが、今ある制度を縮める前に新しい施策を展開しないと、制度の乗り換えができません。

一方、

●ポスドクの生活保護のようなシステムはやめるべき。本人にとっても不幸。(本来なら別の道があったはず)。

こちらはまるで、”道を誤ってポスドクになってしまった”ような言いぶりが混じっています。この時代、ポスドクを経ずにテニュアにつけるなら僥倖というべき。それとも、科学を志すこと自体が人生の無駄遣いだとでも考えているのでしょうか。何なんでしょうかね、この俯瞰的な視座に立った大所高所からの議論は(・・・上から目線とも言う)。しかも匿名だし。

日頃から思うのですが、研究者は匿名では研究できません。論文を書くにしろ学会発表するにしろ、自分の名前でものを言います。つまり、研究者である限り、社会に対して自分の名前(責任)で情報発信をする宿命を負っているのだと私は考えています。それは、個人的な一種の思いこみに過ぎないかもしれませんが、それが私がこの私的なblogを実名で書いている理由です。

今回の意見募集は、研究者が自分の名前で行政にもの申す一つの機会です。状況は決して良くありませんが、ポスドクであれ、教授であれ、一人の国民として、そして一人の科学者として、公平な立場で意見を述べることができる希有の機会です。

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2009年7月13日 (月)

一つのダブルスタンダードが解消した

日本でも、”脳死は人の死である”・・・ということになった。

参議院で臓器移植法の改正案が成立した。参議院での議論の焦点や経緯については、議員の哲学を知る上で色々な見方ができそうだが、ともあれ衆議院の議決を受けてA案が採択された。

現行の臓器移植法は、臓器移植という一種の医療行為を行なう場合に限って、脳死を人の死としてきた。つまり、脳死状態のヒト(生物学的な意味での”人”)でもドナーとしての意思表示をしてこなかったヒトは、脳死状態でも”死んでいない”ことになり、臓器を提供しても良いという意思表示を行政的に認められる一定の方法で示したヒトのみが脳死状態になったときに、”死んだ”ことになっていた。

つまり、単純に

1.”亡くなった方の肉体 → では臓器移植の提供元になっていただきましょう”

ではなくて、

2.”脳が機能停止した方の肉体 → 臓器提供の意思がある場合のみ死亡と見做す → では臓器移植の提供元になっていただきましょう”

であったものが、単純に1.になった。

# 細かく見ていくと、脳死をヒトの死と見做す今回の改正では、年齢制限以外にも多くの制限要因が撤廃されたことになる。

今般の法改正では、医学的には同じ状態 -脳幹を含む全脳髄の不可逆的な機能喪失- であっても、肉体の状態を余所に、本人の意思を含めた周囲の社会的な環境によって生きていたり/死んでいたりという奇妙な状況は一応解消されるのだろう。

一方、これからの脳科学の発展如何では、脳死の定義がさらに変わってゆく可能性もある。脳の”不可逆的な”機能喪失とはどういうことか、脳死判定の対象部位は、「脳幹を含む全脳髄」か「脳幹」か、etc. そのあたりの議論は、今後の科学の発展を横目で見ながら深めていく必要があるだろう。

ともあれ、私の個人的な見通しでは、今後、再生医療が発展していけば、他人の臓器の提供を前提とした移植医療は再生臓器の移植と言う方向へ発展的に解消していくと考えている。そういう医療技術の発展の歴史的な流れを考えれば、この国が、そして日本国民が臓器提供という医療技術の一つの構成要素で、法律上の個人の死という重要な事柄を定義するという、奇妙で非常にad hocなものの見方から開放されたことは大変喜ばしい。

一方で、この法改正で”脳死判定”の持つ社会的な意義もまた大きく変わろうとしている。まだ心臓の動いている暖かな肉体が、法律上は既に死亡している遺体となった場合、その状態を維持する措置はもはや”医療”ではなくなる。これまでは延命措置として医療行為の一部と位置づけられていたものが、脳死判定をすることで病院の行なうべき業務の範囲から外れる可能性もある。退院した場合でも保険の適用対象から外れるのであれば家族の経済的な負担の問題もでてくるだろう。法律上の個人の死の定義は、行政的な影響範囲も大きいのだ。医師による「脳死判定の錯誤」に対する訴訟も起きては欲しくない。

# 議員は国民の代表なので、こういう影響の大きな決定を行なう場合でも、役所とは違って”パブリックコメント”は無いのだな。

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2009年7月 6日 (月)

リスク評価が有効なのは合理的なコストでデータが入手できる場合に限られる

どんなコストを払ってでもデータを入手することに意味があるとは限らない。”時間”というリソースも含めて、合理的なコストで入手できないデータは、リスク評価には使えない。

食品安全委の人事案を野党否決、科学界が批判

 内閣府食品安全委員会の人事案を民主党など野党4党が参議院で否決したことに対し、科学界から批判が相次いでいる。

 委員の候補者が4年前、輸入牛肉の安全性を判断した科学的評価を、「評価の姿勢に問題がある」として否決の理由にしたためだ。近く政権を握るかもしれない党からの政治的圧力に、科学者側は「中立的な評価が損なわれる」と危機感を強めている。

 問題の人事案は、吉川泰弘・東京大教授を委員長含みで同委員に起用するもので、6月5日に否決された。吉川教授は2005年、同委員会のプリオン 専門調査会座長として、米国・カナダ産牛肉の輸入再開を条件付きで認める答申案をまとめた。民主党は、調査会が「データに不明点が多く、厳密に評価するの は困難」としながら答申案をまとめた点などを問題視した。

 しかし、食品安全委員会は、有害物質などがどのくらいの確率で悪影響を与えるかを科学的に評価する機関。日本学術会議の金沢一郎会長は先週、異例の談話を発表し、「十分とは言えないデータで確率論的に結論を出さねばならないことがある。

 データ不足を理由に結論を先送りするなら、科学の入らない主観的な判断になってしまう」と批判した。同委員会の小泉直子委員長(公衆衛生学)も1日、「評価の独立性と中立性が守られなければならない」との談話を出した。

 民主党の筒井信隆・ネクスト農相は「データが少ないなら集めるのが当然だ。学術会議の意見も一つの考えで、絶対ではない」と話している。

(2009年7月6日14時19分  読売新聞)

食品安全性に限らず、”リスク評価”はそれ自体、「科学的な評価手順に従って、合理的なコストの範囲で入手可能なデータから確率論的にリスクの大きさを計る」という性質がある。緊急時には少ない時間的リソースでの評価が問われ、結局は時間との戦いになる。

例えば、新型インフルエンザの発生時に、その対応を決めるためのリスク評価を延々とやっていたらどうなるだろうか?緊急性を勘案しないリスク評価は役に立たない可能性が高い。

食品安全委員会のリスク評価は、たしか標準処理期間が決まっていない。「データが少ないなら集めるのが当然だ。」と言っていられるかどうかは、現実に起こっている諸問題とどう折り合いを付けるか?という匙加減の問題でもある。いつまでも評価を長引かせると、実際の問題としては、リスク管理側の官庁の行政判断に影響を与えることになる。

例えば、仮に食品安全委員会が”十分なデータが収集されていないので、判断は保留する”として評価結果を公表しなかったらどうなるだろう?リスク管理側の官庁はどのように対応できるだろうか。BSE問題のケースで考えれば、それは農水省が”米国産牛肉の暫定的な輸入中止”をいつまで続け得ただろうか?ということでもある。

結局、評価結果待ちで無期限に輸入禁止を続ける訳にもいかず、評価結果を待たずに輸入するわけにもいかず・・・(評価に必要な情報の提供を米国政府に求めることはできたかもしれないが)。

いずれにしても、リスク管理を行なう官庁が対外的な説明責任を問われることになるだろう。”ネクスト農相”ならば、そうなった場合でも頑張れるのかもしれないが、リスク評価に必要なデータが入手できないという理由で評価結果の公表を無期限に延期するというカードを食品安全委員会に与えると、結局苦しむのはリスク管理を行なう官庁のトップだろう。

それはで結局、リスク評価をリスク管理から切り離せなくなってしまうのだが、その辺の理屈が分かっているのだろうか・・・。

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2009年3月10日 (火)

新産業創出

日本経済新聞より。

農業資源から新産業、農相が諮問会議で提案へ

 石破茂農相が10日の政府の経済財政諮問会議で提案する農業や農村の潜在力を使った成長戦略案が明らかになった。遺伝子組み換え技術をカイコに使ってつ くる人工血管や花粉症の影響を抑えるコメの開発といった「アグリ・ヘルス産業」の開拓を支援する。バイオ燃料の普及などとあわせて、農林水産業を基盤とし た6兆円規模の新産業の創出を目指す。

 アグリ・ヘルス産業はバイオ技術などを使って健康・医療分野に農林水産物を生かす考え方。(11:01)

記録はしておこう。もう一つ、朝日新聞から。

舛添氏、薬価など決める中医協の見直し示唆

2009年3月10日10時53分

 舛添厚生労働相は10日の閣議後会見で、診療報酬や薬価を決める中央社会保険医療協議会(中医協)について、「(国民から見て)すぐわからない、複雑な仕組みは見直した方がいい」と述べ、将来的な見直しを示唆した。

 舛添氏は「厚労省の役人のなかでも専門家以外わからない」と問題点を指摘。医療提供者、医療保険者、公益代表の20人を同省保険局が事実上統括している今の運営を、より国民が議論に参加しやすい形に改めるとともに、産業育成の視点も入れることが望ましいとの考えを示した。

 舛添氏は、製薬や医療機器など、同省の担当分野の産業育成に取り組む計画づくりを進め、3月中の取りまとめを目指している。政府の経済財政諮問会議でも、民間議員側から診療報酬体系の見直しを求める意見が出ており、舛添氏が打ち出す計画の中に同様の考えが盛り込まれる可能性がある。

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2009年2月24日 (火)

体細胞クローン家畜のリスク評価

本日は覚書のみ。体細胞クローン牛、クローン豚の食品安全性に関するリスク評価が終了した。読売新聞より。

クローン牛・豚は「食品として安全」

 内閣府食品安全委員会の専門調査会は24日、クローン牛や豚の食品としての安全性について、「通常の繁殖技術で生まれた牛や豚と同等の安全性がある」とする評価書案を了承した。

Click here to find out more! 3月中にも同委員会で正式決定し、国民から意見を募ったうえで、最終的な評価結果を厚生労働省に報告する。実際の流通については、厚労省と農林水産省が判断する。

 クローン牛・豚は、皮膚や卵管の細胞などの体細胞から作られる。しかし、死産と産後の死亡率が人工授精など従来の繁殖技術の5倍にあたる31%と高いことから、その安全性には懸念が示されていた。

 評価書案では、こうした死亡率の高さはクローン技術の完成度の問題とし、「6か月を超えると、健常に発育する」と指摘。通常の家畜と同じ遺伝情報を持ち、肉や乳の栄養成分、アレルギー誘発性なども変わらないとして、食用としての安全性に「差がない」と結論づけた。その子孫についても、「従来の繁殖技術による牛、豚と差異は認められない」としている。

 国内では昨年9月末までに、クローン牛557頭、クローン豚335頭が生まれている。しかし、農水省は消費者の混乱を避けるため、食用としての出荷は自粛を要請している。欧米でも流通を自粛しているため、国内では輸入品も含めて流通していないが、欧米の食品安全機関が最近相次いで「安全宣言」を出したため、流通の可能性が高まっている。

(2009年2月24日13時03分  読売新聞)
「体細胞」クローンだとちゃんと書いて欲しいものだ。作成方法が新規だというのが評価を行なった主な理由なのだろうから。今後は規制のルールがどうなるかに焦点が移ることだろう。

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2009年2月20日 (金)

不作為による危害に責任はないのか?

2011年にゴールデンライスをリリースする予定というレポートはこちら

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私は不勉強にしてヴァンダナ・シヴァという人物やその主張を良く知らない。

こちらの”Where Angels Fear To Send Trackbacks ”によれば、緑の革命への反対運動等を通じて有名になった”環境活動家”らしい。本人の著書を読めばよいのだろうが、私はもと育種家として、近代的な品種を攻撃する人物に間接的にせよ活動資金を供給する気にはなれないので、読むとしても図書館で借りて読むことになるだろう。

いずれにしても、品種そのものや育成技術と、それを社会に調和させるスキームとを混同して、多収品種そのものが貧困の原因になったとするような議論はいただけない。多収品種は近代的な営農スタイルの一つの構成要素に過ぎないし、その普及を止めたところで、それ以前と比べてだれも幸福にはなれない。

昨今の遺伝子組換え作物に対する反対運動を見ていると、具体的な危害に対する批判や、リスクに対する市民の恐れよりも、アンチ・テクノロジーという一種のイデオロギーを間接的な原動力にしているように思える。直接的な原動力はもちろんカネだろう。

反対の対象が何であれ、反対運動で生計を立てているプロフェッショナルの活動を純粋に金銭的な収支から見てみると良い。著名な活動家はどうやって生計を立てているだろうか?NPOなどの団体からのカンパや義援金に著書の印税、弁護士であれば訴訟の際に原告から支払われた弁護士費用もあるだろう。それが得られなければ、多くの時間を反対運動に費やすプロフェッショナルとしては生きていけない。

今年もISAAAのリポートが公表された。全世界の遺伝子組換え作物の作付面積は、昨年に引き続き、10%台の成長率を維持している。現実の農業生産に対して、遺伝子組換え作物に対する反対運動は、マスコミに露出して市民を惑わす以上の成果を挙げていないように思える。しかし、プロフェッショナルの活動家にとってもこれは好都合である。”仮想敵”が強大であるほど活動の意義は強調されるからだ。仮想敵は強大なほど良い。政府、モンサント、マイクロソフト、コカコーラなどの大企業、グローバリゼーション、地球温暖化、環境ホルモンにナノ粒子(ちょっと小さいか)、どれもなかなか手ごわそうだ。NPOがちょっと反対したくらいでめげてしまうような”仮想敵”が相手ではライフワークとして活動を継続できないのだから。

社会問題に対して百家争鳴の議論がある時、一方の極にプロフェッショナルの活動家が居れば、反対の極には何らかの研究者が専門家として存在する。つまり、ある意味では、我々のように技術開発を行なう分野の研究者のおかれている立場も、プロフェッショナルの活動家と相通じる点がある。それは、研究対象が解決しようとする問題が大きいほど研究の重要性を主張しやすい点だ。すぐに解決できる問題では研究が継続できないし、瑣末な問題では研究費がなかなかとれない。問題の重要性を社会や行政官にアピールして、長期的な取組みができるように説明することは、我々研究者にとっても重要だ。下世話な言い方をすれば、問題の解決が難しいほど長くメシの種になる。

しかし、プロフェッショナルの研究者とプロフェッショナルの活動家の間には決定的な違いがある。活動家はどこかに行って喋るか、本を書くだけでよいのだが、技術開発を行なう分野の研究者は最終的には問題を解決しなければならない宿命を負っていることだ。

本当にヴァンダナ・シヴァがゴールデンライスを批判する際に「そんなものはいらない。リンゴひとつ食べればビタミンは補えるもの」と言ったかどうかはわからない。リンゴでビタミンAを補給できないことは家庭科を学習した大抵の日本人知っていることだろう。全く黒影さんご指摘の通りだ。

単純な事実として、途上国では貧困から来るビタミンAの不足から、少なからぬ乳児が死亡し、人々が失明している(学齢前の子供の死亡率を23%押し上げているという推計もある)。WHOで取組んでいるビタミン欠乏に対する対策の筆頭がビタミンAであることからも、その重要性は伺える(たとえばこちら)。ブータンやネパールには国のビタミンA補給プログラムがあるというし、日本だって国民の栄養状態が悪かった時期には、給食で肝油が配られた時期がある。しかし、工業的に合成されたビタミンAを継続的に供給し続ける場合にさえも、それなりの社会的なコストがかかるのだ。

遺伝子組換えイネの良いところは、F1品種が主流のトウモロコシとは違って自家採取できることだ。ゴールデンライスの開発者は知的所有権を主張しないと言っている。もしそうであれば、ゴールデンライスが一般農家に普及すれば、工業的に生産されて供給されるビタミンAを部分的に代替することで供給コストを下げることができるし、場合によっては通常の米と同等のコストでビタミンAの所要量全量をまかなえる可能性だってある。

ヴァンダナ・シヴァが、途上国でビタミンA欠乏の影響を受けている2億5千4百万人の人々 の為にどんな対策をとっているのか私は知らない。しかし、もし本当に「そんなものはいらない。リンゴひとつ食べればビタミンは補えるもの」と言ったのであれば、彼女はビタミンA欠乏についてどれほどの知識を持っているのか非常に疑わしい。

そして、もし仮に、その心もとない根拠と、今だ実証されていない遺伝子組換え作物のリスクを盾にゴールデンライスの開発に水を注している一方で、ビタミンA供給プログラムを積極的に支援していないのであれば、実際にビタミンA欠乏に苦しむ人々に対して、不作為による危害を加えているのだということを知るべきだ。仮想的な未だ発生していないリスクと、現実に発生している危害に対する重み付けのバランスが著しく不適切なのだと。

# Golde riceの開発で寄付金を募ってないのだろうか。探してみよう。そして、定額給付金を寄付しよう・・・ま、政府の趣旨には沿わないが、途上国の支援にはなるだろう。

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2009年2月18日 (水)

カルタヘナ法施行5年目

遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物多の様性の確保に関する法律(略称はジュゲム法・・・ではなく、カルタヘナ法)は2004年2月19日より施行されている。

今年の2月19日で、施行から丁度5年目を迎える。関係各省では当然ご存知だろうが、カルタヘナ法の附則には次の規程がある。

(検討)
第七条
 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

検討の結果、特段の措置が必要ないのであればそれでも良いが、その前に検討の状況はどうなっているのだろう。「所要の措置」は検討の結果を踏まえて対応することになっているので、今後、関係各省で検討が始められることだろう。注意深く見守っていきたい。

# 当事者として参加はしたくない。

この5年間、遺伝子組換え作物の第一種使用については、農林水産省で、38回の生物多様性影響評価検討会(総合検討会)が開催されており(H21,1,21現在)、その下準備のために各総合検討会ごとに2回程度の農作物分科会が行われている。

遺伝子組換え作物の評価の観点は、生物多様性の保全に必要な要件について、遺伝子組換え生物(LMO)の特性+その使用方法を総合して、科学的観点から遺伝子組換え生物の特性を評価できるように定式化されており、評価過程のものの見方が大きくぶれないようになっている(カルタヘナ法施行後の評価済み作物はこちら)。

LMO自体の評価のポイントは、

1. 競合における優位性
2. 有害物質の産生性
3. 交雑性
4. その他の性質

である。

 これらの観点は、基本的にカルタヘナ法施行以前(1997〜2004年)に輸入されきたLMOに関する評価とそう異なるものではない。また、多くの遺伝子組換え作物の場合、

  1. もともとの作物が競合に弱いので野生動植物を駆逐することはない。
  2. 有害物質をほとんど生産しない(ナタネのエルシン酸など一部の例外はあるが、食用作物が有害物質を産生することはあまりない)。
  3. 日本在来の野生植物とは交雑しない(ダイズは例外。ただし交雑はするが、極めて希にしか発生しない。西洋ナタネと交雑する野生植物は知られていない)。
  4. その他の性質については、特に該当するものはない。

という評価であり、作物種としてはトウモロコシ、ダイズ、ナタネ。導入された遺伝子としては、Btトキシン(殺虫タンパク質)、EPSPS(除草剤耐性)、bar(除草剤耐性)。これらの組合せでは、上記の1.-4.については、今後も基本的な科学的評価結果が大きく変わることは余りないと予想される。

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 カルタヘナ法の施行から5年、それ以前の使用実績とあわせると、10年間以上に亘って科学的な観点から遺伝子組換え作物についての個別の評価を行ってきたのだから、そろそろこれまでの事例を鳥瞰的に評価してみる時期ではないだろうか。”シンクタンク(事務局) + 評価委員の先生(大学や独法)”で、いわゆるメタ・アナリシスを行い、流通と、一般ほ場での栽培について”特定の作物+遺伝子”の組合せについて包括的評価書をまとめてはどうだろうか。もっとも、隔離ほ場栽培に関しては、もう少し簡略な評価方法も可能だとは思うのだが、研究開発段階では色々な組換え体が作成されることから、今後とも個別評価が妥当だろう。

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