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2010年5月 7日 (金)

ネアンデルタール人からの浸透交雑は”遺伝子汚染”とは言わないのだね

現生人類への浸透交雑(introgression)の実例か?という論文。

Richard E. Green et al., “A Draft Sequence of the Neandertal Genome,” Science 328, no. 5979 (May 7, 2010): 710-722.   

新聞記事を引用すると、
(毎日新聞より)

ネアンデルタール人:ヒトと混血の可能性 ゲノムを解析

 ヒトと、ヒトに最も近い種で絶滅したネアンデルタール人のゲノム(全遺伝情報)を独米などの研究チームが比較した結果、過去に一部が混血し、ヒトにもネアンデルタール人に由来する遺伝子が残っている可能性があることが分かった。チームが7日発行の米科学誌サイエンスに発表した。【斎藤広子】

 独マックスプランク進化人類学研究所などの研究チームは、クロアチアで出土した約3万8000年前のネアンデルタール人3体の骨の化石の細胞核からDNAを取り出し、ゲノムを解析。アフリカ南部▽同西部▽パプアニューギニア▽中国▽フランスのヒト5人のゲノムと比較した。その結果、アフリカ人を除く 3人の方がネアンデルタール人のゲノムと一致する率がわずかに高かった。チームは、アフリカで誕生したヒトの一部が8万年前以降にアフリカを離れた後、ユーラシア大陸に広がる前に中東近辺でネアンデルタール人と混血した可能性があると指摘。「ヒトの遺伝子の1~4%はネアンデルタール人に由来している可能性がある」と推測している。

 これまでヒトの細胞内のミトコンドリアDNAの分析などから、ヒトの祖先はアフリカで15万~20万年前に誕生して以降、絶滅した他種と混血しな いまま、ユーラシア大陸を経て全世界に広まったという「アフリカ単一起源説」が主流だった。一方、ネアンデルタール人については、ヒトと共存する時期があったことや、両者の交流を示唆する石器が発見されていることから、混血の可能性も指摘されていた。

なお他社の見出しでは、

ネアンデルタール人、現生人類と交配  ナショナルジオグラフィックス
ネアンデルタール人、現代人にも遺伝子…10万~5万年前に交雑か  読売新聞
ネアンデルタール人の遺伝子、我々にも? ゲノムで解明  朝日新聞

となっている。ともあれ「現生人類と交配」という断言は言い過ぎ。ある前提条件に立って行った推定が事実によく一致するとしても、それはあくまでも推定でしかない。

 ともあれ、以前、現生人類とネアンデルタール人の間で、母性遺伝するミトコンドリア・ゲノムを比較した論文があったが(著者は今回の論文と一緒)、その研究で明らかにされた範囲では、ネアンデルタール人と同じミトコンドリアゲノムの型は、現生人類からは見つかっていない。・・・少なくともネアンデルタール人の女性を母とした現生人類の祖先が居た痕跡は見られなかったということだった。

 そして今回の論文では、現代のアジア人、ヨーロッパ人の核遺伝子の1-4%はネアンデルタール人に由来している可能性があると推定している。

 これら両方の論文の整合性を考えると、もしかしたらネアンデルタール人の父と、現生人類の祖先の母のカップルが居たかもしれない・・・もし幸福な結婚であったなら、だけれども・・・という推定ができそうだ。そして、そういった結婚のイベントはただ一回ではなかっただろうと。

 ところで、誰しも自分自身のことを悪く言いたくはないからだろうか。新聞各社とも、かつて生じていた(かもしれない)近縁種からの浸透交雑(introgression)を”遺伝子汚染”とは言わないのだな。これは一種のダブルスタンダードではないだろうか。

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2010年1月14日 (木)

ダイズ・ゲノムシーケンス完了

 08年12月にダイズ・ゲノムのドラフトシーケンス公開についてのエントリーを書いた。今回は、完成版がNatureで発表されたと言うニュース。論文はこちら

  • Jeremy Schmutz et al., “Genome sequence of the palaeopolyploid soybean,” Nature 463, no. 7278 (January 14, 2010): 178-183, doi:10.1038/nature08670. 

ダイジェストは新聞でどうぞ。毎日新聞より。

大豆ゲノム:理研など日米国際チームが解読 品種改良、効率化に期待

 大豆のゲノム(全遺伝情報)を、理化学研究所植物科学研究センター(横浜市)など日米の国際チームが解読し、14日付の英科学誌ネイチャーに発表 した。たんぱく質を作り出す遺伝子は4万種を上回り、多様な生命活動を営んでいることをうかがわせている。異常気象に強い品種や収量の多い品種などの育種が効率的に進むと期待される。

 解読によると、ゲノムの大きさを示す化学物質「塩基」の数は約11億対で、イネの約4億対より大きかった。一方、遺伝子は、最新の研究で約4万3000種類といわれるヒトを上回る4万6430種類だった。

 大豆は世界で年間約2・3億トン収穫され、イネ、小麦、トウモロコシに次ぐ主要作物だ。また、家畜飼料やバイオ燃料の原料としても使われている。

 日本の責任者を務めた理研の桜井哲也・ゲノム情報統合化ユニットリーダーは「2万種を超えるマメ科植物の進化を知る手がかりになるほか、地球規模の食糧難や環境問題の解決に役立つ」と話す。【元村有希子】

 論文のエッセンスを補足すると、ゲノムサイズは1.1 Gbp、遺伝子数は46,430個、古い倍数体の痕跡を留め、予測される遺伝子の78%は染色体の端部に座乗する。倍数化の時期は5千6百万年前, 1千3百万年前と推定され、遺伝子の75%はマルチコピーになっている。

 ショットガンシーケンスで解析された(今のところ)最大の生物のゲノムだろう。特徴は、論文の表題通り、何と言っても"palaeopolyploid"(古倍数体)という性質だろう。染色体自体の重複と、染色体内部の重複が複雑に織りなすゲノムの迷路は、断片的なシーケンスを吐き出すタイプのスーパーシーケンサーでは歯が立たない。long readできるシーケンサーが出てくるまでは、階層的ショットガンが最善の戦略だろう。

 これでようやくアソシエーションマッピングなどの機能解析とリシーケンシングによる多様性解析の基盤が整ったことになる。育種の効率化はそれからのお話。

# 土地の測量(=ゲノムのシーケンス)が終わった段階で、建物(=品種)がすぐにできる訳はないでしょ?

 これまでミヤコグサをマメ科のモデル植物と呼んできたが、ゲノム情報に関しては、もうダイズの方が先行してしまった。トランスフォーマントを作って維持管理する分にはまだミヤコグサに分があるけれども。

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2010年1月 7日 (木)

RNAウイルスの遺伝子がヒトゲノムに取り込まれて機能していた。

 遺伝子治療などヒトの形質転換に使われるウイルスベクターは、染色体に組み込まれるレトロウイルス型のベクターが使われる。これに対して、一過性の発現ベクターとしては神経細胞指向性のヘルペスウイルス(HHV)やアデノウイルス(AdV)などDNAウイルスや、RNAウイルスであるセンダイウイルス(SeV)が使われる。
 レトロウイルス型のベクターは染色体組み込みの際にゲノムの遺伝子を破壊するなどの悪さをして、時に細胞をがん化させることがあるので、最近はそれよりも安全性の高いHHVやAdVに注目が集まっている。一方SeVなどのRNAウイルスはゲノムがRNAであることから、逆転写されない限りヒト・ゲノムに組み込まれることはないと考えられている。
 もともと、RNAウイルスや内在性のmRNAの逆転写自体が、内在性のレトロウイルス由来の逆転写酵素活性がある場合くらいにしか起きないので、RNAウイルスがヒトゲノムに取り込まれ、生殖系列を経由して遺伝し、しかもヒト集団内に拡散していく現象は非常に希なイベントであると考えられる。今日のニュースは、そんな希な現象。

ヒトゲノムにRNAウイルス発見=4000万年前に感染か-大阪大

 ヒトの全遺伝情報(ゲノム)の中に、RNAウイルスの遺伝子が取り込まれていることを大阪大の朝長啓造准教授らが発見した。4000万年以上前に感染した痕跡とみられ、ウイルスと人類が互いに関連しながら進化してきた謎を解明する手掛かりになるという。7日付の英科学誌ネイチャーに発表した。
 生物は感染したレトロウイルスの遺伝子を取り込み、自らのゲノムを多様化させてきた。現在まで残ったこれらの遺伝子は「ウイルス化石」と呼ばれるが、レトロウイルス以外は見つかっていなかった。
  朝長准教授らは、RNAウイルスの一種で脳神経細胞に感染しやすいボルナウイルスの遺伝子の一部が、ヒトやアフリカゾウ、マウスなど哺乳(ほにゅう)類のゲノムに存在することを新たに発見。ヒトの祖先が枝分かれした4000万年前までにこのウイルスに感染し、ゲノムに取り込まれた可能性が高いことが分かった。
 朝長准教授は「ボルナウイルスの感染の仕組みが分かれば、遺伝子治療に応用できる。神経細胞に外部から遺伝子を導入する際の運搬役など、新しい利用法の開発につながるのではないか」と話している。(2010/01/07-06:56)

 オリジナルの論文はこちら。

Masayuki Horie et al., “Endogenous non-retroviral RNA virus elements in mammalian genomes,” Nature 463, no. 7277 (January 7, 2010): 84-87, doi:10.1038/nature08695.

 しかし、HHV6がヒトのゲノムに組み込まれている希なイベントもあるようなので(PMID: 10477678)、「レトロウイルスではない」というのがこの研究の特徴ではなく、やはりRNAウイルスの遺伝子が組み込まれているというところが特徴なのでしょう。

 植物ウイルスにはRNAウイルスが多いのと、生殖系列の細胞の分化が動物よりもずっと遅いので、同じような現象はより見つかりやすい条件が揃っています。
# たしかイネ・ゲノムにはツングロ・ウイルスの化石が埋まっていたと記憶しております。

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2009年12月 2日 (水)

海水の酸性化で恩恵を受ける生物

Science magazinのニュースより。

Acidic Oceans May Be a Boon for Some Marine Dwellers

By DeLene Beeland
ScienceNOW Daily News
1 December 2009

最近、海水が酸性化するとサンゴや貝の中には、骨格や殻を上手く作れなくなるということが報告されている。サンゴや貝殻の主な成分は炭酸カルシウムなのだから、海水中のCO2濃度が上がると、かえって原材料の調達が楽になって骨格や殻が分厚くなるのかと思ったらそうでもなかったらしい。

一方、地球の歴史的なスケールでは大気中のCO2濃度が現代の10倍くらい高かった時期があった。約5億4500万年前から約5億0500万年前までのカンブリア紀のことである(*)。海水中のCO2濃度もさぞ高かっただろうに、生物相は非常に豊かだった時代だ(例えば、アンモナイトや三葉虫)。

今回のニュースは、ロブスターやカニのような甲殻類の中には水中のCO2濃度を10倍くらい上げると外骨格が分厚くなるものが居るというもの。捕食者に対する防御能力が上がり、同時にハサミが硬くなるので餌をとるのにも有利だ。外骨格も炭酸カルシウムでできているのだが、サンゴや貝との反応の違いは何なのだろう。CO2濃度に対するカルシウムポンプの反応の違いなのだろうか。

# アンモナイトや三葉虫の絶滅は、これと逆の現象が原因だったりして。

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2009年11月28日 (土)

GPUコンピューティングの時代がやってくる・・・か?

長崎大学の濱田先生がゴードン・ベル賞受賞ということで、ニュースになっています。丁度、スパコンの事業仕分けが行なわれた時期なので注目を集めているようです。

安価スパコン:「事業仕分け」どこ吹く風 3800万円で完成 長崎大助教らゴードン・ベル賞 

 東京・秋葉原でも売っている安価な材料を使ってスーパーコンピューター(スパコン)を製作、演算速度日本一を達成した長崎大学の浜田(剛つよし) 助教(35)らが、米国電気電子学会の「ゴードン・ベル賞」を受賞した。政府の「事業仕分け」で次世代スパコンの事実上凍結方針が物議を醸しているが、受 賞は安い予算でもスパコンを作れることを示した形で、議論に一石を投じそうだ。

 同賞は、コンピューターについて世界で最も優れた性能を記録した研究者に与えられ「スパコンのノーベル賞」とも呼ばれる。浜田助教は、横田理央・ 英ブリストル大研究員、似鳥(にたどり)啓吾・理化学研究所特別研究員との共同研究で受賞。日本の研究機関の受賞は06年の理化学研究所以来3年ぶりという快挙だ。

 浜田助教らは「スパコンは高額をかけて構築するのが主流。全く逆の発想で挑戦しよう」と、ゲーム機などに使われ、秋葉原の電気街でも売られている、コンピューターグラフィックス向け中央演算処理装置(GPU)を組み合わせたスパコン製作に挑戦した。

 「何度もあきらめかけた」というが、3年かけてGPU380基を並列に作動させることに成功。メーカーからの購入分だけでは足りず、実際に秋葉原でGPUを調達した。開発費は約3800万円。一般的には10億~100億円ほどかかるというから、破格の安さだ。そしてこのスパコンで、毎秒158兆回 の計算ができる「演算速度日本一」を達成した。

 26日の記者会見で事業仕分けについて問われた浜田助教は「計算機資源は科学技術の生命線。スパコンをたくさん持っているかどうかは国力にもつながる」と指摘。一方「高額をかける現在のやり方がいいとは言えない。このスパコンなら、同じ金額で10~100倍の計算機資源を得られる」と胸を張った。 【錦織祐一】

ですが、「ゴードン・ベル賞」にも色々な部門がある様子。濱田先生の受賞された部門は「コストパフォーマンス部門」なので、事業仕分けで採り上げられたような絶対性能の追求と同一視してはいけません。

私はスパコンに詳しいわけではありませんが、日ごろパソコンをいじって、なおかつスパコンを計算機資源として利用しているユーザー(Blastなどホモロジーサーチをする人なら誰でもですが)としては、昨今の議論を見ていると奇妙なすれ違いを感じます。

計算機科学の発展には、絶対性能の追求もコストパフォーマンスの追及も大切なのだということで、ともに文部科学省のファンドで、理化学研究所と一緒にすすめめられてきた経緯があるようです。これを、皮肉と見る向きもあるでしょうが、絶対性能とコストパフォーマンスは必ずしも対立する概念ではなく、それぞれの研究成果がいずれは相互に波及しあうと考えるべきでしょう。それは車の両輪なんです。

しかし、3年かけて3800万円でGPUを買い集めなくてはいけなかったというのは結構悲しいものがあります。3年あると、GPUの性能は数倍に上がってしまいますし、同じ規格の製品であれば2年で半値になります。・・・とろとろしてると、すでに組み上げたシステムのGPUと同じ規格の製品が市場で手に入らないという目にあいますが、はしりの製品を買うと調達コストが倍になるという、難しい選択を強いられます。

つまり、2-3倍のコストをかければ1年で必要な数のGPUが調達できたでしょうが、それでは「コストパフォーマンス部門」では受賞できなかったかもしれないと・・・。予算が沢山付いて、さっさとスパコンが出来上がっていたら、かえって評価が高まらなかったかも・・・。

GPUコンピューティングは分岐計算が多いのは苦手といわれているように、分野を選ぶようです。かといって汎用機をスパコン化する「汎用京速計算機」のコストパフォーマンス自体にはちょっと首をかしげるものがあります。

”国策として自力でCPUを開発する能力を維持したい、これはコストではなく投資なのだ”というのなら、それも分からなくはありません。GPUコンピューティングにしてもTOP500に出てくるスパコンにしても、インテルやAMDのようなアメリカの企業が開発したチップを使ったものがほとんどで、地球シミュレーターのSX-9のように単一CPUあたりの性能を追求した独自路線のマシンはあまりありません(中国のマシンも独自路線のようです)。そういう意味では、GPUコンピューティングといえどもNVIDIAのチップを使う限り、野依先生流に言えばアメリカへの隷属ということになってしまうでしょう。

いっそ、昨年スパコン世界一になっていたIBMのRoadrunnerで使われていたCellプロセッサ(ソニー、東芝、IBMの共同開発)のようなものを、「開発後はゲーム機や家電にでも入れて、ばんばん売っていいから。でも売り上げの0.5%は国に返してね」といって、メーカーに資金援助した方が良いかもしれません。CPUはスケールメリットが出ないと投資が回収できませんから、GPUコンピューティングのように最初から汎用品を使うのでなければ、新規開発するCPUを”沢山売って汎用品にする”という方法しかないでしょう。それなら、パソコン用やサーバー用のCPUよりも、携帯端末組込み用のCPUの方が沢山売れますのでスケールメリットが出ます。

# IBMのBlue geneは既に組込み用のPowerPC 440ベースの製品を使っている模様。

しかも、半導体の製造技術は3年もあれば回路の集積度が4倍に上がり、逆に消費電力が下がります。CPUの設計上の耐用年数を5年と考えると、汎用品のCPUの差し替えでメンテナンスできるのであれば運用コストも下げられ、装置の寿命も延ばせます。濱田先生も計算機の台数を問題にされていますが、安くなって台数を沢山作れれば計算機資源としてはそれだけ豊になります(1台のスパコン上で処理できる計算の数には制限がありますから、これを無駄と言ってはいけません)。

どなたか、ルネサスに資金提供して携帯端末用SuperHシリーズのブラッシュアップをしてスパコンに転用するというプランを立てて見ませんかね?単一チップとしては必要以上に多機能ですが、相当省電力になるし。

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2009年11月25日 (水)

トランス脂肪酸に表示義務?

ヒトの介入研究では、飽和脂肪酸を含む食事と同様に、トランス脂肪酸を含む食事の摂取は、血中LDL コレステロールを増加させ、その影響は直線的な用量反応関係であることが示された。トランス脂肪酸の高摂取は、虚血性心疾患のリスクを増大させる可能性がある、とのこと。(EFSAのレポートより)

消費者担当大臣がなんだか、がんばっておいでの様子。

トランス脂肪酸、含有量表示検討へ…消費者相  

マーガリンなどに含まれ、大量に摂取すると心臓疾患のリスクを高めると言われるトランス脂肪酸について、福島消費者相は24日、閣議後の記者会見で「含有量の表示を食品の成分表示で義務づけるよう、消費者庁で検討する」と述べた。
 トランス脂肪酸は、悪玉コレステロールを増加させる一方で、善玉コレステロールを減少させることから、欧米などでは含有量が規制されており、「国内でも規制すべきだ」という声が消費者団体などから上がっていた。福島消費者相は「日本人の食生活では直ちに影響はないと言われているが、啓発のためにも表示する方向で業界からも意見を聞いていきたい」とした。
(2009年11月24日11時41分  読売新聞)

トランス脂肪酸の食品としてのリスク評価は食品安全委員会が行っており、既に評価結果を公表しています(PDF)。これによると、

今回の食品安全委員会の調査結果から、日本人一日当たりのトランス脂肪酸摂取量は、食品群別摂取量から推計(積み上げ方式)すると平均0.7g(摂取エネルギー換算では約0.3%)で、食用加工油脂の生産量から推計すると平均1.3g(同約0.6%)でした。これらの値は、総エネルギー摂取量の1%未満となりました。ただし、これらの推計は、国民健康・栄養調査の平均値を使用しているため、個人のばらつきを把握することは困難です。脂肪の多い菓子類や食品の食べ過ぎなど偏った食事をしている場合では平均値を大きく上回る摂取量となる可能性はありますが、現時点では、その程度について予断できません。
 したがって、消費者の健康保護の観点から、今後とも、日本人(又は日本での)の摂取量や各摂取レベルにおける健康への影響等に関する国内外の新たな知見を蓄積していくことが必要であると考えられます。

平均的な食事を取ってる限り特段のリスクは無いけれども、取りすぎると油断できないよ、とのことで、福島大臣の認識とそう違いはない模様。

しかし、”啓発のためにも表示する方向”というのはどうなんだろう?食品表示の法的根拠はJAS法と食品衛生法。前者は消費者の選択の自由のための表示、後者は健康の保護に関わる表示を規定している(わかりやすい解説はこちら)。なので、啓発っていうのはどちらなんだろうか。

食品安全委員会では、知見の集積は必要としつつも、健康の保護という観点では特に問題視していないので、食品衛生法を根拠にするのは難しいように思う。

さてそこで、日本人の虚血性心疾患による死亡率に関する統計を見ると、 北畠顕ほか「虚血性心疾患の一次予防ガイドライン」2006年改訂版によれば、1997-2003の間、”旧ソビエト連邦の構成国ならびに東欧・北欧の死亡率が上位を占め,ついで西欧・北米の先進諸国が続いている.これに対し日本の死亡率は先進国の中で最も低く,東欧・北欧の1/8~1/10,西欧・北米の1/5 に過ぎない.”とある。

つまり、これらの報告から言えることは、

  • 日本人一日当たりのトランス脂肪酸摂取量は、米国の1/4-1/8、ギリシャと同等か1/2程度に過ぎない。
  • 日本人の虚血性心疾患による死亡リスクは先進国中最低水準で西欧、北米の1/5程度。

ということであって、科学的見地からは、食品中のトランス脂肪酸に対して何らかの対策を執っても平均的な国民の健康の維持向上に特段の効果が見込める状況にはない、と言って良いだろう。

# ここまで書いて、以前FoodScienceに国立医薬品食品衛生研究所の畝山さんが似たような話を書いていたことを思い出した。こちら

私、狭心症持ちです。つまり、冠動脈で動脈硬化がおこって心筋への血液の循環が悪くなって治療を受けています。ちなみに、牛肉はあまり食べません。マーガリンは滅多に食べません。デニッシュのようなパンもほとん食べないので、ショートニングも口にしません。

ちなみに、虚血性心疾患の要因としては、 北畠顕ほか「虚血性心疾患の一次予防ガイドライン」2006年改訂版の”6.精神保健”の項にによれば、

 健康に影響を及ぼすストレス要因としては,仕事の負荷,責任などの仕事の要求度,仕事を行なう上での裁量度や自己能力の発揮などの仕事のコントロール,および職場の人間関係としての上司,同僚の社会的支援がある.
 特に仕事の要求度が高く,仕事のコントロールが低い職場で精神的緊張度が高く,健康問題が生じやすい.さらに,職場での上司・同僚の支援が低いことがもっとも問題を生じやすい.

(略)仕事の要求度が高く,仕事のコントロールが低い高ストレイン群での虚血性心疾患の相対危険度は1.5~5 倍である.

あ・・・、これはまずいなぁ。ステント内の血管内皮が再生するまでにあと7ヶ月くらいかかるはずだし。

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2009年11月23日 (月)

トウモロコシゲノムの解読

Scienceに乗りましたね。トウモロコシゲノムの解読。あとは、コムギ、オオムギ、ダイズで一段落かな。コムギは、PacificBio Sciencesのシーケンサーの登場待ちが当面の現実的な選択かもしれません。

こういうニュースに出会うとあれこれ考えさせられるのですが、教科書的にはトウモロコシの収量水準は近代育種が始まって以来ずっと伸び続けています。流石に従来型の育種での収量水準向上は、最近頭打ちになりつつあるけれど。それでもBtコーンの開発によって虫害による収量ロスや、食害痕からのカビの発生による二次的な被害が減ることで、実質的な収量が伸びてい点はまさに関係者の努力の賜物。

さて、先般のヒトゲノム、40万円なりというエントリーでも書きましたが、半導体におけるムーアの法則よろしく、全ゲノムシーケンスの価格がものすごい勢いで下落しつつあります。数年以内には間違いなく10万円台に突入する。・・・ということを考えていたら、ちょっと嫌なことに気づいた。

その1.
「遺伝子組換え作物の生物多様性影響評価の際には、全ゲノムシーケンスを行って、原品種のゲノム配列と比較すること」という時代が来るかもしれない。

遺伝子組換え生物等の第一種使用等による生物多様性影響評価実施要領 (平成15年財務・文部科学・厚生労働・農林水産・経済産業・環境省告示第2号)

の第一には、こうあります。

本要領は、遺伝子組換え生物等の使用等により生ずる生物多様性影響に関する今後の科学的知見の充実又は当該生物多様性影響の評価に関する国際的動向等を踏まえ、必要に応じて見直しを行う。

国際的動向として、全ゲノムシーケンスが当たり前になれば評価法のスタンダードも変わるということですから。
# 既に組換えパパイヤはシーケンスされていますけどね。

多分、外注で対応することになるのだろう・・・。

その2.
F1雑種の兄弟交配あるいは自殖でF2を展開して、数個体のF2の全ゲノムシーケンスをする。そして、F2集団の個体選抜で、F1と同じ遺伝子型を再構築できる個体を選抜する。
・・・面倒くさい言い方をしましたが、一分子シーケンスでは個々の染色体DNAが両親のどちらに由来するのかまでわかりますので、要はF1品種を遺伝子レベルでリバースエンジニアリングできてしまうということ。となると、”ジェネリックF1品種”とでも言うべきものが比較的安価に作れてしまいます。

全ゲノムを網羅するマーカーがあればこれまでも技術的にはできたことですが、全ゲノムシーケンスが安価にわかるようになると、個々の遺伝子レベルまで正確なコピー品種が作れるようになるでしょう(多分、日本にはコストをかけて他社製品を真似る種苗会社はないでしょうが、そういう育種をする動機がある国はいくらもあるような?)。

ちなみに、種苗法では、保護されるのは品種のみ。交配親はそれ自体が種苗登録されていない限り種苗法では知財が保護されません。

一方、F1品種自体は種苗法で保護されているけれども、ジェネリック品種はあまりに正確なF1品種のコピーなので種苗法違反に当たると判断される可能性が高いでしょう。なぜならば、種苗法第二条2では品種が次のように定義されています。

この法律において「品種」とは、重要な形質に係る特性(以下単に「特性」という。)の全部又は一部によって他の植物体の集合と区別することができ、かつ、その特性の全部を保持しつつ繁殖させることができる一の植物体の集合をいう。

つまり、形質があまりにそっくりで先行品種と区別できず、しかもDNAフィンガープリントでも一緒と言うことになれば、F1の交配親が違っていても製品そのものは先行品種と同一と言うことになるはずです

しかし、種苗会社にとっては独自の遺伝資源を持っていることが他社との差別性を生み出す強みです。ですから、自社で交配親に使っている遺伝資源が簡単にコピーされてはたまりません。

そう遠い未来の話ではないので、今から対抗策を考えておくべき?

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2009年11月18日 (水)

[お詫びと訂正] 事業仕分けに対して意見募集、ではなく・・・

私、昨日のエントリーにおいて一つ、大きな誤解をしておりました。

原因は昨日、「文科省、仕分けの“反論”募集 政務三役が指示、HPで 」と言う見出しの記事を読んで事実誤認してしまったためです。今日、分子生物学会から次のようなメールを受け取り、さらに、なんだかしっくりこない感じがして考えてみたのですが・・・

日本分子生物学会 会員の皆様

重要なお知らせ 「行政刷新会議の競争的資金の評価について」

              特定非営利活動法人 日本分子生物学会
                    理事長    岡田 清孝

現在続行されている行政刷新会議の事業仕分け作業の中には、我々研究者にとって研究の支障につながる重大な変更となる可能性のあるものがあります。

<参考>
行政刷新会議ホームページへのリンク

http://www.cao.go.jp/sasshin/index.html

11月13日に行われた行政刷新会議の事業仕分け作業の内に、
事業番号3-20  競争的資金(先端研究)
事業番号3-21  競争的資金(若手育成研究)
事業番号3-22  競争的資金(外国人研究者招へい)
があり、評価コメントには頷けるものもありますが、評価結果はいずれも厳しく、競争的資金(先端研究)については「一元化も含めシンプル化」と「予算の縮減」を、競争的資金(若手育成研究) と競争的資金(外国人研究者招へい)については「予算の縮減」となっています。

これらの評価結果は直ちに来年度予算に反映すると思われます。
文科省の担当部署でも危機感を募らせており、研究者からの意見を求めています。

(文部科学省ホームページへのリンク)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/sassin/1286925.htm

意見のある方は、担当副大臣・政務官(中川正春・後藤斎)へのメール
(宛先: nak-got@mext.go.jp)で意見を連絡して下さい。
(様式自由、必ず「メールの件名(タイトル)」に事業番号、事業名を記入してください)とのことです。

また、文科省のホームページでは、意見送付の期限を「予算編成にいたる12月15日までに」としていますが、効果のあるのは、今週末までの意見分布だとのことです。

”意見送付の期限を「予算編成にいたる12月15日までに」としていますが、効果のあるのは、今週末までの意見分布だとのことです。 ”という情報は非常に重要ですが、このメールでも、「行政刷新会議の競争的資金の評価について」として、文部科学省が”行政刷新会議の評価に対する意見募集”をしているように読めます。

しかし、それは違うんです。

文部科学省の意見募集の表題は、

行政刷新会議事業仕分け対象事業についてご意見をお寄せください

・・・文科省の行なう「対象事業」に対する意見募集なんです。他省庁の業務に対して意見募集なんてできませんから、事業仕分けのコメントそのものに意見募集する訳が無い。

なので、メールで文科省に対して、事業仕分けのやり方がどうのとか、対象の選定方法が不明瞭とか、仕分け人の選定がけしからん、と言ってもノイズにしかならないんです。そうではなくて専門的な視点から、(事業仕分けの論点とコメントを意識しつつ)その事業の意義を強調する意見を寄せるのではなければ。

昨日の時点で新聞各社の報道が少ないと思っていたのですが、今日になって各誌で報道されています。しかも、

  • 仕分け事業の意見募集=文科省 (時事通信): これはまとも。
  • 事業仕分け、一般から意見募集…文科省 (読売新聞): ×
  • 文科省:仕分けに抵抗? HPで国民の意見募集  (毎日新聞): ×
  • 文部科学省、“事業仕分け”に関する意見募集ページを公開  (RBB Today): ×
  • 事業仕分けに反撃?文科省、HPで意見募集 (朝日新聞): ×

といった具合に事業仕分けに対する意見募集のように読めてしまいます。もし、あえて読者を誤読させるように誘導しているのであれば非常に悪質な報道です。

皆様も誤解のないようにご用心!

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2009年11月17日 (火)

事業仕分けに対して意見募集

「求む応援団」と言ったところでしょうか。文部科学省が行政刷新会議の事業仕分けに対する国民意見の募集をホームページでしています。

文部科学省の意見募集

行政刷新会議事業仕分け対象事業についてご意見をお寄せください

(募集期間は予算編成にいたる12/15まで、とありますが早めの方が文科省の理論武装に役立つでしょう)

新聞であまり取り上げられないところに新聞社の阿りを感じましたので、このblogではあえて取り上げます。

文科省、仕分けの“反論”募集 政務三役が指示、HPで

 文部科学省は16日、「廃止」など厳しい判定が相次ぐ行政刷新会議の事業仕分けの結果について、ホームページ(HP)で意見募集を始めた。川端達夫文科相ら政務三役が指示。ネットで“反論”を集め、年末の来年度予算の編成で巻き返しを図りたいとの思惑があるようだ。

 HPには、今月11日と13日に仕分け対象となった文科省の16事業と行政刷新会議の判定結果を記載。意見の提出先として副大臣と政務官のメールアドレスを明記しており、締め切りは12月15日。   

 文科省は募集の理由について「国民の声を財務省との折衝など予算編成に生かしていくため」と説明している。

  文科省の事業では、これまでに次世代スーパーコンピューター開発事業(来年度概算要求267億円)が「予算計上見送りに限りなく近い削減」とされたほか、 子どもの読書活動の推進事業などが「廃止」と判定された。省内では「短時間の議論での乱暴な判定だ」などと不満が高まっている。

2009/11/16 22:12   【共同通信】

事業仕分け対象のステークホルダーに研究者が多い文科省では、これは有効な対抗手段だと思います。一般のパブコメの場合も関連学会や業界団体などから意見が寄せられる場合もありますが、それもまた国民の意見の一つのかたちです。

「短時間の議論での乱暴な判定だ」という見解自体は間違っては居ないと思いますが、問題はむしろ一種の見せ物めいた議論のプロセスではなく、議論の結論です。短時間の議論だから判定が乱暴なのではなく、ものの見方自体がそもそも乱暴なものが混じっています。

”競争的資金(若手研究育成)”に対するコメント、

●若手研究者が安定して働き研究できる場所を見つけるための国の政策を若手にこだわらず再構築。

これなどは、研究者も何時まで若手で居られる訳ではないので、もっともな意見だと思いますが、今ある制度を縮める前に新しい施策を展開しないと、制度の乗り換えができません。

一方、

●ポスドクの生活保護のようなシステムはやめるべき。本人にとっても不幸。(本来なら別の道があったはず)。

こちらはまるで、”道を誤ってポスドクになってしまった”ような言いぶりが混じっています。この時代、ポスドクを経ずにテニュアにつけるなら僥倖というべき。それとも、科学を志すこと自体が人生の無駄遣いだとでも考えているのでしょうか。何なんでしょうかね、この俯瞰的な視座に立った大所高所からの議論は(・・・上から目線とも言う)。しかも匿名だし。

日頃から思うのですが、研究者は匿名では研究できません。論文を書くにしろ学会発表するにしろ、自分の名前でものを言います。つまり、研究者である限り、社会に対して自分の名前(責任)で情報発信をする宿命を負っているのだと私は考えています。それは、個人的な一種の思いこみに過ぎないかもしれませんが、それが私がこの私的なblogを実名で書いている理由です。

今回の意見募集は、研究者が自分の名前で行政にもの申す一つの機会です。状況は決して良くありませんが、ポスドクであれ、教授であれ、一人の国民として、そして一人の科学者として、公平な立場で意見を述べることができる希有の機会です。

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2009年11月16日 (月)

事業仕分け2:Spring-8、植物センター、バイオリソース事業

11/13に行なわれた行政刷新会議第3WGの理研SPring-8、植物科学研究事業とバイオリソース事業の事業仕分けのコメントが公開された(こちら)。

植物科学研究事業とバイオリソース事業へのコメントを一つずつ見ていこう。訳の分からないコメントには逐一反論する。

(植物科学研究事業)
●事業の必要性。事業概要から判断して妥当な基礎研究かどうか不明。大学における研究との違いを明確にすべき。全体的科学研究予算の配分との整理。

← 大学単独でメタボローム解析に取組んでいるところがあるのか?「妥当な基礎研究かどうか不明」と、研究の妥当性を判断する能力がないことを告白されてもなぁ・・・。

●応用研究については農水等にまとめて競争的資金へ。

← もっぱらアラビドプシスを材料にした研究に農水の競争的資金を投入することはありえないでしょう。それこそ支出の理由がたたないのでは?

●食料増産等に役立つ植物科学研究をうたっていながら、食料産業ニーズを意識しない基礎研究に陥っている。必要最低限の国費に抑えて、不足分は競争的資金でカバーすべきである。

← 食料産業ニーズを謳っているのであればたしかに良くない。もともと食糧増産には直結しない基礎研究なのだから(しかし、”陥ってる”って・・・)。だが、「必要最低限」という線引きをする合理的な方法は無い以上、恣意的な経費削減も可能ではあるけどね。

●他機関と強調すべき。

←完全長cDNAライブラリ作成を受託したり、イネには進出しないなど、特徴を生かして協調的に住み分けできていると思う。それから、「強調」ではなく、「協調」だね。

●収益向上可能な部分をカット。

← もっともだ。どこがカットできうるか具体的に指摘するべき。

●コスト削減の余地はある。アウトプットに対するコスト、絶対にやるべき基礎研究にどのくらい投じていくべきか、投じる額とアウトプットの関係の説明がない。

← 事業運営に関するコストは計算できるが、論文1本あたりのコスト計算は意味が無い。その計算でアウトプットとしての科学的に対する貢献の重要性が評価できるとでもいうのか?

●独法事業を極力減らすこと。NIAS との一本化も検討。

← NIASのミッションは農業生物の研究。ナズナはツールとしては使うが、それを主たる研究対象にはできない。そして農水省予算であるNIASの運営費交付金を充てる判断は文科省の権限ではできない。

●成果評価を明確に。また、運営費交付金全体の評価も明確に。

← 運営費交付金に関する理研の機関評価は文科省としてやっているはずだが・・・。しかも、評価結果は公表されているのでは?

●応用部分について収益増を見込むべき。

← そもそも、非営利団体なんだけどね。電話、鉄道、郵便と一緒にして欲しくない。

次に、バイオリソース

(バイオリソース事業)
●応用研究については各省庁を横串でまとめて競争的資金にするべき。政治主導が必要と考える。

← で、そうすると研究推進の効率が上がるというのだろうか?バイオリソースは生命科学の基礎研究のためのインフラ整備なのだ。

●ライフサイエンス研究に役立つバイオリソース拠点といいながら、産業ニーズを意識しない基礎研究が行われているので、必要最低限の国費投入に抑えて、不足分は科研費等の競争的資金でまかなうべきである。

← だから、生命科学の基礎研究のためのインフラ整備なのだ。科学技術政策の戦略上、基礎研究に対する研究資金投入は「必要最低限」に押さえるという方針を総合科学技術会議で決めた上で、その方針を徹底するなら仕方ないが、「事業仕分け」のような総合的な戦略を欠いた議論で意思決定をして産業ニーズに研究リソースをシフトするべきではない。

●リソースの確保は国がやることにしても、一般に安く供給する必要はないのではないか。

← 大方のリソースの配布は大学、独法などのアカデミア向け。そうなると、その原資は税金。結局、リソースの提供元に税を投入して価格を下げるか、リソースの購入先に税を投入して購買力を底上げするか、の違いしかない。

そもそも、バイオリソースは研究のインフラだ。そのリソース開発はいわばアカデミアにおける道路整備のようなものだ。高速道路の無料化を公約した政党の「下請け」をしている仕分け人達は、一方ではSPring-8の利用料金を上げろといい、バイオリソースの価格を上げろという。本当にそれでいいのか?

●理化研の運営費交付金の適正さについて今一度精査する必要あり。

← それは独法の評価委員会でコメントすべし。

●受益者負担を大幅に増やすべき。

← 大学、独法などが受益者である限り、原資は税金。結局、リソースの提供元に税を投入して価格を下げるか、リソースの購入先に税を投入して購買力を底上げするか、の違いしかない。一見、個別の事業の収支が良くなって見えるだけで税の使い道が変わるわけではない。

●必要性は認めるが、費用が妥当かどうかを検討すべき。

← リソースを値上げして収益を上げても原資が税なら個別の事業の収支が良くなって見えるだけで税の使い道が変わるわけではないのだよ。で、高速道路は無料化するんだね。

●成果評価を明確に。また、運営費交付金全体の評価も明確に。

← アウトプットは論文の本数で評価? それともインパクトファクターで評価? 配布点数で評価? で、結局それを金銭に換算する訳か。運営費交付金のことは独法の評価委員会でコメントすべし。

●コスト削減努力をすべき。収入増をすべき。

← コスト削減の努力は当然だが、収入増しても、それが税金の還流であれば個別の事業の収支が良くなって見えるだけだ。それでは税金の使い道が変わるわけではないのだよ。分かっていますか?で、高速道路は無料化するんだね。

●収益向上可能な部分をカット。

← そもそも、非営利団体なんだけどね。収益向上のインセンティブをどうする?

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