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食品

主に食品安全関係

2011年2月21日 (月)

(メモ) 肉と魚の供給量

農林水産省の食料需給表の品目別累年表から、魚と肉の国民一人当たりへの供給量をグラフにしてみた。昭和35年から平成18年にかけてのデータ。
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/index.html
Fig1
 緑のラインは魚介、青のラインは肉。国民一人当たりの年間供給量をkgで表している。魚介の供給量は概ねフラットなのに対して、肉の供給カーブは良く見ると昭和60年頃を境に伸び率が鈍っているように見える。バブル景気の時代にはほぼ飽和したということだろうか。
 ちょっと惜しいのは最近のデータが無いこと。魚介の供給の低落は2000年頃に始まっているのだが、景気の低迷を受けているのだとすると最近はもっと供給量が減っているかもしれないのだ。
 ともあれ、これらの合算が日本人の食卓に提供される動物性タンパク質のほぼすべてであり、この合算を大きく超えて日本人がタンパク質をむさぼることはあまりなさそうだ。あるとすれば、魚介から肉へのシフトか、経済環境の悪化によるタンパク質の供給量の縮小くらい。ここ10年くらいは、タンパク質の供給量については必要量を満たして飽和しているといってもいいのかもしれない。

 ここで、このグラフにもう一本折れ線を加えてみる。
Fig2
 新しく加えられた赤いラインは、鯨肉の国民一人当たりの年間供給量をkgで表したもの。荒っぽい推定だけれど、昭和35年頃には肉類の30%程度が鯨肉だった。家畜飼料となる穀類の輸入も十分にできなかった時代には、鯨肉は貴重なタンパク質資源だったと考えられるのだが、その後の高度経済成長期を通じてその比率は低下し続け、そして今日に至る。

 捕鯨禁止は、米国やオーストラリアの食肉ビジネス側の陰謀だという言説もあるが、データを見る限り、シェアがほぼゼロの鯨のバッシングに一生懸命になっても畜肉の消費が増えるという合理的理由はなさそうだ。
 一部地域では鯨肉は食文化かもしれない。私の田舎でも、子供のころは正月には鯨汁を神棚に供え、"くじらおばけのぬた"(えーと、標準語で言うと”さらし鯨の酢味噌和え”)を食べたものだ。まあ、どちらも口に合わなかったので大嫌いだったが、畜肉の代替品ではなかったという意味で一つの文化的側面はあったのだとも思う。だが、それが無くなっても私は惜しいとは思わない。
 また、海賊まがいの環境保護団体の妨害で調査捕鯨を断念するのだとしたら、それは腹立たしいことだ。調査捕鯨は科学的データを得るための資源調査なのだから。また、”牛や豚はおいしいけど、鯨がかわいそう”という感情論に加担するつもりもない。

 しかし、調査捕鯨が商業捕鯨の再開を前提とする科学的調査であるならば、今やそのニーズは限りなく小さくなってしまったのではないだろうか。と、このグラフを見ながら考え込んでしまった。

 ネットで調べてみると、平賀教雄氏同様の主張をされている模様。以下引用。

農水省が発表している食糧需給表によれば2006年度正味食肉供給量の概算値は牛肉;70万7千トン、豚肉;1百47万1千トン、鶏肉;1百35万7千ト ン、鯨肉;5千トンとあります。鯨肉は食肉供給量の0.14%を占めるに過ぎません。よしんばこれが10倍(これは捕鯨のモラトリアムが発動する前、 1978から79年の水準です。当時ミンククジラを3,000頭ほど捕獲していた。これから先ここまでの捕獲量は望むことはできないのでしょう?)になっ たとしても、1%をわずかに超えるだけで日本国民の食の安全保障にはほとんど貢献できないのではないでしょうか。

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2010年6月21日 (月)

可動的生態系としてのヒト

以前、ヒトの体表の細菌叢には性差があるらしいと言うエントリーを書いた際に論文を紹介し損なっていたので改めて紹介します。

Noah Fierer et al., “The influence of sex, handedness, and washing on the diversity of hand surface bacteria,” Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 105, no. 46 (November 18, 2008): 17994-17999.   

 この論文では「体表」の細菌叢を、rRNA遺伝子の塩基配列を手がかりに分析していましたが、今日のトピックスは手法的にはもっとUp to dateです。

The Human Microbiome Jumpstart Reference Strains Consortium, “A Catalog of Reference Genomes from the Human Microbiome,” Science 328, no. 5981 (May 21, 2010): 994-999.

 これはNIHのファンドでウイルスや真核生物も含めた"human microbes"のゲノム全体対象にしたメタゲノム解析。Roscheの454とIlluminaのSolexaを使用しています。標準的な微生物腫は178種(547,968ポリペプチド相当)とのこと。

 一方、腸内細菌に特化した研究も。

Junjie Qin et al., “A human gut microbial gene catalogue established by metagenomic sequencing,” Nature 464, no. 7285 (March 4, 2010): 59-65.

 サンプルはヒト(ヨーロッパ人)の排泄物、124人分。576.7 Gbpを解読。解析プラットホームは454とIllumina GA。ヒト全体に標準的なバクテリアは160種程度。バクテリアの種類全部では1,000-1,150種に上ると見られる。
 どんどん大規模化してますね。こうなると次のターゲットは、アジア人、アフリカ人を含めたヒト集団でしょう。日本人の腸内細菌には、アガロース分解酵素を持ってる変わり種もいる様ですので今後の展開が楽しみ。とはいえ、これまでの研究から言えば、160種程度の代表的な微生物は、あらゆるヒトに共通の・・・というかヒトという生態系を構成するメンバーといっても良いのでしょう。

 風邪をひいて抗生物質を処方されたりすると、細菌叢が大きく変わったりしないんだろうか。その方が遺伝子組換え食品由来のBtトキシン遺伝子やCP4 EPSPSが水平移動するよりも、よほど生態系を破壊することになる様な気もするのだけれど。

 こんな論文を斜め読みしていると、今時なら「堆肥のメタゲノミックス」や「有機農産物のメタゲノミックス」なんかがうけるのかなぁ、という邪な考えが頭をよぎってしまう。

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2010年5月17日 (月)

腸内で抗肥満遺伝子組換えビフィズス菌を飼育しようかという研究

 医療目的でペプチドを経口投与しようとすると、GMPグレードの合成ペプチドは単価がめちゃくちゃ高いとか、有効成分を腸で作用させようとすると、胃で分解させないようにDDSを工夫する必要があるとか、色々面倒な問題が生じます。

 そこで、遺伝子組換えビフィズス菌の登場です。腸内に定住する細菌にペプチドを合成させるので、ペプチドの単価がどうのと言うケチくさい問題は発生しません。また、腸内で細菌がペプチドを合成するので、投与経路の途中で分解するんじゃないかという心配もありません。

R T Long et al., “Bifidobacterium as an oral delivery carrier of oxyntomodulin for obesity therapy: inhibitory effects on food intake and body weight in overweight mice,” Int J Obes 34, no. 4 (April 2010): 712-719.    

 新しい論文なので、Abstractまでしか無料で公開されていないのですが、アラビノースで誘導のかかる発現ベクターにヒトOxyntomodulin遺伝子をつないで形質転換した組換えビフィズス菌をマウスに経口投与しています。Oxyntomodulinというのは食後に消化管から分泌されて小腸で作用し、食欲を抑制するホルモン。37アミノ酸残基とペプチドホルモンとしては小さな分子(消化管ホルモンとしては普通)で注射でも食欲が抑制されるそうです。

 で、実験の結果、肥満気味のマウスの食欲を抑えて、体重と中性脂肪も抑制できたとのこと。組換えビフィズス菌自体が新しいタイプの抗肥満薬という訳ですね。

 面白いのは、アラビノース誘導型のベクターを使って、食事とは別にアラビノースを与えてOxyntomodulinの発現を誘導しているところ。この種の組換え微生物が腸内で勝手にはびこってペプチドを合成しまくると投与量のコントロールが全然効きません。その点、誘導型ベクターだと薬が効きすぎて食欲が全然無いようなら、発現誘導を止めてやればよいのである程度は投与量のコントロールができます(製品としてそれで良いのかどうかは疑問ですが)。

 まあ、もともと消化管で分泌されるホルモンなので、消化酵素で分解される心配は要らないのでしょうから、ビフィズス菌でなくても良さそうなものですけど。

 それから、この種の天然物と同等の薬効成分(特にヒトのタンパク質そのもの)は、物質特許では保護されないので、おそらく製薬会社としてはうまみがないでしょう。組換えビフィズス菌のヨーグルトを食べてダイエットという夢のある(・・・そうなのか?)製品につながる研究なのですが、現実味はちょっと薄いところ。

# スギ花粉抗原でも同じ手法が使えるかもね。

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2010年2月24日 (水)

魔法のコメ

 ReutersによればインドのオリッサにあるCRRIでAghniboraというコメの品種を開発したとのこと。際だった特性は、「水又はぬるま湯に15分浸すだけで食べられる」という点。調理のための加熱がほとんど必要ないという点がインドでは重視されている。薪の入手もっままならない貧困層の人々にも利用しやすいという点と、CO2排 出量を削減できる点が重要と考えられているようだ。

 元々はAssam地方の"komal sawl", "komal chawl"あるいは"komal chaul"と呼ばれる在来品種群に由来する性質らしい。

 デンプンにどのような変異が生じているのかはわからないが、人間の消化液のアミラーゼは結晶化したデンプンを分解できないので、「お湯に浸すだけで食べられるお米」は、デンプン合成系に何らかの異常があるはずだ。

 この性質は組換えイネをバイオリアクターとしてタンパク質を生産させる場合にも有利な性質だ。生理活性が重要なタンパク質を生産させる場合に、尿素やカオトロピック塩のような変性剤、強力な界面活性剤や還元剤を使わなくても種子から組換えタンパク質を抽出できるかもしれない。さて、どんな変異なんだろう。

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2009年12月10日 (木)

TILLINGでアミロースフリー・ポテトの育種

 以前、ドイツでは遺伝子組換えでアミロース・フリーのバレイショが育成されていました。

 その対抗馬として、半数体育種&突然変異育種&マーカー選抜&交配の組み合わせ(TILLING)でアミロース・フリーのバレイショが育成されました。論文はこちら

# よく見ると私の論文を引用してくれてました。どうもありがとう。

 バレイショは同質4倍体なので、突然変異育種は大変なです。まず半数体育種で倍数性を減らして、次に化学変異原処理(EMS処理)とGBSS遺伝子のマーカー選抜を繰り返し、最後に染色体を倍加あるいは変異体同士を交配してGBSS遺伝子の4重劣性変異体を作出します。製造にかかわる手間とコストを考えると、よほどのメリットが無ければ取らない育種戦略なのですが、育成者はそれでも後の品種の普及を考えると組換え体よりはメリットが大きいという判断をしたということでしょう。

 ちなみに、ニュースサイトでは"Super potato"と呼んでいますが、他の作物でのデンプンの変異体という意味ではにモチ米のようなものです。トウモロコシやイネ、オオムギでは珍しくない変異体ですが、バレイショでは作るのは非常に大変です。それでもドイツ国内の産業界のニーズが有る、というところに若干の驚きを感じます。日本であれば間違いなくアメリカ産のワキシー・コンスターチを輸入してそのまま使うか、でなければ化工澱粉にして使います。その方がおそらく安上がりなので。
 ドイツでは国産のバレイショ・デンプンの方が工業原料としては米国産コーン・スターチより安上がりということなのでしょう。・・・となると、区分栽培と分別流通が必要な遺伝子組換えバレイショを避けたがるのも、わかる気がします。

 ドイツにおいて"Super potato"がSuperで居られる理由は、遺伝子組換え作物に対する社会環境と、輸入コーンスターチの調達コスト、国内のデンプン産業がバレイショに依存している、という状況に関連していると考えられます。逆に、同じもの(加工デンプン用アミロース・フリーバレイショ)を日本で作っても、モチ性コムギほどに珍重されることはないでしょう。

# モチ性のコメをわざわざTILLINGで作っても意味はないし・・・。

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2009年8月24日 (月)

アメリカ環境医学会のポジションペーパー

遺伝子組換え作物の即時出荷停止を求める”アメリカ環境医学会のポジションペーパー”なるものが発表されたらしい。

オリジナルはこちら

理由は、

"GM foods pose a serious health risk"ならびに
"Multiple animal studies have shown that GM foods cause damage to various organ systems in the body. With this mounting evidence, it is imperative to have a moratorium on GM foods for the safety of our patients' and the public's health," said Dr. Amy Dean, PR chair and Board Member of AAEM.

だそうだ。

即時出荷停止を求めるほど公衆衛生上の有害性に自信があるなら、開発企業と政府を相手取って集団訴訟を起こせば良いのにね。

しかし、仮に、合衆国が遺伝子組換え作物の即時出荷停止を行えば、何が起こるか考えてみると良い。

国際穀物市場では供給がたちどころに逼迫し、価格が高騰する。食料自給率が低い国は、食料調達に難渋する。お金がある国はまだ穀物を買えるかもしれないが、貧しい国は飢餓に見舞われるだろう。お金がある国でも食料価格は高騰し、国民生活を圧迫することになる。

これまでのところ、遺伝子組換え作物によって健康被害は発生していないだろう。飢餓を超えるほどの被害が発生するのなら話は別だが、リスクとベネフィットを秤にかけて考えれば分かるように、あやふやな根拠で規制をかけた場合の損失は計り知れない。

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2009年7月 7日 (火)

日本学術会議会長と食品安全委員会委員長の談話

昨日のエントリーで読売新聞の記事を引用しながら何か変だな?と思ったのだが、日本学術会議会長の談話の要約がおかしな按配になっていた。

記事ではこう書かれていた。

「十分とは言えないデータで確率論的に結論を出さねばならないことがある。  データ不足を理由に結論を先送りするなら、科学の入らない主観的な判断になってしまう」と批判した。

何か変でしょ?で、談話のオリジナルを見てみた。
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-d4.pdf
これによると、

 今回の出来事に関する第1の問題は、リスク評価者である食品安全委員会が、データ不足のために科学的評価は困難であることを承知しつつも、食用牛肉のリスクを評価したとして非難された点です。一般に科学の結論を得るためには多くのデータが必要であり、データが多ければ多いほど不確実性は減ります。科学者は長い時間をかけてデータを集め、少しでも確実な結論を得る努力を続けます。
 一方、何らかの社会的な問題に対して緊急に対策を実施する場合には、その時点で得られるすべての、しかし十分とは言えないデータだけを基にして、いくつかの前提を置いて「確率論的」に早急に結論を出さなくてはならないことがあります。もちろん新たなデータが得られたときには評価結果を見直します。これは国際的にも広く認められたリスク評価の手法です。もしも「データ不足による科学的評価の困難さ」を理由にしてリスク評価の結論を先送りするならば、科学の判断が全く入らないリスク管理者の主観的な判断だけに基づく政策・措置を策定するという、好ましくない結果を生むことになります。

会長が懸念している部分は、

もしも「データ不足による科学的評価の困難さ」を理由にしてリスク評価の結論を先送りするならば、科学の判断が全く入らないリスク管理者の主観的な判断だけに基づく政策・措置を策定するという、好ましくない結果を生むことになります。

記事では「科学の入らない主観的な判断になってしまう」と要約、リスク評価に関する文脈で、主観的判断になることを懸念しているように要約している。一方、会長談話は「科学の判断が全く入らないリスク管理者の主観的な判断だけに基づく政策・措置を策定する」とリスク管理が非科学的で主観的なものになることを懸念している。

・・・結局のところ、科学技術会議会長が懸念している通り、読売新聞の記者もリスク評価とリスク管理の違いが分かっていないのではないだろうか、ということが懸念されてしまうのだ。リスク管理からのリスク評価の独立に対して市民の理解が得られるまでの道のりは斯くも遠いのだろうか。

食品安全委員会委員長も、この件について談話を発表している。
http://www.fsc.go.jp/sonota/iinchodanwa_210701.pdf
記事によれば、

「評価の独立性と中立性が守られなければならない」との談話を出した。

とのことだが、私はむしろこの委員長談話の主旨は、

広く国民の皆様に、「科学に基づく新しい食品安全を守るしくみ」についてご理解いただくことがどうしても必要です。国民の皆様のご理解とご支援を心からお願い申し上げます。

の方だと思う。この報道のされようを見ても・・・。

これらの談話については、特に国民の代表たる国会議員の皆様にこそ真摯に受け止めていただきたいものだ。

そうでなければ、今後、多忙な本職のほかに政府の委嘱でこの種の仕事を引き受ける専門家が居なくなってしまうだろう。

# 本職の方が多忙でないような”いわゆる専門家”には委嘱しない方が良いだろうし。

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2009年7月 6日 (月)

リスク評価が有効なのは合理的なコストでデータが入手できる場合に限られる

どんなコストを払ってでもデータを入手することに意味があるとは限らない。”時間”というリソースも含めて、合理的なコストで入手できないデータは、リスク評価には使えない。

食品安全委の人事案を野党否決、科学界が批判

 内閣府食品安全委員会の人事案を民主党など野党4党が参議院で否決したことに対し、科学界から批判が相次いでいる。

 委員の候補者が4年前、輸入牛肉の安全性を判断した科学的評価を、「評価の姿勢に問題がある」として否決の理由にしたためだ。近く政権を握るかもしれない党からの政治的圧力に、科学者側は「中立的な評価が損なわれる」と危機感を強めている。

 問題の人事案は、吉川泰弘・東京大教授を委員長含みで同委員に起用するもので、6月5日に否決された。吉川教授は2005年、同委員会のプリオン 専門調査会座長として、米国・カナダ産牛肉の輸入再開を条件付きで認める答申案をまとめた。民主党は、調査会が「データに不明点が多く、厳密に評価するの は困難」としながら答申案をまとめた点などを問題視した。

 しかし、食品安全委員会は、有害物質などがどのくらいの確率で悪影響を与えるかを科学的に評価する機関。日本学術会議の金沢一郎会長は先週、異例の談話を発表し、「十分とは言えないデータで確率論的に結論を出さねばならないことがある。

 データ不足を理由に結論を先送りするなら、科学の入らない主観的な判断になってしまう」と批判した。同委員会の小泉直子委員長(公衆衛生学)も1日、「評価の独立性と中立性が守られなければならない」との談話を出した。

 民主党の筒井信隆・ネクスト農相は「データが少ないなら集めるのが当然だ。学術会議の意見も一つの考えで、絶対ではない」と話している。

(2009年7月6日14時19分  読売新聞)

食品安全性に限らず、”リスク評価”はそれ自体、「科学的な評価手順に従って、合理的なコストの範囲で入手可能なデータから確率論的にリスクの大きさを計る」という性質がある。緊急時には少ない時間的リソースでの評価が問われ、結局は時間との戦いになる。

例えば、新型インフルエンザの発生時に、その対応を決めるためのリスク評価を延々とやっていたらどうなるだろうか?緊急性を勘案しないリスク評価は役に立たない可能性が高い。

食品安全委員会のリスク評価は、たしか標準処理期間が決まっていない。「データが少ないなら集めるのが当然だ。」と言っていられるかどうかは、現実に起こっている諸問題とどう折り合いを付けるか?という匙加減の問題でもある。いつまでも評価を長引かせると、実際の問題としては、リスク管理側の官庁の行政判断に影響を与えることになる。

例えば、仮に食品安全委員会が”十分なデータが収集されていないので、判断は保留する”として評価結果を公表しなかったらどうなるだろう?リスク管理側の官庁はどのように対応できるだろうか。BSE問題のケースで考えれば、それは農水省が”米国産牛肉の暫定的な輸入中止”をいつまで続け得ただろうか?ということでもある。

結局、評価結果待ちで無期限に輸入禁止を続ける訳にもいかず、評価結果を待たずに輸入するわけにもいかず・・・(評価に必要な情報の提供を米国政府に求めることはできたかもしれないが)。

いずれにしても、リスク管理を行なう官庁が対外的な説明責任を問われることになるだろう。”ネクスト農相”ならば、そうなった場合でも頑張れるのかもしれないが、リスク評価に必要なデータが入手できないという理由で評価結果の公表を無期限に延期するというカードを食品安全委員会に与えると、結局苦しむのはリスク管理を行なう官庁のトップだろう。

それはで結局、リスク評価をリスク管理から切り離せなくなってしまうのだが、その辺の理屈が分かっているのだろうか・・・。

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2009年6月30日 (火)

クローン家畜の安全性評価に関するパブコメ回答

食品安全委員会のホームページに、クローン家畜に関わる食品安全性評価に関わるパブコメの回答が公表されている。

一部抜粋する。

・不安なので反対。
・納得が出来ない。
・絶対に食べたくないし子供に食べさせたくない。
・厚生労働省が体細胞クローンの安全性審査を食品安全委員会に諮問したことを抗議する。
・従来の繁殖方法の改善、発展に力を注ぐべき。
・農地改革、安全性を追求した食作りが、国の政策。
・健康のために肉食を控えるべき、さらに消費をあおる政策をすすめる必要はない。
・需要のない研究に多額の公的資金(税金)が乱費されることを望んではいない。

うーん・・・。これが科学的なリスク評価に対するコメントなのだな。

また、こういう意見もあった。

エピジェネティックな変化の制御の異常の結果、絶対に安全性に問題のある物質が生産されないと100%言い切れるのか。

科学に100%の断言を求めても意味はない。科学は有限な前提条件に対して、想定される範囲の推定を返す以上には、有効な道具ではない。

科学はたいして有効な道具ではないかもしれないが、リスク評価においては、信仰や直感、政治判断という科学以外の評価方法よりも有効な道具であると私は信じている。

この意見では”エピジェネエィック”という言葉をまるで流行語のように使っているが、本当に意味がわかって言っているのだろうか。私たちの体の中でも、栄養状態や生活習慣でエピジェネティックな変化(ゲノムのメチレーションパターンの変化)は起こっている。もちろん、クローンでない家畜の体内においても。果樹の枝変わりのような表現型の変異にもエピジェネティックな変異は関わっている。

いずれも、場合によっては”異常”といえる生理状態を引き起こすケースもあるが、だからといって毒性物質を作り出すわけではない。特に、家畜は体内で毒素を作るような生物ではないので、その種の変異があっても安全上の問題はないと考えられる。

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2009年6月25日 (木)

こっちの記事はわかるが、こっちの記事はわからない

クローン家畜の食品安全性を巡る食品安全委員会のリスク評価に関する記事。

まず、わかる方。毎日新聞より。

クローン:牛や豚の食品利用は安全 食品安全委が答申

 体細胞クローン技術で生まれた牛、豚などの食品利用について国の食品安全委員会は25日、「従来の繁殖技術による牛や豚と同様、食品として安全」 との評価書を最終決定し、厚生労働省に答申した。これを受けて同省や農林水産省が今後、体細胞クローン牛や豚を食用として解禁するかどうか検討する。【江 口一】

評価書は、食品として安全という結論。であれば、リスク評価に瑕疵があったとされるか、あるいは危険性の兆候となる新たな科学的な知見が現れない限り、クローン家畜由来の製品は食品衛生法上問題のない食品ということになる。これを規制するかどうかは、リスク管理の観点から、記事にもあるとおり、これから厚生労働省が判断することだ。

一方、JAS法など食品の表示に関わる問題は、例えば原産国表示や遺伝子組換えのように安全性とは別のルールで規制が行われているので、クローン家畜についても区別するべしと言うことになれば、表示に関わる規制の可能性も無くはない。が、遺伝子レベルでもタンパク質レベルでも、元素の構成比でも、要するにあらゆる科学的な分析法で区別ができないものを法的に規制することは実効性が担保できないので事実上無理。

一方、わからない方の記事。読売新聞より。

「クローン牛・豚は安全」食品安全委が評価書

 体細胞クローン技術で生まれた牛や豚の食品としての安全性について、内閣府食品安全委員会(見上彪委員長)は25日、「従来の家畜と同様に安全だ」とする評価書をまとめ、厚生労働省に答申した。

 これで同省の規制対象にならないことが確定した。今後は流通の可否について、農林水産省が改めて検討する。

 評価の理由として〈1〉遺伝子は従来の家畜と同じ〈2〉肉や乳の成分にも差がない――などをあげた。クローン家畜の子孫についても、同様に安全と判断した。

 ただ、安全委が評価書案を公表して意見を募集したところ、安全性に対する不安の声が数多く寄せられたため、見上委員長は「国民の理解を得られるように、情報提供を継続して行う必要がある」と話している。

 国内では、牛と豚合わせて約900頭が体細胞クローン技術で生まれているが、農水省が各研究所に出荷の自粛を要請しており、流通はしていない。だが、日本より早く「安全」と判断した欧米でクローン家畜由来の肉が流通し始めた場合は、日本に輸入される可能性がある。

(2009年6月25日19時53分  読売新聞)
「これで同省の規制対象にならないことが確定した。」と言う見方は、リスク評価とリスク管理を混同している。食品衛生法の規制対象とするかどうかは、リスク管理のレベルで決めること。自動的に「確定した」と言うものではない。

私は、科学的な根拠がないのに税金を投入して管理(規制)するという考え方は間違っていると思う。一方、「クローン家畜なんか食べたくない」と言う人の判断もわからなくはない。いろいろな選択があって良い。しかし、そのために不合理な社会的なコストをかけるのは嫌なのだ。

ということで、ここは一つ「クローン家畜およびその子孫に由来する製品ではありません」という任意表示を認めてはいかがだろう。有機JAS同様、安全性や栄養成分において、それ以外の製品と同等のものと区別がつかない製品にふさわしい曖昧な表示で十分だ。

# 明日から身内の見舞い。しばらくは更新しません。

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