2017年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

最近のトラックバック

どこからきたの?

  • なかのひと

Google Analytics

毒物

2010年6月16日 (水)

続・アジサイには毒があります

 以前、「アジサイには毒があります」と言うエントリーを書いたところ、梅雨時になるとGoogleで”アジサイ 毒”と言うキーワードでこのblogを訪れる方が多くなってしまった。2年も経つと周辺の情報が色々と揃ってくるので、更新することにしました。

 以前のエントリーで書いた食中毒の事例はそちらを見ていただくとして、アジサイの毒性についての科学的な情報は農研機構・動物衛生研究所のページにまとめられています。それによると、

  • アジサイの若い葉をヒトが生で食べると吐き気、目まい等の食中毒症状が現れる。
  • アジサイの葉には青酸配糖(Hydracyanoside A, BおよびC)が含まれている。
  • ではあるが、アジサイの葉に含まれている青酸配当体の濃度で実際にヒトに食中毒症状が現れるかどうかは不明。

とのこと。つまり、ヒトの食中毒症状の事例では、原因物質がHydracyanoside A, BおよびCかどうかは疑いの域を出ず、もしかしたら他にも中毒症状を示す物質が含まれていて、そちらが原因物質である可能性は捨てきれない、という曖昧な状況になっています。

 いずれにしても、疫学的な状況証拠から言えば、アジサイの葉には何らかの毒性があると考えられますので、食べない方が無難です。ちなみに、アジサイの葉による食中毒情報については厚労省も振り回されていて、

  • 平成20 年7 月1 日 食安監発第0701001号では、「アジサイの喫食による青酸食中毒について」と題していたものが、
  • 平成20 年8 月18 日 食安監発第0818006号では、「アジサイの喫食による食中毒について」に改訂されています。

 改訂の理由は、「現時点では、アジサイに青酸配糖体が含有されているとの知見が十分でない」とのこと。

 なお、現時点というのは、2008年8月ですが、その後、アジサイの葉と茎から青酸配当体が検出されています。

Seikou Nakamura et al., “The absolute stereostructures of cyanogenic glycosides, hydracyanosides A, B, and C, from the leaves and stems of Hydrangea macrophylla,” Tetrahedron Letters 50, no. 32 (August 12, 2009): 4639-4642.   

 見てどうというものでもないんですけど、こういう構造だそうです。

 ただし、毒性の程度は不明。しかし、動衛研の方もよくこの論文を見つけたものです。Pubmedでも引っかかってこないのに。

 天然物でもオーガニックでも有毒なものは沢山あります。錬金術師パラケルスス(1493-1541)は、「物質にはすべて毒性がある:毒性のないものはない。量が毒か薬かを区別する」(キャサレット&ドール:「トキシコロジー」、日本語訳より引用)とも言いますから。

人気blogランキングへ←クリックしてい ただけますと筆者が喜びます!

2010年5月31日 (月)

酪酸の経皮毒性は結構馬鹿にならない

ノルマル酪酸の毒性は実は結構強い。

「酪酸は無害と説明を受けた」公判で元船長

 南極海で調査捕鯨をしていた捕鯨船団の監視船「第2昭南丸」に侵入したなどとして、艦船侵入や傷害など五つの罪に問われた反捕鯨団体「シー・シェパード」の元船長、ピーター・ベスーン被告(45)の第3回公判が31日、東京地裁(多和田隆史裁判長)であった。

 ベスーン被告は弁護側の被告人質問で、昭南丸に酪酸入りのガラス瓶を発射して乗組員にけがを負わせたとされる点について、「シー・シェパード側から『酪酸は人体に無害だ』との説明を受けており、けがを負わせるつもりはなかった」と述べ、改めて傷害罪について無罪を主張した。

 多和田裁判長は冒頭、ベスーン被告に「団体の主義主張を述べたり、調査捕鯨を討議したりする場ではない。裁判に関係ないことを述べれば、供述を制限することがある」と宣告した。

(2010年5月31日14時56分  読売新聞)
安全衛生情報センターの公表しているデータシートによれば、ノルマル酪酸の急性毒性は次の通り。
急性毒性
経口ラットのLD50の報告が3件あり (2000, 2940, 8790 mg/kg)、いずれも2000mg/kg以上(PATTY (5th, 2001))によりJIS分類基準の区分外(国連GHSの区分5)とした。
経皮ウサギのLD50の報告が2件あり、危険性の高い方のデータ 530 mg/kg (PATTY (5th, 2001))を採用し、区分3とした。
吸入吸入(ガス): GHSの定義における液体である。
 吸入(蒸気): ラットを飽和蒸気(25℃で2170ppm)に8時間(4時間換算3069ppm)吸入ばく露しても死亡例なし(PATTY (5th, 2001))との報告があるが、LC50値が不明であり、区分が特定できないことから分類できない。
 吸入(ミスト): データなし
皮膚腐食性・刺激性List 1 (PATTY (5th, 2001))にウサギの試験でsevere irritant、 List 2 (IUCLID (2000)にウサギの試験((OECD Guide-line 404)でcorrosiveの報告がある。EUはR34に分類している。
眼に対する重篤な損傷・刺激性ウサギの試験で severe corneal burns (PATTY (5th, 2001))の報告があり、皮膚腐食性/刺激性で区分1に分類している。

 経皮毒性の区分3というのは半数致死量が、200 mg/kg以上1000 mg/kgの範囲にあるものを指す。ノルマル酪酸の場合はすでにウサギのデータが示されており、530 mg/kgとのこと。おとなのウサギの体重を約3.5 kgとすると、一頭あたり1.86 gの投与量で半数が死に至る。ノルマル酪酸の比重は約0.959とのことなのでほぼ水と一緒。

 つまり、わずか2mlの投与でウサギ1頭の死ぬ確率はほぼ50%である。単純な構造の有機酸ではあるけれど、この毒性は軽視できない。ヒトに対する急性毒性の程度や作用機序は分からないが、もし同程度であれば体重60 kgのヒトに対しては32 mlでLD50に達する可能性はある。
 また、皮膚腐食性や刺激性もあるので、目に入った場合も無事では済まない。こちらは種差は小さいのでウサギのデータをそのまま適用して良いだろう。

 どの程度の濃度のノルマル酪酸が使用されたのかは分からないが、無害だと信じていたとしても、他人に対して意図的に使用して、その結果傷害を負わせたのであれば危害を与えた結果責任を免れないと見た方がよい。

人気blogランキングへ←クリックして いただけますと筆者が喜びます!

2010年5月27日 (木)

改良普及員さんに”ケシ”の鑑別を依頼するべきではありません

 色々な間違いが重なった結果がこれですね。毎日新聞より。神奈川県職員の方も、このblogを見ているかもしれませんが、あへん法規制対象のケシの栽培は毎年のようにあちこちで起きているので採り上げます。

ケシ栽培:神奈川県が「問題なし」と誤指導 藤沢の農家に

 あへん法で無許可栽培が禁じられているケシについて、神奈川県農業技術センターが藤沢市の農家に「栽培に問題はない」と誤った指導をしていたこと が分かった。県が26日明らかにした。この農家は観賞用に722株を栽培し、うち約400株を7都県に出荷したという。県や厚生労働省などが回収と調査を 進めている。

 県によると、農家はセンターに栽培が可能か相談。普及指導員が葉の形などから「栽培できないケシではない」と判断。しかし東京都から「花が法に抵触する可能性が高い」との情報が寄せられ、ソムニフェルム種と判明した。【木村健二】

 記事の書きぶりは別として、本質的には以下のような問題点だろうと思います。

  1. まず、アヘン原料になるケシの栽培についての規制は、厚生労働大臣所管の”あへん法”で行われているので、栽培に問題ないかどうか農家が照会するべき窓口は保健所。農業技術センターに問い合わせたのは間違い。
  2. 次に、普及員も、規制法がある植物なので(その確認のために農家は照会した)、県の担当部署に自らつなぐのが筋。県職員も処理する責任能力を持たない分野について独断で対応してはいけない。
  3. その上、種の同定をし損なった。どの種か判断できない場合は率直に”わからない”と言うべき。科学的には、情報が足りなくて判断できない場合や自分の判断する能力に確信が持てない場合には、結論を保留するべき。

 他社の報道によれば、対応した県職員は「厚生労働省ホームページを参考にした」とのことなので、1.,2.の間違いは避けられたはずなのですが・・・。今後公表されるであろう神奈川県の再発防止策に期待しましょう。

 なお、報道各社から、職員が栽培を禁止されているケシだと見抜けなかったとか、県が判断を誤って指導したという論調のニュースが報道されています。ですが、普通の改良普及員はケシの種の同定はできません。そのためのトレーニングを積んでいないのですから当たり前です。また、農学や植物科学系の研究者でも普通はケシの種の同定はできませんし、その鑑別結果に責任を負える立場でもありません。

 また、NHKニュースによれば、

けし栽培 再発防止策を検討へ

神奈川県の農業技術センターが農家に誤った指導を行い、麻薬の原料になるとして栽培が禁止されているけしを農家が栽培して出荷していた問題で、神奈川県は、大学の研究者などの専門家に違法なけしがどうかチェックしてもらうなどの再発防止策を検討することになりました。

 え?保健所で判断するんじゃないの?「大学の研究者などの専門家」って農学系ではなく、薬学系だよね?専門家の意見を参考にするのは良いけれど、最終的な判断は県の責任で行うんだよね?・・・等々疑問山積。

 ともあれ、今回の件も種の同定がどうの、と言う視点よりは、「あへんの成分を含むケシ」の種子が各国では規制対象とされずにヨーロッパを中心に世界中で普通に流通しているという現状をどう考えるか?と言うところから発想した方が良いように思います。私は、あへんが入手できるように誰でも自由にケシを栽培できるようにするべきだとは決して思いません。しかし、もしかすると、日本では世界的なケシの栽培規制と比べて、あへん法の規制するケシの範囲を幅広くとりすぎているのではないだろうか?という疑問はあります。

 植物から薬効成分を抽出する場合、最終製品の価格を考えると、原材料となる植物に含まれる成分の含有量がある程度高くなければ抽出・精製のコストがまかなえません。ケシの場合は、最終製品はあへん(阿片)かモルヒネですが、悪用される恐れがあるのはあへんかモルヒネの加工品であるヘロインでしょう。あへんは、ケシの実(ケシ坊主)の表面に傷をつけて出てきた滲出液を風乾しただけのものなので、精製のコストはかかりませんから、そこに含まれるモルヒネ含有量が低水準でも採算がとれてしまう恐れはなきにしもあらず。

 でも、規制対象となっている園芸種についても、本当に問題とされるほど高品位のモルヒネが含まれているのでしょうか?法律で規制されているケシを栽培してはいけないという点には私は全面的に同意します。しかし、規制対象の選定の基準を種で限定するのが科学的に妥当かどうか、という点については少々疑問があります。

 もっと、繊維製品の原材料になるアサ=大麻の場合、陶酔成分を含まない品種であっても、その栽培はそれ以外の品種と同様に大麻取締法で規制されています(許可制)ので、麻薬成分を含む可能性が排除できないケシについてはデフォルトで規制対象とするのが行政的には妥当なのでしょうね、多分。

人気blogランキングへ←クリックして いただけますと筆者が喜びます!

2009年11月25日 (水)

トランス脂肪酸に表示義務?

ヒトの介入研究では、飽和脂肪酸を含む食事と同様に、トランス脂肪酸を含む食事の摂取は、血中LDL コレステロールを増加させ、その影響は直線的な用量反応関係であることが示された。トランス脂肪酸の高摂取は、虚血性心疾患のリスクを増大させる可能性がある、とのこと。(EFSAのレポートより)

消費者担当大臣がなんだか、がんばっておいでの様子。

トランス脂肪酸、含有量表示検討へ…消費者相  

マーガリンなどに含まれ、大量に摂取すると心臓疾患のリスクを高めると言われるトランス脂肪酸について、福島消費者相は24日、閣議後の記者会見で「含有量の表示を食品の成分表示で義務づけるよう、消費者庁で検討する」と述べた。
 トランス脂肪酸は、悪玉コレステロールを増加させる一方で、善玉コレステロールを減少させることから、欧米などでは含有量が規制されており、「国内でも規制すべきだ」という声が消費者団体などから上がっていた。福島消費者相は「日本人の食生活では直ちに影響はないと言われているが、啓発のためにも表示する方向で業界からも意見を聞いていきたい」とした。
(2009年11月24日11時41分  読売新聞)

トランス脂肪酸の食品としてのリスク評価は食品安全委員会が行っており、既に評価結果を公表しています(PDF)。これによると、

今回の食品安全委員会の調査結果から、日本人一日当たりのトランス脂肪酸摂取量は、食品群別摂取量から推計(積み上げ方式)すると平均0.7g(摂取エネルギー換算では約0.3%)で、食用加工油脂の生産量から推計すると平均1.3g(同約0.6%)でした。これらの値は、総エネルギー摂取量の1%未満となりました。ただし、これらの推計は、国民健康・栄養調査の平均値を使用しているため、個人のばらつきを把握することは困難です。脂肪の多い菓子類や食品の食べ過ぎなど偏った食事をしている場合では平均値を大きく上回る摂取量となる可能性はありますが、現時点では、その程度について予断できません。
 したがって、消費者の健康保護の観点から、今後とも、日本人(又は日本での)の摂取量や各摂取レベルにおける健康への影響等に関する国内外の新たな知見を蓄積していくことが必要であると考えられます。

平均的な食事を取ってる限り特段のリスクは無いけれども、取りすぎると油断できないよ、とのことで、福島大臣の認識とそう違いはない模様。

しかし、”啓発のためにも表示する方向”というのはどうなんだろう?食品表示の法的根拠はJAS法と食品衛生法。前者は消費者の選択の自由のための表示、後者は健康の保護に関わる表示を規定している(わかりやすい解説はこちら)。なので、啓発っていうのはどちらなんだろうか。

食品安全委員会では、知見の集積は必要としつつも、健康の保護という観点では特に問題視していないので、食品衛生法を根拠にするのは難しいように思う。

さてそこで、日本人の虚血性心疾患による死亡率に関する統計を見ると、 北畠顕ほか「虚血性心疾患の一次予防ガイドライン」2006年改訂版によれば、1997-2003の間、”旧ソビエト連邦の構成国ならびに東欧・北欧の死亡率が上位を占め,ついで西欧・北米の先進諸国が続いている.これに対し日本の死亡率は先進国の中で最も低く,東欧・北欧の1/8~1/10,西欧・北米の1/5 に過ぎない.”とある。

つまり、これらの報告から言えることは、

  • 日本人一日当たりのトランス脂肪酸摂取量は、米国の1/4-1/8、ギリシャと同等か1/2程度に過ぎない。
  • 日本人の虚血性心疾患による死亡リスクは先進国中最低水準で西欧、北米の1/5程度。

ということであって、科学的見地からは、食品中のトランス脂肪酸に対して何らかの対策を執っても平均的な国民の健康の維持向上に特段の効果が見込める状況にはない、と言って良いだろう。

# ここまで書いて、以前FoodScienceに国立医薬品食品衛生研究所の畝山さんが似たような話を書いていたことを思い出した。こちら

私、狭心症持ちです。つまり、冠動脈で動脈硬化がおこって心筋への血液の循環が悪くなって治療を受けています。ちなみに、牛肉はあまり食べません。マーガリンは滅多に食べません。デニッシュのようなパンもほとん食べないので、ショートニングも口にしません。

ちなみに、虚血性心疾患の要因としては、 北畠顕ほか「虚血性心疾患の一次予防ガイドライン」2006年改訂版の”6.精神保健”の項にによれば、

 健康に影響を及ぼすストレス要因としては,仕事の負荷,責任などの仕事の要求度,仕事を行なう上での裁量度や自己能力の発揮などの仕事のコントロール,および職場の人間関係としての上司,同僚の社会的支援がある.
 特に仕事の要求度が高く,仕事のコントロールが低い職場で精神的緊張度が高く,健康問題が生じやすい.さらに,職場での上司・同僚の支援が低いことがもっとも問題を生じやすい.

(略)仕事の要求度が高く,仕事のコントロールが低い高ストレイン群での虚血性心疾患の相対危険度は1.5~5 倍である.

あ・・・、これはまずいなぁ。ステント内の血管内皮が再生するまでにあと7ヶ月くらいかかるはずだし。

人気blogランキングへ←クリックしていただけますとランキングが上がって、この意見がより多くの人の目にとまります!

2009年10月13日 (火)

コカイン・ワクチン

CNNニュースより。

コカインの「ワクチン」、世界初の治験 効果ありと米研究者

ロンドン(CNN) 米イェール大学医学部の研究者らが、開発した「コカイン・ワクチン」の治験を実施し、ある程度の効果が得られたとする研究結果を、米医師会が発行する専門誌に発表した。コカイン・ワクチンが人体に接種されるのは、世界で初めて。ワクチンにより体内にコカインへの抗体を作らせることで、 コカイン中毒を食い止める一助になるとしている。

この研究を率いた現ベイラー医科大学のトーマス・コステン博士によると、ワクチン接種で体内にコカイン抗体を作らせ、体内に取り込まれたコカインが抗体と結びつくことで、コカインが脳に流入せず、快感や高揚感を得られなくなるという。その結果、コカインを摂取しても気分が良くならないため、コカイン摂取習慣の解消が見込まれるという。

被験者は2003年10月から05年4月にかけてコネティカット州ニューヘイブン地域で募集した、コカインとアヘンに依存症状を持つ、18─46歳の115人。男性が67%、白人が87%で、ほとんどがコカインを吸引し、マリフアナやアルコールなどへも依存していた。

被験者は2つのグループに分けられ、ワクチンと偽薬(プラセボ)を12週間にわたって5度、接種した。期間中は尿中のコカイン濃度を検査した。

その結果、血中抗体量が1ミリリットルあたり43マイクログラムを超えた38%の被験者で、顕著なコカイン摂取と尿中コカイン濃度の減少が確認された。また、血中抗体量が少ない被験者よりも、多い被験者の方が、よりコカイン吸引の頻度が減ったという。

コステン博士は、中毒に陥るような習慣的なコカイン吸引を防ぐ、有効な手段になりうると主張。また、アルコール以外の中毒性薬物の治療にも応用できる手法だと話している。

この種の記事としては、血中抗体濃度などデータが出てるのはオドロキ。比較のために朝日新聞を以下に引用。

コカイン中毒、「ワクチン」で絶頂感防ぐ 米大学研究

2009年10月13日8時2分

 【ワシントン=勝田敏彦】感染症の予防に使われるワクチンに似た働きをする物質で、コカイン中毒患者の依存症をある程度防げることが、米エール大などのチームの研究でわかった。米医学誌アーカイブズ・オブ・ゼネラル・サイキアトリー10月号に発表した。

 コカイン中毒に対するワクチンは、体の免疫系を刺激してコカイン分子にくっつく抗体を作らせる物質。抗体がついた血液中のコカイン分子は、「血液脳関門」と呼ばれる機構を通過できず、脳に入れなくなり、患者はコカイン吸引による絶頂感が得にくくなる。

 チームは、18~46歳の患者115人を二つのグループに分け、片方にはワクチンを、もう片方には偽薬を注射した。

 その結果、ワクチンを投与された患者の38%で、絶頂感を防ぐのに十分な濃度の抗体が血液中に存在していた。また生活指導などの結果、コカインの使用を半分に減らすことができた患者は、濃度が低いグループでは23%しかいなかったが、濃度が高いグループでは53%いた。

 米国ではコカイン中毒を治療する薬は承認されていないが、米国立保健研究所(NIH)のノラ・ボルコウ博士は「今回の結果は、効果的な治療に向けた有望な一歩だ」とのコメントを発表した。

えーと、薬物の常習性は”絶頂感”によるものでは無いと思うんですけどね。

論文はこちら

  1. Bridget A. Martell et al., “Cocaine Vaccine for the Treatment of Cocaine Dependence in Methadone-Maintained Patients: A Randomized, Double-blind, Placebo-Controlled Efficacy Trial,” Arch Gen Psychiatry 66, no. 10 (October 1, 2009): 1116-1123, doi:10.1001/archgenpsychiatry.2009.128. 

ともあれ、諸般の事情で日本ではできない種類の治験です。”ほとんどがコカインを吸引し、マリフアナやアルコールなどへも依存”という被験者を集めるのも大変そうだし。治療中も少量のコカインを処方しているようだし・・・。

ちょっと気になるのは、

”38%の被験者で、顕著なコカイン摂取と尿中コカイン濃度の減少が確認された。また、血中抗体量が少ない被験者よりも、多い被験者の方が、よりコカイン吸引の頻度が減ったという。 ”

・・・処方というより被験者が自由にコカインを吸引できるのでしょうか。想像の他ですね。

しかし、血流に乗って脳に入る薬物の量が減ると、禁断症状はでないんでしょうかね。

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!

 

2009年6月22日 (月)

ジフテリア毒素を利用した医薬品

細菌の生産するタンパク質毒素を利用した医薬品が幾つかある。有名どころではボツリヌス菌(Clostridium botulinum)の生産する毒素を利用したシワ取りで有名なBotoxなどがそうだ。

ちょっと調べものをしていた際に、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)の産生するジフテリア毒素を利用した医薬品を見つけた。「ONTAK」(一般名:denileukin diftitox)という医薬品で、ヒトIL-2とジフテリア毒素のAフラグメントの融合タンパクだ。

ジフテリア毒素はA-B毒素に属するタンパク質毒素で、細胞内で毒性を発揮するA fragment (DT-A)と、細胞表面のレセプターに結合して毒素の引き込み役に当たるB fragment (DT-B)が結合した状態で初めて毒性を発揮する。A fragmentの発揮する毒性はelongation factor - 2 (EF-2)の失活によるタンパク合成阻害である。

一方、AあるいはB fragmentのみでは細胞に侵入できないため、単独では毒性を発揮しない。

A M Pappenheimer et al., “Diphtheria toxin and related proteins: effect of route of injection on toxicity and the determination of cytotoxicity for various cultured cells,” The Journal of Infectious Diseases 145, no. 1 (January 1982): 94-102.   

従って、このタイプのタンパク質毒素の断片は、全体としてのLD50が規制値に達していても、単体でのクローニングや発現はカルタヘナ法において大臣確認の対象とはなっていない。この点の二種省令の解釈についてはポジションペーパーが出されている。

ただし、ちょっと微妙な点がある。

A サブユニットについては、AB 毒素のA サブユニットをコードする遺伝子をネガテイブ選択マーカーとして含む認定ベクター又は安全性に於いて同等の認定ベクター由来ベクターを用いる実験等において、発現された蛋白が個体に毒性を発揮させるような遺伝子構築或いは発現の実験でない限り、大臣確認を必要としない。

逆を言えば、「発現させた蛋白が個体に毒性を発揮させるような遺伝子構築物あるいは発現の実験である場合は、大臣確認を必要とする場合がある」ということ。

ONTAKではT細胞への分子標的のためにIL-2を利用しているが、これに限らず、細胞表面のレセプターと結合してエンドサイトーシスで細胞内に取り込まれるペプチドであれば何でも、DT-Aとの融合タンパク質を作成する実験の場合は大臣確認実験に該当する可能性があることになる。

# あとはLD50と認定系との組合せ次第。

人気blogランキングへ←このへん、クリックしていただけますと、私も若干元気になるかもしれません。

2008年12月24日 (水)

ヒトは”超”雑食性

今宵はクリスマスイブ。クリスチャンばかりではないので、”Happy Holidays!”という挨拶が政治的には正しい(politically correctな)表現だそうです。

さて、朝日新聞のニュースより。

人のごちそう、ペットには「毒」 パーティ残り物に注意

2008年12月24日

【ワ シントン=勝田敏彦】クリスマスパーティーや忘年会のシーズンを迎え、「残った食べ物を不用意にペットにやらないで」と全米動物愛護協会(ASPCA)が 呼びかけている。人間にはごちそうでも、ペットには「毒」になることも少なくないという。日本でも参考になりそうだ。

 まず注意すべきことは「残り物をやって、ペットが食べ過ぎにならないように」。食べ過ぎると消化不良になったり、下痢をしたりする。

 また酒類はペットが近づけない場所に置く。菓子も注意が必要で、犬がチョコレートを食べると吐き気を催したり不整脈になったりするし、甘味料のキシリトールも少量をとっただけで低血糖に陥り、最悪の場合は肝不全になる。

 このほか「ペットの毒」としてアボカド、コーヒー、マカダミアナッツ、タマネギ、干しブドウ、ニンニクなどをあげた。花束に入っているユリの花も、猫が食べると腎不全を起こすことがあり、注意が必要だとしている。

 ASPCAの獣医師スティーブン・ハンセン博士は「人間のこの時期の習慣が、ペットには脅威になることがある」と指摘した。

 
ヒトには無害な化学物質が他の生物には毒になることがある。この記事でもタマネギが挙げられているが、かつて科学技術庁の委託で行なわれた放射線照射タマネギの安全性試験の事例を思い出した。あらましは、放射線照射した乾燥タマネギをマウスやラットに食べさせて亜慢性毒性試験を行い安全性を確認するという試験で、タマネギ自体に毒性があるため、放射線照射を行っていない動物にも奇形やひ臓の肥大が見られたというものだ(*)。

タマネギに含まれる硫化物は、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジなど多くの動物に中毒を起こさせる。これは、赤血球が破壊されるためにおこる極度の貧血を伴うもので、場合によっては致死的だ。マウスやラットはある程度耐性があったので死ななかったのだが、それでも無事では済まなかったのだろう。

同様の理由で、スパイスやハーブなど、それ自体に生理活性のある食品では動物実験による安全性の確認が難しい。

どのような物質が毒になるかは、その物質がある生物の生体内でどのように振る舞うか、あるいはその物質に対して生物がどのように振る舞うかで決まってくる。 ある生物にとって毒性のある物質であっても、それを代謝して無毒化できるで動物にとっては毒ではない。コーヒーや緑茶に含まれるカフェインはヒトにとって はほぼ毒ではないが、大抵の動物にとっては毒だ。特に、ナメクジやカタツムリにとっては、カフェインはインスタントコーヒー程度の濃度でも致死的な毒だ(**)。

また、耐虫性遺伝子組換え作物に含まれている一方で、有機農業で使用できる数少ない殺虫剤であるBtトキシンも、特定の昆虫に対しては毒性を発揮する。しかし、ヒトを含むほとんどの生物に対しては無害である。

上記の記事とは逆にヒトに対しては毒性を示すアルカロイドに耐えられる生物もいる。カイコはクワの葉を食べるが、クワの葉には高濃度のアルカロイドが含まれていて、カイコ以外の生物はほとんど”安全に”食べることはできない。しかし、カイコの糖を加水分解する酵素はそのアルカロイドによる妨害を受けないため、クワはカイコにとって唯一の貴重な食糧になっている(出所はこちらのblog経由***)。

ヒトは様々な生物を食べることができる。究極の雑食動物と言えるかも知れない。それが、自然に備わった強力な解毒能力によって支えられていることを上の記事は示している。

しかし、ヒトの強力な解毒能力を以てしても、天然毒による食中毒は後を絶たない。産経ニュースより。

スイセン球根で5人食中毒 小学校の調理実習、タマネギと間違え

2008.12.6 00:50

  茨城県は5日、同県潮来市の徳島小学校で、調理実習で作ったみそ汁を食べた児童5人が吐き気や嘔吐(おうと)の症状を訴えたと発表した。全員軽症。みそ汁 に、校庭の菜園で栽培していたスイセンの球根をタマネギと間違えて入れたという。スイセンには中毒症状を起こす物質が含まれており、県は食中毒とみてい る。

 徳島小によると、5日午前、みそ汁に入れて3年生と4年生の児童11人と教諭1人が食べた。

スイセンのアルカロイドに関する情報はこちら。毒性の発現機構はアセチルコリンエステラーゼの阻害作用なので、メタミドホスなど有機リン系殺虫剤による中毒と症状が似ているのではないだろうか。スイセンの球根に毒性があることは古くから知られていたが、毒性を示す物質が同定されたのが以下の論文(2002年)であれば、かなり新しい情報だ。

López, S. et al. Acetylcholinesterase inhibitory activity of some Amaryllidaceae alkaloids and Narcissus extracts. Life Sci 71, 2521-9(2002).  

それにしても、菜園にスイセンを植えるというのはいかがなものか・・・。しかもスイセンの球根はタマネギより相当小さいと思うけれど、間違えるものなんだ。

ところで、神国日本には古より八百万の神々のうちの一柱として”基督”様がおわします。その縁日には、世界の平和を祈念するのが、我が国の習わしとなっております。この良き日に寂しくブログなんか見ているあなたに(あるいは書いてる私に!)、メリー・クリスマス!

人気blogランキングへ←このエントリーの情報はお役に立ちましたか?

クリックしていただけると筆者が喜びます!

2008年12月 8日 (月)

マウスの脂肪細胞(白色脂肪細胞及び褐色脂肪細胞)からプリオン病が感染することがわかった。

ニュースソースはEurekAlert!

オリジナルの論文はPLoS Pathogensに掲載された。

これまで、BSE等のプリオン病は神経系や胸腺などの”特定危険部位”(政府で使われているこの訳語は不適切であると思う)を介して家畜から人に感染すると考えられてきた。この論文で著者は以下のように示唆している。

Our results suggest that fat tissues of domestic or wild animals infected with prions may pose an unappreciated hazard for spread of infection to humans or domestic animals.

我々の結果は、次のことを示唆している。プリオンに感染した家畜や野生動物は、ヒトや家畜へのこれまで認められなかった感染の危険性を引き起こすかもしれない。

もし、表題どおりの現象が通常のウシでも起きるのであれば、全頭検査は言うに及ばず、”特定危険部位”という括りでリスク管理をしてきたことが、ほぼ無意味であったことになる。なにしろ、大量にある皮下脂肪でもプリオンが感染するということなのだから。ただし、そのプリオンの量と感染力がどの程度かによってとるべき対応は大きく違ってくるはずなのだが。

この論文を読むにあたり、留意するべき事項

要するに、ウシに適用しうる結果か?

     
  1. 使用されたマウスはプリオンに対する感受性が高いものが使用されていないか?(通常の動物では問題にならない水準ではないのか?)  
         
    • 組織へのプリオンの分布の調査は野生型のマウスだった(TGマウスも比較に用いている)。    
    • 脳の感染力価は野生型もTGも同等。(感染力価は8.9 vs. 9.8)    
    • 脂肪組織(皮下)の感染力価は、野生型ではTGの約1/2-1/3(4.7 vs. 8.6)    
    • しかし、この値は特定危険部位にあたる脳の1/2であり、舌(野生型では、4.7)と同等。安全と考えられている血清(野生型では1.8)の2倍以上にあたる。  
     
  2. 使用されたマウスは高齢ではないか?(例えばウシでは20ヶ月例以下では問題にならないレベルのものではないか?)  
         
    • 6-12ヶ月齢の若いマウス  
     
  3. プリオンの接種の方法は特別か?(近年、リスクとなりうる原発性のBSEを模している状況と言えるか、あるいは脳内接種?)  
         
    • 脳内に組織磨砕物の希釈系列を50uL投与  
     
  4. 脂肪細胞に蓄積していたプリオンの量は、神経細胞と比べて多いか少ないか?(仮にウシの脂肪で同等量が蓄積していた場合、ヒトが摂取する可能性のある見積量はどの程度か?)  
         
    • 感染力価で表現しているので分からない  
     
  5. 22Lスクレイピーに感染したマウスの組織は、感染力価は確認されているのだが、WTではImmunoblottでは脳以外の組織にプリオンが検出されていない。これは謎

など。

immunoblotと感染力価が対応していない、野生型個体については組織免疫染色でも脂肪組織そのものにはプリオンが確認されていない、など若干データに不整合があるように感じる。

論文の表題でも、”Detection of Prion Infectivity in Fat Tissues of Scrapie-Infected Mice”とあるとおり、プリオンそのものが脂肪細胞から検出された、と言うわけではない。感染性の基礎となる現物のプリオンが検出されないのは???

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!

2008年12月 1日 (月)

ヘビ毒から鎮痛ペプチド

11/30の朝日新聞より。

ガラガラヘビ毒から「強力」鎮痛物質 富山大

 南米産のガラガラヘビの毒から、モルヒネの数百倍の鎮痛作用がある物質を抽出して合成することに、富山大和漢医薬学総合研究所の紺野勝弘准教授らが成功 した。ラットの実験では効果が3日以上持続し、飲み薬の麻酔に使える可能性があるという。共同研究する製薬会社を探し、新薬の開発をめざす。

 ブラジルに生息するガラガラヘビは、運動神経をまひさせる猛毒で知られるが、かまれても激しい痛みを感じないという。ブラジルでは30年代に、毒を薄めて痛み止め薬として市販されていたという。

 紺野さんは、世界的な毒蛇の研究機関として知られるブラジルのブタンタン研究所や富山大で、ガラガラヘビの毒を分析。チームで、アミノ酸が14個つながった化合物が鎮痛物質と突き止めた。

 さらに、鎮痛効果を確かめるため、ラットの脚に重さをかけ、どれぐらい我慢できるか調べた。この物質を飲んだ群は飲まない群に比べ、ほぼ倍の重さ の痛みに耐えることができた。その効果は、1回、飲ませただけで3~5日続いた。モルヒネで同じ効果を出すには、その数百倍の量が必要なことも分かった。

 モルヒネは、使う量を増やさないと効き目が悪くなることがある。一方、このヘビの毒は量を増やさなくても同じ効果が続いたという。

 紺野さんは「飲み薬として使えれば、普及する可能性がある。痛みを抑える仕組みを解明して、薬作りにつなげたい」と話している。(佐藤久恵)

ペプチド医薬品は単価が高くなりがちなところが泣き所ですが、これは次の点で画期的な発見です(いずれ安く製造できるようになると良いのですが)。

  • ”アミノ酸が14個つながった単純な構造の化合物”であること。
  • 経口投与できること。注射しなくても良いので、ガン患者等のペインクリニックには向いているかもしれません。
  • 持続時間が長いこと。3-5日間効果が継続するということは、なかなか代謝されないということ。主成分がペプチドであれば、モルヒネなどのアルカロイドのように代謝する器官に負荷がかかることもないはず。

カルタヘナ法関係では、ガラガラヘビは実験分類クラス1ですので、認定宿主ベクター系であれば、拡散防止措置はP1レベルで十分です。毒素の毒性の強さによっては大臣確認が要りますが、後述の論文では、この毒素を使ってラットの経口投与試験をしているので、LD50が「体重一キログラム当たり百ナノグラムを超える」ことから大臣確認実験には該当しません(最大で25 μg/kg投与しています)。

もっとも、「毒を薄めて痛み止め薬として市販されていた」とありますので、鎮痛成分自体はもともとそう強い致死性の毒素ではないはずです。

ペプチドが経口投与で生理活性を発揮するというのは実は結構大変なことで、消化管で全く分解されないか、あまり分解されない、小腸の壁から吸収されて血流に乗る、しかも生理活性(この場合は鎮痛作用)を発揮する様な血中濃度が維持できること、など様々な関門があります。鎮痛作用といっても、局部麻酔のように局所的に末梢神経の刺激の伝達をブロックする場合と、中枢神経を抑制する場合があります。脳で作用する物質の場合は血液脳関門を透過しないといけな いので、文字通りもう一つ関門があることになります。通常、opioid peptideはなかなか脳関門を通らないとされているので、脳に届いて作用するのであればそこも画期的です(・・・天然物なのに!)。

論文が出ているはずと思って調べてみたらこちら。鎮痛物質はcrotalphineと言うそうです。鎮痛ペプチド(-phine)らしい名前ですね。Abstractによると、
"This 14-amino-acid residue sequence is identical to the gamma-chain sequence of crotapotin, a non-toxic component of this snake venom."
とのことですので、毒性の心配は要らない様です。

一方、
"The amino acid sequence of this peptide, designated crotalphine, was determined by mass spectrometry and corroborated by solid-phase synthesis to be <EFSPENCQGESQPC, where <E is pyroglutamic acid and the two cysteine residues forming a disulfide bond."
とのことで、N末端側がピログルタミン酸になっているので、もし組換え生物に作らせるとしたら、相当の工夫が必要かも知れません(ピログルタミン酸はそのま まではエドマン分解できないそうなので、構造決定の際にも厄介だったのではないでしょうか)。また、7番目と14番目のCystein残基がS-S結合し ているようなので、そのあたりをきちんと分子内で結合させる制御が難しそうです。

なお、新聞記事の見出しでは”「強力」鎮痛物質”とありますが、強さで言えばイモガイの産生するコノトキシンの方が強いかも知れません。しかし、あまり作用が強いものはコントロールが難しくなってしまいます。また、コノトキシンは経口投与できないそうなので、その点でもcrotalphineの方が使い道によっては有利でしょう。

ちなみに、鎮痛作用はあまり強くはありませんが、ホウレンソウ由来のRubiscolin-6というものもあります。こちらも経口投与で作用が現れるのですが、鎮痛作用だけでなく記憶力改善にも効果があり、さらに抗不安効果もあるとのこと。構造は単純で、6アミノ酸残基(Tyr-Pro-Leu-Asp-Leu-Phe)で、修飾や分子内結合はありません。

ただし、こちらの論文で は経口投与の場合の投与量が0.1g/kg体重なので、体重60kgのヒトであれば、このペプチドだけ6gも摂取しなければいけません。ご飯(白米)のタ ンパク質含有率は約2.5%ほど。粗タンパク量としては、ご飯を240g食べれば6gのタンパク質を摂取できますが、お米のタンパク質全量を組換えタンパ ク質に置き換えられる訳ではないので、技術的にはかなり難しいところです。

※ ですが、抗不安薬の成分を含んだ組換えイネというのは、社会的なコンセンサスを得るのは難しいように思います。モルヒネの受容体に作用するようなので、も し習慣性があると困るし・・・。でも、お米ってほぼ毎日食べてるような・・・いやいや、他の品種のお米だと食べた気がしない、というのではやはりいけない。

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます! 」

2008年10月15日 (水)

冷凍インゲンから毒物を検出 消費者に健康被害か

私なら表題のような見出しを付けます。また意図的な毒物混入の疑いです。朝日新聞より。

検査4度くぐる 農薬冷凍インゲン 異常検出されず

2008年10月15日14時5分

中国製冷凍インゲンを食べた東京都八王子市の主婦(56)が体調不良を訴え、基準値の3万4500倍にあたる農薬ジクロルボスが検出された問題で、該当する商品は国内外の会社や検疫所で実施された計4回の検査を受けて流通していたことがわかった。

 輸入したニチレイフーズと販売したイトーヨーカ堂の担当者が15日、厚生労働省で記者会見し、明らかにした。

 ニチレイフーズが輸入した「いんげん」(250グラム)を製造したのは、中国の北緑食品(黒竜江省)と煙台北海食品(山東省)。

 北緑食品の農場で原料を収穫し、残留農薬の検査をした後、洗浄などを経てゆでて仮包装。煙台北海食品に送られ、同社が残留農薬の検査を実施した。中国国内での輸出前検査を経て出荷され、いずれの段階でも異常は報告されていなかったという。

 国内の検疫所でも抜き取り調査は実施されているが、該当する種類のコンテナが含まれていたかどうかは不明。その後、ニチレイフーズでも自主検査を実施したが異常はなく、同社の担当者は「(生産段階での)混入は考えられない」としている。

 主婦がイトーヨーカドー南大沢店で購入した11日には計46個が販売され、同店はこれまでに38個を回収。15日正午現在、主婦が食べた商品以外に農薬検出の報告はないという。

何度も報道されていますが、抜き取り検査はロットの代表値しか調べられないので、このような希なケースを検査で阻止するには全数検査をするしかありません。しかし、食品の毒物を非破壊で検査する方法は現在ありませんので、検査で毒物の混入を阻止するのは不可能です。しかも、大半の冷凍インゲンにはそもそも高濃度の殺虫剤は元々含まれていないので、「農薬冷凍インゲン 異常検出されず」というのも当たり前のこと。何を考えてこのような見出しをつけたのか、朝日新聞社の理解力を疑います。

「検査4度くぐる」と言う言い回しは、読者の不安を煽る以外に何の効用も持ちません。検査が5度だろうが100度だろうが、抜き取り検査では散発的な出来事の検出は不可能なのですから。

毎日新聞では次のように書いています。

 残留農薬の有無については、まず収穫前の原料検査を実施、その後、製品化されるまでに2回行い、日本への輸入後も複数回行われるという。しかし、いずれの検査も一部のサンプルを調べるだけで、今回問題となった「いんげん」は検査をすり抜けた可能性が高いという。

残留農薬のように、ロットを構成する原材料全体に同程度に農薬が残っていることが予想される場合には、抜き取り検査、あるいはサンプル調査と言っても良いですが、それで対応できます。繰り返しになりますが、全数調査は無理です。検査試料は粉砕しなくてはいけませんので、農薬の抽出過程で食べ物では無くなってしまいますから。

その範囲では、ニチレイフーズの検査態勢は間違っていないでしょう。検査の信頼性については判断材料がありませんので何とも言えませんが。

食品に限らず、製品の安全を担保するのは、結局の所、消費者に良いものを届けたいと願う食品の作り手の「志」しかありません。厳罰主義で製造現場を縛ろうとする考え方では対応を誤ります。

残念なことではありますが、今回のように作り手の良心を信じられない事態に至った場合にはもう、そこから製品を調達するのはあきらめるほかありません。

それにしても、ギョーザ事案の教訓でしょうか、製品の撤去、事実関係の公表・消費者への呼びかけ、工場への聞き取り調査、製造工程の洗い直しなど、まだ完了していない部分はありますが、12日の事故発生から殺虫剤の検出・公表までの今回の行政の対応はきわめて迅速です。

ただ、ジクロルボスのリスクに関する報道はお粗末。基準値の何万倍という言い回しを相変わらず使っています。マスコミにももう少し学習していただきたいものです。

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!

twitter

  • Bernard_Domon

Ranking

  • にほんブログ村 科学ブログ 生物学・生物科学へ
    日本ブログ村
無料ブログはココログ