知ってか知らずかSMTA
食料・農業植物遺伝資源条約(ITPGR)という国際条約があります。これは条約事務局がFAOの中に置かれている国際条約で、農作物の遺伝資源の国際取引に関する事実上の国際標準ルールを定めていて、遺伝資源が世界中で広く使われることを目的としています。
この条約のルールに従って植物遺伝資源を取引する際には「標準材料移転契約書」(Standard Material Transfer Agreement)、略して"SMTA"という契約書が使われています。この契約書の第6条には遺伝資源の受領者の義務の一つとして、次の規程があります。
6.7 In the case that the Recipient commercializes a Product that is a Plant Genetic Resources for Food and Agriculture and that incorporates Material as referred to in Article 3 of this Agreement, and where such Product is not available without restriction to others for further research and breeding, the Recipient shall pay a fixed percentage of the Sales of the commercialized Product into the mechanism established by the Governing Body for this purpose, in accordance with Appendix 2 to this Agreement.
6.7 受領者が、食料農業植物遺伝資源であり本契約の第3条に規定されている契約材料を組み込んだ成果物を商業化する場合で、かつ、その成果物が更なる研究と育種のために他者が制限なく利用できない場合には、受領者は、本契約の付属書2に従って、商業化した成果物の売上高の一定割合を、締約国理事会がこの目的のために設立した機構へ支払わねばならない。
要するに、受領した遺伝資源を使って商業品種を育成した場合でも、その品種をさらに育種に使っても良い場合には、金銭的な利益配分を免除されると言うルールです。
話は変わって、Monsato社が遺伝子組換え作物の種子の購入者と交わす契約書について。この契約書は”Monsanto Technology Stewardship Agreement”と呼ばれています。略して"MTSA"・・・何かに似てますね?この契約書の目的は、Monsantoの特許技術の囲い込みです。
このMTSAには、種子の購入者の義務として次の一文が書かれています。
Grower may not plant and my not transfer to others for planting any Seed that Grower has produced containing patented Monsanto Tehnologies for crop breeding, research, or generation of herbicide registration data.
つまり、育種、研究、除草剤登録のためのデータをとる目的でのMonsantoの特許技術を含む種子の栽培や譲渡を禁止する条文です。
"SMTA"と"MTSA"字面は似ていても、求めるものは正反対。さて、ITPGRの事務局の人達はMTSAのことを知った上で、条約の契約書をSMTAと名付けたんでしょうかね・・・だとしたら結構な皮肉屋ですが。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント