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2013年3月の記事

2013年3月21日 (木)

除草剤感受性イネ -あるいは転んでもただでは起きない研究者達-

 大抵の植物を枯らす非選択性除草剤を使える除草剤耐性の遺伝子組換え作物を除けば、特定の作物にはそれに適した除草剤の組合せがある。例えば、イネに使われる除草剤はイネ以外の除草剤を枯らすことができるが、「大抵のイネ」には作用しない。
 ここで、「大抵の」と書いたのは、希にイネ用の除草剤を散布すると枯れてしまう困ったイネがあるからだ。例えば、これ。

 

ポイント

  • 飼料用イネなど、新規需要米向けの水稲品種の中に、特定の除草剤成分に極めて弱いもののあることが分かりました。
  • 水稲品種「ハバタキ」「タカナリ」「モミロマン」「ミズホチカラ」「ルリアオバ」「おどろきもち」「兵庫牛若丸」を栽培するときには、ベンゾビシクロン、メソトリオン、テフリルトリオンのいずれかの成分を含む除草剤を使用しないよう十分注意してください。

 育成に使われたイネの遺伝資源の中に、「ベンゾビシクロン、メソトリオン、テフリルトリオン」といった除草剤に感受性の遺伝子をもったものがあって、その性質が後代に残ったためにこうした現象がおきるのだろう。品種と除草剤の組合せに注意すれば、間違ってイネを全部枯らしてしまうような不幸な事故には至らないとは思うが、できればこうした除草剤感受性はないに越したことはない。薬剤の方が品種よりあとで出来たのではあるけれど、育成の問題か、除草剤の開発の問題かはさておき、ある意味これは失敗である。

 しかし、その一方でこの現象に、これはこれで「使える!」と目をつけた研究者もいる。WIPOのサイトで次の情報を見つけることが出来た(なぜか私は国内特許の検索サイトでは上手く見つけられなかったのだけれど)。

 

(WO2012090950) PLANT HAVING IMPROVED RESISTIVITY OR SENSITIVITY TO 4-HPPD INHIBITOR
本発明は、4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を植物に付与するための薬剤、4-HPPD阻害 剤に対する抵抗性又は感受性が高められた植物体を再生しうる形質転換植物細胞、その細胞から再生された植物体、並びにそれらの製造方法に関する。また本発 明は、植物における4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性を判定する方法、及び該判定を利用した4-HPPD阻害剤に対する抵抗性又は感受性が高め られた植物の育種方法に関する。

とある。

 読んでみると、上記の除草剤感受性の遺伝子を単離して、遺伝子組換えの際の選抜マーカーに利用する技術と、それを利用した植物に関する特許である。この特許明細では、上記の除草剤感受性、つまり4-HPPD阻害剤に対する耐性/感受性遺伝子はHIS1遺伝子と名付けられている。出願人の筆頭は上記のイネを育成した農研機構であり、発明者にはイネ育種研究分野のみなさんと稲遺伝子利用技術プロジェクトの皆さんが勢揃い。流石、転んでもただでは起きないというか・・・。

 この特許明細(特願2010-293451)自体が読んでいてとても面白いのだけれど、そのうち論文も出るのではないかと期待しましょう。

※ このOs06g0176700/Os06g0178500の変異は、インド型イネにはよくあるタイプらしいので、ベンゾビシクロン、メソトリオン、テフリルトリオンのいずれかの成分を含む除草剤は、他のインド型イネにも使わない方が良さそうだ。

2013年3月13日 (水)

知ってか知らずかSMTA

 食料・農業植物遺伝資源条約(ITPGR)という国際条約があります。これは条約事務局がFAOの中に置かれている国際条約で、農作物の遺伝資源の国際取引に関する事実上の国際標準ルールを定めていて、遺伝資源が世界中で広く使われることを目的としています。
 この条約のルールに従って植物遺伝資源を取引する際には「標準材料移転契約書」(Standard Material Transfer Agreement)、略して"SMTA"という契約書が使われています。この契約書の第6条には遺伝資源の受領者の義務の一つとして、次の規程があります。

6.7 In the case that the Recipient commercializes a Product that is a Plant Genetic Resources for Food and Agriculture and that incorporates Material as referred to in Article 3 of this Agreement, and where such Product is not available without restriction to others for further research and breeding, the Recipient shall pay a fixed percentage of the Sales of the commercialized Product into the mechanism established by the Governing Body for this purpose, in accordance with Appendix 2 to this Agreement.

6.7 受領者が、食料農業植物遺伝資源であり本契約の第3条に規定されている契約材料を組み込んだ成果物を商業化する場合で、かつ、その成果物が更なる研究と育種のために他者が制限なく利用できない場合には、受領者は、本契約の付属書2に従って、商業化した成果物の売上高の一定割合を、締約国理事会がこの目的のために設立した機構へ支払わねばならない。

 要するに、受領した遺伝資源を使って商業品種を育成した場合でも、その品種をさらに育種に使っても良い場合には、金銭的な利益配分を免除されると言うルールです。

 話は変わって、Monsato社が遺伝子組換え作物の種子の購入者と交わす契約書について。この契約書は”Monsanto Technology Stewardship Agreement”と呼ばれています。略して"MTSA"・・・何かに似てますね?この契約書の目的は、Monsantoの特許技術の囲い込みです。
 このMTSAには、種子の購入者の義務として次の一文が書かれています。

Grower may not plant and my not transfer to others for planting any Seed that Grower has produced containing patented Monsanto Tehnologies for crop breeding, research, or generation of herbicide registration data.  

つまり、育種、研究、除草剤登録のためのデータをとる目的でのMonsantoの特許技術を含む種子の栽培や譲渡を禁止する条文です。
 "SMTA"と"MTSA"字面は似ていても、求めるものは正反対。さて、ITPGRの事務局の人達はMTSAのことを知った上で、条約の契約書をSMTAと名付けたんでしょうかね・・・だとしたら結構な皮肉屋ですが。

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