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2010年11月21日 - 2010年11月27日の記事

2010年11月23日 (火)

種は生物多様性を表す単位になりうるのか

 このエントリーで私が言いたいことの要約

 私はこの世に「種」があることを疑わないけれども、「種の総数」を数えられるとは信じていない。だから、その総数の変化量を時間で微分した「種の絶滅速度」も測れるとは信じていない。

 三中信宏著 「分類思考の世界」(978-4062880145)を読み終えたところ。

 今年は生物多様性年ということで、世界的に生物多様性が脚光を浴びているらしく、ニュースでは「種の絶滅速度」がいや増していると報じられている。しかし、本書では、その”種”の同定、分類を担う分類学者が今や絶滅の危機に瀕していると警鐘を鳴らしている。

# まあ、分類学で飯を食うのが難しい昨今、さもありなん。

 一方で、本書は、生物”種”というものが実在するものか、そして”種”をいかに定義すればよいかという長い議論の果ての現時点でのスナップショットを垣間見せてくれる。そのありようを端的にいえば、

誰が何と言おうが、「種」はここにある。たとえ進化しようが、系譜でつながろうが、そんなことはたいした問題ではない。「愛」の前には不可能ということばはないに等しい。
 「愛とは何か」という問題を解決することに何か意味があるだろうか。「愛」がそこにあればそれで十分ではないか。「種」はわれわれにつねに寄り添い、われわれを導く。そして、「種問題」は解かれることのない謎のまま、われわれとともに永遠にあり続ける。「種」は「愛」にほかならない。

 我々は自分の脳という装置から自由になりえない。眼球という装置を通さずに世界を見ることができないのと同様、脳を通さずに画像情報を”理解する”ことはできない。我々の心の内にしかないという点で「種」も「愛」も変わるところはない。そしてそのいずれからも我々は自由になることはできない・・・ということなのだろう。

 それは、よくわかる。古典的な植物分類は表現型のパターンで種を分類する。言いかえれば、複数の形質からなるカテゴリー変数のマトリックスで定義した多次元空間上の格子点に個々の生物を落とし込むという作業を通じて分類する。既存の格子点で足りなければ新しい格子点を作る。・・・この作業には種が生成してきた際の系統関係は直接は関係しない。

 ゲノム解析が現実のものとなったこの時代に、生物学をかじった人間であれば、表現型を支配する遺伝子の存在を疑わないだろう。表現型で分類するという行為は間接的には、それを支配する遺伝子を予測して分類する ‐ 必ずしもその精度はよくないが - ということでもあるのだ。そういう意味では間接的には、あまり精度はよくないけれども系統関係を反映することになる。だが、その手法は”系統関係をどこまで下れば別種になるのか”という問題に答えを与えない。Operational Taxonomic Unit(OTU)は、OTUでしかないのだ。分子生物学的な手法で観測精度が上がったところで、その事情はほとんど変わらない。養老孟司が肉体のどの部分から肛門が始まって、どの部分までをいうのかは定義できないが、これですと言って切りだして見せることはできる、という意味のことを書いていたと思うが事情はそれと似ている。

 これまでのヒトの歴史上、”種”が如何なものであれ、それによって物質世界に対する影響は特になかったように思う。だが、今や”種”の多様性は国際条約で保全すべき対象の一つの要素である。各国は、生物多様性の保全に努める義務を負い、”種”の多様性を守ることになっている。しかし、ここでも”絶滅危惧種はこれです”、と具体的な生き物を示すことはできるのだが、集合的な扱いは非常に難しい。「種の絶滅速度」とは、実はそういうよくわからない母数に基づいた議論なのだ。

 手短にもう一度言うと、私はこの世に「愛」があることを疑わないけれども、「愛の総量」を計量できるとは信じていない。それと同じように、私はこの世に「種」があることを疑わないけれども、「種の総数」を数えられるとは信じていない。だから、その総数の変化量を時間で微分した「種の絶滅速度」も測れるとは信じていない。

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