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2010年6月13日 - 2010年6月19日の記事

2010年6月17日 (木)

Google booksでアメリカの教科書を覗き見

 昨日、とある図版を探していてGoogle booksで"Plant breeding"(植物育種)を検索してみました(育種という言葉にはなじみのない方もいらっしゃるでしょうから説明しますと、”品種改良”のことを農学分野では昔から育種(breeding)と呼んできました)。

 農学分野の大学や大学院には育種学研究室があるところも多いし、日本育種学会という学会もあります。私も、育種学が専攻で仕事として作物の育種をしていた時期もありますし、現在の仕事も広い意味では育種の一部といえるものです。

 様々な工業製品がモデルチェンジを繰り返して白熱電球が電球型蛍光灯に進化し、それがLED電球に変わっていくように、実は農業生産に使われている作物もモデルチェンジをしています。植物育種学はそのモデルチェンジを支える裏方仕事と言うところです。

 さて、Google booksで見た"Plant breeding"に関する本ですが、結構凄まじいものが出版されています。

 アメリカのトウモロコシ育種の大御所Arnel R. Hallauerの名前を冠した国際シンポジウムの要旨集ですが、過去、現在、未来のPlant breedingとは何かに答えるべくまとめられた野心的な一冊です。Google booksのpreviewで多くの部分が読めますが中でも、p.20では一般的な新規の遺伝子組換え作物開発のスキーム(育成過程の何年目あたりから各種の規制のクリアに取りかかるか)が示されていたり、p.31では、allozyme, RFLP, RAPD, STR, SNPの効率と利用の経過が示されていたり、日本の植物育種関係の出版物ではなかなかお目にかかれない先進的なテーマが扱われています。
 植物の育種に携わる人口が日米では大きく違うので、その人材供給に関わるアカデミアの層の厚さも当然違っています。なおかつ育種分野における産学の距離も両国では大きく違うので、そのあたりの事情がこういうところにも反映されているのかもしれません。
 あと、教科書ですね。

 Future of plant breeding in society (将来における植物育種の社会的位置づけ)というセクションの最初にこうあります。

The technology for using plants as bioreactors to produce pharmaceuticals will advance; this technology has been around for over a decade. Strategies are being perfected for use of plants to generate pharmaceutical antibodies, engineering antibody-mediated pathogen resistance, and altering plant phenotypes by immunomodulation.

 私たちが現在挑戦している仕事は、アメリカの育種の教科書の描く未来像でもあるんですね。こうでなくては研究開発は挑む価値がありません。・・・あまり未来だと困るんですけどね。

 ともあれ、Previewとはいえ、こういう教科書を只で読めるなんて、今時の学生は幸せです。

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2010年6月16日 (水)

続・アジサイには毒があります

 以前、「アジサイには毒があります」と言うエントリーを書いたところ、梅雨時になるとGoogleで”アジサイ 毒”と言うキーワードでこのblogを訪れる方が多くなってしまった。2年も経つと周辺の情報が色々と揃ってくるので、更新することにしました。

 以前のエントリーで書いた食中毒の事例はそちらを見ていただくとして、アジサイの毒性についての科学的な情報は農研機構・動物衛生研究所のページにまとめられています。それによると、

  • アジサイの若い葉をヒトが生で食べると吐き気、目まい等の食中毒症状が現れる。
  • アジサイの葉には青酸配糖(Hydracyanoside A, BおよびC)が含まれている。
  • ではあるが、アジサイの葉に含まれている青酸配当体の濃度で実際にヒトに食中毒症状が現れるかどうかは不明。

とのこと。つまり、ヒトの食中毒症状の事例では、原因物質がHydracyanoside A, BおよびCかどうかは疑いの域を出ず、もしかしたら他にも中毒症状を示す物質が含まれていて、そちらが原因物質である可能性は捨てきれない、という曖昧な状況になっています。

 いずれにしても、疫学的な状況証拠から言えば、アジサイの葉には何らかの毒性があると考えられますので、食べない方が無難です。ちなみに、アジサイの葉による食中毒情報については厚労省も振り回されていて、

  • 平成20 年7 月1 日 食安監発第0701001号では、「アジサイの喫食による青酸食中毒について」と題していたものが、
  • 平成20 年8 月18 日 食安監発第0818006号では、「アジサイの喫食による食中毒について」に改訂されています。

 改訂の理由は、「現時点では、アジサイに青酸配糖体が含有されているとの知見が十分でない」とのこと。

 なお、現時点というのは、2008年8月ですが、その後、アジサイの葉と茎から青酸配当体が検出されています。

Seikou Nakamura et al., “The absolute stereostructures of cyanogenic glycosides, hydracyanosides A, B, and C, from the leaves and stems of Hydrangea macrophylla,” Tetrahedron Letters 50, no. 32 (August 12, 2009): 4639-4642.   

 見てどうというものでもないんですけど、こういう構造だそうです。

 ただし、毒性の程度は不明。しかし、動衛研の方もよくこの論文を見つけたものです。Pubmedでも引っかかってこないのに。

 天然物でもオーガニックでも有毒なものは沢山あります。錬金術師パラケルスス(1493-1541)は、「物質にはすべて毒性がある:毒性のないものはない。量が毒か薬かを区別する」(キャサレット&ドール:「トキシコロジー」、日本語訳より引用)とも言いますから。

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2010年6月15日 (火)

曲げない政治家、曲げる政治家

 ベイズ推定のできない政治家とできる政治家の例。

 朝日新聞のニュース。イタリアより。

伊閣僚「W杯優勝でもボーナスカット」 代表選手ら激怒

2010年6月15日17時 2分

 【ローマ=南島信也】緊縮策に取り組むイタリア政府の閣僚が、サッカーW杯で同国代表チームが優勝した時などに支払われるボーナスの削減を提唱し、代表メンバーを激怒させている。イタリアは前回チャンピオンで、過去4回優勝している強豪。士気に影響したのか、14日の初戦パラグアイ戦は引き分け発進だった。

 ANSA通信などによると、カルデロリ法律簡素化相が6日、「国民の誰もが(緊縮策によって)犠牲を強いられる。W杯のボーナスをカットし、選手も辞退するべきだ」と発言。これに対し、代表チームのGKブフォンは「政治家はいつも徒党を組んで我々に向かってくる」。主将のDFカンナバロも「馬鹿げた国だ、とだけ言っておくよ」と吐き捨てた。

 同国代表が1次リーグを突破すると800万ドル(約7億3千万円)が、優勝した場合は3千万ドル(約27億5千万円)が同国サッカー連盟からチームに支払われる。

 ベルルスコーニ首相はセリエAの強豪ACミランのオーナーで、頻繁に試合観戦に訪れるなど熱狂的なサッカーファンとして知られている。そのためカルデロリ氏の発言は政府見解ではなく、個人的な考えとみられる。

 どれだけボーナスがカットされる見込みかも重要ですが、イタリアの選手は名誉のためだけに戦っている訳ではないことが良くわかります。ともあれ、ボーナスの原資はサッカーくじにするとか何とかやりようは無いものでしょうか。

 一方我が国のニュース。MSN産経ニュースより。

蓮舫行刷相 はやぶさ帰還を絶賛 「仕分け結果、何が何でもではない」

 蓮舫行政刷新担当相は15日午前の記者会見で、小惑星探査機「はやぶさ」の帰還を「偉業は国民全員が誇るべきものだ。世界に向かって大きな発信をした」と高く評価した。

 また、昨年11月の事業仕分けで、後継機開発など衛星関連予算を削減と判定した仕分け結果について「宇宙開発は私は直接担当しておらず、今一度流れを確認している」と釈明。「仕分け結果を何が何でも守るべきだということではない。国民のさまざまな声やご判断は次期予算編成に当然反映されるべきだ」と語った。

 ベイズ推定のできる政治家の例?ではありますが、仮に、事業仕分けという手法による研究開発行政に対するレビューのプロセスと結果が妥当であれば、予算削減の査定を見直す必要はありません。逆に、レビューのプロセスや結果に瑕疵があれば予算削減は見直し、同じ過ちが起きないように再発防止策を公表し、その上で当該レビューの責任者である担当大臣として謝罪するべきです。

 Jaxaのプロジェクトリーダーの弁。「ローコストだったのは、冗長性がない技術的挑戦だったから。それでうまくいったのは幸運」ということなので、17億円の予算を3000万円に削っては何もできません。研究者に捨て扶持を与えて生かしておくくらいなら、予算を全面的にカットして他のプロジェクトを担当させた方が、まだ人材の有効活用になるというものです。

 たしかに、はやぶさの故障からのリカバリーは素晴らしかったのですが、そもそもどうして燃料漏れなどの故障が頻発したと思ってるのでしょう。地上で十分なテストができていれば、技術者達もここまで苦労はしなかったのではないかと思います。

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2010年6月14日 (月)

はやぶさのカプセル回収

こういうセンスは良いですね。

はやぶさカプセル、先住民の聖地で発見 了解得て回収へ

 【ウーメラ(豪州南部)=東山正宜】小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰った、小惑星「イトカワ」の砂が入っている可能性がある回収カプセルがヘリによる上空からの捜索で見つかり、宇宙航空研究開発機構が14日、写真を公開した。現地の砂漠一帯は先住民アボリジニーの聖地に当たっており、同日午前、アボリジニーの代表がヘリで現場を視察。了解を得て、宇宙機構のチームが回収に向かった。

 宇宙機構によると、カプセルの落下地点は豪州南部の街ウーメラの北西約200キロの地点。13日夜にヘリが付近を捜索し、カプセルからの電波と発熱による赤外線を頼りに発見した。カプセルは直径約30センチ、高さ15センチ、重さ約6キロ。パラシュートが正常に開き、大きな破損がないことが目で確認できたという。

 現場は、豪空軍の実験場などがある立ち入り制限区域で、アボリジニーの聖地でもある。このため、豪州側がアボリジニーの代表とヘリに同乗し、現場を確認しながら、はやぶさとカプセルについて説明し、回収作業に着手する了解を得たという。

 宇宙機構の回収チームの研究者らは14日昼、ウーメラを出発した。午後には回収が終了する見込み。カプセルにはパラシュートを展開するのに使った火薬などが残っている可能性があり、まず、それらを取り除いて安全性を確認する。その後、震動を防ぐ専用の箱に入れ、空気に触れないように窒素を満たしたうえで日本に空輸する。

 週内にも神奈川・相模原の宇宙機構宇宙科学研究所に運び込まれ、詳しい解析作業が始まる見通しだ。

 人様の土地にご厄介になるのだから、現地住民の同意を得て回収作業にあたる。プロジェクトの締めくくりに近いところでも、はやる気持ちを抑えてこういうきめ細かな心遣いができるところは流石。スポンサーの一人として誇らしく思います。

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2010年6月13日 (日)

グリーン・イノベーション関係のアクションプラン改定の見込み

 5月末のエントリーで触れた、総合科学技術会議の平成23年度科学・技術重要施策アクションプランに対する意見募集が先頃締め切られました。寄せられた意見に基づき、グリーンイノベーション関係の課題では”バイオマスによる再生可能エネルギーへの転換の促進”が重点化されることになる見通しです。資料はこちら

 方策としては次の通り

(2-2) 方策「バイオマスによる再生可能エネルギーへの転換の促進」
(ⅰ)推進方針と期待される効果
 バイオマスは、自然循環系の中で森林や樹木などの形でCO2 を吸収・貯留する重要な役割を果たすと共に、熱利用、発電、バイオ燃料など多様な利用技術の開発と普及がなされており、カーボンニュートラルの特徴から再生可能エネルギーの一つとして重要である。バイオマス利用技術の世界市場は大きいが、原材料の収集・運搬コストの低減や、食料と競合しない非食料バイオマスの転換技術などの課題がある。これらの解決に向けて、我が国が強みを有する植物科学、バイオテクノロジーを活かし、バイオマス利用技術の研究開発によるブレークスルー創出、イノベーション創出、さらに、地産・地消型エネルギー需給システムの確立など普及拡大に向けた各種施策を総合的に展開する必要がある。

 課題の設定された領域は、

  • 原材料の収集・運搬コストの低減: エネルギーの地産地消という感じ?
  • 食料と競合しない非食料バイオマスの転換技術: 耕地以外でのバイオマス生産?
  • など: その他少々

 対応する研究分野は、

  • 植物科学
  • バイオテクノロジー
  • バイオマス利用技術の研究開発
  • 地産・地消型エネルギー需給システム

とのことですので、遺伝子組換え+植物科学+発酵技術+プラント製造技術の分野の実用化につながる研究開発に向こう10年間、重点的に研究資金を配分する見込み。

 同じ植物科学でもバイオマス実用化以外の分野は先細りになる模様。私はそちら方面に行く予定はないので先の見通しは明るくない。

 ともあれ、こういう未来予想もある。毎日新聞より。

文科省:「未来予測図」 2031年に宇宙観光、24年にマイカー消える

 文部科学省科学技術政策研究所は10日、今後30年間に実現しそうな新技術を発表した。大学や企業など専門家の意見を踏まえたもので、環境技術や宇宙分野での進展が期待されているのが特徴だ。
 調査は71年から5年おきに行われ、今回で9回目。分野の異なる専門家135人が12分科会をつくり、解決すべき技術課題として計832項目を列挙。2040年までの実現性などを有識者にアンケート調査し、延べ2900人が回答した。
 地球温暖化問題を受け、環境・エネルギーや情報通信の技術に関心が集中。また、「自動車の大部分はリースか共有」(24年)となりマイカーは消えるなど、人々の価値観も変わると予測している。しかし、温暖化の国際交渉で25年に「温室効果ガス半減に向け、途上国を含めた計画策定が実現」と悲観的な結論になった。
 宇宙開発では、31年に宇宙旅行が広まり、40年には有人月面基地が現れる。
 技術発展のため「関係を強化すべき国」には、従来の欧米に加えて中国を挙げる意見が増え、ここでも環境問題などで中国の存在感の大きさが反映した。
 予測には「政策提言や制度設計の際に社会的重要性や国内外での影響などを詳しく分析し、問題点を把握する技術」が33年に実現するという結論も。 「政治を科学する」と訴えた鳩山由紀夫前首相の登場は20年以上早かったようだ。
 一方で、5年前の前回調査に比べ、原子力発電の解体技術や地震予知分野で数年ずつ実現が遅れるという予測になった。【山田大輔】

 この種の予想が当たることはあまりないと思うので、あと14年で”「自動車の大部分はリースか共有」(24年)となりマイカーは消える”ということはないだろうけど・・・まあ都市住民は良いけど地方では日常の足が無くなるという意味なので、これは無理でしょうから。ともあれ、自家用車の台数は多分減るだろうし、電気自動車に転換されるとなると、”バイオマス”をどう利用するのかも考えておかなくてはいけない。

 エネルギー源を分散させるという意味では電気自動車が最も有利だろうから、バイオマス燃料の開発ターゲットも、いずれ電気自動車に代替されてしまう乗用車向けのガソリン代替燃料よりは、物流を支えるディーゼルエンジン向けの軽油代替燃料や、ジェットエンジン向けのケロシン代替燃料を指向する方が良いだろう。となると、植物に蓄積する物質も、アルコール発酵させてから燃料を得るデンプンやセルロースよりも脂質の方がよいことになるだろう。たとえばジャトロファやナタネ、ダイズ、ある種の藻類といったところ。イネ科作物の出番はなさそうだ。

 油量作物の多くは乾燥帯に適応している。ジャトロファは日本で栽培するのに向いた植物ではなさそうだし、ダイズも雨の多い日本の気候にはあまり向いていない。となるとあとはナタネくらいだろうか。しかし、ナタネの研究は日本ではあまり進んでいるとは言えない。さてどうしたものか。

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