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2010年5月16日 - 2010年5月22日の記事

2010年5月21日 (金)

細菌ゲノムの総とりかえ

2008年1月末に「細菌ゲノムの全合成」と言うエントリーを書きましたが、今回はその続続編が発表されました。

Daniel G. Gibson et al., “Creation of a Bacterial Cell Controlled by a Chemically Synthesized Genome,” Science (May 20, 2010): science.1190719.    

あらましは、次の新聞記事がよいでしょう。読売新聞より。

人工ゲノム使い細胞、「新生命体」への道も

 【ワシントン=山田哲朗】細菌のゲノム(全遺伝情報)を人工的に合成し、別の細菌に移植して働かせることに米国の科学者が初めて成功した。

 移植を受けた細菌は、人工ゲノムによって自己増殖したという。「人工生命」の誕生に近づく成果だが、倫理面での議論も活発化しそうだ。J・クレイ グ・ベンター研究所(米メリーランド州)が20日付の米科学誌サイエンスに発表する。

 研究ではまず、牛の感染症を起こす細菌「マイコプラズマ・ミコイデス」のゲノムをコンピューターでデータ化。この情報に基づき、改めて「ミコイデス」のゲノムの断片を化学合成した。この断片を大腸菌と酵母に入れて遺伝子組み換えでつなぎ合わせ、ゲノムをまるごと再現した。

 完成した人工ゲノムを、よく似た細菌に移植したところ、移植された細菌が人工ゲノムの作用で「変身」し、「ミコイデス」のたんぱく質を作るように なった。細胞の「ハードウエア」にあたる細胞質は、移植先の細胞を流用しているが、「ソフトウエア」のゲノムが人工ゲノムに入れ替わったことになる。同研究所は移植を受けた細菌を「合成細胞」と呼んでいる。

 この技術を応用すれば、望みのゲノムを設計して微生物に組み込み、現存しない「新種」を生み出せる可能性がある。石油大手エクソン・モービルはバ イオ燃料を大量に生産する藻を作るため、この研究に資金を提供。製薬大手ノバルティスもワクチン開発のスピードアップに利用しようと研究を始めた。

 ただ、今回の技術で強力な病原菌が開発され、テロに悪用される危険や、自然界にない生命体が実験室から逃げ出す可能性も考えられ、論議を呼びそうだ。

(2010年5月21日03時07分  読売新聞)
 最後の「ただ、今回の技術で強力な病原菌が開発され、テロに悪用される危険や、自然界にない生命体が実験室から逃げ出す可能性も考えられ、論議を呼びそうだ。」というコメントはいただけない。強力な病原菌が欲しければこんな面倒な技術を使うまでもなく、普通の遺伝子組換えで十分なのだから。また、特に実験室から逃げ出しやすい性質(どんなのだ?)を備えていない限り、拡散防止措置やバイオハザード対策をとった実験室からバクテリアが簡単に逃げ出すことはない。それよりも意図的な持ち出しの方がはるかに起きやすい。

 ともあれ、この論文に到るこれまでの歩みを振り返ると、
  1. バクテリア・ゲノムの全合成(化学合成→大腸菌でのクローニング→酵母での環状化)
  2. 酵母細胞内での細菌ゲノムの操作とホスト細胞の防御システムを停止させる
 これらを組み合わせて今回の論文の仕事になっている。10kbp程度の部分配列の組み立て、100kbp程度の部分配列の組み立て、酵母での細菌の全ゲノムの再構築、宿主細胞の防御機能の無効化と全ゲノムDNAによる形質転換(!)、テトラサイクリンとX-galによる選抜(大腸菌と変わらないね)、ゲノムの入れ替えの確認、という手順について途中の失敗(!)も含めてあっさり書いてある。

 なんと言っても、ゲノムの全合成はお金がかかるけれども、ここ数年でまだ安くなっている。これに対して、確認のためのシーケンスは比較にならないペースで値下がりしているので、全体的なコストは3年前よりもかなりましになっている(でも、この論文1本に数億はかかっているだろう)。

 いずれにしても、転写装置と翻訳装置を完全に人工的に作れないうちは、完全に人工的な細胞を作ることはできない。Wheat germも昆虫細胞抽出物も使わないのであれば、人工的にリボゾームを作るほかない。そこまでやるのだろうか?彼らのゴールを見てみたい。

 ところで、ゲノムをそっくり入れ替えてしまった生物の種名をどう呼べば良いのだろう?カルタヘナ法で言う宿主と供与核酸の関係はどうなるのか?などなど、良くわからないことが多々発生する点から見ても、この研究が既存の概念を揺るがすインパクトを持っていることがわかる。

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2010年5月20日 (木)

携帯電話の使用で脳腫瘍は増えるのか?

CNNより

携帯電話と脳腫瘍、「因果関係みられず」の研究結果に批判も

(CNN) 携帯電話の使用と脳腫瘍の発症率の関係を調べた大規模な国際調査「インターフォン」で、両者に因果関係はみられないとの結果がこのほど発表された。これに対し、一部の専門家からは研究方法などの問題点を指摘する声も上がっている。

調査は世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関が主導し、2000年から04年にかけ、米国以外の13カ国で実施した。脳腫瘍の手術を受けた患者に、携帯電話を使用していた期間や頻度、どちらの耳に電話機を当てていたかなどを尋ね、回答を分析した。結果は疫学専門誌IJEの最新号に掲載された。

それによると、携帯電話を1日30分以上、10年間にわたり使い続けていたヘビーユーザーのグループで、脳腫瘍の一種である「神経膠腫(こうしゅ)」を発症する危険性が40%高くなっていたことが分かった。さらに統計上の偏りを調整すると80%増という数字も出た。しかし研究チームによると、このグループに分類される人数は比較的少なく、因果関係を示す十分な証拠とは見なされなかった。

一方、少なくとも週1回、数カ月以上使用し、月平均の使用時間が120~150分間となる「日常的ユーザー」では、使用時間が増えるほど、脳腫瘍の発症率 がかえって下がる傾向がみられた。チームはこれについて、「調査上の限界」による誤差の可能性を指摘している。

インターフォンの結果について、米マウントシナイ医科大のデブラ・デービス博士は「携帯電話を使うなとも危険だとも言えないが、安全だとは言い切れない」 と話す。携帯電話は調査当時から現在までにさらに普及が進み、「米国には1週間に120~150分使うユーザーもいる」と、同博士は指摘する。

また、この分野で研究実績がある元エンジニアのロイド・モーガン氏は、同じように脳腫瘍との関連が疑われるコードレス電話の使用状況や、電磁波の影響を受けやすいとされる若者、子どものユーザーが、研究対象に含まれていないと批判する。また、回答者が使用頻度を申告する際、ヘビーユーザーは少なめに、あまり使わない人は多めに記憶している傾向があると主張。ただこれに対して研究チームは、記憶はほぼ正確だと反論している。インターフォンではさらに、携帯電話からの電磁波を受けた位置と腫瘍の発生個所との関係や、他の腫瘍の発症率などの研究も進行中。これらの結果はまだ発表されていない。

 あまり細かく分析すると使用する周波数の帯域とか、信号の変換方式がどうのという些末な議論に陥りがち。ともあれ、社会のインフラとしてここまで携帯電話が普及しているのだから、人口1万人あたりで見た脳腫瘍発症リスクが携帯電話の普及に伴って増えているのかどうか、というおおざっぱな議論があって、そこで一定水準以下のリスクしか検出されないのであればこの議論は終わりにして良いように思う。

 Wikipediaによれば、脳腫瘍の発症の頻度は「毎年約100,000人に12人の割合であるとされている」なので、1億2千万人あたりで見ると、14,400人程度。あまり予後は良くない模様。で、もし携帯電話以外に脳腫瘍の発生頻度に影響を与えるようなリスクファクターの変動が無いという前提で、この発生頻度数が携帯電話の普及前からあまり変わっていないのであれば、大騒ぎして携帯電話の使用ガイドラインを設けたとしても脳腫瘍の発症率を下げる効果はほとんど期待できない(トランス脂肪酸の表示義務と似たような議論だ)。

# 議論が続いた方が飯の種に困らない研究者も居るのだろうけれど、携帯電話の電波は自動車や電車の事故と比較して生命に与えるリスクは大きいとは言えないだろう。

2010年5月18日 (火)

火事場ではまず何をするべきか

 まだ延焼が進んでいる火事場で一生懸命火元探しをするのは無意味だ。まずはこれ以上の延焼を防ぐことと、早く鎮火させるにはどうするべきか、考えつつもまずは行動するべきだろう。
 鎮火したあとの生活再建もたしかに重要だけれど、緊急性から言えば、これ以上の延焼を防ぐことの方が重要だ。そうしないと焼け出される被害者の増加が止まらない。

 鎮火もしていないうちに、火元で消防団の火災の発見が遅かったのが問題だったと騒ぐような野次馬は、全く何の訳にもたたない。ましてや、火災現場に押しかけて騒ぐなど論外だ。

# 目下発生中の口蹄疫とは無関係です。

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2010年5月17日 (月)

腸内で抗肥満遺伝子組換えビフィズス菌を飼育しようかという研究

 医療目的でペプチドを経口投与しようとすると、GMPグレードの合成ペプチドは単価がめちゃくちゃ高いとか、有効成分を腸で作用させようとすると、胃で分解させないようにDDSを工夫する必要があるとか、色々面倒な問題が生じます。

 そこで、遺伝子組換えビフィズス菌の登場です。腸内に定住する細菌にペプチドを合成させるので、ペプチドの単価がどうのと言うケチくさい問題は発生しません。また、腸内で細菌がペプチドを合成するので、投与経路の途中で分解するんじゃないかという心配もありません。

R T Long et al., “Bifidobacterium as an oral delivery carrier of oxyntomodulin for obesity therapy: inhibitory effects on food intake and body weight in overweight mice,” Int J Obes 34, no. 4 (April 2010): 712-719.    

 新しい論文なので、Abstractまでしか無料で公開されていないのですが、アラビノースで誘導のかかる発現ベクターにヒトOxyntomodulin遺伝子をつないで形質転換した組換えビフィズス菌をマウスに経口投与しています。Oxyntomodulinというのは食後に消化管から分泌されて小腸で作用し、食欲を抑制するホルモン。37アミノ酸残基とペプチドホルモンとしては小さな分子(消化管ホルモンとしては普通)で注射でも食欲が抑制されるそうです。

 で、実験の結果、肥満気味のマウスの食欲を抑えて、体重と中性脂肪も抑制できたとのこと。組換えビフィズス菌自体が新しいタイプの抗肥満薬という訳ですね。

 面白いのは、アラビノース誘導型のベクターを使って、食事とは別にアラビノースを与えてOxyntomodulinの発現を誘導しているところ。この種の組換え微生物が腸内で勝手にはびこってペプチドを合成しまくると投与量のコントロールが全然効きません。その点、誘導型ベクターだと薬が効きすぎて食欲が全然無いようなら、発現誘導を止めてやればよいのである程度は投与量のコントロールができます(製品としてそれで良いのかどうかは疑問ですが)。

 まあ、もともと消化管で分泌されるホルモンなので、消化酵素で分解される心配は要らないのでしょうから、ビフィズス菌でなくても良さそうなものですけど。

 それから、この種の天然物と同等の薬効成分(特にヒトのタンパク質そのもの)は、物質特許では保護されないので、おそらく製薬会社としてはうまみがないでしょう。組換えビフィズス菌のヨーグルトを食べてダイエットという夢のある(・・・そうなのか?)製品につながる研究なのですが、現実味はちょっと薄いところ。

# スギ花粉抗原でも同じ手法が使えるかもね。

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