« 種は生物多様性を表す単位になりうるのか | トップページ | さよなら2010年 »

2010/11/30

低アレルゲン・ネコ追加情報

 平川さんがはてブに気づいてくださいました。ということで、低アレルゲン・ネコに関係する周辺情報を少々。

 最初、はてブの方では、”米国の特許公報”と書いてしまいましたが、出典はWIPO、世界知的所有権機関でした。念のため、USIPOで調べてみたもののたどり着けず。EUとオーストラリアの特許情報にはたどり着けました。

 出願された情報によれば、遺伝子組換えネコの作出方法自体は、KO-マウス等他のノックアウト哺乳類の作出法とあまり変わりない様子。だだし、ネコの主要なアレルゲンであるFel d 1遺伝子を標的として抗生物質耐性遺伝子(neoR)を導入して破壊することでアレルゲン性を無くするというアプローチ。
 出願の時期は、publicatin dateが2003-09-18なので、それよりも前。ちなみに、それがどういう時期か?というと、2008年の以下の論文(2007年にaccept)でレトロウイルス・ベクターを使って赤色蛍光タンパク質を効率よくネコに導入できたということなので、それよりも5年以上前です。しかも、ウイルス・ベクターを使わない直接導入によるknockout。この方法は、ゲノムのどこであれ遺伝子が導入できればよしというウイルスベクターと比べると、ゲノム上の狙った場所に遺伝子が組み込まれる相同組換えに依存するので非常に効率が悪いのが特徴です。

Xi Jun Yin et al., “Generation of Cloned Transgenic Cats Expressing Red Fluorescence Protein,” Biology of Reproduction 78, no. 3 (March 1, 2008): 425 -431.   

 また、関連する技術としては、核移植によるクローン化もあるのですが、ネコの体細胞クローンに関するレビューが書かれたのが2006年。

M C Gómez, C E Pope, and B L Dresser, “Nuclear transfer in cats and its application,” Theriogenology 66, no. 1 (July 1, 2006): 72-81.   

 ですので、2003年頃には遺伝子組換えネコ ―しかも、knockout cat― は原理的にはできたのかもしれませんが、極めて効率が良くなかったことでしょう。

 私の想像では、実際にはアイデアだけで出願したもので、今なおこの技術でknockout catが作れるかどうかは非常に疑わしいものです・・・あくまでも想像ですが。

人気blogランキングへ←クリックして いただけますと筆者が喜びます!

|

« 種は生物多様性を表す単位になりうるのか | トップページ | さよなら2010年 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 低アレルゲン・ネコ追加情報:

« 種は生物多様性を表す単位になりうるのか | トップページ | さよなら2010年 »