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2010年5月21日 (金)

細菌ゲノムの総とりかえ

2008年1月末に「細菌ゲノムの全合成」と言うエントリーを書きましたが、今回はその続続編が発表されました。

Daniel G. Gibson et al., “Creation of a Bacterial Cell Controlled by a Chemically Synthesized Genome,” Science (May 20, 2010): science.1190719.    

あらましは、次の新聞記事がよいでしょう。読売新聞より。

人工ゲノム使い細胞、「新生命体」への道も

 【ワシントン=山田哲朗】細菌のゲノム(全遺伝情報)を人工的に合成し、別の細菌に移植して働かせることに米国の科学者が初めて成功した。

 移植を受けた細菌は、人工ゲノムによって自己増殖したという。「人工生命」の誕生に近づく成果だが、倫理面での議論も活発化しそうだ。J・クレイ グ・ベンター研究所(米メリーランド州)が20日付の米科学誌サイエンスに発表する。

 研究ではまず、牛の感染症を起こす細菌「マイコプラズマ・ミコイデス」のゲノムをコンピューターでデータ化。この情報に基づき、改めて「ミコイデス」のゲノムの断片を化学合成した。この断片を大腸菌と酵母に入れて遺伝子組み換えでつなぎ合わせ、ゲノムをまるごと再現した。

 完成した人工ゲノムを、よく似た細菌に移植したところ、移植された細菌が人工ゲノムの作用で「変身」し、「ミコイデス」のたんぱく質を作るように なった。細胞の「ハードウエア」にあたる細胞質は、移植先の細胞を流用しているが、「ソフトウエア」のゲノムが人工ゲノムに入れ替わったことになる。同研究所は移植を受けた細菌を「合成細胞」と呼んでいる。

 この技術を応用すれば、望みのゲノムを設計して微生物に組み込み、現存しない「新種」を生み出せる可能性がある。石油大手エクソン・モービルはバ イオ燃料を大量に生産する藻を作るため、この研究に資金を提供。製薬大手ノバルティスもワクチン開発のスピードアップに利用しようと研究を始めた。

 ただ、今回の技術で強力な病原菌が開発され、テロに悪用される危険や、自然界にない生命体が実験室から逃げ出す可能性も考えられ、論議を呼びそうだ。

(2010年5月21日03時07分  読売新聞)
 最後の「ただ、今回の技術で強力な病原菌が開発され、テロに悪用される危険や、自然界にない生命体が実験室から逃げ出す可能性も考えられ、論議を呼びそうだ。」というコメントはいただけない。強力な病原菌が欲しければこんな面倒な技術を使うまでもなく、普通の遺伝子組換えで十分なのだから。また、特に実験室から逃げ出しやすい性質(どんなのだ?)を備えていない限り、拡散防止措置やバイオハザード対策をとった実験室からバクテリアが簡単に逃げ出すことはない。それよりも意図的な持ち出しの方がはるかに起きやすい。

 ともあれ、この論文に到るこれまでの歩みを振り返ると、
  1. バクテリア・ゲノムの全合成(化学合成→大腸菌でのクローニング→酵母での環状化)
  2. 酵母細胞内での細菌ゲノムの操作とホスト細胞の防御システムを停止させる
 これらを組み合わせて今回の論文の仕事になっている。10kbp程度の部分配列の組み立て、100kbp程度の部分配列の組み立て、酵母での細菌の全ゲノムの再構築、宿主細胞の防御機能の無効化と全ゲノムDNAによる形質転換(!)、テトラサイクリンとX-galによる選抜(大腸菌と変わらないね)、ゲノムの入れ替えの確認、という手順について途中の失敗(!)も含めてあっさり書いてある。

 なんと言っても、ゲノムの全合成はお金がかかるけれども、ここ数年でまだ安くなっている。これに対して、確認のためのシーケンスは比較にならないペースで値下がりしているので、全体的なコストは3年前よりもかなりましになっている(でも、この論文1本に数億はかかっているだろう)。

 いずれにしても、転写装置と翻訳装置を完全に人工的に作れないうちは、完全に人工的な細胞を作ることはできない。Wheat germも昆虫細胞抽出物も使わないのであれば、人工的にリボゾームを作るほかない。そこまでやるのだろうか?彼らのゴールを見てみたい。

 ところで、ゲノムをそっくり入れ替えてしまった生物の種名をどう呼べば良いのだろう?カルタヘナ法で言う宿主と供与核酸の関係はどうなるのか?などなど、良くわからないことが多々発生する点から見ても、この研究が既存の概念を揺るがすインパクトを持っていることがわかる。

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