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2010年4月の記事

2010年4月29日 (木)

早くないよ。あれっ早かったか。

生物研QTLセンターで解析したコシヒカリのゲノム情報がDDBJから公開されています。
# 4/5から公開されています。
http://www.ddbj.nig.ac.jp/whatsnew/whatsnew2010-j.html#10040502

で、論文はこちら。

Toshio Yamamoto et al., “Fine definition of the pedigree haplotypes of closely related rice cultivars by means of genome-wide discovery of single-nucleotide polymorphisms,” BMC Genomics 11, no. 1 (2010): 267.   

4/27付け(現地時間)でパブリッシュ。私は、さっき知りました。

昨日(28日)、QTLセンターの某君に電話して

「DDBJからコシヒカリのゲノム情報が公開されているのだけど・・・」

と聞いたら、

「おぉ、早いね」

と、ちょっと喜んだレスポンスだった。そりゃぁパブリッシュされた当日に論文についての問い合わせがあれば誰だって喜びます。でも、私はその時点では論文が出たことは知らず、データが4/5公表で今日の問い合わせなら、そんなに早くもないと・・・知らなかったとはいえ、いや申し訳ない。

ともあれ、主要部分をサマライズすると、

シーケンスしたデータ量は5.89 Gb(イネゲノムの15.7倍) これを日本晴のシュードモレキュル4.0にマッピングした。対応した領域は日本晴の80.1%相当。同定されたSNPsは67,051個。過去150年間に日本で育成されてきた代表的な151系統の在来品種を識別できる、全ゲノムをカバーする1917 SNPsサイトに対応したアレイを作成。 コシヒカリのハプロタイプ60.9%の起源が同定され、18個の保存されたハプロタイプブロックは、伝統的な在来品種から育成品種に引き継がれていた。さらに、現代の育種の過程では遺伝的多様性が喪失してきたことが予測された。

概ねこんな感じです。

アレイで決められるハプロタイプの数にもよるけれど、特製のタイピング・アレイのコストが今後もあまり下がらなければ、シーケンスした方が安くなるだろう。数年内にはヒト・ゲノム1人10万円台に突入するだろうし、ヒトのタイリングアレイの価格は30万円台なので、これが高止まりするようだと、アレイによるタイピングのコスト優位性は急速に失われていくだろう(リシーケンスのアセンブルの所用時間がどのくらいかにもよる)。

IRRIでは109,000系統のタイピングをするというし(手法は謎)、いかに精密であっても数百系統のデータで勝負できる時期は、もうそう長くはない。恐ろしい時代になったものです。

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2010年4月23日 (金)

分取用マイクロチップ電気泳動装置

 分取用あるいは調製用の電気泳動装置というものは昔からありましたが、それのマイクロチップ電気泳動装置バージョンができたようです。

 マイクロチップ電気泳動装置というのは、アジレントのバイオアナライザが有名ですがあれは分取はできません。一方、分取用の電気泳動装置といえば、バイオラッドのプレップセルなどが有名ですが、操作が煩雑で、指定したサイズの画分を自動的にとってくることはできません。

 で、Caliper Life SciencesのLabChip XTという装置は、これらのいいとこ取りをしたような製品で、パソコンで分画したいサイズを指定すると、そのサイズ画分を30分くらいで自動的に分取してくれるらしい。本来の想定されている用途は次世代シーケンサー用のサンプルの前処理ですが、基本的には50-500bpの核酸のサイズフラクションなら何でもOKでしょう。

# 本体価格とランニングコストが気になるところです。

 ただ、もうちょっと小さなサイズ、20bp内外のRNAが分離できるといいんですけどね。多くの人がマニュアルでやっているsiRNAやmiRNAの分取ができるとなれば、かなり引き合いがあると思うんですけど。→ どう?Caliper Life Sciencesの人。

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2010年4月21日 (水)

第4期 科学技術基本計画の素案あるいは”NIASオープンカレッジ”のご案内

第4期 科学技術基本計画の素案に関する記事なのだけれど、総合科学技術会議のホームページにはまだ第7回会合の素案が出ていないので正確なところは分からない。

研究費1千万円→市民講座を年1回 研究者に義務化?案

2010年4月19日18時42分

 国から1千万円の研究費をもらったら年1回、子どもや市民に自分の研究をわかりやすく説明する――来年度以降、研究者がこんな必要に迫られる可能性が出てきた。

 政府の総合科学技術会議の調査会で2011年度から始まる科学技術基本計画の素案が示され、「1千万円以上の研究費を得た研究者には、小中学校や市民講座でのレクチャーなどの科学・技術コミュニケーション活動への貢献を求める」との文言が盛り込まれた。

 発表する研究論文には、一般向けにもわかりやすい数百字程度の説明を添付することも求める。内閣府の津村啓介政務官(科学技術担当)は「これから研究費を交付する方にお願いすることを考えている」と話し、具体的な制度の検討に入ったことを明らかにした。

 内閣府によると、英国では一部の研究費で1年に1回、一般向けに内容を説明することを求めている、という。3月に大阪で開かれた総合科学技術会議の地方開催で傍聴者から、こうした制度の導入の必要性が指摘され、検討するきっかけになった。

 文部科学省の科学研究費補助金だけでも、年5万人の研究代表者に平均300万円支給され、データベースによると1千万円以上の支給が採択された研究が年間1万件前後あり、対象は相当数に上りそうだ。

 昨年の事業仕分けで科学事業に厳しい判定が相次ぎ、科学界からは反発を招いた。津村政務官は「科学者と国民のコミュニケーション不足を痛感した」といい、「民主党の科学政策が見えないとの批判があるが、面白いアイデアはすぐに実行に移している」とアピールしている。

(行方史郎)

 記事によると、「研究者に義務化?」ですが、内閣府の担当者によると 「これから研究費を交付する方にお願いすることを考えている」とあります。つまり、研究費をもらう方だけが義務を負うのではなく、研究費を支給する方にも科学・技術コミュニケーション活動への貢献を求めるという理解で良いのでしょう。

 というのも、研究費を支給された側の視点で考えれば明らかなように、個々の研究者が自助努力で「小中学校や市民講座でのレクチャー」をしようとすると、場のセッティクングはどうするのか?とか講演時間はどのくらい?とか聴衆の年齢階層はどのくらいを想定するのか?とか開催のためのマンパワーをどうするか?とか色々な問題が出てきます。

# 私もしばしば研究所の見学にこられた方に対応してミニ講演会をしますが、市町村の農業委員会の方に15分くらいでというオーダーと、生物学系の大学生相手に45分くらいでというオーダーでは準備段階からかかる労力が相当に違います。

 こういう場合は、研究資金を配分する側が市民講座をセットするとか、大学と連携して既に行われている生涯学習コースの一環として講師を務めると市民とのコミュニケーションとしてカウントするという工夫も必要。あらかじめ、コミュニケーションの枠組みが決まっているというだけで、”誰にとってわかりやすい説明か”が想定できるので、準備の負担感が相当に違います。

# 今はやりのやり方であれば、研究資金についてのクレジットを入れてYoutubeで講義するのではダメだろうか?

 そうそう。市民講座と言えば、私の職場でも9月からお茶の水大学、早稲田大学と連携して”NIASオープンカレッジ”という公開講座を15週連続で開催します。日時は9月2日からの毎週木曜、午後6時半から8時まで。詳しくはこちら。講義内容はこちら

 植物ゲノム、遺伝資源、品種改良から遺伝子組換えまで、最先端の研究開発の話がその分野の専門家から無料で聞けます。現在、参加者募集中ですので関心のある方はこちらからお申し込みを。

# サイエンス・カフェではありませんので、お茶もお菓子も出せませんがあしからず。

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2010年4月20日 (火)

Hibotan & Otokogi

 世は新型幹細胞、MUSE細胞で盛り上がっている頃ですが、そちらはPNASに論文が出てから。

 ところで、緋牡丹と侠気、まるで任侠映画ですな。

生物の雌雄は最初から、「雌が先」覆す発見

 「生物はもともと雌が基本で、雄は進化の過程で雌が変化して生まれた」とする従来の説を覆す証拠を、日米の共同研究チームが突き止め、米科学誌サイエンスで発表した。

 ごく初期の生物で、すでに雄と雌それぞれに特有の遺伝子が複数存在していた。

 野崎久義・東京大学准教授らは4年前、雌雄を区別できる最も原始的な生物である緑藻「ボルボックス」の雄株から、精子に似たたんぱく質を作る雄特 有の遺伝子OTOKOGI(侠気(おとこぎ))を発見した。この時、雌株からは雄雌共通の遺伝子しか見つからなかったため、「雌が基本でそこに新しい機能が加わって雄になった」という従来の説が正しいと 考えられた。

 しかし今回、雄雌両方の株の遺伝情報すべてを解読した結果、雌特有の遺伝子5個を発見、HIBOTAN(緋牡丹(ひぼたん))遺伝子群と命名した。さらに雄だけの遺伝子も新たに9個見つかった。

 「緋牡丹」の名は、野崎さんが大ファンだという女優・富司純子さん主演の映画名から。野崎さんは「高等動物は成長過程で雌雄が変化するクロダイのような種もいてわかりにくいが、性の起源までさかのぼると、雄雌は根本的に違う進化をたどったことがわかる」と話している。

(2010年4月18日00時07分  読売新聞)

 論文はこちら。

 プレスリリースはこちら

 遺伝子のネーミングについては・・・スルーするとして、藻類の雌雄の全ゲノムを読んじゃったところがGJです。この勢いで、減数分裂のきっかけになる転写因子の制御構造まで決めてくれると大変うれしいです。高等植物では減数分裂の時期を特定してサンプリングするだけでも結構大変なので。

 と言いますのも、この二十数年間、ゲノムシーケンスの技術は発展して、ある程度までは両親由来の染色体ごとのハプロタイプを決められるようになってきました。解析技術は進歩しているのですが、その一方で全ゲノムの組み合わせを操作する技術はほとんど変わっていません。私は、この次に植物遺伝学分野のブレークスルーがあるとすれば、それはin vitroの減数分裂なのではないかと考えています。そして、そこに一番近いのは藻類-しかも単細胞に近い多細胞生物-の減数分裂の研究ではないかと期待しています。次は、減数分裂の人為的な誘導?

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2010年4月16日 (金)

研究開発を担う法人の機能強化検討チームの会合

メモのみ。

研究開発38独法を統廃合…政府検討チーム

 政府の研究開発に関する検討チーム(主査・鈴木寛文部科学副大臣ら)は14日、研究開発関連の38の独立行政法人を統廃合し、「国立研究開発機関 (仮称)」に移行させることを柱とする中間報告をまとめた。

 統廃合で効率化する一方、新たな組織としてより長期的な計画に沿った研究を可能にするのが狙いだ。

 中間報告は、研究開発に関する38法人を所管する文部科学省など9省庁の副大臣、政務官が策定した。

 現在の独法は3~5年の「中期計画」に沿った運営が義務づけられているが、中間報告は、研究成果を上げるにはより長期の計画に沿った運営が必要だとして別の機関への移行を提言した。同時に、特定の疾病対策など必要な研究を推進するため、新機関が扱う研究テーマ選定などでは国の権限を強化すべきだと した。

 枝野行政刷新相は38法人を「10前後」に統廃合する考えを示している。

 今回の中間報告は、研究開発の担い手となる独法の機能を強化し、日本経済の競争力を高めるのが目的だ。行政刷新会議(議長・鳩山首相)は昨年の事業仕分けで、文部科学省の次世代スーパーコンピューター開発予算を「事実上の凍結」と判定するなど、科学関係予算の削減を打ち出した。これに対し、「科学技術を軽視している」「予算を削るだけで成長戦略の視点がない」と批判されたことに対応する狙いもある。

 ただ、38法人の業務内容や人件費の総額が減らなければ、野党などから「看板の掛け替えだ」と批判されるのは確実だ。行政刷新相は、官僚の天下り 先を中心とした役員ポストの削減や重複する事業の廃止で、予算の無駄を削減する考えだ。

 行政刷新会議は、独法を対象に4月下旬から第2弾の事業仕分けを行う予定で、その結果を踏まえて5月中旬にも独法改革の基本方針を策定する。検討チームは中間報告の内容を、基本方針に反映させる考えだ。

(2010年4月14日23時52分  読売新聞)

一次情報はこちら。”研究開発を担う法人の機能強化検討チーム(第5回)”の会議資料の、

を読むとなかなか味わい深いことが書いてあります。たとえば、

また、国と横並びの基準の適用によって原則として一般競争入札とされ、随意契約の見直しや1者応札の低減に向けた取組が要請されるなど、研究開発等の特性が踏まえられていない契約業務等がますます煩雑化しており、研究者及び研究支援者の大きな負担となっている。

であるとか、

(予算執行の柔軟化)
国際的に複数年度を前提とした研究資金制度が普及しつつあることや研究者の負担を軽減し、その能力の最大発揮を可能とする観点から、中期目標期間をまたいだ研究開発等を円滑に実施するための資金の繰越しに係る制度の改善や合理的な調達等を可能とすることにより、予算の執行等を柔軟にする。特に、研究開発等における物品は、特殊な仕様であるものも多く、必ずしも一般競争入札になじまないものもある。そのため、後述の公共調達機能を活用したイノベーションの促進といった観点も考慮しつつ、研究開発等の特性に応じた合理的な調達を可能とするスキームを導入することが重要である。

など、これができたら実にありがたいと言う提言が山盛りです。検討チームの会合も第5回ということで深い議論が進められているのでしょうから、この中間報告の勢いが最終報告まで生かされることを大いに期待しています。

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2010年4月14日 (水)

4/12-18は"科学技術週間"です。

 つくば市には様々な研究開発を行う独立行政法人がありますが、そのほとんどが科学技術週間に合わせて4/16, 17の両日、一般公開イベントを開催します。科学技術になじみ深いあなたも、そうでないあなたもこの機会に1日かけて色々な研究所を巡って科学技術三昧の週末を過ごされてはいかがでしょうか。

 各研究機関の会場へはつくばエクスプレスのつくば駅近くから無料バスが運行 されます。全部まとめて紹介するのが以下のURL。

http://stw.mext.go.jp/tci/kagiweek/2010/

 私の職場のある”農林研究団地”でも、多くの研究所が一般公開を行います。

http://www.affrc.go.jp/ja/news_event/event/openhouse/openhouse.html

 農林研究団地にあるおもな研究所はこちら。

 私も16日はおそらくどこかのパネル展示の解説をしていることでしょう。

 この他つくば地域という意味では、

 などなど事業仕分けで一躍有名になった独立行政法人の研究所を始め、民間も入れると全部で43研究所が一般公開を行います。

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2010年4月13日 (火)

訃報に接して

 訃報はいつも突然舞い込む。

木下 俊郎さん(きのした・としろう=北大名誉教授、植物育種学) (04/13 20:39)

 13日午前9時50分、腎不全のため札幌市中央区の病院で死去、79歳。札幌市出身。自宅は札幌市中央区北6条西 18の1の19。葬儀・告別式は15日午前10時から札幌市中央区北1条西13の2、札幌北一条教会で。喪主は妻岱子(たいこ)さん。

 育種学会でお目にかかった際には車椅子に腰掛けられたままでした。お姿が随分小さくなられたなと思いましたが。

 今思い返せば、学生時代に見聞きした様々なエピソードが脳裏をよぎります。ご冥福をお祈り申し上げます。

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2010年4月12日 (月)

ヒトのCNVsは一般的な疾病に関連しないだろう

 ヒトでは遺伝子のコピー数の変異(Copy Number Variants; CNVs)と遺伝的な要因のある疾病リスクとの関連が推定されてきたのだが、大規模な調査からそれを覆す結果が得られてきた。良くデザインされた研究で、しかもあまりに大規模なので、向こう10年以上はこれを上回る規模の研究は出ないんじゃないだろうか・・・出てきたら多分経費の無駄だなぁ、と言う研究。

 特製のタイリングアレイでヒトゲノム中の500 bp以上のCNVsのうち3,432箇所(一般的に見られるCNVsの50%以内)を、約19,000人に渡ってサーベイした。ゲノムワイドなアソシエーション解析の結果、CNVsとクローン病、リューマチ、I型糖尿病、II型糖尿病など8つの疾病との関連が認められたが、これらの遺伝子座と疾病の関連は以前からSNPsの解析で知られていたものだったし、この研究で調査したCNVsはSNPsでタグされたものなので、間接的にSNPsを調べていたのだろう。そして結論。

" We conclude that common CNVs that can be typed on existing platforms are unlikely to contribute greatly to the genetic basis of common human diseases."

 一般的な研究手法で検出されるCNVsは、ヒトの一般的な疾病に対する遺伝的な効果はそう大きくはないだろう・・・。これはある意味、壮大な、しかも盤石な基礎を持ったネガティブ・データである。

 ちなみに著者は、"The Wellcome Trust Case Control Consortium"とある。通称WTCCC。個々の研究者の所属は69機関。人数は、217名(PubMedではそうなっている。私が数えたわけではない)。

 スケールに圧倒されます。
 そうかとおもえば、こんな新聞記事も。

アジア人の遺伝子コピー数多型地図、国内研究陣が完成

4月5日15時22分配信 聯合ニュース
【ソウル5日聯合ニュース】 ヒトの全遺伝情報(ゲノム)のうち、特定領域が一度に過度に抜けたり複製されることで発生する疾病を予測し、治療する上で役立つ「遺伝子コピー数多型 (CNV:Copy Number Variation)」地図が、国内研究チームによって製作された。
 ソウル大学医学部・ゲノム医学研究所の徐廷ソン(ソ・ジョンソン)教授チームは5日、韓国人・日本人・中国人各10人を対象にした「アジア人超高解像度遺伝子コピー数多型地図」を完成させたと明らかにした。
 研究チームによると、ヒトは1つの細胞に2コピーの遺伝子を有すると考えられているが、まったくなかったり1コピーしかない場合、3コピー以上存在する場 合があり、これをコピー数多型と呼ぶ。言い換えれば、30億個の塩基対で構成されるヒトのゲノムが、数百~1000個以上の単位で一度に抜けたり、増える ケースを指す。
 この情報は今後、個人間、人種間の遺伝的な差に基づく医学のカスタマイズを実現するのに役立つと、科学者らはみている。
 徐教授チームは今回の研究で、次世代シーケンシング技術(Next Generation Sequencing Technology)に、独自開発し た超高密度DNAチップを加える方式で、これまで発見できなかったアジア人固有の遺伝子コピー数多型約3500個を新たに発見したと説明した。アジア人にだけ抜けていたり、増えた遺伝子部分が3500個に達することになる。
 研究チームは、アジア人を対象にした超高解像度遺伝子コピー数多型地図が初めて製作され、コピー数多型と疾病の関連性を本格的に研究する基盤を築いたことに意味があると評価している。
 今回の研究結果は、英科学誌「ネイチャー・ジェネティクス」電子版に5日付で掲載された。

 なんだかなぁ。人数は30人と少ないが、5,177のCNVsからなる極めて高精細の地図ができたことは間違いない。アソシエーション解析はこれからなのだが、WTCCCが一般的な解析プラットホームでのCNVsの解析はほぼ無意味と結論したからには、アジア人特異的CNVs用タイリングアレイでも作らないと、この後インパクトの大きな仕事に仕上げるのは大変だ。論文はこちら。

  • Hansoo Park et al., “Discovery of common Asian copy number variants using integrated high-resolution array CGH and massively parallel DNA sequencing,” Nat Genet advance online publication (April 4, 2010), http://dx.doi.org/10.1038/ng.555

 ともあれ、人種横断的な解析ではCNVsと疾病の関連が見られなかったのだが、母集団をアジア人に絞り込むと、はたして、より偽のアソシエーションの少ない精密な解析ができるようになるものかどうか・・・。CNVsと疾病との関係の検出の可能性については、WTCCCとは異なる結論に対する期待がある一方、もうダメなんじゃないかという不安もあり。

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2010年4月11日 (日)

単純化への欲望

 人は複雑でわかりにくいものを理解したいと望む。そして理解しやすくするために色々なものを、色々なやり方で単純化する。

 たとえば個々に個性と人格を持った人間でさえも、干支では60種類、西洋占星術では12種類、九星では9種類、血液型占いではたった4種類に分類してしまう。どの分類にも科学的な根拠はないのだが、それぞれの占いの体系の中ではそれなりに尤もらしい理屈がつけられ、それぞれの体系の信奉者はそれで満足している。

 しかし、深く考えるまでもなく血液型の4種類という要約はやり過ぎだろう。では、60種類なら良いのか?これだとほぼ11億人がそれぞれの干支に割り当てられるのだが、同じ性格、同じ運命の人々が地球上に11億人も居るという仮説はやはりいただけない。

 科学技術の分野でも、多くの変数を扱う多変量解析というデータのあつかい方がある。数十、数百項目ものデータを、ある法則性に従って数個の変数に重み付けして要約することもできる。例えば、自己組織化マップとか主成分分析という解析手法がそれで、多次元のデータを人が直感的に把握できる2-3次元にまで要約する。

 主成分分析では、もともとの多次元データを互いに相関の低い数個の因子に分割し直すのだが、結果の解釈においては、それぞれの因子でデータ全体の変動の何割を説明できるかが重視される。たとえば3つの主要な因子で全体のデータの変動の70%を説明できれば、その解析はまずまず上手くいったと言えるだろう。それでも、次元の縮減によって情報の3割を捨てていることになるのだが。

 一方、3つの主要な因子で全体のデータの変動の30%しか説明できない場合、その解析は失敗だったと言って良い。ある現象を説明するのに、収集したデータの30%だけで結論を導化ざるを得ないという場合は、作業仮説か、データの収集方法か、解析方法かのどこかに問題がある。

 科学的なデータの縮減も、その手法を適用する前提如何で上手くいくこともあれば失敗することもある。逆に言えば、作業仮説もデータの収集方法も妥当であれば、そうそう失敗するものではない。ただ、上手くいったとしても、”次元の縮減=分かり易くするための単純化”は、何割かの情報を捨てていることに違いはないのだ。つまり、単純化が無駄を生み出しているとも言えるのだ。

---

 以上の議論を踏まえずに、本日のニュース。読売新聞より。

研究系の38法人を統合へ、政府が仕分け方針

 政府は10日、現在104ある独立行政法人のうち、研究開発などを行う38法人を統廃合した上で、「国立研究開発法人(仮称)」に移行させる方針を固めた。

 23~28日に独立行政法人を対象に「事業仕分け」第2弾を実施するが、国家戦略として研究開発を主導するには研究開 発関連の法人を一定程度、存続させる必要があると判断した。

 5月中旬にも決定する独立行政法人改革の基本方針にこうした方針を盛り込む。

 これに関連し、枝野行政刷新相は10日のさいたま市内での講演で、研究開発関連の38法人は「5から15くらいに整理できる」と述べた。

(2010年4月11日18時11分  読売新聞)
 独立行政法人都市再生機構も、独立行政法人理化学研究所も、同じ法的枠組みというのは無理があったのかもしれない。が、「5から15くらい」というのはずいぶん幅がある。数が減れば、それだけ分かり易くなるというものでもないのだが。

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2010年4月 9日 (金)

寒天も栄養になるのか?

各社でこのニュースを扱っていますが、時事通信のこの記事がbestでしょうか。

のり食べる生活に適応=日本人の腸内細菌群-消化遺伝子取り込む・仏大学

 のりやワカメ、昆布などの海藻をよく食べる日本人の腸には、海藻に含まれる多糖類の分解酵素を持つ細菌がいて、消化に貢献している。この多糖類の分解酵素遺伝子は、海藻に付着している細菌から取り込まれた可能性が高いことが分かった。フランスのピエール・マリー・キュリー(パリ第6)大学の研究チームが8日付の英科学誌ネイチャーに発表した。
 この多糖類分解酵素「ポルフィラナーゼ」の遺伝子や、寒天の主成分アガロースの分解酵素「アガラーゼ」の遺伝子は、米国人の腸内細菌群からは見つからなかった。腸内に共生する細菌群は、人間の食生活に適応しているとみられるという。
 日本人の母と乳児では、ともにこれら2種類の遺伝子が腸内細菌群から検出された。細菌群が母から子へ伝わる経 路もあると考えられる。(2010/04/08-07:00)

 酵素の名称まできちんと書いているのは時事通信だけ。他社の記事を見ながら、寒天など紅藻由来の多糖は海苔などの褐藻の多糖とは違うので、一つの酵素では説明が付かないなぁと思っていたところ。しかし、海洋の細菌の遺伝子が人の腸の細菌に水平伝播したという風には読めないところは残念。そこの推定が一つのポイントなのに。

 ちなみにNature newsの見出しは、

A genetic gift for sushi eaters (すし食いへの遺伝的贈り物)

 まあ、海苔を使う料理といえば国際的には"Sushi"なんでしょうかね。Google Newsで"Seaweed"で検索すると結構出てきます。
  • BBC News: Sushi may 'transfer genes' to gut (おいおい・・・すしを食べると形質転換するのか?)
  • ABC Science: Intestinal germ helps sushi digestion (すしじゃなくって海苔だよ)
  • Los Angeles Times: Japanese found to host seaweed-digesting bacteria (日本人が特異なような書きぶり)
 ちなみに論文はこちら。
 海草由来の多糖を栄養にするということについてつらつら考えるに、Agarase遺伝子とアガロースをAgaraseで分解した分解産物であるガラクトオリゴ糖を分解する酵素の遺伝子を組み合わせると、バクテリア用の選抜マーカーになりそうだな。形質転換対はグルコース抜きのLB培地でも繁殖できる。コロニーが大きくなると寒天培地が凹むという・・・。液体培地には炭素源としてクラッシュタイプの寒天培地を混ぜておけばOKとか。
 酵母のツーハイブリッド用のベクターにはものごく向いているかもしれません。アガロースの最終的な分解産物であるガラクトースまでいけばGal10プロモーターを活性化するし。

 植物細胞はガラクトオリゴ糖を分解できるので、Agarase遺伝子単独で組換え植物の選抜マーカーになるかもしれません。

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2010年4月 6日 (火)

”ゆめぴりか”を食べてみた。

 近所のスーパーで調達できるコメといえば、茨城県産コシヒカリか、あきたこまちと相場が決まっている。時には、最近食味が向上していると評判の北海道産米を食べたいと思っても近所では売っていない。

 ということで、ネットで買うことにした。調達先は”どさんこハヤシ商店”。上川農試育成のゆめぴりかと、北濃試育成のおぼろづきのセット、各5kgで合計\5,350、しかも注文後精米という、お得なセットがあったので買ってみた。これなら金額的にも近所のスーパーでコシヒカリを買うのとほとんど変わらない。というころで、食感レポート。

---

 食べた感じですが、この”ゆめぴりか”、育成者、佐藤毅さんの”畢生のマスターピース”となるべき一品かもしれません。少なくとも食味では。コシヒカリのようにべたつかず、それでいてふっくらと軽い口当たり。低アミロースなのにあまり固まりにならないという、これまであまり食べたことがない食感でした。

 持ち上げた後でアレですが、炊飯米の外観上の特性としては、あまり艶がありません。もしかすると可溶性のデンプンが少なめなためかもしれませんが、そうであれば、べたつかない食感とのトレードオフなので仕方ありません。
 実は我が家での最初の1回目の炊飯では、米びつに残っていた0.4合ばかりのコシヒカリをブレンドして2合にして炊いたのですが、炊飯後の米粒の長軸方向の「のび」がゆめぴりかの方が大きかったように感じました。欠点と言うよりは特徴なのですが、見た感じコシヒカリよりも1割強飯粒が長く、粒幅が若干狭いようでした。外観上ちょっと細長く見えますが、ひょっとすると、この形状が軽い口当たりと関係があるのかもしれません。しかし、この見栄えは鮨屋さんにはあまり受けないかもしれません。

 品種はオールラウンダーでなければいけないので後でぼろが出ることもあるのですが、そうならないことを期待しています。普及面積が増えてからの品質の維持が一つの勝負所かもしれません。来年は産地銘柄指定できるゆめぴりかを買いたいと思いました。

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2010年4月 5日 (月)

「大腸菌問題」って・・・

 内部告発された”出来事”の事実関係も含めて微妙な案件。生命倫理・安全対策室の皆様もご苦労様。

香川大:大腸菌問題 違法処理の疑いで文科省が調査  /香川

 香川大医学部の研究室が遺伝子を組み換えた大腸菌の培養液を違法に処理した疑いがある問題で、報告を受けた文部科学省は2日、職員2人を派遣して 現地調査をした。

 調査は非公開。大学側は阪本晴彦・同学部長や調査委員会のメンバーら8人が対応し、事実関係の確認や調査の進み具合、問題となった実験の現場を視察した。

 同省ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室の井上俊樹・室長補佐は「大腸菌は安全性が高く、施設内で滅菌処理されていると報告を受け、安全面では大丈夫かと思う」と感想を述べ、違法行為があったかどうかについては「引き続き大学側に調査をお願いしたい」とした。

 阪本学部長は「全部説明してご理解いただいたと思う。今後の調査もなるべく早急に行って報告したい」と話した。【三上健太郎】

別の報道では、

香川大、違法廃棄の疑い/遺伝子組み換え培養液

2010/03/31 10:04

 香川大医学部の生体情報分子学の研究室が、実験で遺伝子を組み換えた大腸菌の培養液などを滅菌処理せず、流しに捨てて処分し続けていた疑いがあるとして、香川大が調査していることが30日、分かった。遺伝子組み換え生物は生態系に影響を及ぼす恐れがあり、「遺伝子組み換え生物使用規制法」で処理方法が定められている。文部科学省も近く実地調査に乗り出す方針。

 香川大によると、18日に「医学部の実験室で、遺伝子の実験に使った溶液などを違法処理している」と阪本晴彦医学部長へ関係者が内部告発した。大学は26日、学内での遺伝子組み換え実験をすべて停止するとともに、調査委員会を立ち上げて学校内外の水質検査などの実態調査を開始、29日に文部科学省へ報告した。

 調査では、遺伝子組み換え実験は学長に申請していた実験室とは異なる部屋で行われ、学内規程に違反していたことも判明。水質調査の結果や大腸菌の培養液などの処理方法について同大は「まだ調査が始まったばかり。何もコメントできない」としている。

 文部科学省は省令で、遺伝子組み換え生物の拡散防止措置として、実験室内での飲食を禁止している。関係者によると、香川大医学部の実験室内では、実験中の飲食が常態化していたという。

 香川大の担当教授は四国新聞の取材に対し、「研究室内でそのような違法行為は一切ない」と答えた。

 うーん。漂白剤やUVで不活化した大腸菌も生きている大腸菌も同じように見えるし、組換え大腸菌もコンピテントセル作成のために増殖させたホストも同じに見えるので、「大腸菌の培養液などを滅菌処理せず、流しに捨てて処分」した有様を目撃しただけでは、その場で違法かどうかまでは判断できない・・・何を捨てたのか熟知している、捨てた当事者なら話は違うが。

# 最近はホストセル自体が組換え体という株もあるので、ホストセルだからといって安易に流しには捨てられないものもある。

 プラスミドや組換えタンパク質の調製のために培養した大腸菌の培養液をそのまま流しに捨てることはない。プラスミドもタンパク質も回収しないなんて、第一もったいない。しかし、集菌後の遠心上清を滅菌せずに流しに捨てたのなら、違法の疑いがある。

 「組換え大腸菌」一般を単離する方法は無いが、流しのトラップの水を遠心分離して沈殿を、研究室で使っている数種類の抗生物質を1種類ずつ入れたLBプレートにスプレッドして培養すると、なにがしかの予想はできる。一晩培養してコロニーが生えている様なら液体培養に回してプラスミドを抽出するか、pUCベクター用のユニバーサル・プライマーでコロニーPCRをすれば、運が良ければ(あるいは、”運が悪ければ”、だが)組換えDNAが検出できるだろう。

 とりあえず実験中の飲食はやめましょう。これは一目でわかるので。

 ともあれ、全学的な組換え実験中止というのは非常にダメージが大きいし、はた迷惑だ。日常業務の点検の呼びかけの意味ならまだ意味はあるのだが、それ以外の意味はない。文科省でもそういう指導はしていないことだろう。

 さて、この件、どう決着が付くだろうか。

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2010年4月 3日 (土)

桜満開 -農林団地-

 今週は咽頭炎を起こして1日半伏せっていたが、書類の締め切りがあるので気持ちが悪いのを押して出勤。そうこうしているうちにあっという間に新年度に突入。いつになく短い3月だった。

# この季節は、プロジェクトに関わっていない年は、日々の実験に明け暮れているうちに春がのどかに過ぎていくのだが、今年はそうはいかない。このギャップは何なのだろう。

 それはさておき、食料品の買い出しに行った近所のスーパーのお弁当やビールの売り場には、近隣の桜の名所の開花状況を手書きした表が張り出されていた。これで売り上げが伸びるのかどうかちょっと疑問なのだが・・・。

 その表をみると農林団地のことを”農林省 8分咲き”と表記してあった(それでも分からなくはないけど何時の時代?)。

 スーパーの帰りがけに農林団地のメインストリート、通称「桜通り」を北から南へと通ったのだが、たしかに今やほぼ満開。花見客も沢山。明日あたりが花見のピークだろうか。ちなみに農林団地のメインストリート沿いの桜には、すくなくとも3種類の品種があるようだ。研究所の敷地内や稲荷川沿いまでいれると、もう少し種類が多い。

 桜の園も単一品種の方を美しいと感じるか、吉野の里のように色々な遺伝子型が混じっている方が美しいと感じるかは人それぞれ。生物多様性という観点から見ると、種としては一種類なので、脆弱性という点で畑と大差ないのだけれど。

 そういえば、最近ようやく「セカイカメラ」なるケータイのサービスがあるのを知った。これ、植物園でも対応してくれないかなぁ。ケータイのカメラを向けた植物のライブ画像の上に学名や品種名のタグが出てるといいなぁ。

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