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2010/02/08

ヒトのゲノムワイドアソシエーション研究

 日本人集団でゲノム全体のSNPと、健康診断の結果、血液検査データを突き合わせてみると、検査の測定値と遺伝子型の間には意外な相関が発見されるよ、というお仕事。

Yoichiro Kamatani et al., “Genome-wide association study of hematological and biochemical traits in a Japanese population,” Nat Genet advance online publication (February 7, 2010), http://dx.doi.org/10.1038/ng.531 

 オーダーメード医療の前に、オーダーメード健康診断を、というところでしょうか。血液検査の値の解釈にあたっては遺伝子型で補正した方がより精確に解釈できるものがある、という示唆を与えてくれました。ヒトは実験動物とは違って遺伝的に雑駁なので、正常値の範囲も遺伝子型に応じて多様だというのは至極もっともなお話です。
 ・・・ですが、これが新聞社にかかると理解にこんなに幅があるという例をご紹介します。まずは真っ当な順に産経新聞から。

健康診断、より正確に!血液検査の関連遺伝子46個を発見

2010.2.8 03:00

 健康診断などで行う血液検査の結果を左右する46個の遺伝子を、東大と理化学研究所の研究チームが日本人のゲノム(全遺伝情報)解析で発見した。肝機能などの数値は、遺伝子のタイプによって個人差が大きいことが判明。その人の体質に合った基準値を設けることで、より正確な診断が可能になる。米科学誌「ネイチャー・ジェネティクス」(電子版)に8日、発表した。

 発見したのは赤血球、肝機能、腎(じん)機能、尿酸、心筋梗塞(こうそく)など18項目の血液検査に関連する新規の遺伝子。肝機能では、ALP値は遺伝子の違いにより最大99の個人差があり、ガンマGTP値などは酒に強い遺伝子を持つ人で高い傾向があった。また血液型がB型の女性は、他の血液型の人と比べて貧血のリスクが21%低いことも分かった。

 検査結果の目安となる「正常値」は、数値にかなり幅がある。

 研究チームの松田浩一・東大医科学研究所准教授は「遺伝情報を調べることで自分の正常値を知っていれば、早めに異常に気付いたり、余計な心配をしなくて済むようになる」と話している。

 研究チームは、東大医科研の「バイオバンク」に登録されているがんや糖尿病、心臓病などの患者1万4700人分のデータをコンピューターで解析。膨大な情報を高速解析する数学的手法を駆使し、多数の遺伝子を一度に見つけ出すことに成功した。

 非常に良くかけていると思います。これに次ぐのは読売新聞。

肝機能値「正常」で病気兆候も、個人差大きく

 理化学研究所と東京大の研究チームが約1万5000人分の遺伝子データをコンピューター解析したところ、血液検査の結果に影響を及ぼす遺伝子が46種類も見つかった。

 肝機能を示すγ(ガンマ)GTPやGOT、腎機能をみるBUNなど7項目は、遺伝子の型によって数値が高くても健康だったり、低くても病気の兆候があるなど、数値と健康状態の間に個人差が大きく「正常値」の基準を見直す必要があることも判明。8日付の科学誌ネイチャー・ジェネティクス電子版に発表した。

 遺伝子の個人差と、血液検査20項目のデータ、実際の体の状態との関連性を計算した。心筋梗塞などの兆候を調べるCKという検査項目の場合、正常値の上限は195(女性)だが、無関係と考えられていた免疫系の遺伝子の型によって、191でも高すぎる人や、204でも正常といえる人がいることが判明。一人ひとりの遺伝子型に合った正常値の設定が必要なことがわかった。

(2010年2月8日12時32分  読売新聞)

 次、時事ドットコム。

B型、貧血リスク低い=遺伝子個人差、血液検査に関連-46種を発見・理研、東大

 血液型がB型の人は、貧血リスクが低い-。理化学研究所と東京大の研究チームが、約1万5000人分の遺伝子の個人差をコンピューターで解析し、血液検査の検査値20項目と関連する遺伝子46個を見つけた。項目によっては個人ごとに血液検査の「正常値」が変わる可能性もあるといい、疾患のより正確な診断に役立つという。8日、米科学誌ネイチャー・ジェネティクスに発表した。
 理研ゲノム医科学センターの鎌谷直之副センター長と東大医科学研究所の松田浩一准教授らは、医科研に登録されている患者1万4700人分の遺伝情報と臨床検査の情報を解析。1人当たり計50万カ所の遺伝子の個人差(一塩基多型=SNP)と血液検査結果との関連を統計的に調べた。
 その結果、ガンマGTPやコレステロール値など20の検査項目につ いて46個の遺伝子に新たな関連性が見つかった。
 この中で、血液型の違いをもたらす遺伝子が、ヘモグロビンの濃度と関連を示すことや、細胞の老化に関連する遺伝子が赤血球の数と関連することが判明。特にB型の女性は、貧血のリスクが全体の平均より約21%低いことが分かった。(2010/02/08-05:53)

 見出しが見事に記事の足を引っ張っています。

# えー、BMIとSNPの相関はないもんでしょうかね。

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