ダイズ・ゲノムシーケンス完了
08年12月にダイズ・ゲノムのドラフトシーケンス公開についてのエントリーを書いた。今回は、完成版がNatureで発表されたと言うニュース。論文はこちら。
- Jeremy Schmutz et al., “Genome sequence of the palaeopolyploid soybean,” Nature 463, no. 7278 (January 14, 2010): 178-183, doi:10.1038/nature08670.
ダイジェストは新聞でどうぞ。毎日新聞より。
大豆ゲノム:理研など日米国際チームが解読 品種改良、効率化に期待
大豆のゲノム(全遺伝情報)を、理化学研究所植物科学研究センター(横浜市)など日米の国際チームが解読し、14日付の英科学誌ネイチャーに発表 した。たんぱく質を作り出す遺伝子は4万種を上回り、多様な生命活動を営んでいることをうかがわせている。異常気象に強い品種や収量の多い品種などの育種が効率的に進むと期待される。
解読によると、ゲノムの大きさを示す化学物質「塩基」の数は約11億対で、イネの約4億対より大きかった。一方、遺伝子は、最新の研究で約4万3000種類といわれるヒトを上回る4万6430種類だった。
大豆は世界で年間約2・3億トン収穫され、イネ、小麦、トウモロコシに次ぐ主要作物だ。また、家畜飼料やバイオ燃料の原料としても使われている。
日本の責任者を務めた理研の桜井哲也・ゲノム情報統合化ユニットリーダーは「2万種を超えるマメ科植物の進化を知る手がかりになるほか、地球規模の食糧難や環境問題の解決に役立つ」と話す。【元村有希子】
論文のエッセンスを補足すると、ゲノムサイズは1.1 Gbp、遺伝子数は46,430個、古い倍数体の痕跡を留め、予測される遺伝子の78%は染色体の端部に座乗する。倍数化の時期は5千6百万年前, 1千3百万年前と推定され、遺伝子の75%はマルチコピーになっている。
ショットガンシーケンスで解析された(今のところ)最大の生物のゲノムだろう。特徴は、論文の表題通り、何と言っても"palaeopolyploid"(古倍数体)という性質だろう。染色体自体の重複と、染色体内部の重複が複雑に織りなすゲノムの迷路は、断片的なシーケンスを吐き出すタイプのスーパーシーケンサーでは歯が立たない。long readできるシーケンサーが出てくるまでは、階層的ショットガンが最善の戦略だろう。
これでようやくアソシエーションマッピングなどの機能解析とリシーケンシングによる多様性解析の基盤が整ったことになる。育種の効率化はそれからのお話。
# 土地の測量(=ゲノムのシーケンス)が終わった段階で、建物(=品種)がすぐにできる訳はないでしょ?
これまでミヤコグサをマメ科のモデル植物と呼んできたが、ゲノム情報に関しては、もうダイズの方が先行してしまった。トランスフォーマントを作って維持管理する分にはまだミヤコグサに分があるけれども。
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