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2010年1月の記事

2010年1月24日 (日)

第2回「新農業展開ゲノムプロジェクト」シンポジウム

 先週木曜日(1月21日)、表記シンポジウムに参加した。テーマは”中国の研究者等との遺伝子組換え作物の研究に関する情報交換”。演者は、北京大学前学長 許智宏先生、北京大学生命科学学院 安成才先生、デュポン社中国支社 王琴芳先生の三氏。

許先生、安先生のお話:
 中国は世界人口の22%を擁するが、農業生産に利用可能な土地面積は世界の9%に過ぎない。この人口に十分な食料を供給することは重要な課題である。これまでのところ十分な食糧供給に成功してはいるが、今後増大する消費を前に自給率を確保するためには技術革新による食料生産の向上が必要である。中国はGDPの1.5%を農業バイオテクノロジーの研究開発に投資している。

# この、研究開発に対する財政支出は、国の将来を支えるための”投資”であるという明確な目的意識は見習うべきだろう。もっとも、日本では全産業に占める農業の地位は中国ほど高くはないので、投資対象としての順位もそれなりになることは致し方ないけれど。

 農業バイオテクノロジー研究として力を入れている分野はイネ・ゲノム研究など作物遺伝子の機能解析研究そして、遺伝子組換え作物の開発。中でも特に中国らしい分野はイネのF1ハイブリッド育種関連遺伝子の機能解析と、ワタの繊維発達に関連した遺伝子機能の解析(中国のイネ育種は、この30年ほどの間、F1ハイブリッドに非常に重点化している)。

 中国で遺伝子組換え作物の開発で重点化している作物種は、イネ、トウモロコシ、ワタ、コムギ、ナタネの5種類。標的形質は、耐虫性(BtとCPTI)、耐病性、ストレス耐性、油収量の向上(ナタネ)、フィターゼ。ここでいうフィターゼは根から分泌するタイプ?なのか、土壌中のリン酸の吸収効率を向上させる目的という説明だった。他の国では、家禽の飼料に添加する組換えフィターゼを種子に内生させて、飼料添加物を削減すると同時に家畜のリン酸利用効率を向上させるのが目的なので、ちょっと指向性が違うのかな、という感じ。

# 中国では昨年末、耐虫性遺伝子組換えイネの商業栽培が許可されたことが報道された。主要作物として、独自開発の遺伝子組換え作物に商業栽培の許可が下りたのは中国がアジアでは1番乗りだ。これを踏まえて・・・

王先生のお話:

 規制関係の情報に関していえば、中国は組換え作物の商業栽培のための許認可に大きな特徴がある。

  • 栽培許可は省単位で下りる(全国一律ではないので、一つの品種に対しても省ごとに許可が出される)。
  • 栽培許可は”品種単位”で下りる(OECD加盟国では、イベントごとに許可が下りる。中国では安全性が確認された品種を交配親に使っても、新たな品種ごとに許可を取り直す必要がある)。
  • 商業栽培に向けた野外試験は栽培面積ごとに3段階に分かれており、スケールアップしながら国内の評価”基地”で栽培試験を行う必要がある(国内開発作物限定なのか、海外開発の品種でもそうなのかは不明。OECD加盟国ではそれぞれの国内試験のデータの提出と小規模の試験栽培で良い)。
  • 栽培面積は、0.6 ha以下、0.6-2 ha、2 ha以上の3段階(・・・なのだが、日本の農家の平均耕作面積は1.65 ha位なので、”2 ha以上”という面積は、もはや試験栽培という規模ではないように思う)。
  • なお、品種登録のための栽培試験は、遺伝子組換え作物としての栽培試験終了後に3ヶ年かけて行うことになっているので時間がかかりすぎる(このあたりの事情は、日本の場合もあまり変わらない)。

# これだけの面積で栽培すると収穫物もそれなりの量になる。イネであれば2 ha栽培すると、収穫物は少なく見積もっても10tに上る。さて、どう処分するのか?流通規制を厳しくしておかないと市場に混乱を招くおそれあり・・・というコメントがNatureに投稿されていた。

 一方、食品安全性については、実質的同等性ベースで評価するという説明はあったが、あまり詳しい話はなかった。研究開発の推進を目的とした栽培規制としては、おそらく世界一厳しい基準が設けられている様に思うのだが、食品・飼料安全性についてはむしろOECD加盟国の水準よりも緩いように思う。これが食品の輸出に際して障害とならなければ良いのだが。

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2010年1月14日 (木)

ダイズ・ゲノムシーケンス完了

 08年12月にダイズ・ゲノムのドラフトシーケンス公開についてのエントリーを書いた。今回は、完成版がNatureで発表されたと言うニュース。論文はこちら

  • Jeremy Schmutz et al., “Genome sequence of the palaeopolyploid soybean,” Nature 463, no. 7278 (January 14, 2010): 178-183, doi:10.1038/nature08670. 

ダイジェストは新聞でどうぞ。毎日新聞より。

大豆ゲノム:理研など日米国際チームが解読 品種改良、効率化に期待

 大豆のゲノム(全遺伝情報)を、理化学研究所植物科学研究センター(横浜市)など日米の国際チームが解読し、14日付の英科学誌ネイチャーに発表 した。たんぱく質を作り出す遺伝子は4万種を上回り、多様な生命活動を営んでいることをうかがわせている。異常気象に強い品種や収量の多い品種などの育種が効率的に進むと期待される。

 解読によると、ゲノムの大きさを示す化学物質「塩基」の数は約11億対で、イネの約4億対より大きかった。一方、遺伝子は、最新の研究で約4万3000種類といわれるヒトを上回る4万6430種類だった。

 大豆は世界で年間約2・3億トン収穫され、イネ、小麦、トウモロコシに次ぐ主要作物だ。また、家畜飼料やバイオ燃料の原料としても使われている。

 日本の責任者を務めた理研の桜井哲也・ゲノム情報統合化ユニットリーダーは「2万種を超えるマメ科植物の進化を知る手がかりになるほか、地球規模の食糧難や環境問題の解決に役立つ」と話す。【元村有希子】

 論文のエッセンスを補足すると、ゲノムサイズは1.1 Gbp、遺伝子数は46,430個、古い倍数体の痕跡を留め、予測される遺伝子の78%は染色体の端部に座乗する。倍数化の時期は5千6百万年前, 1千3百万年前と推定され、遺伝子の75%はマルチコピーになっている。

 ショットガンシーケンスで解析された(今のところ)最大の生物のゲノムだろう。特徴は、論文の表題通り、何と言っても"palaeopolyploid"(古倍数体)という性質だろう。染色体自体の重複と、染色体内部の重複が複雑に織りなすゲノムの迷路は、断片的なシーケンスを吐き出すタイプのスーパーシーケンサーでは歯が立たない。long readできるシーケンサーが出てくるまでは、階層的ショットガンが最善の戦略だろう。

 これでようやくアソシエーションマッピングなどの機能解析とリシーケンシングによる多様性解析の基盤が整ったことになる。育種の効率化はそれからのお話。

# 土地の測量(=ゲノムのシーケンス)が終わった段階で、建物(=品種)がすぐにできる訳はないでしょ?

 これまでミヤコグサをマメ科のモデル植物と呼んできたが、ゲノム情報に関しては、もうダイズの方が先行してしまった。トランスフォーマントを作って維持管理する分にはまだミヤコグサに分があるけれども。

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2010年1月 7日 (木)

RNAウイルスの遺伝子がヒトゲノムに取り込まれて機能していた。

 遺伝子治療などヒトの形質転換に使われるウイルスベクターは、染色体に組み込まれるレトロウイルス型のベクターが使われる。これに対して、一過性の発現ベクターとしては神経細胞指向性のヘルペスウイルス(HHV)やアデノウイルス(AdV)などDNAウイルスや、RNAウイルスであるセンダイウイルス(SeV)が使われる。
 レトロウイルス型のベクターは染色体組み込みの際にゲノムの遺伝子を破壊するなどの悪さをして、時に細胞をがん化させることがあるので、最近はそれよりも安全性の高いHHVやAdVに注目が集まっている。一方SeVなどのRNAウイルスはゲノムがRNAであることから、逆転写されない限りヒト・ゲノムに組み込まれることはないと考えられている。
 もともと、RNAウイルスや内在性のmRNAの逆転写自体が、内在性のレトロウイルス由来の逆転写酵素活性がある場合くらいにしか起きないので、RNAウイルスがヒトゲノムに取り込まれ、生殖系列を経由して遺伝し、しかもヒト集団内に拡散していく現象は非常に希なイベントであると考えられる。今日のニュースは、そんな希な現象。

ヒトゲノムにRNAウイルス発見=4000万年前に感染か-大阪大

 ヒトの全遺伝情報(ゲノム)の中に、RNAウイルスの遺伝子が取り込まれていることを大阪大の朝長啓造准教授らが発見した。4000万年以上前に感染した痕跡とみられ、ウイルスと人類が互いに関連しながら進化してきた謎を解明する手掛かりになるという。7日付の英科学誌ネイチャーに発表した。
 生物は感染したレトロウイルスの遺伝子を取り込み、自らのゲノムを多様化させてきた。現在まで残ったこれらの遺伝子は「ウイルス化石」と呼ばれるが、レトロウイルス以外は見つかっていなかった。
  朝長准教授らは、RNAウイルスの一種で脳神経細胞に感染しやすいボルナウイルスの遺伝子の一部が、ヒトやアフリカゾウ、マウスなど哺乳(ほにゅう)類のゲノムに存在することを新たに発見。ヒトの祖先が枝分かれした4000万年前までにこのウイルスに感染し、ゲノムに取り込まれた可能性が高いことが分かった。
 朝長准教授は「ボルナウイルスの感染の仕組みが分かれば、遺伝子治療に応用できる。神経細胞に外部から遺伝子を導入する際の運搬役など、新しい利用法の開発につながるのではないか」と話している。(2010/01/07-06:56)

 オリジナルの論文はこちら。

Masayuki Horie et al., “Endogenous non-retroviral RNA virus elements in mammalian genomes,” Nature 463, no. 7277 (January 7, 2010): 84-87, doi:10.1038/nature08695.

 しかし、HHV6がヒトのゲノムに組み込まれている希なイベントもあるようなので(PMID: 10477678)、「レトロウイルスではない」というのがこの研究の特徴ではなく、やはりRNAウイルスの遺伝子が組み込まれているというところが特徴なのでしょう。

 植物ウイルスにはRNAウイルスが多いのと、生殖系列の細胞の分化が動物よりもずっと遅いので、同じような現象はより見つかりやすい条件が揃っています。
# たしかイネ・ゲノムにはツングロ・ウイルスの化石が埋まっていたと記憶しております。

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