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2009年2月1日 - 2009年2月7日の記事

2009年2月 5日 (木)

中華转基因種子三昧

ちょっと故あって、中国の遺伝子組換え品種の開発状況を横目で眺めている。

参考にしたニュースソースは、
中国生物安全網”: 農業分野で利用されている遺伝子組換作物の栽培に関する許認可の状況等が記載されている。

中国種子網”: 作物種子の総合ポータルサイト。日本にはないかな?トップページのかなり目立つところに”转基因広告”(遺伝子組換えの広告)という欄があり、国内の遺伝子組換え作物に関する情報が色々記載されている。

ちなみに、"基因"(jīyīn)は遺伝子のこと。音がジーインという風に聞こえる。geneに近い。"转基因"(zhuǎnjīyīn)はトランスジェニック(遺伝子組換え)である。

“转基因棉花技术工程中心”落户天津滨海新区」という見出しのニュースが2月3日付で出ている。字面から判断すると「遺伝子組換え綿花の技術開発センターが、天津の沿岸部の新しく開発中の地域に落成」ということらしい。これを見てみると、

中国では土壌病害である綿花の黄萎病(綿花癌症)が問題になっており、天津地区では栽培面積の80%で被害が見られ、そのため10%内外の減収になっている。中国が知的財産権を有するAt7遺伝子による黄萎病抵抗性や雄性不稔を利用した交配制御技術など多くの国際的にも先進的な技術によって、まもなく新しい品種が提供できるだろう。計画では、2015年までに、センターが3-5の知的財産権を持つ病害抵抗性の遺伝子組換え綿の種子を使って、10万ムー(面積)の種子生産基地を作り、その生産能力は1000万公斤に及ぶ。それによる農家の栽培面積は、1000万ムー、増収は30億元である。

大体こんなことが書いてある。面積と金額がピンと来ないのでGoogleの翻訳機能を使うと、1公斤=1キログラム(種子生産で1万トン)、1ムー()=6.67アール(1000万ムー=6,667km2)、1人民元=13.14円(30億元=39,426,994,348.8円。年間で約400億円の増収ですな)。

翻訳すると、2015年には、1万トンの綿の種子を6,667平方キロメートル(東京都の3倍強、茨城県の110%ほど)の面積に蒔いて、年間400億円の増収を狙うという壮大な話である。それが全部、独自技術で開発された遺伝子組換え棉花だという。

ちなみに商業栽培の許可状況を”中国生物安全網”で見てみると、許可されているのは概ね棉花(抗虫棉)ばかり。国策として、工業製品原料から実用化を進めるということなのだろう。食糧輸出国でもあることだし、混入による回収騒動が起こると経済的なダメージが非常に大きいことから、その点のリスクも考えているのかも知れない。

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さてさて。我が国も今のところ、技術では決して負けてはいませんが、実用化段階では完全に遅れをとっております。まあ、彼の国とはGDPに占める農業の位置づけが全く違いますから、比較してもせんないことですが。

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2009年2月 4日 (水)

ソメイさんの悲しい身の上

2/4 朝日新聞、天声人語より

あらかじめ言っておく。ソメイヨシノを勝手に「ソメイ」と略すな!
以下、このエントリーでは天声人語を”人語”と呼ぶことにする。

▼しかし手放しでは喜べない。人が植えたソメイの花粉で、近くの野生桜が交雑する「遺伝子汚染」が報告されている。環境省の研究班がヤマザクラ、オオシマザクラ、エドヒガンなどの種子を調べたら、13%からソメイの遺伝子が見つかったという▼生物は地域ごとに進化し、それぞれの環境に適した最良の遺伝子を受け継ぐ。遺伝子が混じると、病気や気候への適応力が弱まりかねない。花見のとばっちりだ

朝日新聞の方々は生態学的な思考が苦手なのではないかと懸念される。

「環境省の研究班がヤマザクラ、オオシマザクラ、エドヒガンなどの種子を調べたら、13%からソメイの遺伝子が見つかったという」

これは、

「環境省の研究班がヤマザクラ、オオシマザクラ、エドヒガンなどの種子を調べたら、87%から野生のサクラの遺伝子のみが見つかったという」

ということだ。

この実生がそのまま若木になれば、87%は自然界でよく見られる遺伝子の交流の産物ということになる。もし、”そのまま若木になる”と言う前提が崩れるとしたら、それはどういう場合か?仮に、人語にいう様に「病気や気候への適応力が弱ま」れば、その木はきちんと成木まで育たないだろう。従って、ソメイヨシノの遺伝子が受け継がれていく確率は高く見積もっても13%、環境適応性が低くなればそれよりも下がることが見込まれる。

山林にはサクラが自生している所は随所にある。そういうサクラは実生で繁殖する。しかし、山林がサクラだらけになることはないのはなぜか?毎年生産される実生が、他の植物との競争や環境からのストレスに負けて死んでいくからだ。

野生のサクラ集団に、たかだか1割少々の確率でソメイヨシノの遺伝子が紛れ込んだとして、しかもそれが「病気や気候への適応力が弱まる」のであれば、それよりも環境への適応性に勝る、残りの9割の実生がそれらのか弱い雑種に取って代わると考えるのが妥当ではないか?それとも、野生のサクラは種子生産の能力が非常に低いという事実があって、1割程度の虚弱な実生が生じると次世代を再生産できなくなる懸念があると言うことなのだろうか。

”交雑種子ができる”ということと、”その種子由来の実生が育って集団の遺伝子型が変化する”、ということの間に必然的な関係はない。集団の遺伝子型が大きく入れ替わるのは、雑種の適応能力が非常に高い場合か、遺伝子頻度の機会的浮動(random genetic drift)が起こった場合、あるいは生育環境が大きく変化した場合だけだろう。

もっとも、”人語”では「生物は地域ごとに進化し、それぞれの環境に適した最良の遺伝子を受け継ぐ。」との妄言を恥ずかしげもなく書いていることから、論理を展開する上で、遺伝子頻度の機会的浮動を考慮していることはないだろう。ある生物の集団の保持している遺伝子というものは、遺伝子を交換できる生物の集団のなかで、ある程度の多様性を保ちながら維持されている。遺伝子に生じた死なない程度のそこそこの突然変異であれば、多少の不都合があっても親から子へと引き継がれていく。決して「最良の遺伝子」が受け継がれる仕組みにはなっていない。もし、最良の遺伝子しか残らないのであれば、その生物集団では種内の遺伝的多様性は急速に失われてゆき、生育環境が大きく変動した場合には速やかに死滅するかもしれない。

いずれにしても、実際に何が起こっているかは、数十年前にソメイヨシノが移植された地域の山林において、世代交代した野生のサクラの成木にどの程度の頻度でソメイヨシノの遺伝子が入り込んでいるかを調べるまでは分からないことだ。

「雑種を移植したのがいけない」という偏頗な理屈でカタの付く問題ではない。なぜならば、ソメイヨシノというクローンはおそらくは雑種だが、遺伝子自体は基本的に”混じり合う”ことはないので、個々の遺伝子はオオシマザクラ由来の遺伝子かエドヒガン由来の遺伝子のどちらかであり、雑種だからどうのと言う特異な問題は生じない(もの凄く微視的に見ると、遺伝子レベルの分子内組換えと言う現象があるので”基本的に”とただし書きを付けておく)。

ちなみに、”人語”や記事に引用された生態学会の発表要旨はこちら

これも、ソメイヨシノに由来するエドヒガンやオオシマザクラの遺伝子の拡散がいけないと言う論旨であれば、その親である、もともと分布域の狭いオオシマザクラは、本来の分布域ではないどこに持っていっても”遺伝子攪乱”をおこすので、”いけない”ということになりはしないか?その場合、種間雑種ができること自体が問題なのだろう。

以前、朝日新聞ではホシザクラという”新種”のサクラについての記事が掲載されていた。記事によれば、このホシザクラもエドヒガンとマメザクラの雑種らしい。現状で100個体ほどが自生しているが、個体数が減ってきているとのこと。

朝日新聞によれば、こちらのエドヒガンの遺伝子を持つ雑種は保護するべき対象で、他方、各地に移植されているソメイヨシノは”遺伝子汚染”の元凶らしい。”人語”では、ソメイヨシノが「人が植えた」”雑種”だからという理由で不当に貶められている様な気がする。馬鹿馬鹿しい限りである。

私はむしろ、南は北緯35度の九州から北は北緯43度の北海道まで、単一のクローンが移植されているのにもかかわらず、そこそこ生育している様子を健気にさえ感じるのだが。観賞用の樹木の品種としては実に優秀ではないか(どこに行っても一緒のサクラというのは、お米のコシヒカリと似て、いささか面白味に欠けるところではあるが)。

こざかしい人間の議論を余所に、今年も様々なサクラが日本の春を彩ることだろう。

※ Prunusと言う属は分類単位としては結構雑駁な集合である様に思う。そもそも、分布域が地理的に隔離している以外の基準では、別種と言えるかどうか微妙な”種”同士の交雑後代を、わざわざ雑種と定義したり、新種と定義したり・・・。自然環境のの有り様から見ればどうでもいい話で研究者の飯の種以上の意味はないだろう。

 たとえば、イネだってOryza sativaという栽培植物の集団のなかにjaponicaタイプとindicaタイプがあるように言われてきた。しかし、ゲノムサイズや各種の遺伝的変異の蓄積のあり方、交雑後代の不稔からみて、よく似た祖先野生植物から別々の場所、時代に人の生活の中に入り込み、栽培され、そして、まとめてイネ(Oryza sativa)と命名されたものだ。だが、japonicaタイプとindicaタイプをわざわざ別種としては扱わないし、交雑後代を新種とも呼ばない。
 イネは作物だから特別なのだと言われるかも知れないが、Prunus属だって結構栽培化されている。ウメ、モモ、プルーン、スモモ、アンズ etc.。要は人間の認知がどこまで自然分類(これも実存としては怪しいところはあるのだが)に介入するのか、という問題なのだ。

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2009年2月 1日 (日)

同種の植物が交雑するのは問題ではない。

遺伝子組換え作物の話題ではありません。1/29 朝日新聞より。

野生の桜、遺伝子ピンチ 移植ソメイヨシノと交雑

2009年1月29日3時0分

 花見や緑化用に移植されたソメイヨシノの花粉で、近くに自生する野生の桜が交雑して、遺伝子汚染されていることが、環境省研究班の調べで分かった。生物は地域ごとに独自に進化して、その地域に合った有用な遺伝子を受け継いでいる。遺伝子が混じることで、病気や気候への適応力に影響が出かねない。研究班は来年度、適切な樹木の移植方法に関する指針を作る。

 研究班メンバーの向井譲・岐阜大教授らは05~07年、岐阜や静岡の公園や山で、ヤマザクラ、オオシマザクラ、エドヒガンなど野生の桜、計216個の種子を集め、遺伝子を調べた。すると、13%にあたる29個の種子からソメイヨシノの遺伝子が見つかった。

 反対に、ソメイヨシノも別の桜の花粉で結実していた。種子129個の約半数から、半径約200メートルにある桜の遺伝子が見つかった。ソメイヨシノの根元では、交雑した種子が芽吹いていた。今後、芽吹いた種が、子孫を残せるか調べる。

 向井さんは「今後、ソメイヨシノを、地域固有の野生桜が自生する地域に植える際には、注意が必要になるだろう」と話す。

 研究班代表の津村義彦・森林総合研究所室長によると、ブナも地域ごとで遺伝子に違いがあり、別の地域に植えると、気候が合わず、枝先が枯れやすくなることが分かったという。

 このため、ブナ、ヤマザクラなどで地域ごとに遺伝子型が違うことを地図で示し、適正な移植、緑化の方法を定めた指針案を作成する。

 これらの結果は、3月に盛岡市で開かれる日本生態学会で発表する。(長崎緑子)

この記事に登場した専門家の皆様には同情を禁じえない。

事実関係から言えば、

  1. 野生のサクラの種子は、同じ地域に自生する野生のサクラ同士の交雑種子とソメイヨシノなど人為的に導入されたサクラとの交雑種子からなる。
  2. 人為的に移植されたソメイヨシノも、近隣ににある野生のサクラと交雑し、交雑に由来する後代の実生が、ソメイヨシノの近傍に自生することがある。
  3. 交雑後代の実生は、在来の野生のサクラよりも地域の気象に対して環境適応性が劣ることがある。

それはわかる。次の問題は、

  • 交雑由来のサクラの実生はどこに生えているのか?

だ。上記の調査では、山の中のサクラの実生苗からソメイヨシノの遺伝子が見つかったとは言っていない。公園のソメイヨシノの根本に生えいる実生では、野生のサクラの遺伝子が見つかったと書いてある。

であれば、山の中のサクラにソメイヨシノの遺伝子が浸透しているという事実があるかどうかは、この記事の範囲では確認されていないことになる。

記事にあるとおり、交雑後代の植物が野生のものよりも地域の環境に適応しにくいのであれば、山の中では、交雑後代の実生よりも野生のサクラ同士の実生の方が生存しやすいのではないか?適応性が劣る雑種の方が、在来種を押しのけて優先種になるという説には説得力がない。

花粉が交配に預かって種子ができる”ということと”その雑種が繁殖して地域の遺伝子プールに優先的な地位を占める”ということを一緒くたにしてはいけない。記事の後の方で引用されている津村さんのコメントはまさに、地域の気候帯への適応能力が重要だと言っているのだから、雑種が繁殖するかどうかについてもその観点から考えるべきであって、次のステップで行なうべきことは、”適正な移植、緑化の方法を定めた指針案を作成”することではなく、”その地域の山林において、近隣にソメイヨシノが導入された以降の樹齢の野生のサクラに、ソメイヨシノの遺伝子が実際に拡散している事実があるかどうかの確認作業”だ。

本当に心配するべきは”遺伝子が混じることで、病気や気候への適応力に影響が出かねない。”というのとは全く逆で、交雑によって在来種よりも適応能力が高い雑種が自然淘汰の結果優先種になりはしないか、ということだ。

不十分な根拠で規制のガイドラインを作ってよしとする姿勢は間違っている。なぜならば、記事で言われるような交雑が本当に問題になっているのであれば、これからガイドラインを作っても、これから植えられるサクラに対しては対応できるだろうが、今既に植えられているソメイヨシノに対しては何等手を打つことにはならないからだ。

逆に、公園のソメイヨシノが野生のサクラの遺伝子によって”遺伝子汚染”されているということで、公園の管理に当たっては景観保持の観点から実生のサクラをきちんと淘汰するべき、と言う議論ではないのかな。まあ、”遺伝子汚染”という意味不明のことばを使った時点でこの記事は論点が迷走しているのだが。

ちなみに、サクラを含む多くのバラ科の植物には自家不和合性がある。自家不和合性というのは「自家受粉しない仕組み」のこと。地域の在来の集団の中でも交雑するグループ、交雑しないグループがあるはずで、そこにソメイヨシノが闖入した場合、あるグループとは交雑するが、あるグループとは交雑しないということが起こる。

技術的には、地域の在来種の不和合性遺伝子を調べて、それと交雑しない遺伝子型のサクラを導入あるいは開発して移植すれば事足りるのだが、数十年の時間とコストをかけねばならないほどの重大な問題ではない。

なぜならば、地球温暖化の影響で気象条件のほうが急激に変動しつつあるので、作業に数十年の時間を要するのであれば、これまでその地域の環境に適応していた在来の野生植物だからと言って、今後の数十年もその地域の環境にもっとも適したものだとはいえない状況にあるのだから。

過激なことを言えば、生態系を適度に撹乱しておかないと、地域の生物種内の遺伝的多様性では、気象の変化に対応できずに地域の生物種集団ごとまるまる滅びてしまうリスクだってある。ニッチを空白にしないためには、遺伝子を人為的に多様化させておく”攻めの保全”と言う考え方だってアリかもしれないのだ。

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