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2009年11月22日 - 2009年11月28日の記事

2009年11月28日 (土)

GPUコンピューティングの時代がやってくる・・・か?

長崎大学の濱田先生がゴードン・ベル賞受賞ということで、ニュースになっています。丁度、スパコンの事業仕分けが行なわれた時期なので注目を集めているようです。

安価スパコン:「事業仕分け」どこ吹く風 3800万円で完成 長崎大助教らゴードン・ベル賞 

 東京・秋葉原でも売っている安価な材料を使ってスーパーコンピューター(スパコン)を製作、演算速度日本一を達成した長崎大学の浜田(剛つよし) 助教(35)らが、米国電気電子学会の「ゴードン・ベル賞」を受賞した。政府の「事業仕分け」で次世代スパコンの事実上凍結方針が物議を醸しているが、受 賞は安い予算でもスパコンを作れることを示した形で、議論に一石を投じそうだ。

 同賞は、コンピューターについて世界で最も優れた性能を記録した研究者に与えられ「スパコンのノーベル賞」とも呼ばれる。浜田助教は、横田理央・ 英ブリストル大研究員、似鳥(にたどり)啓吾・理化学研究所特別研究員との共同研究で受賞。日本の研究機関の受賞は06年の理化学研究所以来3年ぶりという快挙だ。

 浜田助教らは「スパコンは高額をかけて構築するのが主流。全く逆の発想で挑戦しよう」と、ゲーム機などに使われ、秋葉原の電気街でも売られている、コンピューターグラフィックス向け中央演算処理装置(GPU)を組み合わせたスパコン製作に挑戦した。

 「何度もあきらめかけた」というが、3年かけてGPU380基を並列に作動させることに成功。メーカーからの購入分だけでは足りず、実際に秋葉原でGPUを調達した。開発費は約3800万円。一般的には10億~100億円ほどかかるというから、破格の安さだ。そしてこのスパコンで、毎秒158兆回 の計算ができる「演算速度日本一」を達成した。

 26日の記者会見で事業仕分けについて問われた浜田助教は「計算機資源は科学技術の生命線。スパコンをたくさん持っているかどうかは国力にもつながる」と指摘。一方「高額をかける現在のやり方がいいとは言えない。このスパコンなら、同じ金額で10~100倍の計算機資源を得られる」と胸を張った。 【錦織祐一】

ですが、「ゴードン・ベル賞」にも色々な部門がある様子。濱田先生の受賞された部門は「コストパフォーマンス部門」なので、事業仕分けで採り上げられたような絶対性能の追求と同一視してはいけません。

私はスパコンに詳しいわけではありませんが、日ごろパソコンをいじって、なおかつスパコンを計算機資源として利用しているユーザー(Blastなどホモロジーサーチをする人なら誰でもですが)としては、昨今の議論を見ていると奇妙なすれ違いを感じます。

計算機科学の発展には、絶対性能の追求もコストパフォーマンスの追及も大切なのだということで、ともに文部科学省のファンドで、理化学研究所と一緒にすすめめられてきた経緯があるようです。これを、皮肉と見る向きもあるでしょうが、絶対性能とコストパフォーマンスは必ずしも対立する概念ではなく、それぞれの研究成果がいずれは相互に波及しあうと考えるべきでしょう。それは車の両輪なんです。

しかし、3年かけて3800万円でGPUを買い集めなくてはいけなかったというのは結構悲しいものがあります。3年あると、GPUの性能は数倍に上がってしまいますし、同じ規格の製品であれば2年で半値になります。・・・とろとろしてると、すでに組み上げたシステムのGPUと同じ規格の製品が市場で手に入らないという目にあいますが、はしりの製品を買うと調達コストが倍になるという、難しい選択を強いられます。

つまり、2-3倍のコストをかければ1年で必要な数のGPUが調達できたでしょうが、それでは「コストパフォーマンス部門」では受賞できなかったかもしれないと・・・。予算が沢山付いて、さっさとスパコンが出来上がっていたら、かえって評価が高まらなかったかも・・・。

GPUコンピューティングは分岐計算が多いのは苦手といわれているように、分野を選ぶようです。かといって汎用機をスパコン化する「汎用京速計算機」のコストパフォーマンス自体にはちょっと首をかしげるものがあります。

”国策として自力でCPUを開発する能力を維持したい、これはコストではなく投資なのだ”というのなら、それも分からなくはありません。GPUコンピューティングにしてもTOP500に出てくるスパコンにしても、インテルやAMDのようなアメリカの企業が開発したチップを使ったものがほとんどで、地球シミュレーターのSX-9のように単一CPUあたりの性能を追求した独自路線のマシンはあまりありません(中国のマシンも独自路線のようです)。そういう意味では、GPUコンピューティングといえどもNVIDIAのチップを使う限り、野依先生流に言えばアメリカへの隷属ということになってしまうでしょう。

いっそ、昨年スパコン世界一になっていたIBMのRoadrunnerで使われていたCellプロセッサ(ソニー、東芝、IBMの共同開発)のようなものを、「開発後はゲーム機や家電にでも入れて、ばんばん売っていいから。でも売り上げの0.5%は国に返してね」といって、メーカーに資金援助した方が良いかもしれません。CPUはスケールメリットが出ないと投資が回収できませんから、GPUコンピューティングのように最初から汎用品を使うのでなければ、新規開発するCPUを”沢山売って汎用品にする”という方法しかないでしょう。それなら、パソコン用やサーバー用のCPUよりも、携帯端末組込み用のCPUの方が沢山売れますのでスケールメリットが出ます。

# IBMのBlue geneは既に組込み用のPowerPC 440ベースの製品を使っている模様。

しかも、半導体の製造技術は3年もあれば回路の集積度が4倍に上がり、逆に消費電力が下がります。CPUの設計上の耐用年数を5年と考えると、汎用品のCPUの差し替えでメンテナンスできるのであれば運用コストも下げられ、装置の寿命も延ばせます。濱田先生も計算機の台数を問題にされていますが、安くなって台数を沢山作れれば計算機資源としてはそれだけ豊になります(1台のスパコン上で処理できる計算の数には制限がありますから、これを無駄と言ってはいけません)。

どなたか、ルネサスに資金提供して携帯端末用SuperHシリーズのブラッシュアップをしてスパコンに転用するというプランを立てて見ませんかね?単一チップとしては必要以上に多機能ですが、相当省電力になるし。

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2009年11月25日 (水)

トランス脂肪酸に表示義務?

ヒトの介入研究では、飽和脂肪酸を含む食事と同様に、トランス脂肪酸を含む食事の摂取は、血中LDL コレステロールを増加させ、その影響は直線的な用量反応関係であることが示された。トランス脂肪酸の高摂取は、虚血性心疾患のリスクを増大させる可能性がある、とのこと。(EFSAのレポートより)

消費者担当大臣がなんだか、がんばっておいでの様子。

トランス脂肪酸、含有量表示検討へ…消費者相  

マーガリンなどに含まれ、大量に摂取すると心臓疾患のリスクを高めると言われるトランス脂肪酸について、福島消費者相は24日、閣議後の記者会見で「含有量の表示を食品の成分表示で義務づけるよう、消費者庁で検討する」と述べた。
 トランス脂肪酸は、悪玉コレステロールを増加させる一方で、善玉コレステロールを減少させることから、欧米などでは含有量が規制されており、「国内でも規制すべきだ」という声が消費者団体などから上がっていた。福島消費者相は「日本人の食生活では直ちに影響はないと言われているが、啓発のためにも表示する方向で業界からも意見を聞いていきたい」とした。
(2009年11月24日11時41分  読売新聞)

トランス脂肪酸の食品としてのリスク評価は食品安全委員会が行っており、既に評価結果を公表しています(PDF)。これによると、

今回の食品安全委員会の調査結果から、日本人一日当たりのトランス脂肪酸摂取量は、食品群別摂取量から推計(積み上げ方式)すると平均0.7g(摂取エネルギー換算では約0.3%)で、食用加工油脂の生産量から推計すると平均1.3g(同約0.6%)でした。これらの値は、総エネルギー摂取量の1%未満となりました。ただし、これらの推計は、国民健康・栄養調査の平均値を使用しているため、個人のばらつきを把握することは困難です。脂肪の多い菓子類や食品の食べ過ぎなど偏った食事をしている場合では平均値を大きく上回る摂取量となる可能性はありますが、現時点では、その程度について予断できません。
 したがって、消費者の健康保護の観点から、今後とも、日本人(又は日本での)の摂取量や各摂取レベルにおける健康への影響等に関する国内外の新たな知見を蓄積していくことが必要であると考えられます。

平均的な食事を取ってる限り特段のリスクは無いけれども、取りすぎると油断できないよ、とのことで、福島大臣の認識とそう違いはない模様。

しかし、”啓発のためにも表示する方向”というのはどうなんだろう?食品表示の法的根拠はJAS法と食品衛生法。前者は消費者の選択の自由のための表示、後者は健康の保護に関わる表示を規定している(わかりやすい解説はこちら)。なので、啓発っていうのはどちらなんだろうか。

食品安全委員会では、知見の集積は必要としつつも、健康の保護という観点では特に問題視していないので、食品衛生法を根拠にするのは難しいように思う。

さてそこで、日本人の虚血性心疾患による死亡率に関する統計を見ると、 北畠顕ほか「虚血性心疾患の一次予防ガイドライン」2006年改訂版によれば、1997-2003の間、”旧ソビエト連邦の構成国ならびに東欧・北欧の死亡率が上位を占め,ついで西欧・北米の先進諸国が続いている.これに対し日本の死亡率は先進国の中で最も低く,東欧・北欧の1/8~1/10,西欧・北米の1/5 に過ぎない.”とある。

つまり、これらの報告から言えることは、

  • 日本人一日当たりのトランス脂肪酸摂取量は、米国の1/4-1/8、ギリシャと同等か1/2程度に過ぎない。
  • 日本人の虚血性心疾患による死亡リスクは先進国中最低水準で西欧、北米の1/5程度。

ということであって、科学的見地からは、食品中のトランス脂肪酸に対して何らかの対策を執っても平均的な国民の健康の維持向上に特段の効果が見込める状況にはない、と言って良いだろう。

# ここまで書いて、以前FoodScienceに国立医薬品食品衛生研究所の畝山さんが似たような話を書いていたことを思い出した。こちら

私、狭心症持ちです。つまり、冠動脈で動脈硬化がおこって心筋への血液の循環が悪くなって治療を受けています。ちなみに、牛肉はあまり食べません。マーガリンは滅多に食べません。デニッシュのようなパンもほとん食べないので、ショートニングも口にしません。

ちなみに、虚血性心疾患の要因としては、 北畠顕ほか「虚血性心疾患の一次予防ガイドライン」2006年改訂版の”6.精神保健”の項にによれば、

 健康に影響を及ぼすストレス要因としては,仕事の負荷,責任などの仕事の要求度,仕事を行なう上での裁量度や自己能力の発揮などの仕事のコントロール,および職場の人間関係としての上司,同僚の社会的支援がある.
 特に仕事の要求度が高く,仕事のコントロールが低い職場で精神的緊張度が高く,健康問題が生じやすい.さらに,職場での上司・同僚の支援が低いことがもっとも問題を生じやすい.

(略)仕事の要求度が高く,仕事のコントロールが低い高ストレイン群での虚血性心疾患の相対危険度は1.5~5 倍である.

あ・・・、これはまずいなぁ。ステント内の血管内皮が再生するまでにあと7ヶ月くらいかかるはずだし。

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2009年11月23日 (月)

トウモロコシゲノムの解読

Scienceに乗りましたね。トウモロコシゲノムの解読。あとは、コムギ、オオムギ、ダイズで一段落かな。コムギは、PacificBio Sciencesのシーケンサーの登場待ちが当面の現実的な選択かもしれません。

こういうニュースに出会うとあれこれ考えさせられるのですが、教科書的にはトウモロコシの収量水準は近代育種が始まって以来ずっと伸び続けています。流石に従来型の育種での収量水準向上は、最近頭打ちになりつつあるけれど。それでもBtコーンの開発によって虫害による収量ロスや、食害痕からのカビの発生による二次的な被害が減ることで、実質的な収量が伸びてい点はまさに関係者の努力の賜物。

さて、先般のヒトゲノム、40万円なりというエントリーでも書きましたが、半導体におけるムーアの法則よろしく、全ゲノムシーケンスの価格がものすごい勢いで下落しつつあります。数年以内には間違いなく10万円台に突入する。・・・ということを考えていたら、ちょっと嫌なことに気づいた。

その1.
「遺伝子組換え作物の生物多様性影響評価の際には、全ゲノムシーケンスを行って、原品種のゲノム配列と比較すること」という時代が来るかもしれない。

遺伝子組換え生物等の第一種使用等による生物多様性影響評価実施要領 (平成15年財務・文部科学・厚生労働・農林水産・経済産業・環境省告示第2号)

の第一には、こうあります。

本要領は、遺伝子組換え生物等の使用等により生ずる生物多様性影響に関する今後の科学的知見の充実又は当該生物多様性影響の評価に関する国際的動向等を踏まえ、必要に応じて見直しを行う。

国際的動向として、全ゲノムシーケンスが当たり前になれば評価法のスタンダードも変わるということですから。
# 既に組換えパパイヤはシーケンスされていますけどね。

多分、外注で対応することになるのだろう・・・。

その2.
F1雑種の兄弟交配あるいは自殖でF2を展開して、数個体のF2の全ゲノムシーケンスをする。そして、F2集団の個体選抜で、F1と同じ遺伝子型を再構築できる個体を選抜する。
・・・面倒くさい言い方をしましたが、一分子シーケンスでは個々の染色体DNAが両親のどちらに由来するのかまでわかりますので、要はF1品種を遺伝子レベルでリバースエンジニアリングできてしまうということ。となると、”ジェネリックF1品種”とでも言うべきものが比較的安価に作れてしまいます。

全ゲノムを網羅するマーカーがあればこれまでも技術的にはできたことですが、全ゲノムシーケンスが安価にわかるようになると、個々の遺伝子レベルまで正確なコピー品種が作れるようになるでしょう(多分、日本にはコストをかけて他社製品を真似る種苗会社はないでしょうが、そういう育種をする動機がある国はいくらもあるような?)。

ちなみに、種苗法では、保護されるのは品種のみ。交配親はそれ自体が種苗登録されていない限り種苗法では知財が保護されません。

一方、F1品種自体は種苗法で保護されているけれども、ジェネリック品種はあまりに正確なF1品種のコピーなので種苗法違反に当たると判断される可能性が高いでしょう。なぜならば、種苗法第二条2では品種が次のように定義されています。

この法律において「品種」とは、重要な形質に係る特性(以下単に「特性」という。)の全部又は一部によって他の植物体の集合と区別することができ、かつ、その特性の全部を保持しつつ繁殖させることができる一の植物体の集合をいう。

つまり、形質があまりにそっくりで先行品種と区別できず、しかもDNAフィンガープリントでも一緒と言うことになれば、F1の交配親が違っていても製品そのものは先行品種と同一と言うことになるはずです

しかし、種苗会社にとっては独自の遺伝資源を持っていることが他社との差別性を生み出す強みです。ですから、自社で交配親に使っている遺伝資源が簡単にコピーされてはたまりません。

そう遠い未来の話ではないので、今から対抗策を考えておくべき?

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