2014年12月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

最近のトラックバック

どこからきたの?

  • なかのひと

Google Analytics

« 2009年4月26日 - 2009年5月2日 | トップページ | 2009年5月10日 - 2009年5月16日 »

2009年5月3日 - 2009年5月9日の記事

2009年5月 7日 (木)

新型インフルエンザの水際阻止は、まだ必要か?

 このところ、国際空港など水際の新型インフルエンザの検疫が重点的に行なわれている。

 しかし、今回の新型インフルエンザは従来の季節性のインフルエンザと比較しても、さほど凶悪なウイルスではないことが徐々に分かってきた。WHOでは、これまでのH5N1の新型インフルエンザ対策の基準に沿って、多国間での大規模感染を意味するフェーズ6の警報を検討し始めている。

 確かに、従来の基準に従えば、多国間での大規模感染があれば、WHOはフェーズ6の警報を出すことになるのだが、はたして今回の新型インフルエンザは、本当に警戒に値するものなのだろうか?私は、感染症の専門家ではないがちょっと疑問に思い始めている。

 世界各国での新型インフルエンザの感染者は2,000人超、死者44人(5/7現在)。一方、共同通信の記事によれば「季節性だけで年間25万-50万人が死亡する」とのことなので、これと比較して今回の新型インフルエンザによる死亡のリスクはそう高くないかもしれない。

 死亡というのは極端な判断基準だが、そこまで行かなくても、感染のしやすさと症状の重篤さとについても考えてみよう。

 もともと、季節性のインフルエンザは人口に占めるワクチンの接種率が低いこともあり、医療行為による感染予防は高齢者や乳幼児などの高リスクグループを除いてそれほど効果を上げていないのではないだろうか。そういう意味では、ワクチン接種で感染後の死亡リスクの低減が期待される季節性インフルエンザと、未だワクチンが開発されていない今回の新型インフルエンザとの間では、感染予防の可能性と言う観点では実際のところあまり大きな違いはないように思える。

 次に、新型インフルエンザの感染後の重症化のリスクだが、余病を持たない人が適切な治療を受けた場合は、4日ほどの高熱の後は快方に向かうとされており、これも季節性のインフルエンザとそう違わない。感染後48時間以内であればタミフルも効きそうな按配であるし。発熱と細菌による呼吸器への二次感染をコントロールしておけば、あとは十分な水分、栄養、休養で何とかなる。・・・というか、結局は飲んで食って寝るしかない。その点、新型も季節性も大差ない。

 さて、そうなると、実際のところどれだけ感染が拡大しているかを比べてみたくなる。今現在の日本における季節性インフルエンザの流行の状態だが、国立感染症研究所の集計によると、

2009年第16週のインフルエンザの全国レベルでの定点当たり報告数は4.10(報告数19,515)となり、前週より微増した。都道府県別では秋田県 (15.3)、長野県(10.8)、福井県(10.5)、福島県(9.8)、鹿児島県(9.0)、岩手県(8.9)の順となっている。警報レベルを超えて いる保健所地域は17箇所(11道県)と減少したが、注意報レベルのみを超えている保健所地域は39箇所(15都道県)と増加した。
 2008年第36週以降これまでに、インフルエンザウイルスの検出はAH1(Aソ連)型3,206件、AH3(A香港)型1,503件、B型1,342件が報告されている。

 ・・・実は、1週間あたりの感染報告件数で見ても、今年は、こっちの方が感染のリスクははるかに高い。その辺を感染源が歩いているのだから当然か。

 アメリカやメキシコなど、既に国内での新型インフルエンザの感染が拡大している国でも、域内での新型インフルエンザの感染者は4月25日以降の10日程で2,000人弱。日本の季節性インフルエンザの発生件数は、4月13-19日の1週間だけで、報告数が19,515件。人数ではもっと多いだろう。国の全人口を母数にした割合でみても、日本の季節性インフルエンザの方がはるかに流行しているといえる。

  新型インフルエンザの国内での感染拡大のリスクと、検疫に関わる人的なコスト、旅行者の被る不利益を勘案するといずれかの時点で、バランスが取れたときに水際対策は止めることになる。今回の新型インフルエンザについては、毒性や感染力に関するデータが徐々に出揃ってきているところなので、今の時点で、水際対策を止めるべきとまでは言わないが、落ち着いて考えてみると仮に感染が拡大しても、さほど大事にはなりそうに無いウイルスの水際対策に力を入れ続けるよりも、国内での流行がまだ終息していない季節性のインフルエンザに対する対策の方が重要ではないか?(政治的にはアピールしないけどね。)発熱外来などの対策は、そういう意味では季節性インフルエンザにも有効なので良いことだが。

 ニュース等では、うがい、手洗いの方法や、みだりに目や鼻に触らないなど基本的なインフルエンザ対策の知識を繰り返し伝えている。これも結構なことだ。だが、2009年17,18週くらいになっても定点当たりの感染報告数が減らない様であれば、折角の啓蒙活動の効果も疑わしくなる。さて、うがい手洗い励行の効果は如何に?今後数週間の感染動態から目が離せない。

人気blogランキングへ←このエントリーの情報はお役に立ちましたか?

クリックしていただけると筆者が喜びます!

2009年5月 4日 (月)

メキシコ保健関係者は非難の矛先を変えようとしているのか?

誰が誰を批判しているのか?それが問題だ。朝日新聞より。

WHO、察知から対策本部設置に2週間 初動遅れ批判も

2009年5月4日2時8分

 新型の豚インフルエンザが最初に発生したとされるメキシコの保健関係者から、世界保健機関(WHO)に対して「初動の遅れ」を批判する声が上がり、 WHOは2日、記者会見で経緯を説明した。メキシコから異変を伝えられたWHOが対策本部をつくったのは2週間後だった。双方の主張には食い違いが目立ち、当事国であるメキシコへの批判も消えない。様々な情報が飛び交う中で、感染の被害は深刻さを増していった。

 WHOの対応の遅れを指摘したのはメキシコの国立疫学監視・疾患統制研究所のレサナ所長。AP通信によると、同所長は4月16日、季節はずれのインフルエンザや肺炎が多発していることを、WHOの下部組織「汎米保健機関」(PAHO)に報告した。しかし、WHOは8日後の24日に事態を公表するまで何ら対応しなかった、という。レサナ所長は「WHOはもっとすみやかであるべきだった」と批判し、WHOの危機対応について調査を求めた。

 これに対しWHOは今月2日、感染症警戒システム担当部門のマイケル・ライアン部長が会見で経緯を説明した。

 部長によると、メキシコの異変情報は4月11日に専門家から寄せられた。17日、WHOはメキシコ当局に正式に照会したが、回答は「重症肺炎例」と感染の広がりを打ち消す内容だった。

 その後、WHOは米カリフォルニア州の事例について米疾病対策センター(CDC)やメキシコと情報交換。その過程でメキシコは22日、WHOに「季節はずれのインフルエンザ流行への懸念」を報告。それが翌日の報告で「死亡者12人を含む47の重症例」に転じるなど、情報収集面での混乱ぶりがうかがえる。

 WHOが対策本部を立ち上げたのは25日。メキシコの検体を分析したカナダから、新型ウイルスを確認したと連絡がきた日だった。

 CDCの報告書によると、メキシコで最初の患者が発症したとされるのは3月17日。政府は4月17日に全国で発生状況を調べ始め、重い呼吸器病の全症例を報告するよう病院に要請した。18日には保健省の担当者らが各地を回って感染拡大を確認したが、関連部局に情報が速やかに伝わっていたか明らかでない。

 メキシコ政府はレサナ所長に距離を置き、WHOへの批判を避けている。同国の初動対応によっては、北米などへの感染拡大をもっと抑えられたという指摘があり、矛先が自身に向けられるのを恐れているとの見方がある。

 一連の経緯について、インフルエンザに詳しい外岡(とのおか)立人・元北海道小樽市保健所長は「WHOの役割は世界の感染症の早期発見にある。結 果的に感染が広がってからしか動けておらず、遅い」と指摘。一方、WHO勤務の経験がある押谷仁・東北大教授は「今回のようなケースは封じ込めが難しい。軽症例が多く、通常の季節性インフルエンザと見分けがつかないうちに感染が広がるためだ。1週間程度、確認が早まったとしても、結果は大きく変わらなかっただろう」とみる。

(ロサンゼルス=土佐茂生、ジュネーブ=井田香奈子)

この記事から分かること。

[メキシコ側の主張]

  • 4/16、季節はずれのインフルエンザや肺炎が多発していることを、WHOの下部組織「汎米保健機関」(PAHO)に報告。
  • 4/24、WHOが事態を公表。
[WHOの説明]
  • 4/11、メキシコ国内の(?)専門家が”異変情報”をWHO(?)に連絡。
  • 4/17、WHOはメキシコ当局に正式に照会したが、回答は「重症肺炎例」と感染の広がりを打ち消す内容。
  • 4/22、メキシコは、WHOに「季節はずれのインフルエンザ流行への懸念」を報告。
  • 4/23、メキシコ報告で「死亡者12人を含む47の重症例」。
  • 4/25、WHOが対策本部を立ち上げ。
[CDCの報告書]
  • 3/17、最初の患者。(ただし、記事では何の患者か分からない)
  • 4/17、メキシコ政府、全国で発生状況を調べ始め、重い呼吸器病の全症例を報告するよう病院に要請。
  • 4/18、保健省の担当者らが各地を回って感染拡大を確認。
[メキシコ保健当局とメキシコ国立疫学監視・疾患統制研究所所長の関係]
  • メキシコ政府はレサナ所長に距離を置き、WHOへの批判を避けている。
CDCの報告書を信頼するならば、初動の遅れは最初の患者の把握から一月近く状況を把握できなかったメキシコ保健当局にあるように思う。

WHOは国際機関として国境を越えた感染症の拡大を防ぐ責任を負っている。しかし、世界各国に直属の検査機関を持っているわけではないので、各地での感染症の発生状況の把握は、それぞれの国において国内法で国民の健康に対して責任を負うことが定められている保健当局の肩にかかっている。そのルートからの報告がなければWHOと言えども状況を把握できないだろう。また、メキシコ国内での感染症のコントロールの責任はどう考えてもメキシコ保健当局にある。隣国である合衆国保健当局がWHOの初動の遅れを指摘するのなら話は分かるのだが。

4月25日頃からの日本の新聞各紙の報道ではたしか、メキシコ保健当局の不正確な発表に基づきメキシコ国内での新型インフルエンザ(当初は”豚インフルエンザ”と呼ばれていた)感染者は1,000人以上、死者200人以上と伝えられていた。その後、メキシコ保健当局が事実確認をした結果、5/2時点では感染者433人、死者16人(時事通信による)となっている。

このような経過から、メキシコ保健当局には正確に状況を認識する能力はないと推定される。また、カナダ保健当局にウイルス検体を送付して調査を依頼していることから、自国内で流行している新型インフルエンザ様の感染症の原因ウイルスを特定する能力にも疑念がある。そのことは、おそらくメキシコ政府自身が最もよく認識していることだろう。そこで、”メキシコ政府はレサナ所長に距離を置き、WHOへの批判を避けている。”という姿勢になったと考えられる。

この記事でも、本文の事実関係を見ると、4/11にメキシコの”専門家”からWHOに連絡が入ったという経緯も通常の連絡体制に則ったものとは考えにくいし、4/16以降にメキシコ保健当局が国内でどのような対策を執ったのかも示されていない。挙句、保健当局の不正確な患者数の公表・・・。この記述で初動が遅れた非難の矛先をWHOに向けるのは如何にも的外れだろう。記事は一連の経緯の見方において、関係当局間で混乱があることを伝えているのみなのだが、それと比較して、この見出しのつけ方はずいぶん偏っている。

私には、メキシコ国内での感染症の監視に責任を負う当局者が仕事をしくじって、非難の矛先を変えようとしている悪あがきに朝日新聞がまんまと乗せられてしまっているように見えるのだが・・・。

# しかし、メキシコ当局はなぜCDCではなくカナダ保健当局にウイルス検体を送ったのだろうか。近隣諸国で最も検査体制が整っているのは合衆国だと思うのだが、どんな事情があったのだろうか。

ちなみに、韓国は国内の感染の疑いのある患者の検体を合衆国CDCで調べてもらっている。ニュース映像をみると、空港では耳穴式赤外線体温計で乗客一人一人の体温をチェックしていた。そこそこ正確ではあるのだけれど、これは新型インフルエンザ対策の行動計画ができていなくて、サーモグラフィーを準備できていないということではないだろうか。

# メキシコなどの新型インフルエンザ発生国からインチョン空港乗り換えで帰国する旅行者は居ないのかな。ちょっと気になる。

人気blogランキングへ←このエントリーの情報はお役に立ちましたか?

クリックしていただけると筆者が喜びます!

« 2009年4月26日 - 2009年5月2日 | トップページ | 2009年5月10日 - 2009年5月16日 »

twitter

  • Bernard_Domon

Ranking

  • にほんブログ村 科学ブログ 生物学・生物科学へ
    日本ブログ村
無料ブログはココログ