2014年12月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

最近のトラックバック

どこからきたの?

  • なかのひと

Google Analytics

« 2009年3月8日 - 2009年3月14日 | トップページ | 2009年3月22日 - 2009年3月28日 »

2009年3月15日 - 2009年3月21日の記事

2009年3月20日 (金)

事実関係の”説明”は”反論”ではない。

 例えエンターテインメントであっても、一分の事実は含まないともっともらしさが無いため観客を引きつけられない。科学者の立場から言えば、その一分の現実で可能なことと、それでは不可能なことを最善の科学的知見で区別してみせて、実際には具体的な危険性はないということを世間に示すのは良いことだ。それは、情報を等しく持つ者の間で行なわれる議論・反論の類ではなく、正しい知識を持つ者としての説明責任の履行に他ならない。

 早野教授の行動は、記事にもあるとおり「反物質研究は危険ではないかという問い合わせが相次いだ」ことを直接の動機とした物理学への市民の理解を促すサイエンスコミュニケーションの一環と捉えるべきだ。これは、社会の動きに対して科学者が敏感に反応している証であって、決して、「映画に科学で反論」という世間からズレた科学者の奇矯な振る舞いと見て揶揄するべきものではない。私は、早野教授が説明を行なったことを支持する。

 市民との初期のコミュニケーションに失敗すると、遺伝子組換え技術のように誤った知識に基づくいわれのないバッシングを受ける可能性もある。しかも、我々の日常生活の欠くべからざる基盤となった後でさえも、いつまでもその不合理なバッシングが続くことさえある。

 朝日新聞の見出しには「科学で反論」とあるが、これは意図せずにコンテキストを読み違えてしまったか、あるいは意図的に読み違えて科学者を揶揄している。控えめに言っても愚昧な言動、悪く言えば悪辣とも言える。署名記事を書いた記者の筆致が中立的で冷静であるだけに、見出しをつけた編集員の鈍さが際立つ。

東大教授、映画に科学で反論「反物質で爆弾、不可能」

2009年3月19日3時2分

 「反物質」を使った兵器づくりなんて、現実の世界ではあり得ません――。米映画「天使と悪魔」の封切りを前に東京大の早野龍五教授(物理学)が18日、異例の記者会見を開き、反物質研究について誤解をしないよう訴えた。

 反物質は、通常の素粒子とは逆の電荷を帯びた「反粒子」からなる。物質と反物質が出会うと消滅し、大きなエネルギーが発生する。

 映画は「究極の大量破壊兵器」をつくるため、欧州合同原子核研究機関(CERN)から反物質が盗まれるという筋書き。ロン・ハワード監督、トム・ハンクス主演で、5月15日に世界同時公開される。ダン・ブラウン著の原作も世界的なベストセラーだ。

 CERNでの反物質研究に実際に参加している早野教授は会見で研究の歴史などを解説。「反物質は、現在の科学技術では1グラムつくることさえできない。爆弾をつくるのは全く不可能だ」と強調した。

 記者会見を開いた理由については「映画はエンターテインメント。科学性を論じるのはヤボなことだと承知している。ただ、最近、反物質研究は危険ではないかという問い合わせが相次いだので、正しく理解してほしいと考えた」と話した。(山本智之)

人気blogランキングへ←このエントリーの情報はお役に立ちましたか?

クリックしていただけると筆者が喜びます!

2009年3月19日 (木)

花粉管は”ルアー”に釣られる

Natureの表紙です。

Satohiro Okuda et al., “Defensin-like polypeptide LUREs are pollen tube attractants secreted from synergid cells,” Nature 458, no. 7236 (March 19, 2009): 357-361, doi:10.1038/nature07882.   

 トレニアの花粉管を誘引する物質の正体が、システイン・リッチな70アミノ酸そこそこのペプチドであることを明解に示した論文。著者らは、このペプチドをコードする遺伝子をLUREsと名付けました。蛍光色素で示したしこの物質の位置めがけて花粉管が折れ曲がる様に急カーブしている写真が非常に印象的です。いやぁ、これはGJです。

 トレニアという植物のLUREsを単離したのですが、近縁の植物の花粉はこのペプチドには反応しないとのこと。また、非常に進化速度が早いので(その結果アミノ酸配列の相同性が急速に失われて)植物種間での系統解析ができないとか。

# 種間交雑がやたらとおこらない理由の一つもそのあたりにありそうです。

 他の植物も、おそらくは同様の機構で花粉管を誘引しているのでしょうが、それを検証するのは非常に難しそうです。というか、物質の本体がペプチドだと見当がついているのであれば、あとはチカラの勝負でしょうか。

 こうなってくると、花粉管の先端あるいは、そのちょっと後ろに局在するであろう受容分子はどうなっているのか?とか、どうやって花粉管を曲げるのだ?とか、in vitroでは誘引を起こさない理由になっている原因物質は何か?とか、この発見は、今後いろいろな問題の解明に波及していくでしょう。

 個人的な興味としては、受容分子がタンパク質でるとすれば、その遺伝子も又LUERsと協調的に進化しているはずなので、その多様性の広がり方に興味があります。

# これって、花粉側の受容体とペアで揃えれば、遺伝子組換え作物の受粉制御ができてしまうんじゃないだろうか。つまり、同種の植物に対しても花粉管が誘引されないが、同じ種類の組換え体だけには花粉管が誘引されるというシステムだ。

人気blogランキングへ←このエントリーの情報はお役に立ちましたか?

クリックしていただけると筆者が喜びます!

2009年3月15日 (日)

見ただけでは分からない違い

いやはや。

試験用カビが入れ替わり、経産省  遺伝子解析で判明

経済産業省は13日、製品評価技術基盤機構(NITE、東京)と産業技術総合研究所(産総研、茨城県つくば市)がともに企業などに試験用に供給していた2種類のカビの「菌株」が入れ替わっていたと発表した。

 菌株は菌類などを純粋に分離し培養したもの。今回の2種類の菌株は、防カビ製品や防カビ剤などに対するカビの抵抗性試験で使用。黒こうじカビの一種で遺伝的な違いはわずかのため、産総研は試験に大きな影響はないとみている。

 NITEが品質管理のため行った遺伝子解析で入れ替わりが判明した。産総研とNITEによると、詳しい記録はないが、約50年前に米国から導入する過程で入れ替わりが起きたと考えられる。

 産総研は2006年まで、NITEは02年から企業や研究機関などに菌株を提供。

2009/03/13 20:08< 【共同通信】

もともとの提供元で菌株が入れ替わってしまっていてはなかなか気づかないものだ。産総研の公表した情報によれば、入れ替わっていた菌株はFERM S-1 (ATCC 6275)とFERM S-2 (ATCC 9642)。ともにATCCから分譲されたものとのこと。

驚いたことに、ATCCのデータベースによればどちらも現在の学名はAspergillus nigerではなくAspergillus brasiliensis Varga et al.という別種になっている。遺伝子型の情報は文献をあたらないと分からないが、50年前に産総研では菌株を受け入れた際には、改めて遺伝子型のタイピングは行なわなかったということだろう。しかも、ATCCの記載には"deposited as Aspergillus niger"とある。

・・・ええと、ひょっとしてATCCに寄託された際に、既に種のレベルで取り違いが起きていた可能性さえある。ATCCの記載では、これまでAspergillus brasiliensis Varga et al.で抗カビ性のテストをしてきたのだから、それでよいということになるのだろう。

しかし、JISの試験法では”アスペルギルスニガー”という種名で指定をしているようなので、これまで試験に使用してきた”もの”が、報道されているような菌株レベルでの取り違いでは済まず、実は別種だったということになりはしないだろうか?もしそうであれば、これまでの試験は、報道されているような菌株の取り違いがあろうが無かろうが、全て無効だったということになりはしないか?おそらくJISの規格の方を実態に合わせる方が合理的な解決だと思うのだが。

報道されているよりも、実は影響は遥かに大きいかもしれない。

人気blogランキングへ←このエントリーの情報はお役に立ちましたか?

クリックしていただけると筆者が喜びます!

« 2009年3月8日 - 2009年3月14日 | トップページ | 2009年3月22日 - 2009年3月28日 »

twitter

  • Bernard_Domon

Ranking

  • にほんブログ村 科学ブログ 生物学・生物科学へ
    日本ブログ村
無料ブログはココログ