TILLINGでアミロースフリー・ポテトの育種
以前、ドイツでは遺伝子組換えでアミロース・フリーのバレイショが育成されていました。
その対抗馬として、半数体育種&突然変異育種&マーカー選抜&交配の組み合わせ(TILLING)でアミロース・フリーのバレイショが育成されました。論文はこちら。
# よく見ると私の論文を引用してくれてました。どうもありがとう。
バレイショは同質4倍体なので、突然変異育種は大変なです。まず半数体育種で倍数性を減らして、次に化学変異原処理(EMS処理)とGBSS遺伝子のマーカー選抜を繰り返し、最後に染色体を倍加あるいは変異体同士を交配してGBSS遺伝子の4重劣性変異体を作出します。製造にかかわる手間とコストを考えると、よほどのメリットが無ければ取らない育種戦略なのですが、育成者はそれでも後の品種の普及を考えると組換え体よりはメリットが大きいという判断をしたということでしょう。
ちなみに、ニュースサイトでは"Super potato"と呼んでいますが、他の作物でのデンプンの変異体という意味ではにモチ米のようなものです。トウモロコシやイネ、オオムギでは珍しくない変異体ですが、バレイショでは作るのは非常に大変です。それでもドイツ国内の産業界のニーズが有る、というところに若干の驚きを感じます。日本であれば間違いなくアメリカ産のワキシー・コンスターチを輸入してそのまま使うか、でなければ化工澱粉にして使います。その方がおそらく安上がりなので。
ドイツでは国産のバレイショ・デンプンの方が工業原料としては米国産コーン・スターチより安上がりということなのでしょう。・・・となると、区分栽培と分別流通が必要な遺伝子組換えバレイショを避けたがるのも、わかる気がします。
ドイツにおいて"Super potato"がSuperで居られる理由は、遺伝子組換え作物に対する社会環境と、輸入コーンスターチの調達コスト、国内のデンプン産業がバレイショに依存している、という状況に関連していると考えられます。逆に、同じもの(加工デンプン用アミロース・フリーバレイショ)を日本で作っても、モチ性コムギほどに珍重されることはないでしょう。
# モチ性のコメをわざわざTILLINGで作っても意味はないし・・・。
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