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2009年12月の記事

2009年12月18日 (金)

pc6172.abr.affrc.go.jpからご覧の方へ

毎日閲覧されているご様子ですが、しばらく更新しない予定ですので予めお知らせいたします。

2009年12月10日 (木)

TILLINGでアミロースフリー・ポテトの育種

 以前、ドイツでは遺伝子組換えでアミロース・フリーのバレイショが育成されていました。

 その対抗馬として、半数体育種&突然変異育種&マーカー選抜&交配の組み合わせ(TILLING)でアミロース・フリーのバレイショが育成されました。論文はこちら

# よく見ると私の論文を引用してくれてました。どうもありがとう。

 バレイショは同質4倍体なので、突然変異育種は大変なです。まず半数体育種で倍数性を減らして、次に化学変異原処理(EMS処理)とGBSS遺伝子のマーカー選抜を繰り返し、最後に染色体を倍加あるいは変異体同士を交配してGBSS遺伝子の4重劣性変異体を作出します。製造にかかわる手間とコストを考えると、よほどのメリットが無ければ取らない育種戦略なのですが、育成者はそれでも後の品種の普及を考えると組換え体よりはメリットが大きいという判断をしたということでしょう。

 ちなみに、ニュースサイトでは"Super potato"と呼んでいますが、他の作物でのデンプンの変異体という意味ではにモチ米のようなものです。トウモロコシやイネ、オオムギでは珍しくない変異体ですが、バレイショでは作るのは非常に大変です。それでもドイツ国内の産業界のニーズが有る、というところに若干の驚きを感じます。日本であれば間違いなくアメリカ産のワキシー・コンスターチを輸入してそのまま使うか、でなければ化工澱粉にして使います。その方がおそらく安上がりなので。
 ドイツでは国産のバレイショ・デンプンの方が工業原料としては米国産コーン・スターチより安上がりということなのでしょう。・・・となると、区分栽培と分別流通が必要な遺伝子組換えバレイショを避けたがるのも、わかる気がします。

 ドイツにおいて"Super potato"がSuperで居られる理由は、遺伝子組換え作物に対する社会環境と、輸入コーンスターチの調達コスト、国内のデンプン産業がバレイショに依存している、という状況に関連していると考えられます。逆に、同じもの(加工デンプン用アミロース・フリーバレイショ)を日本で作っても、モチ性コムギほどに珍重されることはないでしょう。

# モチ性のコメをわざわざTILLINGで作っても意味はないし・・・。

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2009年12月 8日 (火)

デスクトップにスーパー・シーケンサーが載る時代

昨日、"受託DNAシーケンスも価格破壊"というエントリーで、

これは、ダイターミネーターの最後の一花なのだろうか? 今の蛍光シーケンサー用の試薬は製造を止めて売り切れ御免か? 近く、従来型のシーケンサーでワンパス\500といわず、次世代シーケンサーで、環状のテンプレートならカバレッジ80Xで\500という時代が来るのだろうか?

と書いたのですが、どうも本当にそんなことになりそうです。 ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社から"GS junior"という新型のDNAシーケンサーが発表されました(ホームページはこちら。プレスリリースはこちら)。

デスクトップに乗るサイズ(HWD = 40 x 40 x 60 cm)で、1ラン=10時間あたり約4000万塩基(40,000 kbp = 40 Mbp = 4.0 x 107 bp)解析できて、平均読み取り長さは400 bp(モードは500 bp)、お値段は、

“GS FLX”に比べ、本体価格(約1/5)およびランニングコスト(約1/10)を低減
  参考: GS FLX  7,500万円(税別)

なので、本体価格で1,500-2,000万円くらいになりそう・・・つまり、ABI 3130xlの価格帯にほぼ匹敵します。これで1回の運転で大腸菌ゲノムが9Xくらい読めてしまいます。

驚いたなぁ。

プラスミドのシーケンスの確認には勿体無い位の性能ですが、複数サンプルの処理ができるか、読み取り時間を短縮できれば、トランスクリプトーム解析の分野ではマイクロアレイを駆逐する可能性があります。GS juniorは454 FLXと同じ反応系なので、発現解析用にはすこしばかり読み取れる長さが長いため、この用途にはIlluminaやSOLliDの方が向いているかもしれません(cDNAをコンカテマーにしても読み取り時間は変わらないようなので)。

おそらく、数年以内に他社もこの分野に参入するでしょうから、従来型のキャピラリーシーケンサーが"STR解析専用機"になってしまう時代も近いでしょう。

# いずれ、デスクトップ・シーケンサーでパーソナルゲノムを解析する日は来るのだろうか?それとも、臨床検査センターのような受託解析が一般化するのだろうか。さてさて。

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2009年12月 7日 (月)

受託DNAシーケンスも価格破壊

受託DNAシーケンスも、ちょっと前まで1パス\1,000位が相場だったが昨年から\700位になっていた。

で、今日教えてもらったのが、インビトロジェンのサービスで96穴1プレートでシーケンス反応からの受託で\46,000、サンプルあたり約\479(ただしキャンペーン価格)。インビトロジェンはダイターミネーターとシーケンサーのマトリックスの供給元であるABIを吸収したので、サービスで利益を出せば良いということだろうか。

日本の試薬の価格は国際比較では異常に高いのだが、受託シーケンスの価格がこの水準まで下がると、研究所で数千万円する中スループットのDNAシーケンサーを維持しておく必要性が低くなってしまう。

次世代シーケンサーはあまりに能力が高いので、どの程度普及するのか私は疑問に思っている。受託シーケンスを支える道具としては有効なのだが、普通の研究所で求められる要求性能を軽く超えてしまうので、大抵は手に余るのだ。しかも、シーケンサーが吐き出すデータ量は膨大でストレージ・ファームが要るくらいだし、アセンブルにはちょっとしたスパコンが要る。

それに対して、プラスミドを構築した際の確認作業等に使われる3100xl位のスループットのシーケンサーは日常の業務ではまだまだ必要な装置なのだが、最近メーカーから更新機種が出ないなぁ、と思っていた。しかし、ここまで受託シーケンスの価格破壊がここまで進むと、1シーケンスの単価が普通に調達する際のシーケンス試薬+精製キットの代金とあまり変わらなくなるので、シーケンサー自体を維持する必要がなくなる。消耗品のキャピラリー、レーザー、バッファー、ポリマーなどのランニング・コスト+維持管理の人件費も勘案すれば、もう受託の方が安いかもしれない。

これは、ダイターミネーターの最後の一花なのだろうか? 今の蛍光シーケンサー用の試薬は製造を止めて売り切れ御免か? 近く、従来型のシーケンサーでワンパス\500といわず、次世代シーケンサーで、環状のテンプレートならカバレッジ80Xで\500という時代が来るのだろうか? ・・・等々いろいろ邪推してしまう。

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2009年12月 2日 (水)

海水の酸性化で恩恵を受ける生物

Science magazinのニュースより。

Acidic Oceans May Be a Boon for Some Marine Dwellers

By DeLene Beeland
ScienceNOW Daily News
1 December 2009

最近、海水が酸性化するとサンゴや貝の中には、骨格や殻を上手く作れなくなるということが報告されている。サンゴや貝殻の主な成分は炭酸カルシウムなのだから、海水中のCO2濃度が上がると、かえって原材料の調達が楽になって骨格や殻が分厚くなるのかと思ったらそうでもなかったらしい。

一方、地球の歴史的なスケールでは大気中のCO2濃度が現代の10倍くらい高かった時期があった。約5億4500万年前から約5億0500万年前までのカンブリア紀のことである(*)。海水中のCO2濃度もさぞ高かっただろうに、生物相は非常に豊かだった時代だ(例えば、アンモナイトや三葉虫)。

今回のニュースは、ロブスターやカニのような甲殻類の中には水中のCO2濃度を10倍くらい上げると外骨格が分厚くなるものが居るというもの。捕食者に対する防御能力が上がり、同時にハサミが硬くなるので餌をとるのにも有利だ。外骨格も炭酸カルシウムでできているのだが、サンゴや貝との反応の違いは何なのだろう。CO2濃度に対するカルシウムポンプの反応の違いなのだろうか。

# アンモナイトや三葉虫の絶滅は、これと逆の現象が原因だったりして。

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