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2009年9月の記事

2009年9月28日 (月)

イネのGenome-wide association analysis

育種学会第116回講演会を聞きに行った。

で、Association analysisあるいはAssociation mappingに関する発表があったのだけれど(ひょっとしたら、このblogをご覧になっているあなたの発表かもしれません)、どうも”煮込み方”が足りないという印象。

とある発表では、日本稲112品種、10栽培環境、ゲノム上の観測ポイント2132点。解析ソフトは、集団構造解析にはStructure Ver. 2.2を、血縁度はSPAGeDi Ver. 1.2を、Genome-wide association study(GWAS)にはTASSEL Ver. 2.1を使用した、とある。

研究の目的は、日本の水稲品種にGWASを適用できうるか?という命題に対する条件検討で、目標形質は”出穂期”。

以下、私の感想。

  • こういう場合、栽培環境 x 遺伝子型の相互作用をみるので、出穂期よりは"到穂日数"を指標にした方が良かろう。
  • イネの登穂日数に関わる遺伝子と言えば、構造が決められていて、作用力の大きい感光性遺伝子、Hd1, Hd2, Hd3a, Hd5, Hd6がすぐに思いつく。この辺のハプロタイプと登穂日数のassociation analysisもやっておいてベンチマークにしておかないと、GWASの検出力や検出精度を議論するのは難しいのではないか(AICのような情報量基準を採用してモデルの妥当性を議論するにはGWAS以外の方法によるassociation analysisとの比較が要るだろう)。
  • TASSELでは家系や集団構造を考慮した混合線形モデルを採用できる・・・が論文をな斜め読みした範囲では、分析の際に家系(kinship)に関する分散は、外部から与えるケースと、マーカー情報から計算するケースの2通りが用意されているので、どちらを採用したのかを明らかにしておいた方がよいだろう。
  • TASSELではマーカー間の相加効果や優性効果は見ない。・・・出穂性の場合をモデルケースにすると、いくつかのHd遺伝子のハプロタイプで相加・優性効果を組み込んだGLMの方がモデルのフィットネスが高くなるかも?
  • いえね、なんでこんなことを気にするかというと、新しいモデルを提唱する場合、従来の方法と比べて、第一種過誤、第二種過誤がどのくらい起こり易いかが重要だと思うから。スクリーニング目的で、第二種過誤は大目に見ても良い場合もあるが、新しいQTLを見つけて遺伝子単離をしようという場合、第一種過誤で生じた擬陽性を信じて研究資源を注ぎ込むとえらいことになってしまう。新しいモデルがものの役に立つかどうかを判断するのは、モデルを採用する側が決めること。しかし、そのモデルを採用した場合どの程度のリスクがあるのかを、あらかじめ明らかにするところまでは、モデルの適否を検討する側の責任だと思う。

ということで、Hd遺伝子のハプロタイプで登穂日数のGLMをやった場合と比べて、GAWSの有効性と統計的過誤のリスクはどうなのよ?というのが私の疑問。

# 私がこの研究論文の査読をすることは無いと思うけど、もし来たら上記の理由で追加データを求めることは必定 ・・・。

こういうアプローチって面白いんですけどね。変異体を作ると死んでしまうような”あって当たり前”の形質-作物としてはむしろ重要な形質-を分子生物学の射程に捉えるにはQTLの検出が最も有効な方法なのだから。

QTLもいずれは、時間との関わりでどんどん変化する表現型を、”表現型の変化速度”に微分して解析できるようにならないといけないのだろうな。作物学的には、栄養生長と生殖生長に分けて、登穂日数=幼穂形成までの日数+幼穂分化後の日数とする見方は当たり前だ(観測の手間が大変だけど)。いずれは、時々のサンプリング時点の”表現型の変化速度”は、サンプリングの前日までの生育に影響されるという意味で、前日の日照や気温、生育状態を考慮したベイズモデルへと進化していくのかもしれない。

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2009年9月17日 (木)

水稲の生育モデル

水稲の生育モデルを探している。

SIMRIW: Horie et al. 1987
ORYZA1: Kropff et al. 1994

あたりが有名どころかと思ったら、改良版にあたるORYZA 1N(Aggarwal et al. 1997. リンク先の論文はSwine et al. 2006. DOI: 10.2134/agronj2006.0204)というものもあるようだ。この分野は全くの素人なので、論文のIntroductionが只で読めるのはありがたい。

で、生育モデルを使って何をしたいのかというと、通常の生育モデルの使い方はあてがわれた環境で、どのくらいの期間にどのくらいの生育ステージに達し、収量がどのくらいの水準に達するかを予想することだが、私が必要に迫られているのはその逆。

移植後の生育期間を110日として、温度環境、光環境をどのように制御すれば、最低どのくらいの収量水準を達成できるか、という”納期”と”仕様”に合わせて栽培環境を制御するのに生育モデルを役だてたいと考えている。

・・・そこまで私の仕事の範囲なのかどうかは疑問なのだが、いずれは、1年のうちの決められた時期にイネを温室栽培する際に”光熱費”と”収量”のバランス、要は栽培のコストパフォーマンスを最適化するための科学的な根拠が必要とされるだろうから、計画的な栽培には、この手のシミュレーションができるに超したことはない。

もっとも、あんまりモデルが複雑になってパラメーターが多くなると、実測データを取るのが大変で、かえって実用性がなくなるから多少予測精度が落ちても簡便なモデルの方が良いかもしれない。ORYZA 1NのようにLAIや乾物生産量のデータを取らなければならないのでは、栽培の片手間でやるにはちょっと荷が重い。

# 妄想ですが、RILs集団の各系統を、この種の生育モデルに当てはめて、系統の固有値として得られるパラメータのQTLマッピングができると、感光性、基本栄養成長性etc.といったイネの基本的な生育特性を表すパラメーターを同時にマッピングできたりしてね。

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2009年9月15日 (火)

インフルエンザが重症化した場合には良いかも

国内製薬メーカーもがんばってます。UMNファーマ、第一三共、富山化学工業、そして塩野義。

点滴用インフル新薬、初の国産申請へ タミフル並み効能

2009年9月15日10時49分

 【ワシントン=勝田敏彦】抗インフルエンザ薬のタミフル、リレンザに次ぐ「第3の薬」として期待される「ペラミビル」ついて、塩野義製薬(大阪市)は、 サンフランシスコで開かれた国際会議で「1回の点滴でタミフルを5日間飲むのと同程度の効き目が臨床試験(治験)で得られた」と報告した。11月までに厚 生労働省に承認申請して、来秋の発売をめざす。

 日本はタミフルとリレンザを備蓄しているが、いずれも輸入に頼っている。承認されれば、初の国産のインフルエンザ薬になる。タミフルには、耐性を持つ新型の豚インフルエンザウイルスがあることが報告されている。

 飲み薬のタミフル、吸入薬のリレンザに対して、ペラミビルは点滴薬で、重症患者に対しても投与できることでも関心を集めてきた。

 ペラミビルは、ウイルスの増殖を妨げる働きがあり、米製薬会社がインフルエンザ用の筋肉注射薬として開発し、実験では新型インフルに対して効果を 示すことがわかっている。塩野義製薬は点滴薬として開発中で、日本、韓国、台湾で1099人の季節性インフルエンザ患者を対象にした最終段階の試験を行っ た。

 その結果、症状の回復までかかった時間は、タミフルとほぼ同じかやや短い時間だった。

 ペラミビルは06年、米食品医薬品局(FDA)から承認を急ぐべき薬の一つとして指定を受けている

海外ではタミフルの注射薬も開発中と言いますが、重症で薬が飲めない場合は注射や、この製剤のように点滴で投薬するほかありません。そう言うケースにも対応できる選択肢が増えるのは良いことです。

同じニュースが読売新聞にも出ていますが、点滴で投与するというこの製剤の特徴を見出しでフィーチャーした点では朝日の記事の方がポイントが高いですね。

しかし、抗インフルエンザ薬の治験の被験者募集とか、インフォームドコンセントとかどうするんだろう?高熱で頭が痛いときに説明文書を読まされるのは結構きついものがあると思うのだが・・・。

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2009年9月12日 (土)

"つけまわし"の代償は?

理化学研究所の主任研究員が背任容疑で逮捕された一件。
毎日新聞より。

理研背任事件:別の業者に資金提供させ1600万円返済

 独立行政法人「理化学研究所(理研)」の物品購入を巡る背任事件で、主任研究員の和田達夫容疑者(53)が、業者側に付け回しした遊興費など約 5500万円のうち約1600万円を、別の出入り業者に提供させた現金で返済していたことが警視庁捜査2課の調べで分かった。同課は、和田容疑者がほかの 業者とも癒着していたとみて調べている。

 同課によると、和田容疑者は99年末、営業で理研に出入りしていた研究資材販売会社「秋葉産業」社長、嘉藤(かとう)悦男容疑者(76)=背任容疑で逮捕=と知り合った。和田容疑者は当時、研究員だったが、嘉藤容疑者は発注権限を持つ主任研究員への昇進を事前に知り、遊興費などの肩代わりを持ちか けた。和田容疑者は取り調べに「当時、研究や出張費が足りず金に困っていた」と供述しているという。

 和田容疑者は自己資金などで返済しながら秋葉産業側に付け回ししていたが、03年秋に嘉藤容疑者から肩代わりの残高が約700万円と知らされ、別 の業者からの資金提供や秋葉産業への架空発注で補てんを始めたという。和田容疑者は「今までの経験から架空発注を思いついた」などと供述しているという。

 同課によると、和田容疑者の秋葉産業側への付け回しは07年末まで続き、総額は約5500万円。同社への架空発注は03年10月~09年8月で約3900万円で、差額分約1600万円を別の業者から金策して穴埋めしていたという。【酒井祥宏、川崎桂吾】

まず第一に本人のモラルの問題であることは間違いないのだが、100万円以下の小口であれば発注元の研究者と受注業者が随意契約で支払いできてしまうところはシステム上の問題。

大抵の独法は100万円以上の調達は入札になっているはず。私の職場では、小口の試薬などは定期的にとりまとめて、契約金額を大きくして入札しているようだ。この場合、個々の商品の発注元は落札してみるまでわからないので、架空発注は非常に難しい仕組みだ。

しかし、ひどいな。

# 千葉県庁もえらいことになっているが。

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2009年9月11日 (金)

治療方針の違い

読売新聞より。

「新型」感染でもタミフル原則不要、米が指針

 【ワシントン=山田哲朗】米疾病対策センター(CDC)は8日、健康な人は新型インフルエンザに感染しても、タミフルやリレンザなど抗ウイルス薬による治療は原則として必要ないとする投薬指針を発表した。

 抗ウイルス薬の供給には限りがあるほか、過剰投与で耐性ウイルスが出現する恐れが高まるため。CDCのアン・シュケット博士は同日の記者会見で「子供でも大人でも大多数は抗ウイルス薬は必要なく、自宅で休養することで治る」と述べた。

(2009年9月9日13時52分  読売新聞)

”健康な人は”、原則タミフルは不要と言うことですね。その、”健康な人は”というのが、この記事の最も大事なところです。

健康な人にとっては、新型インフルエンザといえども、寝ていれば治る病気であって、逆に休養をとって自然治癒を待つしかない病気ということ。

今回の新型インフルエンザは、通常の季節性インフルエンザ同様、症状が出始めてから7日程度でほぼ回復する。タミフルを服用しても、熱が下がるのが平均1日程度早くなるだけ(治験データ、表6、表8)なので、基礎体力のある人にとってはそれほどありがたい効果はない。寝てられないほど仕事が忙しい人にとってはありがたいのかもしれないが、病気でも1日も余計に休めないのであれば、それは仕事の体制に無理があるのかもしれない。

アメリカの治療方針は、もともとタミフルなどなかったものと思って休め、ということ。新型インフルエンザだけでも国民の1/3が罹患するのだから、そんなものに医療費をかけるな、ということらしいが、これは実は日本でもあてはまるのではないだろうか。患者数が膨大で、しかも基礎体力がある患者の場合は、放っておいてもリスクは高くならず特に治療の必要がないとあれば、安上がりかどうかが選択基準になる。

そうこうしているうちに、

タミフル耐性「新型」、米で人から人へ感染か

 米疾病対策センター(CDC)が10日、週報で発表した。

 タミフルを製造しているスイスの製薬大手ロシュによると、耐性ウイルスは日米などで7日までに13件が報告されているが、いずれのケースも1人の患者から検出されただけで、周囲への感染は確認されていなかった。

 CDCは、健康な成人にタミフルを事前に飲ませる「予防的投与」など、耐性ウイルスの出現をまねく過剰使用を控えるよう呼びかけた。

 CDCの報告によると、米ノースカロライナ州でキャンプに参加していた10代の少女が7月8日、インフルエンザの症状を訴えた。同じ小屋に泊まっていた別の少女も11日に発熱、2人からタミフルに耐性を持つ新型ウイルスが検出された。

 キャンプ場では、6月から新型インフルが流行、発症していない子供や職員計600人以上が、感染予防のため10日間、タミフルやリレンザを服用した。

 2人は、タミフル服用中にもかかわらず発症したため、医師が耐性ウイルスを疑い検査した。キャンプ場では、ほかにも6人がタミフル服用中に発症。最初の少女からもう1人へ感染したか、別の患者から2人に感染したものとみられる。

(2009年9月11日10時56分  読売新聞)
ウイルスの進化は早いからなぁ。キャンプ場から帰って家で寝てるんだな。タミフルが効かない分、1日余計に寝て居なきゃいけないだけだから。

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2009年9月10日 (木)

認知症の進行を遅らせる”色素”

地味なニュースですが、実は社会的には大きなインパクトがあるかもしれません。
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林原生物化学研究所が、
シアニン系の感光色素(NK-4)に脳の認知機能に改善作用があることを発見した。プレスリリースはこちら

動物実験での効果は既存薬(Donepezil)とほぼ同等(ただし、投与経路は腹腔内注射)。この既存約はアリセプトという製品名でエーザイから発売されており、国内で唯一、保険適用されている認知症の進行を遅らせる薬。

ただ、薬価が高いという理由で治療に使えない方もある模様。また、ピペリジン誘導体に過敏な患者さんには禁忌となっていて使えない。

そういう意味では、もし低コストで生産できて、なおかつ第一選択肢の医薬品が使えない患者さんにも適用できるのであれば、効能が同等でも医薬品としては大きな価値を持つ。

ただ、
動物実験でのNK-4の効果は分かったが、毒性はどうなの?とか、特別養護老人ホームや介護施設での使用を考えれば、経口投与ができなければあまり実用的ではないのだが、そのへんはどうなの?感光性色素のようだが安定性は大丈夫?薬理作用のメカニズムは分かってるの?等、幾つも超えなければならない壁がある。
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今後の発展を期待します。

色素の薬理作用といえば、食用色素の青色1号にも神経の損傷を回復させる作用があったっけ。

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2009年9月 9日 (水)

海堂尊氏に名誉毀損訴訟

作家、海堂尊氏(”たける”氏。”そんし”ではありません。念のため)を名誉毀損で訴えた方が現れた。
毎日新聞より。

名誉棄損:「バチスタ」海堂氏訴えられる 東大教授が提訴

 医療現場を描いた小説「チーム・バチスタの栄光」などで知られる作家、海堂尊(たける)氏の書いたインターネットの文章で名誉を傷付けられたとして、日本病理学会副理事長の深山正久東大教授が、海堂氏と文章をホームページに掲載した出版2社に総額計1430万円の賠償と謝罪広告の掲載を求め東京地裁に提訴していたことが分かった。

 2社は「宝島社」(東京都千代田区)と「日経BP社」(港区)。提訴は昨年10月21日付。訴状によると、深山教授が厚生労働省から交付金を受けて行った研究について、海堂氏が「学会上層部と官僚の癒着」と記載した点などを名誉棄損としている。【小林直】

さて、たしかに宝島社のホームページには、海堂尊氏による”【海堂ニュース! 14】”というそれらしい記述がある。(名誉毀損に当たる文書を広める片棒を担いだ、と言われてはかなわないのでリンクはしない。)

しかし、当の深山教授は、このページが公開され続けることをどう思っているのだろう?もし、公表されるのが不都合であれば、裁判所に削除請求仮処分申請をして、出版社に対してホームページ上の文章の掲示をとりあえず止めさせる対抗措置を取ればよいのに・・・。そのあたりの感覚が良くわからない。

今回の提訴は損害賠償請求が主のようなので、民事だろうが、刑法で言う”名誉毀損”(罪)は面白い規定がある。

第二百三十条  公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
”事実の有無にかかわらず”なのだ。刑事訴訟にして事実を争うと、”やっぱり学会上層部と官僚の癒着”があったんじゃないか”と事実関係が明らかにされて、恥の上塗りになることを恐れての民事訴訟なのだろうか。だとしたら、やはり削除請求仮処分の方が先だろうに。

# それとも検察にはとりあってもらえなかった?

逆に裁判を通じて、書かれてしまったような事実がなかったことが明らかになっても、係争中はホームページ上に事実とは異なる「学会上層部と官僚の癒着」を臭わせる文章が掲載され続けて、深山教授の被る不利益は拡大し続ける。

既にニュースになってしまったので、海堂氏が書いた文章は、その事実の有無にかかわらず深山教授の意図とは裏腹に、これまで以上に多くの人々の注目を集めることになるだろう。これは、情報戦としては大きな失敗だ。

そして、今後、民主党が厚労省にメスを入れる機会を与えることになるだろう。昨年10月の提訴ということなので、今回の政権交代は視野に入っていなかったのだろうが、年金問題だけでも大変なのにちょっと気の毒。

# 民主党が与党でむしろ良かった?

その結果、AIに世間の注目があつまれば、それはそれでよし。海堂尊氏のライフワークは思わぬ形で実ることになるのかもしれない。

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2009年9月 3日 (木)

要はリスク評価済みの組換え生物をどう扱うかということなのだ

以前、こちらのエントリーでも扱ったが、5/18-6/17の間、環境省がパブコメの募集をおこなっていた”カルタヘナ法の施行状況の検討に関する意見の募集”の結果が8/28付けで公表された

・・・が、どういう訳か、日本版BCHの”お知らせ”のページからはリンクされていない。カルタヘナ法に関するポータルサイトなのだから、きちんと活用してほしいものだ。でなければ、我々規制を受ける側の人々は、環境省のサイトや文科省のサイトを定期的に見に行かなければならない。BCHから更新情報をRSSで配信してくれればよいのに。

それはさておき、意見募集の結果はこちら(pdf)。ちょっとトンチンカンなやりとりがあるのでピックアップしておこう。

[意見7]

 産業利用目的の第二種使用等においては主務大臣による拡散防止措置を受けた宿主、ベクター、供与核酸の組合せはリスク評価が終了したものとしてGILSPのポジティブリストに掲載され、それ以降の大臣確認は不要とされる。
 これに対して、研究開発目的の第二種使用等の大臣確認においては、その結果を定期的にポジティブリストにフィードバックするための仕組みが存在しない。
 研究開発目的の第二種使用等においては、作成される遺伝子組換え生物が多様であることからポジティブリストによる除外は行い難いことは推定できるが、このことが、研究開発分野の確認件数が多くなっている一因と考えられる。

[回答7]

 研究開発目的の第二種使用等については、執るべき拡散防止措置を決めるための実験分類ごとの生物のリスト等を定めた「研究開発二種告示」について、これまでも科学的知見の集積に努め、それに応じて随時「研究開発二種告示」を改正する等の取組みを行ってきているところです。今後も「研究開発二種告示」については、科学的知見に基づき、必要な見直しに努めていきます。

 意見と回答がすれ違っている。

 産業二種使用等のGILSPリストにはこう書かれている。

 産業上の使用等に係る省令に基づく告示(GILSP遺伝子組換え生物等リスト:経済産業省告示)

 つまり、遺伝子組換え生物 (LMO)として”宿主、ベクター、供与核酸の組合せ”のリスク評価が終わったものとしてポジティブ・リストを公表して、大臣確認の対象から除外している。意見7もこれを踏まえた内容になっている。

 一方、回答7では「研究開発二種告示」に触れているが、これはLMOのリスク評価ではなく、宿主と核酸供与体としての生物のリスク評価結果であり、最新の知見で毎年のようにアップデートされている。

 研究開発二種使用等で大臣確認(リスク評価)されたLMOについては、第一種使用等のように評価結果が公表されておらず、評価済みのLMOのポジティブ・リストを作成して、リスク評価済みのLMOとして大臣確認の対象から除外する手続きも行われていない。

 従って、既にリスク評価済みのLMOであっても、確認された場所と違うところで使用する場合や、ユーザーが代わった場合には、いつまでたっても大臣確認を取らなければ使用できないことになる。それが、意見7で言及された「研究開発分野の確認件数が多くなっている一因と考えられる。」という考察に結びついているのだが。

 つまり、文科省の大臣確認申請によって得られた知見を踏まえて、評価済みのLMOを大臣確認から除外するとともに、評価済みのLMOに対して執るべき拡散防止措置を割り当てられるように省令を改正しない限り、研究開発二種使用等の大臣確認の件数は今後とも減る見通しは立たないのだ。

 こんな風に、意見はLMOの評価結果のアップデートの方法を問題にしているのに、回答の方は生物のリスク評価のアップデートが実施されていることを答えている。これでは話が噛み合わない。

# このまま続けると、人的コストの割に効率が悪い施策だと思いませんか?

[意見20]

研究開発等分野の第一種使用規程の承認件数が尐ないことについて、表に出さずに研究しているのではと疑念がもたれる。

[回答20]

現在までのところ、研究開発分野における第一種使用等における不適切な使
用事例は確認しておりませんが、引き続き、法令の周知等により、適切な使用の推進を図ります。学術研究目的での承認申請がしにくく、研究の妨げになっているのではないかとの懸念も示されていることから、報告案16ページ「研究開発として行う第一種使用に関し、産業利用における第一種使用との使用の態様の違いを踏まえた評価を行っていく必要がある。」との検討結果を踏まえた対応を行っていく必要があると考えております。

 orz.....である。

 法令違反覚悟でこっそり研究しても、いずれは論文に書かないと成果にはならない。で、明るみに出た途端に、文科省や環境省から立ち入り調査でみっちり絞られたり、場合によっては刑事事件として書類送検されたり、告訴されたり、研究費の返納を求められたり、公的研究費の応募資格を止められたり、大学であれば学内の実験が全面的に止まったり、そのせいで他の研究者から白い目で見られて恨みを買ったり、それはもうひどい目に遭う可能性があるので論文と引き替えにそのようなリスクを取る研究者はまずいない。

# 研究者の社会的な信用が低いのかな。だとしたら残念なことである。

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