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2009年8月 5日 (水)

回帰分析か相関分析か。

朝日新聞と読売新聞に、親の収入が高いほど子供の学力が高いことが示された、と言う記事が出ている。

しかし、親の収入が高いというだけで、子供の学力が高くなると考えるべきではないだろう。

親の収入が高い ⇒ 子供の学力が高い

という単純な関係ではなく、

親の収入が高い ⇒ 子供の教育にお金をかけられる+余暇があるので子供とコミュニケーションが取れる ⇒ 子供の学習時間・幅が増える ⇒ 子供の学力が高い

という、いくつかの段階を経ていると考えた方が良いだろう。・・・ということを踏まえて、朝日新聞の記事。

成績と親の年収、比例する傾向 小6学力調査を国が分析

2009年8月5日3時9分

 全国学力調査の結果を分析したところ、保護者の収入が多い家庭、教育支出が多い家庭ほど子どもの成績がよくなる傾向があることが、文部科学省がお茶の水女子大学に委託した調査で確認された。年収によって正答率に最大約23ポイントの差がついたほか、塾や習い事などの支出が「ない」という家庭と「5万円以上」という家庭では、最大約27ポイントの差がついていた。

 保護者の収入と子どもの学力の関係について、国が具体的に分析、公表したのは初めて。東京大学の調査でも収入で大学進学率に大きな差があることが確認されており、教育費の公的負担のあり方が一層議論になりそうだ。

 調査は、お茶の水女子大の耳塚寛明・副学長(教育社会学)の研究班が昨年度、約6千人の小学6年生について実施。保護者にも年収をたずねて相関関係を分析し、4日、結果を公表した。

 それによると、国語のA問題(知識中心)は年収200万円未満の家庭の子どもは正答率が56.5%にとどまったが、年収が上がると、正答率もほぼ右肩上がりに上昇。1200万円以上1500万円未満の層は78.7%に達した。国語B(知識の活用中心)、算数A、算数Bでも傾向は同じで、年収によって最大約20~23ポイントの差があった。

 ただし、年収が最も多い区分の1500万円以上では、1200万円以上1500万円未満の層に比べ、四つのテストすべてで微減。0.3~1.4ポイント下回っていた。

 研究班は、年収が同レベルの中で比べて、成績が良い子どもに共通するものがあるかどうかも分析。「保護者がニュースについて子どもと話す」「小さい頃に絵本の読み聞かせをした」「家に本がたくさんある」などの項目が当てはまったといい、「幼児期から学校の学習になじみやすい家庭環境をつくることが重要だという示唆」「経済環境による学力差を緩和するカギを握っている」と指摘している。(上野創)

記事全体から見れば些細な点だが、子供の学力と親の収入の関係は、比例ではない。原点を通る直線ではないので。一次関数に近似できるかもしれないが。

記事によれば、分析したのは”保護者にも年収をたずねて相関関係を分析”とある。一方、研究班の指摘は”「幼児期から学校の学習になじみやすい家庭環境をつくることが重要だという示唆」「経済環境による学力差を緩和するカギを握っている」”とある。大多数の市民は急に年収が増える訳もなく、対策を考えるのであれば、こっちの指摘のほうが大切な気がする。

一方、読売新聞では、

全国学力テスト分析、親の収入高いほど高学力

新聞記事を話題に…成績アップ効果

 親の所得が高いと子供の成績は良いが、低所得でも親の心がけ次第で学力向上につながる――。

 昨年度の全国学力テストの結果を、文部科学省の委託を受けたお茶の水女子大の耳塚寛明教授らが分析した結果、そんな傾向が出ていることが4日、明らかになった。全国学力テストの結果と親の所得の関連を追った調査は初めて。絵本の読み聞かせなども成績向上に効果があり、耳塚教授は「経済格差が招く学力格差を緩和するカギになる」と話している。

 調査は、全国学力テストに参加した小6のうち、5政令市から100校、計約8000人を抽出し、親と教師を対象に学習環境などを調べた。

 世帯収入と平均正答率(国語と算数)の関係を見ると、高所得ほど正答率も高い傾向がみられ、最も平均正答率が高かったのは、1200万円以上1500万円未満の世帯。200万円未満の世帯と比べると平均正答率に20ポイントの開きがあった。

 親が心がけていることについて調べたところ、高学力層の子供の親は、「小さい頃から絵本の読み聞かせをした」「博物館や美術館に連れて行く」 「ニュースや新聞記事について子供と話す」といった回答が多かった。このうち、「本の読み聞かせ」や「ニュースを話題にする」は、親の所得に関係なく学力向上に一定の効果がみられたという。

 調査では、学校での取り組みも調べた。家庭環境にかかわらず、児童にあいさつを徹底したり、教員研修を積極的に行ったりしている20校では、学力向上に一定の効果がみられた。

(2009年8月5日  読売新聞)
”新聞記事を話題に”というあたりは手前味噌だが、こちらの記事の方がまだ前向きだ。

しかし、私が思うに、研究者が回帰モデルで明らかにしようとしてのは、こういうことではないのか?

親の所得と学力の相関は、教育費が教育にかける時間と手間に反映されるため、ある程度の相関は当然の結果。問題は、その相関から外れる”外れ値”で、お金をかけずにどのように教育の効果を大きくしているのかが興味の対象だ

ということではないのだろうか。
だが、ちょっと気になることが、この回帰モデルにはある。それは、このモデルでは、親と子の学力の間の遺伝的な相関が考慮されていないのではないか、ということだ。

遺伝学の分野では、しばしば親の遺伝的なポテンシャルを推定するために、「後代検定」という手法がとられる。たとえば、種牛となる肉牛の肉質を検定したいときには、子牛を育てて解体し、子供の肉質から親の肉質を推定するというのがそれにあたる。

仮に、”学力が高い人は、高い収入を得やすい”という関係がある場合、

子供の学力 ⇒(遺伝的相関)⇒ 親の学力 ⇒(学力と年収の相関)⇒親の年収

という関係だって成り立つかもしれないのだ。これは、親と子の学力の世代を超えた自己相関を見ている様なものだ。

しかも、試験を設計した時点での直接の”測定値”は学力試験の成績なので、上に書いた

親の収入が高い ⇒ 子供の学力が高い

という回帰分析よりは、

子供の学力(X) ⇒親の年収(Y)

という相関分析の方が、もともとの試験設計には合っている様に思う。

私は生物学分野の研究者として、測定可能なデータは全て何らかの確率分布に収まると信じている。言い換えれば、人の学習能力や応用力のポテンシャルには生まれながらに違いがあるとも言える。

それを、ある程度克服するのが、教育の機会をより多く与えることであり、本人の努力である。

そう考えると、義務教育の時期までに決まる学力を伸ばすのに必要な取り組みは、研究者らが言うように”「幼児期から学校の学習になじみやすい家庭環境をつくることが重要だという示唆」「経済環境による学力差を緩和するカギを握っている」”であって、朝日新聞の言うように、

東京大学の調査でも収入で大学進学率に大きな差があることが確認されており、教育費の公的負担のあり方が一層議論になりそうだ。

というコジツケは如何なものだろう。

# 朝日新聞の記者は、研究を実施した研究者さえも及ばない深い洞察力をお持ちかな?

各党とも、選挙対策で教育に対する政府の支援策をうたってはいるが、この調査結果からいえることは、親にお金さえ渡しておけば何とかなると言うものではないだろう。むしろ、両親とも忙しく働いていて、日常生活の中で子供と接する時間が少ないことの方が学力を伸ばす妨げになっている、という有様が浮かび上がっているように思うのだが。

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コメント

重回帰分析に"遺伝"という要因は入れておらず、今回の調査で投入した変数では説明度が低いと結論付けていますので、遺伝で多くを説明できるかもしれません。

文科省の報告書はこちら

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