2020年4月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    

最近のトラックバック

どこからきたの?

  • なかのひと

Google Analytics

« 2009年4月 | トップページ | 2009年6月 »

2009年5月の記事

2009年5月28日 (木)

TG霊長類

実験動物中央研究所-慶応大のラインですかぁ・・・。

霊長類の生殖系列に外来遺伝子を組み込むことに成功した報告。基本的な操作はTGマウスと同様の模様。小型霊長類なので管理・繁殖など色々とやりやすかったのだろう。

# 執るべき拡散防止措置はP1Aですね。

遺伝子組み換え:小型サル誕生 霊長類で初

 サルの仲間のコモンマーモセットで遺伝子を組み換えた個体を誕生させることに、実験動物中央研究所と慶応大の研究チームが成功し、28日付の英科 学誌ネイチャーに発表した。組み込んだ遺伝子が体内で働いていることが霊長類で確認されたのは世界初という。人間に近い霊長類に病気の原因遺伝子を組み込む実験が可能になり、パーキンソン病など神経や脳の難病研究に弾みがつきそうだ。

 実験動物中央研究所の佐々木えりか・応用発生生物研究室長らは、サルより小型で妊娠期間が短く、一度に2~3匹の子を産むコモンマーモセットに着目。高濃度の溶液中で受精卵を縮ませ、遺伝子の運び役となるウイルスを効率よく送り込む手法を開発した。

 この手法で、体内で緑色蛍光たんぱく質(GFP)を作る遺伝子を80個の受精卵に導入し、延べ50匹の雌の胎内に戻したところ、4匹が妊娠し計5匹の子が生まれた。5匹すべてで導入した遺伝子が働き、GFPが作られていた。うち2匹では精子や卵子にもGFP遺伝子が導入されていた。この精子と、通常の雌の卵子を体外受精させ、子を誕生させたところ、GFP遺伝子が受け継がれていた。

 研究チームの岡野栄之・慶大教授は「霊長類で難病のモデル動物を作り、治療法の開発につなげたい」と話している。【西川拓】

次の目標は難病モデル?となるとノックアウト、ノックダウン個体の作出が次の目標。

生殖系列に遺伝子を導入した遺伝子組換え霊長類は世界初だが、広い意味では遺伝子治療に成功した”ヒト”も遺伝子組換え霊長類にあたる。そう言う意味では”霊長類で初”ではない。

ちなみに、ヒトの感染受容体を付与したモデル・マーモセットの作出は大臣確認実験にあたるので要注意。

---

本日21時現在の新型インフルエンザ感染例は352名(成田検疫の8名を含む)。5/16のヒト-ヒト感染国内初確認から13日目。(本日のニュースソースは毎日新聞)

人気blogランキングへ←このエントリーの情報はお役に立ちましたか?

2009年5月27日 (水)

季節性インフルエンザへの対応強化

北大獣医学部の喜田先生が読売新聞東京本社で講演したんですね。5/26読売新聞より。

北大・喜田教授「季節性インフルにも新型同様の対策を」

 新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)への対処方針見直しなどが進む中、北海道大の喜田宏教授(獣医微生物学)が22日、読売新聞東京本社内で講演した。

(略)

一方、季節性インフルエンザの死者は、国内で毎年1万~2万人、全世界では25万~50万人とされる。「今回の混乱を見ていると<新型>という言葉 のマジックにかけられている印象が強いが、新型だけを特別視するのではなく、犠牲者の多い季節性への対処法の充実が大事だ」と語った。

 具体的には、ウイルス全体を入れた「全粒子ワクチン」による予防強化を提示した。全粒子ワクチンは1971年まで使われていたが、副作用が問題と なり、現在は安全性が高いHAワクチンが使用されている。しかしウイルスを除外したワクチンの効果には疑問が示されており、喜田教授は「ワクチンのメリッ トとデメリットを冷静に判断する時期に来ている」と、より効果的なワクチン準備の重要性を説いた。

(略)

行政はリスクに応じた対応を、という意味では季節性インフルエンザに対する対応を手厚くするのが合理的だ。国内で年間1-2万人が亡くなっているのであれば、交通事故並のリスクだ。交通事故撲滅キャンペーンはあるがインフルエンザ撲滅キャンペーンは聞いたことがない(当たり前か)。新聞社も折角、勉強会を開いたのだから、こういう情報を社会に発信し続けてほしいものだ。

ワクチンの交差効果を期待するなら、あまり力価の高くないトリ・インフルエンザやブタ・インフルエンザの全粒子ワクチンで基礎免疫をつけておいて、シーズン・イン前にコンポーネント・ワクチンの追加接種というのは一つの方法かもしれません。しかし、特異性を期待して、特定の株の全粒子ワクチン一辺倒の生産をするとなると、国民の接種率を上げた場合、ワクチンの生産が追いつかなくなる恐れもあり・・・実施は難しいのでは?

UMNファーマのように高効率でコンポーネントワクチンを作る技術もできてきているので、こういう場合は使い分けが肝心かと。どのみち一回接種ではあまり予防効果は期待できないのだから。

---

本日21時現在の新型インフルエンザ感染例は354名(成田検疫の8名を含む)。5/16のヒト-ヒト感染国内初確認から12日目。(本日のニュースソースは毎日新聞)

感染者数の差分が明らかに小さくなってきており、国内でのヒト-ヒト感染はほぼ終息した感じ。

# 共同通信によると364名(検疫段階含む)。

人気blogランキングへ←このエントリーの情報はお役に立ちましたか?

2009年5月26日 (火)

Long long review

EFSA GMO Panel Working Groupの動物実験に関する報告書が、Food and Chemical Toxicology 46 (2008) S2–S70として公表されている。

EUの食品安全性の専門委員会が、食料用および飼料用として使用することを目的として開発された遺伝子組換え作物の安全性および栄養性の評価における動物実験の役割について評価した文書だ。仕事上の関わりがあるので読み始めたのだが、abstractだけで約3ページ。本文は59ページもある。とりまとめに関わったマンパワーもたいしたものだ。

心して読まねばなるまい、とは思うのだが、これだけ大部だと持って歩くだけでしんどい。こつこつ読まなくては・・・ほぼ涙目。

---

本日21時現在の新型インフルエンザ感染例は352名(成田検疫の8名を含む)。5/16のヒト-ヒト感染国内初確認から11日目。(本日のニュースソースは毎日新聞)

# 治った人は差し引いてる?

人気blogランキングへ←このエントリーの情報はお役に立ちましたか?

2009年5月25日 (月)

新型インフルエンザ、感染拡大も小休止?

気温も湿度も高くなりつつある。そろそろ流行も終末期か?

---

本日25時現在の新型インフルエンザ感染例は345名(成田検疫の4名を含む)。5/16のヒト-ヒト感染国内初確認から10日目。(本日のニュースソースは読売新聞)

# 治った人は差し引いてる?

人気blogランキングへ←このエントリーの情報はお役に立ちましたか?

2009年5月22日 (金)

ドクター・カルタヘナの賞賛

タイトルは海堂尊先生の小説とは関係ありません。

環境省が” (カルタヘナ法)の施行状況の検討に関する意見の募集(パブリックコメント) ”を募集している。カルタヘナ法に組み込まれている5年目の見直し規定に基づいて、施行状況をレビューして改善方策を探るための取り組みの一環だ。

検討案からいくつかの文章を抜粋する。

---

(法律の施行状況)

○法律の枠組みの修正は必要ないが、運用方法や情報提供に関して、下記に示すような改善の検討が必要である。

(第一種使用に係る生物多様性影響評価)
○第一種使用規程の承認件数について、学術研究を目的として申請されるものは、産業利用を目的として申請されるものと比較して極端に少なく、学術研究目的での承認申請がしにくく、研究の妨げになっているのではないかとの懸念も示されている。
○一定条件の管理下で行う研究開発目的の第一種使用と、一般栽培等の産業利用における第一種使用とでは、管理手法、使用スケール及びそれに伴う生物多様性影響が生じた場合の影響の程度が異なる。
○今後、遺伝子組換え技術に関する研究開発は、地球環境問題などへの対応方策の1つとしても、その重要性が高まっていくと考えられることから、研究開発として行う第一種使用に関し、産業利用における第一種使用との使用の態様の違いを踏まえた評価を行っていく必要がある。
---

よくぞ気づいてくれました。たしかに改善点はある。特に

一定条件の管理下で行う研究開発目的の第一種使用と、一般栽培等の産業利用における第一種使用とでは、管理手法、使用スケール及びそれに伴う生物多様性影響が生じた場合の影響の程度が異なる。

というところは、あまり規制が厳しいと研究開発のの活力を損なう恐れがあるので、実態に応じた規制に変えていくべき、という点でよい着眼点だ。試験研究用のGMOとコモディティーとでは、栽培のスケールも違うし、流通実態の有無も全然違うので同じ規制をかけるのはあまり合理的な対応ではない。

似たようなケースでは、厚労省マターだが、日本で医薬品開発のための治験に関する規制を強化して、文書整備や治験薬の製造ガイドラインを厳しくした結果、国内の治験が減ってしまったという事例がある。最近は治験薬製造上のガイドラインが改正されて良くなってきたが。

我が国の組換え体開発が”空洞化”しないようにするためにも、こういう視点での規制の改正は是非とも必要だ。国内でも研究開発目的での遺伝子組換え作物の栽培が、手続きを適切に踏めば、現実的なタイムコースで実施できる様にするべきだ。

今後は、この取り纏め方針が確定したら、各省での改訂作業が始まることだろう。
是非、日本の研究者を奮い立たせるような改正を行ってほしいものだ。

---

本日21時現在の新型インフルエンザ感染例は361名(成田検疫の4名を含む)。5/16のヒト-ヒト感染国内初確認から7日目。(本日のニュースソースは朝日新聞)

# 治った人は差し引いてほしい。

人気blogランキングへ←このエントリーの情報はお役に立ちましたか?

2009年5月20日 (水)

論文のゲラ送付

論文のゲラのチェックが終わった。また、よりによって、たった1回しか登場しない植物の学名に脱字を発見。OMG!です。修正依頼後、版元のホームページでは”Proof Comments Received”と表示されているので、あとは先方の修正確認待ち。

しかし、48時間以内にゲラを返送しろっていうのは結構厳しいものがある。地球上のみんなが合衆国に住んでいる訳でもないし、地球上の誰もがインターネットを使える訳でもない。この締め切りはちと厳しい気がする。運悪く出張してたらアウトではないか。

私は研究活動にしばらくブランクがあったので、電子出版の形態で論文を出すのは実は今回が初体験(最後に論文を書いたのが2004年)。かつては、レフェリーとのやりとりも、うんうん唸ってあれこれ考えあぐねて、あげく手紙を書いて、プリントアウトして、海外郵便で送って、アクセプトされてからも、ゲラを送ってもらって校正記号を書き込んで・・・一往復10日以上というのもざらだったのを思えば、なんと早くなったことか。Editorとメールで気軽にやりとりできる様になったのも実にありがたい。今回は、"Received February 3, 2009. Revised Manuscript Received April 3, 2009."の60日(ゲラにアクセプトの日付は入ってないなぁ)なので、私としてはこれまでの最速ではない。ちなみに、これまでの最速は国内に編集部がある国際誌で受理まで42日でというのがあった。

電子化されたおかげで、今や切手代もかからないし、レフェリーのコメントの悪筆に悩まされることもない。そう言えば、以前居た九州の試験場の近くの郵便局が閉鎖されたと聞いたことがある。夏の盛りに3.5 inのフロッピーディスクの入った封筒を持ってクマゼミの大音声に押しつぶされそうになりながら、牛舎の脇の小径を郵便局に向かって歩いた日のことがが鮮明に思い出される。

---

本日22時現在の新型インフルエンザ感染例は263名(成田検疫の4名を含む)。5/16のヒト-ヒト感染国内初確認から5日目。(本日のニュースソースは毎日新聞)

人気blogランキングへ←このエントリーの情報はお役に立ちましたか?

2009年5月19日 (火)

季節性インフルエンザの感染者数は?

感染研から季節性インフルエンザに関する、定例のインフルエンザ流行レベルマップが公表されたこれによると、

2009年第19週のインフルエンザの全国レベルでの定点当たり報告数は、1.68(報告数7,963)となり、3週連続で減少した。

患者数は報告数よりも多いと考えられるので、5月4日~5月10日の1週間の感染者数だけで8,000名ほどは、”旧型”インフルエンザに感染していることになる。

これらの患者さんのうち、糖尿病や腎臓病などの慢性疾患を抱える方と、妊婦さんは重症化のリスクが高い点は、新型インフルエンザも旧型も同様であると考えると、新型だけ入院して治療を受けることができるというのは如何なものだろうか。ちょっとアンバランスな対応だと思う。

この記事も、ある意味注目。

「日本はモデルケース」WHOが注目 新型インフル

2009年5月19日10時9分

 【ジュネーブ=田井中雅人】 新型の豚インフルエンザの感染者急増への日本の対処法に世界保健機関(WHO)が注目している。途上国に比べて検査態勢や医療態勢が充実している日本での急増だけに、未知の病気との戦いのモデルケースになるとの指摘が出ている。

 WHOで新型インフル対策にあたる進藤奈邦子医務官は「(患者が急増している)神戸や大阪は検査・報告態勢がしっかりしており、学校閉鎖やイベント中止などの措置がきちんととられている。日本については、感染拡大で危機的状況になるような心配はしていない」と話す。

 さらに進藤氏は「日本で数多くの治療経験を重ねるなかで、どういう人が重症化するかや、危険因子があるのかといった、未知のウイルスについての情報も集まる。世界に先駆けて新型インフルに対処するモデルケースとなりうる」と期待を口にする。

 最近のWHOの専門家らの注目は、英国、スペイン、日本の3カ国だ。海外渡航歴がなく、だれからうつされたかわからない「地域社会レベルの持続的感染」 が、米州以外で確認されれば、警戒レベルを現在のフェーズ5から最高度の6(パンデミック)に引き上げる要件が整うからだ。

 英国やスペインは「感染者の大半は北米への渡航歴があり、持続的感染にはあたらない」と主張。感染確認者数が急増する日本に注目が集まる構図になっている。

”モデルケース”といっても、こういう場合は”模範となる”という意味合いは薄いように思う。検査体制や医療水準で言えば、アメリカやカナダだって整っている。日本のケースがアメリカやカナダと際立って違うところがあるとすれば、

  1. 最初の感染源が”ピンポイント”に近いほど小数であるため、国内の地理的な感染の拡散が追跡可能
  2. 検査技術が普及しており、感染拡大初期の状態ではかなりの高頻度のサンプリングが行なえる
  3. 現場からの感染報告が律儀に行なわれ、信頼性の高い統計的データが政府のレベルで収集される
  4. 保険制度が整っていて(他国と比べればと言う話だが)、慢性疾患の患者さんが治療されずに放置されているケースが少ないので、余病がある場合の新型インフルエンザの転帰の高精度のケース・スタディーができる可能性が高い

ということだ。疫学研究者から見て、非常に質の高いデータが集まる絶好の(・・・と言ってよければだが)機会であるという意味では、モデルケースなのだろうが、決して理想的な治療が受けられるという意味ではない。見出しの先頭に”モデルケース”と書いてあると無邪気に喜んでいる記事のようにも見えるのだが、それほど暢気な状況ではない。

・・・ではあるが、このところ、高校生くらいの”体力のある感染者”が増えているようであるし、集中的に治療する体制が整ってきているので、日本ではこのウイルスによる感染症の致死率は、WHOの公表した2%くらいという値を大きく下回ることになるのではないだろうか。

# ところで、WHOの皆様は、”モデルケース”と持ち上げておけば、几帳面な日本人の国民性から言って「感染性も、感染した場合のリスクも季節性インフルエンザと同じなら、わざわざPCRで確定診断なんてしなくたっていいじゃん。めんどくさいし。」・・・と、流行期の途中で言い出さないだろう、という目算もあるんでしょうね。当然のこと保険適用外だが、患者の依頼でする検査ではないので患者負担は\0。確定診断は全額税金なのだよね。PCRで確定診断するのに、1検体幾ら投入されるのだろうか。

---

 本日22時現在の新型インフルエンザ感染例は178名(成田検疫の4名を含む)。5/16のヒト-ヒト感染国内初確認から4日目。

人気blogランキングへ←このエントリーの情報はお役に立ちましたか?

クリックしていただけると筆者が喜びます!

2009年5月18日 (月)

”夢想花”ではないけれど

その昔はやった円ひろしの夢想花という曲を思い出してしまった。

忘れてしまいたいことが今の私には多すぎる-なんてね。

以下、畝山さんのブログより。

我々はツナ缶で記憶喪失になる?我々は何を忘れつつあるのか?Add Star

The Lancet

Correspondence

Volume 373, Issue 9676, 16 May 2009-22 May 2009, Page 1672

Can one get amnesia from canned tuna? What are we forgetting?

GJ Myers et al.

Lancet 1月号でRoger Hoらがマグロを食べることで健忘症になると断言した症例報告は毒性学的にも臨床的にも問題がある。成人で症状が出る最小暴露量は200microg/L で、この値はほとんどの国の規制委員会でも採用されている。Hoらの報告した症例は28 microg/Lで、この値は毛髪では5.5ppmに相当し、魚をよく食べる集団では普通に見られる。セイシェルでは母親の平均毛髪濃度は6.9 ppmで、記憶喪失の報告はない。

さらにメチル水銀中毒による神経機能欠損は不可逆的であるがHoらの報告では患者は改善している。血中水銀濃度の9 microg/Lへの低下は血中水銀の半減期44日と一致する。

従ってこの患者がマグロを食べてメチル水銀中毒になったという主張は受け入れがたい。

著者(シンガポール)はマウスでの実験を持ち出してMyersを無知だと反論している。水銀はあちこちにあるので医師は常に水銀中毒を疑う姿勢が必要だと。

(マグロ食べるたびに記憶喪失になってたら大変だ)

彼のLancetにもこんな論文が載るんですね。一生に一度くらいは可逆的な健忘症になるほど高級魚を食べまくってみたいものです(メチル水銀中毒はイヤだけど)。

---

本日22時現在の新型インフルエンザ感染例は139名(成田検疫の4名を含む)。

人気blogランキングへ←このエントリーの情報はお役に立ちましたか?

クリックしていただけると筆者が喜びます!

2009年5月17日 (日)

新型インフルエンザ国内感染拡大中

この時期、季節性のインフルエンザはそろそろ影を潜める頃なのだが、新型は感染拡大中の様相。

5/17現在、阪神方面では海外渡航歴のない高校生とその家族を中心に55人の感染が確認された。まだ潜伏期間にある潜在的な患者も想定されるので、この地域でもまだ感染者は増える可能性が高い。

それにしても、最初に新型インフルエンザへの感染が確認された高校生のケースを新型と疑った医師はGJ!でした。その影には、単なる季節性のインフルエンザと診断した他の医師も居るのかも知れないが。読売新聞より。

新型インフル感染、国内すでに1千人規模か…感染研センター長

 【ジュネーブ=金子亨、高田真之】国立感染症研究所の田代真人インフルエンザウイルス研究センター長は17日、滞在先のジュネーブで記者団に対 し、日本国内で新型インフルエンザの感染が確認されたことについて、「(感染者数は)すでに1000人レベルを超えた可能性がある」と述べた。

 田代氏は、新型インフルエンザの警戒レベル引き上げの是非を世界保健機関(WHO)事務局長に提言する緊急委員会の委 員。感染は北米地域で広く確認されており、レベルを現行の「フェーズ5」から世界的大流行(パンデミック)を意味する「6」に引き上げるには、北米以外で 感染が継続していることが要件になる。

 田代氏は「(今後の日本の状況が)フェーズ6に引き上げる判断材料になる可能性があり、WHOは注視している」と指摘した。

(2009年5月17日21時47分  読売新聞)

病院で診断される感染例を一種の”サンプリング”だと考えれば、母集団の規模は今、こうしている間にも拡大している可能性はある。・・・あるというよりも、高いといった方が良いだろう。

ところで、厚労大臣はまだ記者会見で感染例を発表しているのだろうか?そろそろ、”感染例の確認された地域が増えたら公表する”というスタンスをとる方が良いように思う。また水際対策は、国内感染の水準がどこまで上がれば中止する判断をするのか。

国内での感染拡大の阻止には、一般の病院の協力も欠かせない。群馬県の取組みが素晴らしい。産経ニュースより。

群馬県が「発熱外来」医師らを嘱託職員に

2009.5.9 02:26

 新型インフルエンザの国内発生が確認された場合、県内で診断に対応する「発熱外来」の設置準備が難航している問題で、県が8日までに、診断にあた る医師らを嘱託職員として採用し、感染が発生すれば、公務員が対象の補償制度を活用する方針を決め、関係機関との調整を進めていることが分かった。交渉難 航の要因だった補償制度に一定のめどがついたことで、設置準備も進展の様相をみせている。

 県によると、嘱託職員は公務で負傷するなどした場合、療養や休業補償などが盛り込まれた「公務災害補償」の対象となる。県では、医師や看護師など発熱外来のスタッフを嘱託職員とする方向で、医師会などと協議。報酬や勤務時間について、最終調整している。

 県は当初、医療スタッフの補償について、国による補償制度の創設を前提に交渉を進めてきたが、具体的な方向性を示すことができず、協議が難航。今月1日から、県が補償を検討する意向を関係機関に伝えたという。

 その結果、各地域で交渉が進展をみせ、1日時点で発熱外来の設置準備が完了していたのは3カ所だけだったのが、6日までに15カ所で完了した。

 ただ、県は県内で医療を分担する10地域の「二次医療圏」で、合計36カ所の発熱外来を設置する計画だったが、現状で準備が完了しているのは半分にも満たないのが現実。国内での感染事例の発生が現実味を帯びるなか、対応が急がれている。

 県保健予防課は「県による補償を示せたことで、設置準備の協議が進んだのは事実。ただ、国による補償制度創設については、今後も強く要望を続けていきたい」としている。

医師や病院のスタッフが感染した場合、今の行動指針だと治療行為に当たれなくなってしまうのではないか?であるとすれば、何の保障も得られない前面休診に追い込まれるよりは当面は診療拒否で凌いで、診療拒否は医師法違反だと脅されても告発されなければ病院にとって実害はない、という判断も現実的な選択肢になってしまう。治療にあたる医療スタッフに対する保障は発熱外来を維持するためにも重要だ。・・・こういう目的で”基金”を作ろうというセンスはないのかな。補正予算ではいろいろやっているようだが。

群馬県はこのほかにも子供の医療費を県が負担する取組みなど、医療方面では優れた施策を行なっている。スタッフが優秀なのか知事が優秀なのか、いずれにしてもすばらしい英断だ。

人気blogランキングへ←このエントリーの情報はお役に立ちましたか?

クリックしていただけると筆者が喜びます!

 

2009年5月15日 (金)

東奔西走

このところ、毎週のようにあちこちに出かけている。

4月 25日 倉敷(私用、師匠の退職記念行事)
5月1-3日 稚内(私用、入院中の父の見舞)
5月  8日 大阪府(出張)
5月14,15日 徳島県(出張)

少々疲れた。

人気blogランキングへ←このエントリーの情報はお役に立ちましたか?

クリックしていただけると筆者が喜びます!


2009年5月13日 (水)

指導教官の責任とは?

博士号を取得して就職しても色々な上司に出会う。うまく折合いが付くこともあれば、不幸にして衝突することもある。誰しも、様々な人間関係の泥沼の中で生きていかなければならない現実を抱えているのだが、指導する側もされる側も、もう少し何とかできなかったものだろうか。

東北大大学院生が自殺…博士論文、2年連続受け取り拒否され

 東北大は13日、大学院理学研究科で教員の指導に過失があり、担当していた大学院生の自殺につながったとする内部調査結果を公表した。

 大学院生は2年続けての教員による博士論文の受け取り拒否などで修了できなかった。同大は懲戒委員会で処分を検討しているが、この教員は今月に入り辞職した。

 同大によると、自殺したのは理学研究科で生物関係の研究をしていた博士課程の男性大学院生(当時29歳)。大学院生は昨年8月、研究のデータ集め をした滋賀県内で自殺した。遺書には指導法への不満などはなかったが、翌月、両親から男性准教授(52)の指導に問題があったのではとの指摘を受け、内部 調査委員会を設置していた。

 大学院生は2007年12月、博士論文の草稿を事前提出したが、准教授は大学院生と十分に議論せず受け取りを拒否。准教授は06年11月ごろにも、論文提出を延期するように指示しており、大学院生は2年連続で博士号の取得に失敗した。

 調査は、残された論文草稿やデータを見る限り、大学院生の研究は博士論文の審査水準に到達していたと判断。准教授が、具体的な指示を与えず、適切 な指導を行わなかった結果、大学院生は学位取得や将来に希望を抱けなくなり、自殺に至ったと結論づけた。准教授は、08年1月に科学誌から大学院生の論文 が掲載を拒否され、書き直しが必要になった際も、適切な指導を行わなかった。准教授は調査に「論文提出の直前までデータ整理に追われており、時間がかかる と判断したが、指導に不適切な点があった」と話したという。

(2009年5月13日12時38分  読売新聞)
しかし、学位授与式が3月であれば、2007年12月時点での草稿の受取拒否というのは、どういうことだったのだろう。コース・ドクターであれば、指導教官がこの時期に初めて草稿を受け取るというのはあまり普通ではない気がする。しかも、受取拒否とは。受け取って目を通して、不備があればとことん指摘する、ブラッシュアップすればもっと良くなるのであれば手助けをするのが指導教官の責任ではないだろうか。

また、院生と指導教官の間の日常的なコミュニケーションが欠けていたのではないだろうか。指導教官の側からすると、年度末には仕事が溜まってくるので論文の草稿は書けた順に提出してくれと常々言っておくものだろうし。

「准教授は、08年1月に科学誌から大学院生の論文が掲載を拒否され、書き直しが必要になった際も、適切な指導を行わなかった。」というのは、もし准教授がCorrespondence authorであれば、指導の責任を負うのが普通だ。しかし、もし単に共著者の一人でその論文にあまり重要な貢献をしていないというのであれば、指導する義務があるとまではいえない。新聞の記事ではそこまでは分からないが。

仕事上の問題で死んでも死なれても、結局だれも幸せにはならない。あえてきつい言い方をすれば、博士号をとるために命を懸けるというのはナンセンスだ。博士号を取るよりもも正規雇用されるの方が難しいのだ。

その昔、寺田寅彦先生もこう言っておられる。

「学位に関するあらゆる不祥事を無くする唯一の方法は、惜しまず遠慮なく学位を授与することである。一日何人以上はいけないなどという理窟はどこにもない。 百人でも千人でも相当なものであれば残らず博士にすればよい。それほど目出度いことはないのである。そうすれば学位に対する世間の迷信も自然に消滅すると 同時に学位というものの本当の価値が却って正常に認識されるであろうと思われる。」

また、こうも言っておられる。

博士がえらいものであったのは何十年前の話である。弊衣破帽の学生さんが、学士の免状を貰った日に馬車が迎えに来た時代の灰色の昔の夢物語に過ぎない。そのお伽噺<のような時代が今日までつづいているという錯覚がすべての間違いの舞台の旋転する軸となっている。社会の先覚者をもって任じているはずの新聞雑誌の編輯者達 がどうして今日唯今でもまだ学位濫授を問題にし、売買事件などを重大問題であるかのごとく取扱うかがちょっと不思議に思われるのである。学位記というものは、云わば商売志願の若者が三年か五年の間ある商店で実務の習練を無事に勤め上げたという考査状と同等なものに過ぎない。学者の仕事は、それに終るのでは なくて、実はそれから始まるのである。学位を取った日から勉強をやめてしまうような現金な学者が幾人かはあるとしても、それは大局の上から見ればそう重大な問題ではないであろう。少なくもその日まで勉強したことはまるで何もしなかったよりはやはりそれだけの貢献にはなっており、その日から止めたことは結局 その人自身の損失に過ぎないであろう。」

この文章が発表されたのは昭和9年(1934年)。今から75年も前から既に「博士がえらいものであったのは何十年前の話」だったのだ。当時から博士号はそれほどの値打ちがあるものではなかったのだ。ましてや、今日、命を懸けてはいけないものだと思う。

とある無名の先達曰、

「博士号なんて足の裏にくっついた飯粒みたいなもんだ。取らないと気色が悪いが、取ったからといって食えない。」

・・・だそうだ。

人気blogランキングへ

2009年5月12日 (火)

フランス人は良く眠るらしい

OECDの"Society at  Glance 2009"という報告書が提出された。加盟国の国民のライフスタイルを様々な統計で明らかにしようというものだ。

例えば、食事にかける時間は一日何分くらい?とか、趣味に費やす時間はどのくらい?有給休暇は何日とっているか?等などの統計が並んでいる。

この報告書によると、日本人の睡眠時間は一日あたり約470分(7時間50分)で、OECD加盟国中では韓国に次いで短い。ちなみに、最も長いのはフランスで約530分(8時間50分)である。

フランス人はそんなに寝てるのかぁ・・・日曜日くらいかな、8時間以上眠ってられるのは。すいえば、日本には”フランスベッド”という会社があったっけ。睡眠といえばフランスなのかな?

なお、日本に関する日本語の報告書はこちら。日本人の寿命はOECD加盟国の中では最も長いとか、犯罪はスペインに次いで少ないとか、乳児死亡率は最も低いとか、肥満率は韓国に次いで低い等など。

国民の寿命が長く、なおかつ肥満も少ない。ということは、肥満に由来する疾病で死亡するリスクは比較的低いはずなのだが、わが国ではどういう訳か”メタボ狩り”が流行っている。

幸福に暮らすにはもっと他にやることは無いものだろうか。そうそう、日本人が広い意味でのレジャーに費やす時間は一日の21.3%と、メキシコの15.8%に次いで二番目に少ない。無趣味な人が多いのか。

人気blogランキングへ←このエントリーの情報はお役に立ちましたか?

クリックしていただけると筆者が喜びます!

2009年5月11日 (月)

あ、その引用文献は・・・

嫁さんの書いた某機関紙の記事に「イネの場合、ジャポニカのウルチ性ではアミロースが一六〜二〇%含まれている1)」とあった。引用文献は、Nakagahra et al. (1986)。

・・・えーと、アジア産のジャポニカの遺伝資源を幅広くサーベイした論文で、その論文の前提となる材料に関しては、16-20%のアミロース含量だったというのは間違いではない。しかし、材料の範囲を限定していない状況で、「イネの場合、ジャポニカのウルチ性ではアミロースが一六〜二〇%含まれている」という言明は正しくない。

最近の日本の良食味米品種では、12-14%の品種も珍しくないのだから。・・・そう教えてあげたら逆ギレされた。「あなたが教えてくれた論文じゃない!」だって。

そりゃ、教えてあげましたとも。イネのアミロース含量を網羅的に調べた論文はないか、というから。OECDのイネの品質に関するコンセンサスドキュメントで引用されている論文だから、その材料の範囲では間違いのないデータなんだけどね、どういう文脈で引用するのかによって意味合いが変わってくるのは当たり前だ。まして、ジャポニカ全体についてなんて全数調査でもしなければ何も言えるはずはない。引用の仕方には十分気をつけよう。

人気blogランキングへ←このエントリーの情報はお役に立ちましたか?

クリックしていただけると筆者が喜びます!

2009年5月 7日 (木)

新型インフルエンザの水際阻止は、まだ必要か?

 このところ、国際空港など水際の新型インフルエンザの検疫が重点的に行なわれている。

 しかし、今回の新型インフルエンザは従来の季節性のインフルエンザと比較しても、さほど凶悪なウイルスではないことが徐々に分かってきた。WHOでは、これまでのH5N1の新型インフルエンザ対策の基準に沿って、多国間での大規模感染を意味するフェーズ6の警報を検討し始めている。

 確かに、従来の基準に従えば、多国間での大規模感染があれば、WHOはフェーズ6の警報を出すことになるのだが、はたして今回の新型インフルエンザは、本当に警戒に値するものなのだろうか?私は、感染症の専門家ではないがちょっと疑問に思い始めている。

 世界各国での新型インフルエンザの感染者は2,000人超、死者44人(5/7現在)。一方、共同通信の記事によれば「季節性だけで年間25万-50万人が死亡する」とのことなので、これと比較して今回の新型インフルエンザによる死亡のリスクはそう高くないかもしれない。

 死亡というのは極端な判断基準だが、そこまで行かなくても、感染のしやすさと症状の重篤さとについても考えてみよう。

 もともと、季節性のインフルエンザは人口に占めるワクチンの接種率が低いこともあり、医療行為による感染予防は高齢者や乳幼児などの高リスクグループを除いてそれほど効果を上げていないのではないだろうか。そういう意味では、ワクチン接種で感染後の死亡リスクの低減が期待される季節性インフルエンザと、未だワクチンが開発されていない今回の新型インフルエンザとの間では、感染予防の可能性と言う観点では実際のところあまり大きな違いはないように思える。

 次に、新型インフルエンザの感染後の重症化のリスクだが、余病を持たない人が適切な治療を受けた場合は、4日ほどの高熱の後は快方に向かうとされており、これも季節性のインフルエンザとそう違わない。感染後48時間以内であればタミフルも効きそうな按配であるし。発熱と細菌による呼吸器への二次感染をコントロールしておけば、あとは十分な水分、栄養、休養で何とかなる。・・・というか、結局は飲んで食って寝るしかない。その点、新型も季節性も大差ない。

 さて、そうなると、実際のところどれだけ感染が拡大しているかを比べてみたくなる。今現在の日本における季節性インフルエンザの流行の状態だが、国立感染症研究所の集計によると、

2009年第16週のインフルエンザの全国レベルでの定点当たり報告数は4.10(報告数19,515)となり、前週より微増した。都道府県別では秋田県 (15.3)、長野県(10.8)、福井県(10.5)、福島県(9.8)、鹿児島県(9.0)、岩手県(8.9)の順となっている。警報レベルを超えて いる保健所地域は17箇所(11道県)と減少したが、注意報レベルのみを超えている保健所地域は39箇所(15都道県)と増加した。
 2008年第36週以降これまでに、インフルエンザウイルスの検出はAH1(Aソ連)型3,206件、AH3(A香港)型1,503件、B型1,342件が報告されている。

 ・・・実は、1週間あたりの感染報告件数で見ても、今年は、こっちの方が感染のリスクははるかに高い。その辺を感染源が歩いているのだから当然か。

 アメリカやメキシコなど、既に国内での新型インフルエンザの感染が拡大している国でも、域内での新型インフルエンザの感染者は4月25日以降の10日程で2,000人弱。日本の季節性インフルエンザの発生件数は、4月13-19日の1週間だけで、報告数が19,515件。人数ではもっと多いだろう。国の全人口を母数にした割合でみても、日本の季節性インフルエンザの方がはるかに流行しているといえる。

  新型インフルエンザの国内での感染拡大のリスクと、検疫に関わる人的なコスト、旅行者の被る不利益を勘案するといずれかの時点で、バランスが取れたときに水際対策は止めることになる。今回の新型インフルエンザについては、毒性や感染力に関するデータが徐々に出揃ってきているところなので、今の時点で、水際対策を止めるべきとまでは言わないが、落ち着いて考えてみると仮に感染が拡大しても、さほど大事にはなりそうに無いウイルスの水際対策に力を入れ続けるよりも、国内での流行がまだ終息していない季節性のインフルエンザに対する対策の方が重要ではないか?(政治的にはアピールしないけどね。)発熱外来などの対策は、そういう意味では季節性インフルエンザにも有効なので良いことだが。

 ニュース等では、うがい、手洗いの方法や、みだりに目や鼻に触らないなど基本的なインフルエンザ対策の知識を繰り返し伝えている。これも結構なことだ。だが、2009年17,18週くらいになっても定点当たりの感染報告数が減らない様であれば、折角の啓蒙活動の効果も疑わしくなる。さて、うがい手洗い励行の効果は如何に?今後数週間の感染動態から目が離せない。

人気blogランキングへ←このエントリーの情報はお役に立ちましたか?

クリックしていただけると筆者が喜びます!

2009年5月 4日 (月)

メキシコ保健関係者は非難の矛先を変えようとしているのか?

誰が誰を批判しているのか?それが問題だ。朝日新聞より。

WHO、察知から対策本部設置に2週間 初動遅れ批判も

2009年5月4日2時8分

 新型の豚インフルエンザが最初に発生したとされるメキシコの保健関係者から、世界保健機関(WHO)に対して「初動の遅れ」を批判する声が上がり、 WHOは2日、記者会見で経緯を説明した。メキシコから異変を伝えられたWHOが対策本部をつくったのは2週間後だった。双方の主張には食い違いが目立ち、当事国であるメキシコへの批判も消えない。様々な情報が飛び交う中で、感染の被害は深刻さを増していった。

 WHOの対応の遅れを指摘したのはメキシコの国立疫学監視・疾患統制研究所のレサナ所長。AP通信によると、同所長は4月16日、季節はずれのインフルエンザや肺炎が多発していることを、WHOの下部組織「汎米保健機関」(PAHO)に報告した。しかし、WHOは8日後の24日に事態を公表するまで何ら対応しなかった、という。レサナ所長は「WHOはもっとすみやかであるべきだった」と批判し、WHOの危機対応について調査を求めた。

 これに対しWHOは今月2日、感染症警戒システム担当部門のマイケル・ライアン部長が会見で経緯を説明した。

 部長によると、メキシコの異変情報は4月11日に専門家から寄せられた。17日、WHOはメキシコ当局に正式に照会したが、回答は「重症肺炎例」と感染の広がりを打ち消す内容だった。

 その後、WHOは米カリフォルニア州の事例について米疾病対策センター(CDC)やメキシコと情報交換。その過程でメキシコは22日、WHOに「季節はずれのインフルエンザ流行への懸念」を報告。それが翌日の報告で「死亡者12人を含む47の重症例」に転じるなど、情報収集面での混乱ぶりがうかがえる。

 WHOが対策本部を立ち上げたのは25日。メキシコの検体を分析したカナダから、新型ウイルスを確認したと連絡がきた日だった。

 CDCの報告書によると、メキシコで最初の患者が発症したとされるのは3月17日。政府は4月17日に全国で発生状況を調べ始め、重い呼吸器病の全症例を報告するよう病院に要請した。18日には保健省の担当者らが各地を回って感染拡大を確認したが、関連部局に情報が速やかに伝わっていたか明らかでない。

 メキシコ政府はレサナ所長に距離を置き、WHOへの批判を避けている。同国の初動対応によっては、北米などへの感染拡大をもっと抑えられたという指摘があり、矛先が自身に向けられるのを恐れているとの見方がある。

 一連の経緯について、インフルエンザに詳しい外岡(とのおか)立人・元北海道小樽市保健所長は「WHOの役割は世界の感染症の早期発見にある。結 果的に感染が広がってからしか動けておらず、遅い」と指摘。一方、WHO勤務の経験がある押谷仁・東北大教授は「今回のようなケースは封じ込めが難しい。軽症例が多く、通常の季節性インフルエンザと見分けがつかないうちに感染が広がるためだ。1週間程度、確認が早まったとしても、結果は大きく変わらなかっただろう」とみる。

(ロサンゼルス=土佐茂生、ジュネーブ=井田香奈子)

この記事から分かること。

[メキシコ側の主張]

  • 4/16、季節はずれのインフルエンザや肺炎が多発していることを、WHOの下部組織「汎米保健機関」(PAHO)に報告。
  • 4/24、WHOが事態を公表。
[WHOの説明]
  • 4/11、メキシコ国内の(?)専門家が”異変情報”をWHO(?)に連絡。
  • 4/17、WHOはメキシコ当局に正式に照会したが、回答は「重症肺炎例」と感染の広がりを打ち消す内容。
  • 4/22、メキシコは、WHOに「季節はずれのインフルエンザ流行への懸念」を報告。
  • 4/23、メキシコ報告で「死亡者12人を含む47の重症例」。
  • 4/25、WHOが対策本部を立ち上げ。
[CDCの報告書]
  • 3/17、最初の患者。(ただし、記事では何の患者か分からない)
  • 4/17、メキシコ政府、全国で発生状況を調べ始め、重い呼吸器病の全症例を報告するよう病院に要請。
  • 4/18、保健省の担当者らが各地を回って感染拡大を確認。
[メキシコ保健当局とメキシコ国立疫学監視・疾患統制研究所所長の関係]
  • メキシコ政府はレサナ所長に距離を置き、WHOへの批判を避けている。
CDCの報告書を信頼するならば、初動の遅れは最初の患者の把握から一月近く状況を把握できなかったメキシコ保健当局にあるように思う。

WHOは国際機関として国境を越えた感染症の拡大を防ぐ責任を負っている。しかし、世界各国に直属の検査機関を持っているわけではないので、各地での感染症の発生状況の把握は、それぞれの国において国内法で国民の健康に対して責任を負うことが定められている保健当局の肩にかかっている。そのルートからの報告がなければWHOと言えども状況を把握できないだろう。また、メキシコ国内での感染症のコントロールの責任はどう考えてもメキシコ保健当局にある。隣国である合衆国保健当局がWHOの初動の遅れを指摘するのなら話は分かるのだが。

4月25日頃からの日本の新聞各紙の報道ではたしか、メキシコ保健当局の不正確な発表に基づきメキシコ国内での新型インフルエンザ(当初は”豚インフルエンザ”と呼ばれていた)感染者は1,000人以上、死者200人以上と伝えられていた。その後、メキシコ保健当局が事実確認をした結果、5/2時点では感染者433人、死者16人(時事通信による)となっている。

このような経過から、メキシコ保健当局には正確に状況を認識する能力はないと推定される。また、カナダ保健当局にウイルス検体を送付して調査を依頼していることから、自国内で流行している新型インフルエンザ様の感染症の原因ウイルスを特定する能力にも疑念がある。そのことは、おそらくメキシコ政府自身が最もよく認識していることだろう。そこで、”メキシコ政府はレサナ所長に距離を置き、WHOへの批判を避けている。”という姿勢になったと考えられる。

この記事でも、本文の事実関係を見ると、4/11にメキシコの”専門家”からWHOに連絡が入ったという経緯も通常の連絡体制に則ったものとは考えにくいし、4/16以降にメキシコ保健当局が国内でどのような対策を執ったのかも示されていない。挙句、保健当局の不正確な患者数の公表・・・。この記述で初動が遅れた非難の矛先をWHOに向けるのは如何にも的外れだろう。記事は一連の経緯の見方において、関係当局間で混乱があることを伝えているのみなのだが、それと比較して、この見出しのつけ方はずいぶん偏っている。

私には、メキシコ国内での感染症の監視に責任を負う当局者が仕事をしくじって、非難の矛先を変えようとしている悪あがきに朝日新聞がまんまと乗せられてしまっているように見えるのだが・・・。

# しかし、メキシコ当局はなぜCDCではなくカナダ保健当局にウイルス検体を送ったのだろうか。近隣諸国で最も検査体制が整っているのは合衆国だと思うのだが、どんな事情があったのだろうか。

ちなみに、韓国は国内の感染の疑いのある患者の検体を合衆国CDCで調べてもらっている。ニュース映像をみると、空港では耳穴式赤外線体温計で乗客一人一人の体温をチェックしていた。そこそこ正確ではあるのだけれど、これは新型インフルエンザ対策の行動計画ができていなくて、サーモグラフィーを準備できていないということではないだろうか。

# メキシコなどの新型インフルエンザ発生国からインチョン空港乗り換えで帰国する旅行者は居ないのかな。ちょっと気になる。

人気blogランキングへ←このエントリーの情報はお役に立ちましたか?

クリックしていただけると筆者が喜びます!

2009年5月 1日 (金)

稚内にて

日中の最高気温が8度ほど。私のホームグラウンドのつくばは新緑に向かいつつあるが、ここ稚内は日陰の沢筋にはまだ薄汚れた雪が残っている。スタッドレスタイヤを付けているのか道行く車のロードノイズもバタバタと騒々しい。

久々に郷里に帰ってきたのは入院中の父の見舞いのためだ。脳梗塞で、今回で6度目の入院となる。かつては二度発作を起こすと助からないと言われたものだが医療技術の進歩はめざましい。また、この北辺の地に脳外科の病院があることも大きく影響していることは間違いない。もし、15年前に同じ発作を起こしていたら助かったかどうかわからない。

父は左半身の運動神経も感覚神経も麻痺している。脳の右側に血行障害を起こして機能が失われている。嚥下もままならないし、痰を吐き出すのも一苦労だが、二週間前の入院直後よりは幾分良くなってきているらしいので、全面的・恒久的な機能喪失ではないようだ。

左目が見えていないので遠近感がつかめない。目の前のティッシュを取り損なっている。右手だけで食事をするのだが、お膳の左端が視野の外に出てしまうのか、ときおり視野の外にあると思しきスプーンを手探りしている。

生来、せっかちな性格なので、食べ物を矢継ぎ早に口に運ぼうとする。とろみを付けた魚の煮物をスプーンで掬っておかゆの椀に入れ、おかゆと一緒に食べようとする。たしかに白粥は味気ない。しかし、順番に食べないと咽てしまう。病気をしてもせっかちは変わらないらしい。

意識はほぼ清明なので、ホワイドボードをつかって筆談ができる。しかし、父は自由になる右手で私の支えたホワイトボードに非常に深みのある書体の文字を書く。・・・つまり、読めない。弟にメールで読みにくいのだがどうしようと聞いたら、一文字ずつ確認しろ・・・もっともな話だ。そうしよう。

首が痛いので軟膏を塗ってくれとか、ナースを呼んでくれとか、ナースコールのボタンをとってくれなど、もっともな要求だ。が、しまいには”晩飯はミナミ(父の行きつけの鮨屋)へ行け”?いやいや、私は入院中の父親の見舞いに来て一人で鮨屋に入るほどの道楽者ではない。”ホテルは全日空ホテルか?株主優待で安く泊まれるだろ?”いやいや、病人にそんな心配をしてもらわんでも結構です。

夕刻、弟夫婦がやってきてシャツとパジャマを着替えさせてくれた。

帰り際、口が利けない父を眼前に、私が”口が利けないのを承知で、反論できないのをいいことに、親に意見するわけではないけれど、もう無茶はしないでくれ”といったら、父は自由な右側半分で声を出せずに笑っていた。

自由にならない肉体を歯がゆく思いながら生きてゆくのは過酷なことだ。それは、脳梗塞でもALSでも、また誰にとっても同じことだ。そうなのだが、それが身内に起こると悲しくもあり、よくわからない悔しさもある。

しかし、最も、悲しみ、苦しみ、悔しく思っているのは、おそらく倒れた本人なのだ。何か、回復に向けた希望につながるものはないものだろうか。大したことはしてやれないのはわかっているのだが。

人気blogランキングへ←このエントリーの情報はお役に立ちましたか?

クリックしていただけると筆者が喜びます!

« 2009年4月 | トップページ | 2009年6月 »

twitter

  • Bernard_Domon

Ranking

  • にほんブログ村 科学ブログ 生物学・生物科学へ
    日本ブログ村
無料ブログはココログ