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2009年4月19日 (日)

ジャーナリズムと科学

 科学が文学の世界に接触するときに必然にあまりおもしろからぬしろからぬ意味でのいわゆるジャーナリズムとの交渉が起こる。
 ジャーナリズムとはその語の示すとおり、その日その日の目的のために原稿を書いて、その時々の新聞雑誌の記事を作ることである。それ自身に別段悪い意味はないはずであるが、この定義の中にはすでにいろいろな危険を包んでいる。浅薄、軽率、不正確、無責任というようなものがおのずから付きまといやすい。それからまた読者の一時的の興味のために、すべての永久的なものが犠牲にされやすい。それからまた題材が時の流行に支配されるために、取材の範囲がせばめられ、同時にその題材と他の全体との関係が見失われやすい。
 そういうジャーナリズムの弊に陥ったような通俗科学記事のみならず、科学的論文と銘打ったものさえ決して少なくはないのである。多くの通俗雑誌や学会の記事の中でもそういうものを拾い出せとならば拾い出すことははなはだ容易であると思われる。
 しかし一方でまた、たとえ日刊新聞や月刊大衆雑誌に掲載されたとしても、そういう弊に陥ることなくして、永久的な読み物としての価値を有するものもまた決して不可能ではないのである。たとえば前にあげたわが国の諸学者の随筆の中の多くのものがそれである。そういう永久的なものと、悪い意味でのジャーナリスチックなものとの区別は決してむつかしくはない。要するに読んだ後に、読まない前よりいくらか利口になるかならないかというだけのことである。そうして二度三度とちがった時に読み返してみるごとに新しき何物かを発見するかしないかである。つまり新聞雑誌には書かない最も悪いジャーナリストもあれば、新聞雑誌に書いてもジャーナリズムの弊には完全に免疫された人もありうるのである。この事に関する誤解が往々正常なる科学の普及を妨害しているように見える。これは惜しむべきことである。

寺田寅彦 著、科学と文学より「ジャーナリズムと科学」、昭和8年9月 世界文学講座 -テキストのオリジナルはこちら(青空文庫)-

 ええ、私が言ったんじゃありません。ジャーナリズムに「浅薄、軽率、不正確、無責任というようなものがおのずから付きまといやすい。」なんて。日本のサイエンス・コミュニケーションの草分けの一人、寺田寅彦 博士がそう書いていたのです。

 この文章が書かれた時代、昭和8年ごろジャーナリズムといえば新聞や週刊誌、あるいはラジオやニュース映画くらいだった。一応、あのNatureもJournalではあるし、昭和8年には既にあったのだが、寺田博士にとって、これはいわゆるJournalismとは無関係であったらしい。

 上記のコラムは、畢竟、科学的記事がジャーナリズム的悪弊に陥るかどうかは、作品が発表される場(新聞・雑誌)によって決定されるものではなく、作品そのものが読者自身にとっての新しい発見をもたらすか否かにかかっている、と伝えている。

 科学者が書き手の場合は現在でもその考え方は通じるだろう。社会への伝達媒体の種類が、新聞・週刊誌だけでなく、テレビやインターネットに拡大した今日においても、重要なのはコンテンツであって発表の場ではないという理屈は良く分かる。

 しかし、読み物としての価値判断の基準を、「要するに読んだ後に、読まない前よりいくらか利口になるかならないかというだけのことである。」と、全面的に読者に投げてしまうのはあまりいただけない。なにしろ、広く社会に向けて発信された情報の受け手は千差万別だ。生徒、学生、会社員、教職員、研究者、役人、政治家、医者に看護士、隠居に僧侶、漁師に農家、建設業、製造業、サービス業・・・。その際に、読んだ誰もが「利口になれる」ような情報発信はなかなかに難しい。

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だいぶ良くなったが今だ、頭痛と発熱が完治せず。

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