固体発酵自体は新しい技術ではない
エイプリル・フールだが脳が疲労していてジョークの一つも思いつかないので、真面目なコメントを。
この記事はちょっとポイントを外している・・・
日刊工業新聞3/26より。
農環研、飼料イネ使いバイオ燃料作り出す新手法開発
農業環境技術研究所は、飼料イネなどからバイオエタノールを作り出す新製法「固体発酵法」を開発した。農地から刈り取ってきた飼料イネや食用イネ のわらに酵素と微生物を加え、貯蔵しておくだけで糖化・発酵まで進み、バイオエタノールができる。既存の方法に比べ加熱処理などが不要のため、コストや労 力が減らせ農村での普及が期待できる。27日から福岡市内で開く日本農芸化学会の大会で発表する。
新製法は、酒や漬物の製造で用いられる醸造技術と牛の飼料貯蔵で使われるノウハウをベースに確立した。セルロースやでんぷんを分解する酵素や乳酸菌と酵母の共生関係を利用することで、腐敗させることなくバイオエタノールの生産が可能となった。
実際に飼料用イネで試してみたところ、20日間の貯蔵・発酵により1トン当たり213リットルのバイオエタノールが得られた。
(掲載日 2009年03月26日)
こっちもどうかと。日本農業新聞より
稲わらバイオ前進 簡易生産技術を開発/農環研掲載日:09-03-27独立行政法人農業環境技術研究所(農環研、茨城県つくば市)は、飼料稲や稲わらなどのセルロース系バイオマス(生物由来資源)を原料に、従来よりも簡易な 方法でバイオエタノールを生産できる「固体発酵法」を開発した。酒の醸造技術や牧草サイレージをつくる時の乳酸発酵技術を応用し、エネルギー使用量を減ら した。エタノール生産後の残さは飼料として利用できる。福岡市で27日から始まる日本農芸化学会で発表する。
セルロース系バイオマスは食料と競合しないため、各国が第二世代のバイオ燃料として研究開発を進めている。
・・・(詳しくは日本農業新聞紙面をご覧ください)
これはおしい!農業協同組合新聞より。
日本古来の技術で稲わらからエタノール製造 -農環研
(独)農業環境技術研究所は、稲わらなどセルロース系バイオマスを収穫後、低水分のまま貯蔵、糖化・発酵させてバイオエタノールを製造する「固定発酵法」を開発、3月25日に公表した。
この方法は、お酒や漬け物など日本古来の醸造技術と牛の自給型飼料(サイレージ)の発酵貯蔵技術を応用したもの。セルロース系の材料からエタノールを製造するには、▽原料の貯蔵方法▽発酵阻害物質の発生抑制▽廃液処理などの課題があるが、「固定発酵法」では収穫後低水分のまま貯蔵しながら、同時に酵素や微生物の力で糖化・発酵させるのでこれらの課題が解決できるという。
セルロースやデンプンを分解する酵素、乳酸菌と酵母の自然な共生関係を利用した農業・醸造型バイオエタノール生産技術で、加熱処理工程が少ないため使用エネルギーを少なくすることもできる。
研究では飼料用イネでは20日間の貯蔵・発酵で213l/tで、この原料を用いた生産目標値(317l/t)の約7割の実績を得ることができた。発酵残さを飼料としても利用できる可能性もある。
この固体発酵法の開発によって、農村地域で生産される作物資源や未利用のまま排出されるバイオマスが付加価値の高いエタノールと飼料に変換され有効利用 することができる。バイオマス収穫地で資源をさまざまな用途に利用する資源循環型バイオマス利用システムへの活用が期待できるという。(2009.3.26)
オリジナルのプレスリリースはこちら。ちゃんと「セルロース系バイオマスから固体発酵で」という見出して、的確にポイントを押さえている。
ちなみに、水を加えないでアルコール発酵させる固体発酵法自体は、古代中国にもあったし、現在でも白酒の発酵プロセスに使われている。従って、「日本古来の技術」ではあるが、より正しくは東アジア古来の技術である。たとえば、月桂冠のホームページを参照。たしか、済民要術にも出ていた。
で、農業環境技術研究所の開発したプロセスの何が新しいかというと、発酵の基質が”セルロース系バイオマス”であるところ。固体発酵法によるアルコール発酵の基質は従来はデンプンであったが、新しく開発された方法では繊維質の植物体からアルコールが造れる。記事にあるように「飼料イネなどからバイオエタノールを作り出す」と書くと、デンプンリッチな種子を原料にアルコール発酵をさせるのと区別が付かない。折角、セルロース系だと断っているのに。
つまり、このプロセスを使って麦わらを発酵させれば格安の麦100%の第四のビールが造れるし(脱税はいけないなぁ)、野菜を使えば酒粕なしで奈良漬けが作れる・・・かも。
ともあれ、現状では事業ベースで発酵によってバイオマスからエタノールを取り出そうとする場合、アルコール事業法の許可事業にあたるので、農家レベルでのプラントの運用を視野に入れるのであれば、経産省に申請する必要があるだろう。
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