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2009年2月20日 (金)

不作為による危害に責任はないのか?

2011年にゴールデンライスをリリースする予定というレポートはこちら

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私は不勉強にしてヴァンダナ・シヴァという人物やその主張を良く知らない。

こちらの”Where Angels Fear To Send Trackbacks ”によれば、緑の革命への反対運動等を通じて有名になった”環境活動家”らしい。本人の著書を読めばよいのだろうが、私はもと育種家として、近代的な品種を攻撃する人物に間接的にせよ活動資金を供給する気にはなれないので、読むとしても図書館で借りて読むことになるだろう。

いずれにしても、品種そのものや育成技術と、それを社会に調和させるスキームとを混同して、多収品種そのものが貧困の原因になったとするような議論はいただけない。多収品種は近代的な営農スタイルの一つの構成要素に過ぎないし、その普及を止めたところで、それ以前と比べてだれも幸福にはなれない。

昨今の遺伝子組換え作物に対する反対運動を見ていると、具体的な危害に対する批判や、リスクに対する市民の恐れよりも、アンチ・テクノロジーという一種のイデオロギーを間接的な原動力にしているように思える。直接的な原動力はもちろんカネだろう。

反対の対象が何であれ、反対運動で生計を立てているプロフェッショナルの活動を純粋に金銭的な収支から見てみると良い。著名な活動家はどうやって生計を立てているだろうか?NPOなどの団体からのカンパや義援金に著書の印税、弁護士であれば訴訟の際に原告から支払われた弁護士費用もあるだろう。それが得られなければ、多くの時間を反対運動に費やすプロフェッショナルとしては生きていけない。

今年もISAAAのリポートが公表された。全世界の遺伝子組換え作物の作付面積は、昨年に引き続き、10%台の成長率を維持している。現実の農業生産に対して、遺伝子組換え作物に対する反対運動は、マスコミに露出して市民を惑わす以上の成果を挙げていないように思える。しかし、プロフェッショナルの活動家にとってもこれは好都合である。”仮想敵”が強大であるほど活動の意義は強調されるからだ。仮想敵は強大なほど良い。政府、モンサント、マイクロソフト、コカコーラなどの大企業、グローバリゼーション、地球温暖化、環境ホルモンにナノ粒子(ちょっと小さいか)、どれもなかなか手ごわそうだ。NPOがちょっと反対したくらいでめげてしまうような”仮想敵”が相手ではライフワークとして活動を継続できないのだから。

社会問題に対して百家争鳴の議論がある時、一方の極にプロフェッショナルの活動家が居れば、反対の極には何らかの研究者が専門家として存在する。つまり、ある意味では、我々のように技術開発を行なう分野の研究者のおかれている立場も、プロフェッショナルの活動家と相通じる点がある。それは、研究対象が解決しようとする問題が大きいほど研究の重要性を主張しやすい点だ。すぐに解決できる問題では研究が継続できないし、瑣末な問題では研究費がなかなかとれない。問題の重要性を社会や行政官にアピールして、長期的な取組みができるように説明することは、我々研究者にとっても重要だ。下世話な言い方をすれば、問題の解決が難しいほど長くメシの種になる。

しかし、プロフェッショナルの研究者とプロフェッショナルの活動家の間には決定的な違いがある。活動家はどこかに行って喋るか、本を書くだけでよいのだが、技術開発を行なう分野の研究者は最終的には問題を解決しなければならない宿命を負っていることだ。

本当にヴァンダナ・シヴァがゴールデンライスを批判する際に「そんなものはいらない。リンゴひとつ食べればビタミンは補えるもの」と言ったかどうかはわからない。リンゴでビタミンAを補給できないことは家庭科を学習した大抵の日本人知っていることだろう。全く黒影さんご指摘の通りだ。

単純な事実として、途上国では貧困から来るビタミンAの不足から、少なからぬ乳児が死亡し、人々が失明している(学齢前の子供の死亡率を23%押し上げているという推計もある)。WHOで取組んでいるビタミン欠乏に対する対策の筆頭がビタミンAであることからも、その重要性は伺える(たとえばこちら)。ブータンやネパールには国のビタミンA補給プログラムがあるというし、日本だって国民の栄養状態が悪かった時期には、給食で肝油が配られた時期がある。しかし、工業的に合成されたビタミンAを継続的に供給し続ける場合にさえも、それなりの社会的なコストがかかるのだ。

遺伝子組換えイネの良いところは、F1品種が主流のトウモロコシとは違って自家採取できることだ。ゴールデンライスの開発者は知的所有権を主張しないと言っている。もしそうであれば、ゴールデンライスが一般農家に普及すれば、工業的に生産されて供給されるビタミンAを部分的に代替することで供給コストを下げることができるし、場合によっては通常の米と同等のコストでビタミンAの所要量全量をまかなえる可能性だってある。

ヴァンダナ・シヴァが、途上国でビタミンA欠乏の影響を受けている2億5千4百万人の人々 の為にどんな対策をとっているのか私は知らない。しかし、もし本当に「そんなものはいらない。リンゴひとつ食べればビタミンは補えるもの」と言ったのであれば、彼女はビタミンA欠乏についてどれほどの知識を持っているのか非常に疑わしい。

そして、もし仮に、その心もとない根拠と、今だ実証されていない遺伝子組換え作物のリスクを盾にゴールデンライスの開発に水を注している一方で、ビタミンA供給プログラムを積極的に支援していないのであれば、実際にビタミンA欠乏に苦しむ人々に対して、不作為による危害を加えているのだということを知るべきだ。仮想的な未だ発生していないリスクと、現実に発生している危害に対する重み付けのバランスが著しく不適切なのだと。

# Golde riceの開発で寄付金を募ってないのだろうか。探してみよう。そして、定額給付金を寄付しよう・・・ま、政府の趣旨には沿わないが、途上国の支援にはなるだろう。

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> Golde riceの開発で寄付金・・・

もし分ったらブログ上で是非、公開してくださいまし・・・(_ _)

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 Domon blog -Formerly known as Dog year's blues-: 不作為による危害に責任はないのか?という記事からヴァンダナ・シヴァ氏を紹介した拙稿にリンクを付けていただいたようです。  今年2月の記事で、... [続きを読む]

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