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2009年1月14日 (水)

そんなに簡単に品種改良に応用はできない

植物の葉緑体の分裂と核、細胞の分裂はどうにかして同期して行われている。細胞分裂の速度にオルガネラの分裂が追いつかないと言う現象は実際には起こっていないのだが、なぜそれが起こらないのかは謎だった。

酵母などでは細胞周期の制御に関する研究がかなり進んでいるのだが、植物では核、葉緑体、ミトコンドリアの三角関係があって話がややこしくなっていた。

1/11の読売新聞より。

葉緑体が細胞増殖制御 千葉大グループ解明
品種改良など応用期待

 植物細胞の中で、これまで細胞核に活動を支配されているとみられていた小器官の葉緑体が、細胞が増殖する過程において、逆に細胞核のDNA(ゲノム)複製をコントロールしていることを、田中寛・千葉大大学院園芸学研究科教授(分子生物学)らのグループが突き止めた。細胞核が他の小器官を一方的に支配しているとする定説を覆すもので、近く米国科学アカデミー紀要の電子版に論文が公開される。

 バクテリアなどを除く動物や植物、菌類は、細胞の中に核を持つ真核細胞生物とされ、植物の場合、光合成を行う葉緑体と、酸素呼吸を行うミトコンドリアは、バクテリアだったそれぞれが進化の過程で真核細胞に入り込み、核に支配されたとみられていた。

 田中教授によると、研究は、シゾンという細胞核と葉緑体、ミトコンドリアを各1個ずつしか持たない単細胞藻類を用いて行われた。小器官はそれぞれがDNAを持っており、シゾンの増殖過程では、光を当てることでそれぞれDNAの複製が行われるが、葉緑体やミトコンドリアのDNA複製を止める薬剤を加えると、細胞核もDNA複製が起きなかった。

 一方、DNA複製が起きない暗い状態で、葉緑体がDNAを複製する際に放出するテトラピロール類と呼ばれる物質を与えると、細胞核ではDNA複製が起き始めた。

 このことから、葉緑体がDNAを複製する際に信号となる物質を放出し、細胞核のDNA複製を促していることが判明したという。

 田中教授らは、寄生体(パラサイト)が宿主に命令しているようだとして、この信号を「パラサイト・シグナル」と命名した。

 より高等な種子植物であるタバコでも、同様な仕組みで細胞増殖していることを確認、植物全体で同様であると推測できるという。

 田中教授は「植物の増殖制御を通じて品種改良や、農薬、成長促進剤の開発にも生かせるのではないか」としている。
(2009年1月11日  読売新聞)

千葉大学のプレスリリースはこちら。オリジナルの論文はこちら(Kobayashi et al. 2009)。
植物科学関係の記事は、とかく「品種改良など応用期待」と書かれがち。「品種改良など応用期待薄」とわざわざ書かれるよりは良いが、単細胞藻類のテトラピロール・シグナルが核の分裂にGOサインを出すことがようやく分かり始めたところで応用の話をするのはいかにも気が早い。

核の分裂を進める最初の(?)シグナルを捕まえたと言う点では、確かに一歩前進だ。
しかし、高等植物でも実際に同じような効き方をしているのかどうか、もう少し議論の余地がある様に思う。BY-2細胞のように同調できる系だからこそ見えてきた現象なのかも知れないが、核のチェックポイントの解除がどのように進むのか明らかにして行くには、もう少し精密な実験が必要だろう。

話は変わって、tetrapyrroleのシグナル伝達についてはこういう論文もある。

Mochizuki, N. et al. The steady-state level of Mg-protoporphyrin IX is not a determinant of plastid-to-nucleus signaling in Arabidopsis. Proc Natl Acad Sci U S A 105, 15184-9(2008).  

葉緑体と細胞の核の間の信号のやりとりは核の分裂に関わるものだけでなく、葉緑体を形作っている核遺伝子にコードされた多くのタンパク質の合成の制御に関わる信号も含まれている。こちらは、(おそらく、分裂していない組織を中心に据えて)葉緑体の tetrepyrrole signalと遺伝子発現との関連を考えている。Mg-protoporphyrin (MgProto)はtetrapyrroleの中間産物とされている。上記の論文ではアラビドプシスの細胞内のMgProtoのレベルと、葉緑体で機能するタンパク質をコードする核遺伝子(Lhcb1等)の発現レベルの間には相関がないことを示している。

分裂組織の個々の細胞の分裂と、植物体レベルで見た転写産物の蓄積量とでは、精度が異なるのでKobayasiらの研究と単純な比較はできないが、この論文ではカロチノイド合成阻害剤であるNorflurazon(NF)を添加して内生のProto, MgProto, MgProtoMeの含有量を低下させた場合にはLhcb1等の発現レベルは低下するのだが、内生のMgProtoのレベルが低下した突然変異体ではそのような相関は見られていないことを示している。

植物の個体では分裂している部分としていない部分が分かれており、植物体でのMgProtoの定常状態が、分裂組織で分裂している個々の細胞内でのMgProtoの量を反映していない可能性はある。

高等植物では、分裂する細胞では葉緑体からのtetrapyrroleが細胞分裂を促進し、分裂していない細胞では葉緑体から核に対してタンパク質を合成させるためのシグナルは他の物質が担っている、と考えた方が良いのだろう。

---

三角関係かと思われていた植物の細胞周期の制御は、実は葉緑体さんと核くんの蜜月時代らしい(というか、もはや葉緑体のカカア天下?)。今のところミトコンドリアさんが寂しく蚊帳の外で泣いている様だが、さてどう反撃に出るか。それとも、酵母や動物細胞と同じようにミトコンドリアはひたすら従属?

# ちなみに葉緑体とミトコンドリアは母性遺伝するので女性扱いです。

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