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2009年1月の記事

2009年1月29日 (木)

フグ調理の免許制度がないのが問題なのか?

ちと妙なニュースを見かけたのでメモ。1/28 読売新聞より。

なじみ薄いフグ、東北6県に規制条例なし…山形で7人中毒

 山形県鶴岡市の飲食店でフグの白子(精巣)を食べた7人が意識障害になるなどした中毒事故で、店長(65)は白子料理を作ったのは初めてだった。

 フグに関する知識もほとんどなかったという。

 26日夜に中毒が起きた「鮮魚料理きぶんや」は、地元の人によると「魚料理がおいしい」と評判で繁盛していた。県警の調べに対し、店長は白子を出した理由を「常連客で以前にフグの空揚げを出したことがあり、同じ料理だと申し訳ないと思った」などと話しているという。

 さらに、「トラフグ以外の白子に毒はないと思っていた」と打ち明け、捜査員を驚かせた。実際は逆で、トラフグの白子には毒がなく、今回出されたヒガンフグの白子には毒がある。

 フグの毒に詳しい東京医療保健大の野口玉雄教授は「フグ毒の正体はテトロドトキシンという化合物。青酸カリの500~1000倍の強い毒性があり、2ミリ・グラム程度の摂取で成人が絶命するとされる。加熱しても、分解しない」と言う。

 中毒になると、5分ほどで舌と唇がしびれ始め、次第に全身に伝わっていく。致死量を食べた場合は、嘔吐(おうと)などの末、6~8時間で呼吸困難に陥り絶命する。解毒剤がなく、治療は毒を吐き出させ、人工呼吸器を着けるしかないそうだ。

 このため、フグの販売や調理は、都道府県の条例などで規制されている。しかし、厳しさには差がある。

 東京、京都、山口など19都府県は免許が必要で、専門の試験がある。東京の試験は、5種類のフグを選別し、20分以内に毒のある部位を取り除いて皮を引き、刺し身にしなければならない。無免許で販売、調理すると懲役などの罰則もある。一方、学科や実技の講習を受けて登録するだけでいい自治体もある。

 東北6県にはこういった条例そのものがない。山形県は要綱で資格制を定めているが、違反しても罰則はない。「東北地方はフグに対するなじみが薄 く、規制の必要がないため」と県では説明する。1955年以降、山形県内で起きたフグ中毒事故は6件。すべて自分で釣るなどして家庭で調理したもので、飲食店での発生は初めてだ。

 店長は、県が定めたフグを扱うための講習を受けておらず、資格もなかった。調理師の免許さえ持っていなかった。フグは市内の鮮魚店から仕入れていたが、鮮魚店側も店長の資格の有無を確認していなかった。野口教授は「調理を資格者に任せるのは常識。その信頼を裏切る飲食店があるとは」とあきれる。

 (山形支局 古屋祐治、地方部 北出明弘)

(2009年1月28日06時07分  読売新聞)
ちなみに、食品衛生法にはこうある。

第六条  次に掲げる食品又は添加物は、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ。)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。

 (略)
 有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあるもの。ただし、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。
この事例でニュースとして取り上げるべきことは、まず有毒な食品は販売してはならないという法律に違反して食中毒事件を起こした事業者がいたということだ。条例がどうのという自治体の対応はその次ではないか?

ちなみに食品衛生法第6条違反には3年以下の懲役又は三〇〇万円以下の罰金(又はその併科)が課せられる(第七十一条)。そのほか、中毒の症状によっては傷害罪、死亡した場合は業務上過失致死にあたるだろう。

私にはどう考えても、毒物を提供した飲食店が、まず責任を問われるべき問題であるように思える。しかも、「調理師の免許さえ持っていなかった。」とおまけのように書いてある。規制条例を設けていない自治体に一切の責任がないとまでは言わないが、この見出しはあまりにセンスがないぞ。

なじみ薄いフグ、東北6県に規制条例なし…山形で7人中毒

どうよ。

ちなみに、自分で釣ったフグで中毒した場合は、食品衛生法は関係しない。食品衛生法は業に関する法律なので、販売規制で取り締まるため。その場合の所管は農林水産省?キンシバイという貝による食中毒の場合は確かそうだった。

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2009年1月28日 (水)

CV360カートリッジが廃版?

実験室のクリーンベンチで、ガスカートリッジ式のバーナーを使っている(これ)。燃料は、Camping gazで作っているCV360というフランス製のブタンガスカートリッジだ。

それが廃版になって、後継製品もないのだという。本当かな。取り扱いはColeman Japanだ。昔、私が山歩きをしていた頃は、Camping gazとColemanは別の会社だったのだが、96年にColemanがCamping gazを買い取ったらしい。ふーん。

で、カセットコンロのボンベが使えるブンゼン・バーナーがないものかと探してみたら、ありました。こういうもの(フェーゴ・ベーシック)。価格はなんと、\77,805!これに、ガスボンベ用のアダプターが\30,000 + フットスイッチが\10,000。計12万円ほどになる。10年使えても、年1万2千円でさらに燃料費がかかる。

コストパフォーマンスから言えば、アルコールランプの方がいいでしょう。例えばパイトーチとか(\3,591)。

ガスバーナーであればラボガス(\7,880)(これもCamping gazのカートリッジだな。C206? ライターで点火?)とか、卓上ミニガスバーナー(\6,483)というものもある。一応、カセットコンロのガスが使えるパーソナル・バーナー(\29,460)というものもあるが、実績からいえば(たまたまハズレの個体なのかもしれないが)故障しがちなので、これはチョット・・・。

フットスイッチで手がふさがっていても点火できるようなバーナーはあまりないものだな。

おお、これで延命する方法もあるか!むしろ、これ(\3,360)でバーナーに家庭用のカセットコンロのガスを直結できればOKではないか。あるいは、LPGの使えるバーナーであれば、これでも良い。まぁ、受注生産では研究費では買えないか・・・。

# 研究費から数万円出すか、自腹で3千円ちょっと負担するか・・・。

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2009年1月27日 (火)

北海道新聞1/26の社説

 普段は北海道新聞に目を通すことはないのだが、とある人からの紹介で社説を見た。

 クローン家畜を評して、こうある。

なにしろ自然界では育ちにくい、人工的に産み出された家畜だ。

私が住んでいた頃、北海道では家畜化された動物を食べていたものだ。最近では北海道民は、PCBやダイオキシンを蓄積しているかも知れないアザラシの肉や、プリオン病の病原体やE型肝炎ウイルスを保有しているかも知れないシカ肉のような、自然界で育ちやすい野生動物を食べておいでなのだろうか。

 家畜も栽培植物も自然界では育ちにくい。人がそれらから生存競争に勝ち抜く能力を奪う代わりに多産や早い成長といった、人間好みの性質を与えてきたのだから。

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2009年1月26日 (月)

セルロース合成遺伝子はsiRNAで制御される

ちと旧聞。しかし、覚書として記録しておく。

植物の細胞壁は主にセルロースからできている。セルロースの合成は細胞膜に局在するCesと呼ばれる一群の酵素が行っていることが知られている。しかし、植物の細胞は何時までも無制限にセルロースの合成を続けている訳ではなく、適当な”潮時”になると合成を止める。・・・でないと、細胞壁は際限もなく分厚くなってしまう。

これまで、どうやって植物細胞が細胞壁の合成を止める”潮時”を感じ取るのかが分からなかった。Heldらはオオムギの葉でセルロース合成を行わせているCesA6遺伝子がsiRNAによる発現制御を受けていることを初めて明らかにした。

Held, M.A. et al. Small-interfering RNAs from natural antisense transcripts derived from a cellulose synthase gene modulate cell wall biosynthesis in barley. Proc Natl Acad Sci U S A (2008).doi:10.1073/pnas.0809408105

* この論文はOpenAccessですのでご家庭からでも読めます。・・・読まないか。

面白いことにCesA6遺伝子が、そのsiRNAでCesA6の転写産物量が減った際には、協調的に細胞壁の合成にあたっている他のCesA遺伝子、Csls遺伝子、GT8 glycosyl transferaseの転写産物量も減少する。オオムギではBarley Stripe Mosaic Virus (BSMV)というウイルスが、Virus-induced Gene Silencing (VIGS)を介在した遺伝子発現制御のツールとして有効であることが示されており、この論文でも利用されている。

さて、オオムギの葉ではsiRNAによるCesA6遺伝子の転写後制御が行われているのだが、他の組織でも同様の制御が行われていることだろう。オオムギの種子は他のイネ科作物と比べて細胞壁が厚いのだが、種子での制御はどうなんだろう?等など、謎は尽きない。意外と、オオムギの種子の細胞壁が分厚い理由はこのあたりの制御にかかっているのかもしれない。

また、これは他の植物でも同様に違いない。今後、色々な発展が見込まれるので目が離せない。

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2009年1月23日 (金)

Simple and Effective Induction of Plant iPS cell.

A simple and effective method for inducing plant pluripotent stem cell was developed.... really?

 表題は、ウソです。

 検索エンジンで”植物”と”iPS”をキーワードにこのblogにたどり着いた方がいらっしゃいますのでちょっと乗ってみました。

 植物の場合は、体細胞から分化全能性のある細胞を増殖させることは、30年以上も前から普通に行われてきております。それも、2,4-dichlorophenoxyacetic acid (2,4-D)のような安価な合成オーキシンを含むMurashige & Skoog培地に種子や組織片をおいて置くだけのことです。

 それだけで分化全能性のある細胞の固まり(カルスといいます)を誘導できます。遺伝子の導入も、ウイルスベクターも必要ありません。クローンを作成しても倫理的な問題も何等発生しません。

 植物は動物とは違って、茎の先端や根の先端、表皮の内側など、体の様々な部分にある分裂組織(meristem)で細胞分裂を生涯続けます。例えば樹齢5,000年の屋久杉でさえ、枝先や根の先端、樹皮の下の層では新しい組織を作り続けており、枝先を適当な部分で切り取って地面にさせばクローン個体になります。

 つまり、植物の体細胞には生涯を通じて、柔軟にプログラミングされている部分が分裂組織として固まって残っており、植物ホルモンで簡単にリプログラミングできるのです。ですから、植物の場合はわざわざstem cellを誘導するまでもありません。

 ちなみに、アメリカ、Cold Spring Harbor laboratoryでは幹細胞研究の一連の動きの中に、植物の幹細胞研究も位置づけられているようです。今年のCold Spring Harbor Symposia (先週でした)でも採り上げられております。

http://symposium.cshlp.org/content/early/recent

 ちなみに昨年のスピーカーのインタビューはこちら。

http://meetings.cshl.edu/chats/symposium08/index.htm

 MP3やWindows videoで見られます。

 ま、私共、日本の植物科学の研究者は謙虚なのか、「幹細胞研究は科学として重要な領域だ。動物の幹細胞研究は重要だが、植物の幹細胞研究もそれに劣らず重要だ。」なんて言う人は見たことがありません。

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2009年1月22日 (木)

重回帰分析もしないのか?

よく勉強すると学力が伸びる、あるいは良く運動すると体力が向上する・・・科学的に必ずしも実証されていない場合でも、学力と学習時間の関係、あるいは体力運動時間の関係において重回帰分析的なアプローチがとられているようだ。この場合、解析というよりはモデルへの当てはめと考えるべきだろう。

朝日新聞より。

体力と学力に相関関係も 秋田ともに上位、大阪は危機感

2009年1月22日

 21日に発表された文部科学省の「全国体力・運動能力・運動習慣調査」。都道府県ごとに示された結果に対し、担当者は全国学力調査に続いて「一喜一憂」し、敏感に反応した。早くも、体力増進を目指して新たな大会を企画する教育委員会が出ている。

 中2で男女とも全国1位だった千葉。07年度から始まった県教委の取り組みでは、休み時間などを使い、子どもたちがリレーや連続馬跳びなどにグループやクラスで挑戦する。上位に入るとHPで発表し、表彰するという。

 県で毎年実施している体力調査では、小5と小6で好成績を収めると「運動能力証」という賞状を出す。県教委は「遊びながら競い合って体を動かし、運動能力を伸ばすことにつなげてもらいたい」。

 学力調査で2年連続全国トップクラスだった秋田は、今回の調査でも小5の男女で2位に入った。始業前に全校児童でマラソンや縄跳びなどに取り組み、特に小学校で体育の授業以外の運動を推進しているという。

 県教委は、学力と体力は「関連あり」とみる。県の07年度の調査でも、小6で学力が県平均より良かった14自治体のうち、13自治体は体力でも県平均を上回った。県教委の神居隆次長は「体力も学力も、朝食をきちんと食べるといった生活習慣があってこそなのだろう」と話す。

 一方、低い結果だった北海道は、授業以外に縄跳びやかけっこなどをしている割合が低い。道教委の担当者は「冬が長くて外が使える期間が限られていることも背景にあるのではないか」という。

 学力調査同様、全国平均を大きく下回った大阪府。橋下徹知事は21日の定例会見で言った。「学力も体力も低い。大阪はどうすんねん」。全国学力調査同様、文科省は今回の調査についても、過度な競争を招かぬよう市町村別や学校別の結果を公表しないよう求めている。しかし、知事は「体力増強に向けた課題を分析し、学校現場に奮起してもらうためにも、市町村教委は結果を自主公表すべきだ」と言い切った。

 府教委は来月にも各市町村教委の担当者に自主公表を呼びかける予定だ。今回の結果で持久力が低かったことを受け、来年2月には小学生を対象にした駅伝大会を企画。学校ごとに出場し、児童1人につき1千~1500メートル走らせる案が出ているという。

 ただし、8種目にしぼっている調査結果が子どもの体力を判断する絶対的な指標になるのか、疑問の声はある。「順位を上げるため」だけの競争が広がることへの不安も強い。九州の小学校教諭は「教師も子どもも、学力向上で追いまくられているところへ『体力向上』が降ってくるのだろうか。運動が嫌いな子を増やすことにならないか」。多くの項目で平均を下回った東京都内のある区の教委関係者は「現場にプレッシャーをかけて結果を上げるような動きが広がっては、ますます教師が疲弊する。学校や自治体としての条件整備を考える必要がある」と話した。

この記事では何かというと「平均値」を云々しているが、平均値が集団の代表といえるかどうかはデータの分布にも関わっている。個人差と地域差を比べて個人差の方がデータのばらつきが大きい場合には、平均値で地域間の比較を論じるのはデータの取り扱い方として適切ではない。

文部科学省の行った「平成20年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査の調査結果」はこちら

調査の趣旨は次の通り。

① 子どもの体力が低下している状況にかんがみ,国が全国的な子どもの体力の状況を把握・分析することにより,子どもの体力の向上に係る施策の成果と課題を検証し,その改善を図る。
② 各教育委員会,学校が全国的な状況との関係において自らの子どもの体力の向上に係る施策の成果と課題を把握し,その改善を図るとともに,そのような取組を通じて,子どもの体力の向上に関する継続的な検証改善サイクルを確立する。
③ 各学校が各児童生徒の体力や生活習慣,食習慣,運動習慣を把握し,学校における体育・健康に関する指導などの改善に役立てる。

要するに、調査によって「体力」(日常的に使われる言葉だが、定義からしてちょっと怪しい)を把握し、問題があればその原因を究明して適切な対策をとるための資料とするということだ。

そのための調査プランは次の通り。

ア 実技に関する調査
測定方法等は新体力テストと同様
[小学校8種目]握力,上体起こし,長座体前屈,反復横とび,20mシャトルラン,50m走,立ち幅とび,ソフトボール投げ
[中学校8種目]握力,上体起こし,長座体前屈,反復横とび,持久走(男子1500m,女子1000m),20mシャトルラン,50m走,立ち幅とび,ハンドボール投げ
※持久走か20mシャトルランのどちらかを選択して実施
イ 質問紙調査 生活習慣,食習慣,運動習慣に関する質問紙調査

学校における体育的行事の実施状況,体育専科教員及び外部指導者の導入状況,屋外運動場の状況,運動部活動の状況等に関する質問紙調査

実技に関する調査結果(実技データ)が変動する時には、生徒の生活・食事・運動習慣あるいは学校の体育指導等が変化した結果であると考えることになる。個々人の実技データについて回帰モデルをあてはめるのであれば、目的変数が「実技に関する調査結果」、説明変数が「生活習慣、食習慣、運動習慣」と「学校における体育的行事の実施状況,体育専科教員及び外部指導者の導入状況,屋外運動場の状況,運動部活動の状況等」である。

重回帰モデルへのあてはめを考えているのであれば、たとえば個人の「体力」の合計値を目的変数Yとすると、

Yijkl = X1 + X2 + X3 + X4 + X5 + X6 + X7 + σ

i, 個人番号; j, 学校のID; k, 市町村のID; l, 都道府県のID
X1, 生活習慣; X2, 食習慣; X3, 運動習慣; X4, 体育的行事の実施状況; X5, 体育専科教員及び外部指導者の導状況; X6, 屋外運動場の状況; X7, 運動部活動の状況
σ, 残差

という感じのデータの成り立ちだろうか。

ところが、これを都道府県内の学校ごとのデータや県別のデータにまとめると、X1-X3までの個人的な要素で変わってくる変数が、全部誤差に放り込まれてしまうおそれがある。実は、上記の新聞記事のように平均値でものを言うというのはそういう恐ろしいことをやっているのだ。少なくともX1-X3については階層化して、生徒の習慣と体力の相関を見てから全体の体力の評価をしないと、重要な情報が失われてしまう。

・・・と思って調査結果の概要を見たのだが、驚いたことに、データのとりまとめのPDFには体力と生徒の生活・食事・運動習慣あるいは学校の体育指導の相関については何ら考慮されていない。これでは個々の測定データ間の関連性も評価できないではないか。ものすごくがっかりした。関係者にはデータの解析になじんだ理系の人はいないのだろうか?これでどうやって「各学校が各児童生徒の体力や生活習慣,食習慣,運動習慣を把握し,学校における体育・健康に関する指導などの改善に役立てる。」ことに繋がるのだろう。

ひょっとして、自治体の首長さん達が公開するのどうのと騒いでいる学力テストの結果も、こういうとりまとめをされているのだろうか。いやはや。

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2009年1月19日 (月)

クローン動物の安全性評価、続報

食品安全委員会のワーキンググループの議論が終わった。朝日新聞より。

体細胞クローン牛「安全性問題なし」 食品安全委WG

2009年1月19日21時49分

 体細胞クローンの牛と豚を食用にすることについて、内閣府食品安全委員会の新開発食品専門調査会のワーキンググループ(座長=早川堯夫(たかお)・近畿大薬学総合研究所長)は19日、「一般の繁殖技術で生産した牛・豚と同じ安全性を持つ」とする報告書をまとめることを確認した。

 食品安全委員会は、この報告書を基に健康影響評価書を作り、年度明けに厚生労働相に通知する見通しだ。クローン由来の食品の流通を認めるかどうかは、厚労省・農林水産省が最終判断する。

 すでにいる個体の遺伝的コピーといえる体細胞クローンの牛は、国内では研究目的に限り生産が認められ、昨年9月末までに557頭が生まれた。死産や生後まもなく死ぬ率が3割と高く、懸念する声もあるが、専門参考人として呼ばれた塩田邦郎・東京大教授(発生生物学)は「遺伝子のスイッチのオン・オフが、混乱した状態になったため」と説明した。

 また、順調に育ち生後6カ月を過ぎたクローンは一般の牛・豚と生理機能に差がなく、肉・乳の栄養成分、アレルギー誘発性などについても「一般と相違ない」とする研究報告が確認された。

 体細胞クローンの食用について、欧米ではリスク評価機関がそれぞれ「安全性に問題はない」と報告を出しているが、まだ流通していない。農水省などによると、米国農務省は消費者や流通業界の理解が得られるまで販売自粛を出荷元企業などに求めている。欧州では生命倫理の観点から食料供給目的に動物のクローンを認めることに慎重姿勢を見せており、実際に流通する見通しは立っていない。(熊井洋美)

 日本の評価対象はウシとブタ。ちなみに、アメリカFDAのクローン動物およびその生産物の安全性評価は、ウシ、ブタとなぜかヤギだった。ドリーで有名なヒツジはイギリスでの先行事例はあったものの、その後の知見があまりなかったのかだろうか。

 アメリカでなぜクローン・ヤギの評価がおこなわれたのか、想像がつかない。ヤギは肉としてはあまり食べるところはないが、ヤギのの乳のチーズと言うものもあるので、そのせいかもしれない。

 ちなみに、日本では沖縄でヤギをヒージャー(ヤギ汁)にして食べることがある。以前、那覇に行ったときにヤギ汁の専門店があったので驚いたっけ。これも食の方言?

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2009年1月17日 (土)

天ぷらにソースをかけますか?-ニッポン食文化の境界線

天ぷらにソースをかけますか?―ニッポン食文化の境界線 (新潮文庫)

 日本経済新聞社の野瀬泰申氏の著書を紹介しつつ。
 この本は、食べ物の嗜好についての地域差を方言と捕らえて、その地理的マッピングを行なっている。今風にWebでのアンケート調査と実地調査による裏づけを行なっており、データの信憑性は概ね高いと考えられる。

# ちなみに私も一寸だけ意見を寄せています。

 私は北海道出身だが、仕事の都合で香川県、熊本県、茨城県を渡り歩いてきた。この本で取り上げられたような「食の方言」を身をもって(舌を持って?)感じてきたので、頷ける部分が非常に多い。日本は、ちょっとした食習慣の違いを持つ文化圏のモザイクなのだと。

 香川に居たときは、うどん屋さんで冷めた天ぷらを熱々のうどんだしにトップリ漬けて食べていたし、熊本に居たときは、たしかにソースをかけるのが身の回りでは普通だった。北海道にいた頃は天つゆや醤油で食べるのが普通だったが、どれも実際にやってみると「これも、アリか」という感じだ。
 香川でも熊本でも、味噌といえば麦味噌が多く売られていた。私は、津軽三年味噌のような長期熟成型の塩分の多い米味噌で育ったのだが、食べてみると麦味噌も悪くはない。今は、茨城に住んでいるが大分の”フンドーキン”の麦味噌を愛用している。

 「天ぷらにソースをかけますか?」では、味噌汁の味噌に着目して地域差を考察しているのだが、味噌汁にはもう一つ重要な構成要素がある。”だし”だ。具のバリエーションは非常に多様なのでまとめようがないのだが、だしについては概ねイリコ(煮干)、ふし(カツオ、さば等)、昆布の三種類程度に限られている。この三種類のだしと味噌の種類(米、麦、豆)の組合せは、実はランダムではないように思う。たとえば、イリコだしは長崎から瀬戸内を通って四国の瀬戸内側、兵庫くらいまで分布している。うどんのだしも、香川ではイリコ+昆布がスタンダードだが、大阪から名古屋くらいまでは、ふし+昆布になっている。これはスーパーで売っているイリコの種類でも確認できる。岡山や香川では、イリコの大きさ別に大羽、中羽、小羽とサイズ別に分類されているのが普通だが、茨城ではそのような分類はない。単に「煮干」とかかれて一緒くたにされてしまっている。生活者のイリコに対する関心の程度が反映されているためだろう。

 このイリコに対する関心の高い地域は、概ね麦味噌地帯と概ねかさなる様に思う。だしの素材も味噌の原材料と同様、それぞれの地域で入手しやすいものがよく利用されている点では同じ原理が働いているようだ。瀬戸内や長崎ではイリコの原材料のカタクチイワシが良く取れる。昆布は昔から北前船の西回り航路で蝦夷地から大阪まで運ばれてきた。江戸時代からニンベンの鰹節というのが有名だが、江戸で鰹節を作っていたわけではない。鰹節は様々な流通をしているようだが焼津や枕崎で作られたものが全国に流れている。落語にもこんな小話がある。

「カツオってどんな字だっけ?」
「ニンベンだろ」

 脱線した。だしと味噌のコンビネーションに戻るが、 実際、食べてみても麦味噌の味噌汁にはカツオだしや昆布だしよりも、イリコだしの方がよく合うように感じる。味噌に含まれる遊離アミノ酸の種類が、米&麦(イネ科)、大豆(マメ科)で違っていて、だしの側の遊離アミノ酸の種類もイリコ、ふし、昆布で異なるため、旨みの相乗効果を発揮するコンビネーションが限られているのかもしれない。ヒトの舌が感じるアミノ酸によるウマミの相乗効果に関してこういう論文が出ていた。

Zhang, F. et al. Molecular mechanism for the umami taste synergism. Proc Natl Acad Sci U S A  (2008).doi:10.1073/pnas.0810174106

 昆布だしに含まれるうまみ成分のグルタミン酸とかつおだしに含まれるイノシン酸を合わせると、うまみが増す「相乗効果」が起きる。その仕組みに関するモデルを立てて、舌の表面にある「味覚受容体」と呼ばれるたんぱく質の一種「T1R1」分子に対するグルタミン酸とイノシン酸の結合の仕方をラットを使って実験的に確かめた研究。二枚貝の殻のようなT1R1分子の間にグルタミン酸が取り込まれた後で、イノシン酸が開閉部先端に結合すると、グルタミン酸が分子内に長く保持されるためにウマミのシグナルが長く続くらしい。

 味噌汁のだしと味噌のコンビネーションでもこの作用が・・・というのはいまのところ妄想。

 だが、だしに注目すると昆布はグルタミン酸、カツオはイノシン酸、イリコはグルタミン酸とイノシン酸の両方が含まれている。味噌の原材料の大豆と米(または裸麦)では貯蔵増たんぱく質のアミノ酸組成が異なることから、その分解産物のアミノ酸組成も異なる。おお、丁度良い論文があった。

植田 志摩子 “市販味噌のタンパク質・水分・食塩含量および遊離アミノ酸量について,” 帯広大谷短期大学紀要 35: 49-55. 

 これによると、

8.遊離アミノ酸量は1,036.5~3,416.lmg/100gであり、豆味噌>米味噌(西京白味噌除く)>加工味噌>麦味噌の順であった。
9.15種類の各アミノ酸において類似したのは、米味噌で淡色糸の純正米麹味噌と信州味噌が、そして、赤色糸の赤味噌と仙白味噌であった。
10.主な遊離アミノ酸量では、各味噌ともグルタミン酸が最も多く(106.6~746.1mg/100g、平均328.9mg/100g)であり、組成比で7.3~25.1%を占めていた。次いで、プロリン、アルギニン、ロイシンの順に多かった。

とある。

 つまり、味噌の遊離アミノ酸のうち最も多いものはウマミ成分でもあるグルタミン酸であり、麦味噌は各種の味噌の中でも遊離アミノ酸量がもっとも少ないことから(豆味噌の1/3しかない)、ウマミ成分も最も少ないと考えられる(豆味噌の1/7?)。また、麹と大豆の配合比率によって味噌に含まれるアミノ酸のバランスが変わることもわかった。

 このことから考えれば、単体でウマミ成分が少ない麦味噌に対しては、グルタミン酸とイノシン酸を同時に加えることができるイリコだしで味噌汁を作る方法は、あわせだしにしなくともウマミの相乗効果を単一のだしで引き出すことができる点で合理的な方法であると言えよう。

 そう考えると、津軽三年味噌(米味噌)+昆布だしという私の田舎の味噌汁の作法は、グルタミン酸(味噌)+グルタミン酸(昆布)なのでちょっと寂しい。まぁ、そのかわり具材に魚やカニが入って動物性のウマミ成分を補ってくれるのだけれど。

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2009年1月16日 (金)

MapからAtlas、そしてその次へ

MapからAtlasへ

もう20年近く経とうとしているが、かつてBody Mapというプロジェクトがあった。ヒトの全身の組織で発現している遺伝子を網羅的に明らかにしようという意欲的な試みだった。ヒトのゲノムの全体像が明らかになるよりも前に、どのような遺伝子が体のどの部位で発現しているかをカタログ化して地図(Map)にすることを目指していた。

ヒトはもちろんイネでもゲノムプロジェクトは終了して、ゲノムの全体像がすでに明らかになっており、発現している(あるいはその可能性もある)遺伝子をガラスやシリコン基板上に配置したマイクロアレイが開発されている。最近では、こういったツールを使って、体の各部分でどの遺伝子がどの程度発現しているかをカタログ化して地図帳(Atlas)にするプロジェクトの成果が公表され始めている。生物の組織は単なる固まりではなく、性質の違う細胞が規則性を持って構造を形作っていることから、細胞の種類ごとに高分解能の解析を行っているところが特徴だ。

Jiao Y, Lori Tausta S, Gandotra N, Sun N, Liu T, Clay NK, Ceserani T, Chen M, Ma L, Holford M, Zhang H, Zhao H, Deng X, Nelson T. A transcriptome atlas of rice cell types uncovers cellular, functional and developmental hierarchies [Internet]. Nat Genet. 2009 Jan 4

もうMapではなくてAtlasなのだ(単にMapの拡張としてのAtlasというだけでなく、古くから解剖図をAtlasと呼んでいることも関係しているのだろう)。しかも、この空間的な分解能の高さを思うと感慨深いものがある。

あまり正確な言い回しではないが、こういった網羅的な大規模解析では、解析のスケールが大きくなり分解能が上がればあがるほど、解析の結果は全体としては「抽象化されていない生の現象」に近づく。

例えて言うなら、現象の「全体像」は非常に分解能の高い天体望遠鏡で撮影した天文写真に近いかも知れない。暗い画像の光点の部分を拡大すると、銀河が写っており、さらに拡大すると個々の恒星の集団が見え、さらに拡大すると恒星の周りにガスの雲やひょっとすると惑星まで見える。しかし、写真の全体像としては星雲が点のように散らばった黒っぽい夜空が写っている。

そしてAtlasの次に来るもの

個々の細胞内で発現している遺伝子の全体像(transcriptome)や、代謝の全体像(metaborome)も全体を見渡しても、天体写真を漠然と眺めた時のように、その全体像はもはや我々の理解力の限界を超えている。3次元でさえ既にそうなのだ。

しかし、成長や老化という生命現象を捉えようとすると、こういった研究は究極的には生命現象を数値化して記録し、リアルタイムで再構成するところまで行くのかもしれない(Google earthのStreet View画像がリアルタイムで動いているところを想像すると、それに近いイメージだろうか)。予想としては4Dを目指すのではないだろうか。それを何と呼ぶのだろうか。"Atlas Live View"とか?

だが、現象の科学的な意味づけを行うには、そこからノイズを振り分けてほしい情報を抽出することができたときに、初めて何かの現象を理解した(あるいは説明した)ことになる。従って、こういう網羅的な解析データは、データベースとして公開されて、利用されてこそ、その真価を発揮すると言えるだろう。

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2009年1月15日 (木)

薬指が人差し指よりも長い人は金融トレーダー向き?

1/15の朝日新聞の朝刊にも出ていましたが、

薬指が人差し指よりも長い人は金融トレーダー向き、英大学研究 国際ニュース : AFPBB News

【1月14日 AFP】薬指が人差し指よりも長い人には、トレーダーとしての資質があるとの研究結果が、12日の米科学アカデミー紀要に発表された。

 これまでの研究で、薬指と人差し指の長さの割合(2D:4D比率)は、胎児期に、脳の発育に作用して自信と反射作用を高めるアンドロゲン(男性ホルモンの一種)にどれくらいさらされたかを測る指針となることがわかっていた。

 今回の研究を主導した英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)のジョン・コーティーズ(John Coates)氏によると、アンドロゲンは巨額の金融取引に必要な集中力と反射作用を改善するという。

 研究チームは、ロンドンの金融街シティの素早い決断力と迅速な反射行動を必要とする取引に従事している44人の男性トレーダーを対象に、指の長さを計測し、これらのトレーダーの過去20か月間の取引の利益と損失を比べた。

 その結果、薬指の長い人の方が長期にわたり高い利益を上げ、金融業界におけるキャリアも長い傾向にあることがわかった。(c)AFP

・・・だそうです。オリジナルの論文はこちら

John M. Coates, Mark Gurnell, and Aldo Rustichini, “Second-to-fourth digit ratio predicts success among high-frequency financial traders,” Proceedings of the National Academy of Sciences 106, no. 2 (January 13, 2009): 623-628, doi:10.1073/pnas.0810907106.   

研究の意図したところは、胎児期の脳の発達と将来の行動に関わる男性ホルモンの影響を見ること。スポーツの分野ではこれまで研究の事例はあっものの、金融のような経済活動においてどのような影響があるかを調べた例がないので調査してみた、ということらしい。なので、この研究から言えることは、「トレーダーをしている人の中では、薬指と人差し指の長さの比率が経済的な成功と相関があった」と言うところまでであって、他のいかなる職業に就いている(あるいは付こうとしている)人においても、薬指が人差し指よりもより長い人がよりトレーダーに向いているとまでは言えません。そう言う意味ではこの見出しは不適切です。むしろ、

薬指が人差し指よりも長い金融トレーダーの方が成功する

と言った方が良いでしょう。

薬指が人差し指よりもより長いことが”素早い決断力と迅速な反射行動”の指標になるのであれば、そういう人は”プロスポーツ選手向き”かも知れないし、”軍人向き”かも知れません。しかし、プロスポーツ選手や軍人として成功するには、それ以外の基本的な素養が必要なことは言うまでもありません。おそらく、トレーダーもそうでしょう。

ちなみに、私の場合、

Left

こんな案配。人差し指の爪の先端が薬指の爪の根本に届くかどうか。まぁ、研究者もばくち打ちの性向があると言う点ではトレーダーと変わらないのかも知れませんね。

なお、私自身は”素早い決断力と迅速な反射行動”においては全く自信がありません・・・。

また、”薬指が長いと数学、人差し指が長いと国語が得意―英研究結果”というニュースもあるので、理系の仕事を指向する人には薬指の長い人が多いのかも知れませんね(ニュース自体が消滅しているので、オリジナルの論文は辿れませんでした。日本の新聞社のサイトももう少し何とかならないものだろうか)。

そうそう、こんな本も出ています。

PubMedで"2D:4D Manning"というキーワードで検索すると、この10年ほどの間で数十本の論文がピックアップされてきます(Dr. ManningのFirstだけで21本もある!)。しかも、指の長さの比と他の某かとの関連に関する論文だけでこの状態なので、Dr. Manningはこの分野では非常にアクティブな研究者であるといえます。ただし、その事実と、この本の内容が科学的にしっかりしているかどうかとは別の問題です。なにぶん、たまたま書店の店頭で見かけただけでまだ読んでいないので・・・。

# 読んでもいないのに紹介するな!と怒られそうですが、機会があれば読んでみたい一冊です。

[以下の論文はどれ一つとして読んでいませんが、参考まで。PubMedとZoteroを使うとものの数分でリストアップできてしまう。]

  1. J T Manning, “The ratio of 2nd to 4th digit length and performance in skiing,” The Journal of Sports Medicine and Physical Fitness 42, no. 4 (December 2002): 446-50.  
  2. J T Manning et al., “The ratio of 2nd to 4th digit length: a predictor of sperm numbers and concentrations of testosterone, luteinizing hormone and oestrogen,” Human Reproduction (Oxford, England) 13, no. 11 (November 1998): 3000-4.  
  3. J T Manning et al., “The 2nd:4th digit ratio and asymmetry of hand performance in Jamaican children,” Laterality 5, no. 2 (April 2000): 121-32.  
  4. Manning et al., “The 2nd:4th digit ratio, sexual dimorphism, population differences, and reproductive success. evidence for sexually antagonistic genes?,” Evolution and Human Behavior: Official Journal of the Human Behavior and Evolution Society 21, no. 3 (May 1, 2000): 163-183.  
  5. J T Manning et al., “The 2nd to 4th digit ratio and autism,” Developmental Medicine and Child Neurology 43, no. 3 (March 2001): 160-4.  
  6. J T Manning, P Henzi, and P E Bundred, “The ratio of 2nd to 4th digit length: a proxy for testosterone, and susceptibility to HIV and AIDS?,” Medical Hypotheses 57, no. 6 (December 2001): 761-3, doi:10.1054/mehy.2001.1487.  
  7. J T Manning et al., “2nd to 4th digit ratio and offspring sex ratio,” Journal of Theoretical Biology 217, no. 1 (July 7, 2002): 93-5.  
  8. J T Manning, P E Bundred, and B F Flanagan, “The ratio of 2nd to 4th digit length: a proxy for transactivation activity of the androgen receptor gene?,” Medical Hypotheses 59, no. 3 (September 2002): 334-6.  
  9. J T Manning, M Callow, and P E Bundred, “Finger and toe ratios in humans and mice: implications for the aetiology of diseases influenced by HOX genes,” Medical Hypotheses 60, no. 3 (March 2003): 340-3.  
  10. J T Manning et al., “Second to fourth digit ratio (2D:4D) and testosterone in men,” Asian Journal of Andrology 6, no. 3 (September 2004): 211-5.  
  11. J T Manning et al., “Sex and ethnic differences in 2nd to 4th digit ratio of children,” Early Human Development 80, no. 2 (November 2004): 161-8, doi:10.1016/j.earlhumdev.2004.06.004.  
  12. John T Manning et al., “Photocopies yield lower digit ratios (2D:4D) than direct finger measurements,” Archives of Sexual Behavior 34, no. 3 (June 2005): 329-33, doi:10.1007/s10508-005-3121-y.  
  13. John T Manning, Andrew J G Churchill, and Michael Peters, “The effects of sex, ethnicity, and sexual orientation on self-measured digit ratio (2D:4D),” Archives of Sexual Behavior 36, no. 2 (April 2007): 223-33, doi:10.1007/s10508-007-9171-6.  
  14. J T Manning et al., “Second to fourth digit ratio: ethnic differences and family size in English, Indian and South African populations,” Annals of Human Biology 30, no. 5: 579-88.  
  15. John T Manning, Laura Morris, and Noreen Caswell, “Endurance running and digit ratio (2D:4D): implications for fetal testosterone effects on running speed and vascular health,” American Journal of Human Biology: The Official Journal of the Human Biology Council 19, no. 3: 416-21, doi:10.1002/ajhb.20603.  
  16. John T Manning et al., “The second to fourth digit ratio and asymmetry,” Annals of Human Biology 33, no. 4: 480-92, doi:10.1080/03014460600802551.  
  17. J T Manning and P E Bundred, “The ratio of 2nd to 4th digit length: a new predictor of disease predisposition?,” Medical Hypotheses 54, no. 5 (May 2000): 855-7, doi:10.1054/mehy.1999.1150.  
  18. John T Manning and Bernhard Fink, “Digit ratio (2D:4D), dominance, reproductive success, asymmetry, and sociosexuality in the BBC Internet Study,” American Journal of Human Biology: The Official Journal of the Human Biology Council 20, no. 4: 451-61, doi:10.1002/ajhb.20767.  
  19. J T Manning and M R Hill, “Digit ratio (2D:4D) and sprinting speed in boys,” American Journal of Human Biology: The Official Journal of the Human Biology Council (December 23, 2008), doi:10.1002/ajhb.20855, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19107924.  
  20. J T Manning and S J Robinson, “2nd to 4th digit ratio and a universal mean for prenatal testosterone in homosexual men,” Medical Hypotheses 61, no. 2 (August 2003): 303-6.  
  21. J Manning and R Taylor, “Second to fourth digit ratio and male ability in sport: implications for sexual selection in humans,” Evolution and Human Behavior: Official Journal of the Human Behavior and Evolution Society 22, no. 1 (January 2001): 61-69. 

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2009年1月14日 (水)

そんなに簡単に品種改良に応用はできない

植物の葉緑体の分裂と核、細胞の分裂はどうにかして同期して行われている。細胞分裂の速度にオルガネラの分裂が追いつかないと言う現象は実際には起こっていないのだが、なぜそれが起こらないのかは謎だった。

酵母などでは細胞周期の制御に関する研究がかなり進んでいるのだが、植物では核、葉緑体、ミトコンドリアの三角関係があって話がややこしくなっていた。

1/11の読売新聞より。

葉緑体が細胞増殖制御 千葉大グループ解明
品種改良など応用期待

 植物細胞の中で、これまで細胞核に活動を支配されているとみられていた小器官の葉緑体が、細胞が増殖する過程において、逆に細胞核のDNA(ゲノム)複製をコントロールしていることを、田中寛・千葉大大学院園芸学研究科教授(分子生物学)らのグループが突き止めた。細胞核が他の小器官を一方的に支配しているとする定説を覆すもので、近く米国科学アカデミー紀要の電子版に論文が公開される。

 バクテリアなどを除く動物や植物、菌類は、細胞の中に核を持つ真核細胞生物とされ、植物の場合、光合成を行う葉緑体と、酸素呼吸を行うミトコンドリアは、バクテリアだったそれぞれが進化の過程で真核細胞に入り込み、核に支配されたとみられていた。

 田中教授によると、研究は、シゾンという細胞核と葉緑体、ミトコンドリアを各1個ずつしか持たない単細胞藻類を用いて行われた。小器官はそれぞれがDNAを持っており、シゾンの増殖過程では、光を当てることでそれぞれDNAの複製が行われるが、葉緑体やミトコンドリアのDNA複製を止める薬剤を加えると、細胞核もDNA複製が起きなかった。

 一方、DNA複製が起きない暗い状態で、葉緑体がDNAを複製する際に放出するテトラピロール類と呼ばれる物質を与えると、細胞核ではDNA複製が起き始めた。

 このことから、葉緑体がDNAを複製する際に信号となる物質を放出し、細胞核のDNA複製を促していることが判明したという。

 田中教授らは、寄生体(パラサイト)が宿主に命令しているようだとして、この信号を「パラサイト・シグナル」と命名した。

 より高等な種子植物であるタバコでも、同様な仕組みで細胞増殖していることを確認、植物全体で同様であると推測できるという。

 田中教授は「植物の増殖制御を通じて品種改良や、農薬、成長促進剤の開発にも生かせるのではないか」としている。
(2009年1月11日  読売新聞)

千葉大学のプレスリリースはこちら。オリジナルの論文はこちら(Kobayashi et al. 2009)。
植物科学関係の記事は、とかく「品種改良など応用期待」と書かれがち。「品種改良など応用期待薄」とわざわざ書かれるよりは良いが、単細胞藻類のテトラピロール・シグナルが核の分裂にGOサインを出すことがようやく分かり始めたところで応用の話をするのはいかにも気が早い。

核の分裂を進める最初の(?)シグナルを捕まえたと言う点では、確かに一歩前進だ。
しかし、高等植物でも実際に同じような効き方をしているのかどうか、もう少し議論の余地がある様に思う。BY-2細胞のように同調できる系だからこそ見えてきた現象なのかも知れないが、核のチェックポイントの解除がどのように進むのか明らかにして行くには、もう少し精密な実験が必要だろう。

話は変わって、tetrapyrroleのシグナル伝達についてはこういう論文もある。

Mochizuki, N. et al. The steady-state level of Mg-protoporphyrin IX is not a determinant of plastid-to-nucleus signaling in Arabidopsis. Proc Natl Acad Sci U S A 105, 15184-9(2008).  

葉緑体と細胞の核の間の信号のやりとりは核の分裂に関わるものだけでなく、葉緑体を形作っている核遺伝子にコードされた多くのタンパク質の合成の制御に関わる信号も含まれている。こちらは、(おそらく、分裂していない組織を中心に据えて)葉緑体の tetrepyrrole signalと遺伝子発現との関連を考えている。Mg-protoporphyrin (MgProto)はtetrapyrroleの中間産物とされている。上記の論文ではアラビドプシスの細胞内のMgProtoのレベルと、葉緑体で機能するタンパク質をコードする核遺伝子(Lhcb1等)の発現レベルの間には相関がないことを示している。

分裂組織の個々の細胞の分裂と、植物体レベルで見た転写産物の蓄積量とでは、精度が異なるのでKobayasiらの研究と単純な比較はできないが、この論文ではカロチノイド合成阻害剤であるNorflurazon(NF)を添加して内生のProto, MgProto, MgProtoMeの含有量を低下させた場合にはLhcb1等の発現レベルは低下するのだが、内生のMgProtoのレベルが低下した突然変異体ではそのような相関は見られていないことを示している。

植物の個体では分裂している部分としていない部分が分かれており、植物体でのMgProtoの定常状態が、分裂組織で分裂している個々の細胞内でのMgProtoの量を反映していない可能性はある。

高等植物では、分裂する細胞では葉緑体からのtetrapyrroleが細胞分裂を促進し、分裂していない細胞では葉緑体から核に対してタンパク質を合成させるためのシグナルは他の物質が担っている、と考えた方が良いのだろう。

---

三角関係かと思われていた植物の細胞周期の制御は、実は葉緑体さんと核くんの蜜月時代らしい(というか、もはや葉緑体のカカア天下?)。今のところミトコンドリアさんが寂しく蚊帳の外で泣いている様だが、さてどう反撃に出るか。それとも、酵母や動物細胞と同じようにミトコンドリアはひたすら従属?

# ちなみに葉緑体とミトコンドリアは母性遺伝するので女性扱いです。

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2009年1月13日 (火)

ウイルスを3D画像化できるMRI装置

昨日はウシ一頭、丸ごとスキャンできるMRI装置の開発が行われるか?という話題でしたが、今日は極微小領域をスキャンできる超高分解能のMRI装置の論文の紹介。

# Nature Newsより。

タバコモザイクウイルス(TMV)の撮影ができる高分解能のMRI装置の開発に関する論文が発表された(物理系の論文なので読めやしませんが)。こちらはウシ用MRIと違って、すでに作成されている実働する装置です。10 nm以下の分解能だとか。高分解能化にあたっては微弱な磁場を検出する技術がキモらしい。論文のFigureを見た限りでは、技術的に解決するべき問題はまだ多いと思われるが、今後製品化されるかどうかはニーズ次第だろうか。

私達の研究分野では、あまり高性能でない透過型電子顕微鏡レベルの分解能があれば足りるので、能力的にはこのくらいで十二分。ただし、もっと大きなサンプルをステージに載せられる構造でなければ(例えば種子1粒とか)、折角”MRIなので非破壊で分析できます”と言っても、切り刻まないと”サンプルがステージに乗りません”という無様なことになる。

代謝を行わないウイルスはともかくも、生きた細菌や酵母そして培養細胞を殺さずにMRIで見られるのであれば、細胞内の物質合成の様子も非破壊&リアルタイム&3Dで見られるかもしれない。これは電子顕微鏡や共焦点顕微鏡にはできない芸当だ。

また、光学顕微鏡では標識や染色せずに脂質の膜を可視化することはできないが、MRIであればそれができるかもしれない。一個の細胞の中のミトコンドリアや葉緑体の分裂をリアルタイムで、かつ3Dで見ることができたら細胞生物学が再構築されることになるだろう。

# 時間分解能はどのくらいなんだろう。細胞に”はい、動かないで”と言っても聞いてくれる訳はなし。

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2009年1月12日 (月)

干支ネタ: 牛の入るMRI装置?

牛の入るオートクレーブと言うものも聞いたことはありますが、牛の入るMRI装置というのは・・・。

読売新聞より。

霜降りもクッキリ…牛の肉質、MRIで生きたまま予測可能

 磁気共鳴画像(MRI)の検査が高級和牛の必須条件――。そんな時代がくるかもしれない。放射線医学総合研究所(千葉市)の池平博夫チームリーダーらが、MRIの断層画像で、生きている牛の肉のおいしさを予測できることを確認した。
 池平さんらは、雄牛のロース肉を人間用のMRIで撮影してみた。すると、肉質を左右する「霜降り」の度合いや脂肪の粒の大きさが、肉質検査に使う写真と同程度の鮮明さで映り、霜降りの面積を自動的に算出できた。また、撮影データの解析で、多く含まれるほど肉をおいしくする「不飽和脂肪酸」の量も確認できた。こちらは、実際の肉質検査では鑑別できない。
 肉質の良い牛を作るのは、運試し。見込みを付けた雄牛の精子を複数の雌牛に人工授精し、生まれた子牛の肉質から、親の品質を推定しているからだ。数年がかりの作業になる。
 MRIを使えば、優秀な雄牛を数分で確実に見つけられそうだ。実用化には、生きた牛を丸ごと撮影できる大型装置が必要だが、同チームはすでに装置の設計案を完成させている。「後はスポンサーを待つだけ」(池平さん)という。

(2009年1月12日03時11分  読売新聞)

とりあえず、人用のMRI装置を使用して牛肉の肉質判定のノウハウを集積してみたと言う水準の仕事ですね。サンプルに使用したロースのかたまり肉はその後、どのように処分されたのか関係者に伺ってみたいところ(美味しかった?)。

牛用のMRI装置は、人用のMRI装置のように量産効果はなさそうなので装置自体で数億~十億くらいかかりそうな勢いですが、誰が導入するのでしょうね。まあ、できてしまえば肉質判定だけではもったいないので、健康診断や病理検査にも使われる様になるのでしょう。
# 牛をじっとさせておくのが大変そうですが。

私は、MRI装置と言えばトンネル型のものをイメージしていたのですが、最近ではオープン型というのも登場しています。こういう方式であれば、ものすごく大きな装置でなくても良いかも知れません。

ともあれ、非破壊で肉質の検査ができるのであれば、肉質検査のためにクローン牛を潰す必要もなくなります。一見、家畜クローンと競合する技術のようにも見えますが、手間暇かけて生産したクローン種牛を、生産した頭数だけ有効に利用できるのであればそれだけ生産コストが回収しやすくなりますので、クローン技術による家畜改良に対しては補完的に利用できます。

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2009年1月 9日 (金)

銘牛死して体細胞を残す

毎日新聞より。

クローン牛:飛騨牛元祖の死後13年の凍結細胞から作成

 死後13年間凍結されていた牛の生きた細胞からクローン牛を作ることに、岐阜県畜産研究所と近畿大の研究チームが成功した。長期凍結保存した細胞による哺乳(ほにゅう)類のクローン作成は、理化学研究所がマウス(16年間冷凍)で成功している。牛でも可能なことを示し、死んだ名馬や名牛の復活につながる成果として注目される。8日発行の米科学誌プロスワンに掲載される。

 使用したのは、飛騨牛の元祖といわれる名牛「安福(やすふく)号」(1980~93年)の凍結細胞。冷凍していた精巣から細胞を取り出し、これまでにクローン牛4頭が誕生。うち3頭が現在も生きているという。

 安福号は兵庫県で生まれ、岐阜県が購入した。死ぬまで安福号の精子で約4万頭が誕生した。優れた肉質を残し、飛騨牛のブランド化に大きく貢献した。

 体細胞クローン技術を使うと、優れた肉質の牛や乳量の多い牛をコピー生産できる。国内では昨年9月末までに557頭の体細胞クローン牛が誕生し た。しかし、農林水産省は消費者の不安を考慮し、研究機関に出荷の自粛を要請しているため、市場に流通していない。現在、内閣府食品安全委員会がその肉や乳などの安全性の評価を進めており、近く結論を出すとみられる。

 今回の成果について、マウスの死骸(しがい)からクローンマウスを作った理化学研究所の若山照彦チームリーダーは「生きた細胞が凍結していた牛から見つかった点がまず驚きだ。スーパーで売られている冷凍のおいしい牛肉から、クローン牛を作ることも可能になった」と話す。

オリジナルの論文はこちら
論文の要点

  • 特別な保護剤を使用していないウシの凍結組織(13年もの、-80度保存)から細胞培養に成功した。
  • 分裂活性のある細胞の核移植で体細胞クローンウシを得た。
  • 核移植をした16個の卵から、最終的に4頭の産仔を得た。

以前の理研の冷凍マウスの場合(16年もの、-20度保存)は凍結組織から核のみを取り出して細胞に移植していたので、技術的には理研の方が高度。しかし、特別な処理をしていない-80度保存の組織から「生きた細胞」を培養することに成功した点では岐阜県畜産研究所の仕事は画期的(若山さんのコメントの通りですね)。

記事にも、「死後13年間凍結されていた牛の生きた細胞から」と書いてある。この記事では非常に残念なことに、この研究は「生きた細胞」が残っていることを実証したことが画期的なのに(マウスの場合は死んだ細胞から取り出した核であった)、「死後13年間・・・」の後に「牛でも可能なことを示し、・・・」と書いてある故に、その重要性が帳消しにされて理研のマウスと同工異曲の研究で、経済的な重要性しかないように読める。経済的にもインパクトが大きな研究であることには違いないのだけれど。

以前も書いたかも知れないが、クローン家畜の真の価値は単に「優れた肉質の牛や乳量の多い牛をコピー生産」して流通させることではない。

肉牛の場合、肉質の最終的な評価は牛を殺して肉を見るまでは分からない。これまでは、殺してしまうと同じ遺伝子型の牛は二度と手に入らないため、あらかじめ繁殖させた子孫の肉質を検定するしかなかった。この場合、子孫の肉質には父方と母方の両方の遺伝子の影響があるため、種牛自体の評価を定めるのが難しかった。しかし、クローン牛であれば全く同じ遺伝子型の牛で肉質の検定ができる。

また、安福号のように優秀な種牛であれば、そのクローンは正常に成長したことを見極めてから繁殖用に使えば良いのであって、手間をかけて一頭ずつ作成したクローン牛をつぶして肉にする必要はないのだ。普通に交配した方がずっと安上がりなのだ。

ちなみに国内で生産されたクローン牛に関する統計(H20.12.22付)はこちら(農林水産省 農林水産技術会議まとめ)。参考として各地の畜産試験場のデータが添付されているが、残念なことにこの資料では今回の論文に関わるデータは岐阜県畜産研究所の欄にも近畿大学の欄にも記載されていない様子だ。

---

 

昨年はモデル動物としてのネズミ、今年は産業動物としてのウシの体細胞クローンが日本で誕生した。ほ乳動物の体細胞クローン技術の進歩には目を見張るものがある。この研究領域の将来を展望すると一つの法則性が浮かび上がる。それに基づいて一つの大胆な予想を行うと、来年はおそらく絶滅危惧種に指定されている剥製のアムールトラから核移植によって体細胞クローンが誕生するだろう。

 そして再来年はウサギ、その先はタツ・・・? ここまで真面目に読んでしまった方には申し訳ない・・・だってネズミもウシも干支なんだ(体細胞クローンイヌは戌年ではないし、ドリーも丑年だったけどね)。

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2009年1月 8日 (木)

島津製作所から微量測定用の分光光度計

石英セル不要で微量の核酸水溶液の濃度を測る分光光度計では、NanoDropNanoVueが先行しているが島津製作所からも同様の機能を持った分光光度計が発売された。
BioSpec-nanoというもので、定価ベースで130万円位とのこと(競合製品よりも30-40万くらいお買い得です)。

競合するNanoVueは本体だけで計測できるPC要らずのところが良い(PCがないので当然、起動も速い)。NanoDropは設置スペースが極小なところがよい。ただ、どちらも石英セル+ホルダーに相当する部分が可動式なので光路長の安定性は大丈夫なのか?という機構になっている。

BioSpecは光路長を決める石英セル+ホルダーに相当する試料導入部位が可動式なのは他の製品と一緒なのだが、他の製品ではそこが手動なのに対して機械式になっている(・・・ので反復精度は高いかも)。設置場所のフットプリントはPC外付けなので、他のものより大きい。

PCとの接続方式は不明。USBなら格安のネットブックでも制御できるので導入コストも安上がり(今時、RS-232CだのGP-IBの如き化石のようなインターフェースは勘弁していただきたい)。ただし、ソフトによってはディスプレーの解像度が低いと操作メニューが画面からはみ出すことがあるので購入時には要確認。

BioSpec-nanoのもう一つのウリは、”自動拭き取り機構”らしい。測定終了後に液滴を自動的にぬぐってくれる。後片付けの手間が要らないので"measure and forget"と言う案配だ。ありがたい機構なのだが・・・なんなく横着。

個人的には、可動部分が多い機械は壊れやすいと信じているので、このメカはオプションにしてもう少し安くした方が良かったのではないかと思う。光源がキセノンフラッシュランプと言うところはGood(NanoDropもそうだけど)。十数年前までは、UVとVISの光源が別々で、UV用は水銀ランプというものが多かったのを思えば時代を感じる。水銀ランプと違ってほとんど劣化しないし。

ちなみに、スペックは、

  • スペクトルバンド幅は3 nmなので分光光度計としての性能を追求した製品ではない(NanoDropと一緒。NanoVueは5 nm。核酸専用と考えれば十分なスペックだが)。
  • 光路長0.2mm:1~75 OD (50~3,700 ng/μL)
  • 光路長0.7mm:0.3~21 OD (15~1,000 ng/μL)

とのこと。

このスペックを見て思ったのだが、数十ng/μLの濃度のDNAを計る必要がある場合は、LEDを光源にした簡易型の蛍光光度計(InvitrogenのQubit)の方が高感度(100 pg/µL-1µg/µL)。二本鎖DNA特異的な蛍光色素を使えばプライマーやヌクレオチド・モノマーの影響を受けずに定量できるし、本体価格も安いので消耗品扱いで買える(ピペットマン3本分くらい)。

ほとんどおもちゃのようにチャチな製品なのだが、実際に使ってみると測定精度はなかなか侮れない。十分実用に耐える水準だ。

Qubitの場合、バッファー、蛍光色素に測定用チューブがサンプルごとに必要な消耗品だ。二本鎖DNAを計る測定レンジの広いキットの場合、定価ベースで1サンプルあたり\72の消耗品が必要。18,055サンプル測定するとBioSpec-nanoの本体価格と同じ約130万円になる。

これは年間900サンプルの測定で20年分以上にあたる(ちなみに、私は1年間で100サンプル用のキットは使い切ったが、300サンプルまで計っていない)。それ以下のサンプル数しか計らないのであれば、130万円の装置を買う価はあまりない様に思う(20年以上使うのであれば話は違いますが)。

# あれれ、分光光度計の紹介のつもりだったのだが・・・。

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2009年1月 7日 (水)

二次方程式って高等数学なのか?

英国の有力紙、The guardianに見事なまでに愚劣な論説が掲載されている。一読あれ。
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2008/jun/06/maths.alevels

筆者Mr. Simon Jenkinsは数学は時間の無駄遣いだと主張。16歳まで高等数学を学んだとのこと。記事の表題は”Maths? I breakfasted on quadratic equations, but it was a waste of time”(数学?二次方程式を解きながら朝飯を食べたけど、時間の無駄だったね。)とある。高校生が解く二次方程式を高等数学と言うかどうかを論じる気は無いが、数学を時間の無駄と切って捨てる姿勢はいただけない。

数学を否定すれば、統計学も否定せざるを得ない。ノイズとシグナルの区別もつかないので、誤差なのか有意な違いなのか区別できないという恐ろしい事態になる。数学を科学を否定するのは、それを強力なツールとしている科学全般を否定するのと変わらない。

# 工学も計量経済学も、行動科学も言語学も認めないということだね。

大英帝国は産業革命の発祥の地である。しかし、同時にラッダイト運動の発祥の地でもあることを思い出さずにはいられない。

ちなみに、この論説には自由にコメントが書き込めるようになっており、概ね否定的なコメントが寄せられているところに若干の救いを感じる。一方、ジャーナリストがしばしば歪んだリスク報道をしがちなのか理解する鍵がここにある・・・のかもしれない。

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2009年1月 6日 (火)

体細胞クローン牛の安全性評価

1/6 読売新聞より。

クローン牛・豚、食肉解禁認める方向…食品安全委・部会

 クローン牛やクローン豚について検討している内閣府食品安全委員会の作業部会が、食品としての安全性を認める見通しになった。

Click here to find out more! 専門家による部会の小グループが「(従来の牛、豚と比べ)差異のない健全性を有する」と結論づけたのを受けた。食品安全委が最終的に認めれば、クローン牛の市場への流通に道を開くことになる。

 体細胞クローン牛や豚については、従来の家畜より死産や出産後の死亡率が高いこともあり、安全性が不安視されていた。

 小グループは国内外の文献を調査。その結果、「誕生から6か月を超えると、健常に発育する」と結論づけた。また、クローン牛や豚の子孫についても、「従来の繁殖技術による牛、豚と差異は認められない」としている。

 作業部会は月内にも結論をまとめ、専門調査会に報告。さらに食品安全委員会が報告書をまとめ、年内にも厚生労働省に答申し、その後に国が最終判断 する。体細胞クローン動物を巡っては、混乱を避けるため、クローン牛を誕生させた各研究機関が、農水省の要請で出荷を自粛している。

(2009年1月6日13時55分  読売新聞)

 これまで出荷の自粛要請(つまり、お願い)で、国内では出荷されていなかっただけのこと。輸入牛肉に入っていなかったかどうかはわかりません。そもそも区別できませんから。

 なので、「解禁認める」という言い方が適切かどうか。論理的にいえば、禁止されていないものを解禁することができるのだろうか?

 食安委の判断としては、まぁ、そうだろうなと言う結論。正常に育たなかった産仔が出荷されることはないので、そこの安全性がどうのと言う議論は、出荷される製品の安全性を論じるという議論の目的を考えれば、前提からして間違っている。

 体細胞クローン家畜の科学的な安全性の問題については、今後、作業部会から委員会へ座敷が変わるだろうが、議論に瑕疵がない限り結論が大きく変わることはないだろう。また、これをうけて今後各種の団体から根拠のない不安を訴える声や反対声明が聞かれるのだろうな。

  一方、表示の問題では、既に流通が認められている受精卵クローンについては「受精卵クローン牛」あるいは「Cビーフ」(このセンスはどうなのかね)と言う 任意表示となっている。体細胞クローンについても、安全性については科学的に何等問題ないのであれば、表示することができるという任意表示にとどめておい ていただきたいものだ。

# 体細胞クローン=somatic cloneなので、SCビーフ?

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# 先ほどランキングを見たら19位でした。そんなに見る人がいるなんてどうかしています。

2009年1月 5日 (月)

Pandemic influenza

今月公開予定の映画、「感染列島」。謎のウイルスが人類を襲うというテーマですが、この種のパンデミックものの古典といえば、やはり小松左京の「復活の日」か、昨年11月に亡くなったマイケル・クライトンの書いた「アンドロメダ病原体」が白眉でしょうか。

公開時期をインフルエンザがもっとも流行りそうな時期にぶつけてくるというのはちょっとブラックユーモアが過ぎるのでは、と思うのは考えすぎでしょうか。この映画を見に行く方はマスクをしていった方が良いかもしれません。人の集まる映画館ではインフルエンザ感染のリスクが高いと考えられますので。

以下、12/31の毎日新聞より。

スペインかぜ:原因遺伝子特定 新型インフル治療薬に道

 1918年に流行し全世界で約4000万人が死亡したとされる「スペインかぜ」のウイルスが強毒性になった原因遺伝子を、東京大と米ウィスコンシ ン大が特定した。発生が予想される新型インフルエンザの治療薬開発に役立つという。米国科学アカデミー紀要(電子版)で発表した。

 スペインかぜはインフルエンザの一種。毎年流行するインフルエンザウイルスは鼻やのどで増えるが、スペインかぜウイルスは肺で増え、死者の多くがウイルス性肺炎だった。

 米ウィスコンシン大の渡辺登喜子研究員らは、インフルエンザウイルスを人工的に合成する技術を利用。8種類あるスペインかぜウイルスの遺伝子の組 み合わせを変え、通常のインフルエンザウイルスに組み込み10種類のウイルスを作った。実験動物のフェレットに感染させ増殖の違いを比べた。

 ほとんどのウイルスは鼻でしか効率的に増えなかった。これに対し、「RNAポリメラーゼ」という酵素を作る4種類の遺伝子がスペインかぜのものを 使ったウイルスは、フェレットの気管と肺でも増殖。完全なスペインかぜウイルスと同じように強毒性を持っており、この4種の遺伝子が強い毒性にかかわって いることを突き止めた。

 研究チームの河岡義裕・東京大医科学研究所教授(ウイルス学)は「4種の遺伝子が作るたんぱく質の働きを抑える薬を開発することが、新型インフルエンザ対策に重要だ」と話している。【関東晋慈】

オリジナルの論文はこちら。インフルエンザ・ウイルスのRNAポリメラーゼのサブユニットはPA, PB1, PB2の3種類なので、この記事で言う4種類というのはどういうことかいな?と思って論文を見ると、Nucleoprotein (NP)も入れて4種類と言ってるんですね。

インフルエンザ・ウイルスのRNAポリメラーゼ自体はPA, PB1, PB2だけで活性を持つというのが現在の定説と考えると、”「RNAポリメラーゼ」という酵素を作る4種類の遺伝子”というこの記事の表現は誤り。この論文でもそんな表現はしていません。

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さて、

Watanabe, T. et al. Viral RNA polymerase complex promotes optimal growth of 1918 virus in the lower respiratory tract of ferrets. Proc Natl Acad Sci U S A  (2008).doi:10.1073/pnas.0806959106

ですが、この論文では、1918年に流行したスペイン風邪のインフルエンザ・ウイルス(現在入手可能なおそらく 唯一のパンデミック・インフルエンザ・ウイルス; 1918)とA/Kawasaki/173/2001株(K173)のゲノムのモザイク(reassortant)を人工的に作成しています。その際に、 PA,PB1,PB2,NPの4種類の遺伝子については1918あるいはK173、それ以外の遺伝子はK173となるような組合せで10種類のreassortantを作成しています。

結果として提示されているデータはFigureが二つ、Tableは一つで、極めてシンプルな論文です。まず培養細胞(MDCK cell)でreassortantの増殖活性を確認し(Fig.1)、フェレット(イタチですね)に経鼻接種して、気管と肺でのウイルスの増殖を見てい ます(Table 1、ウイルスのタイトレーションの方法は、素人なのでわかりません)。そして、ウイルスの感染後の肺の組織の病理学的検査を行っています。

培養細胞でのウイルス増殖は野生型の1918にほぼ匹敵するものが幾つかあるようです(グラフが小さくて・・・)。RNAポリメラーゼ全体とNPを1918に置換した1918(3P+NP)/K173は、他の株の折れ線グラフに紛れています。しかし、フェレットに感染させた試験結果では気管と肺の両方について供試したフェレット3頭全てからウイルスが検出されたのは野生型の1918と1918(3P+NP)/K173のみでした。また、病理学的検査の結果では、RNAポリメラーゼとNPを1918型に置換したreassortantでは1918同様に気管支とその周辺に重度の炎症が見られ、免疫染色でウイル スの抗原が検出されています(Fig. 2)。

このことから、1918株のRNAポリメラーゼとNPがウイルスの増殖と、その結果としての重症化に深く関与していると考えられます。
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ウイルス感染症が重症化する場合、
 1. 細胞への感染 → 2. 細胞内での増殖 → 3. 細胞からの放出 → 1. へ
というサイクルが体内で起きています。その際に、細胞が破壊されて組織がダメージを受け、そこに細菌が感染することでさらにダメージが増幅するケースや、ウイルス感染自体が炎症を起こす引き金になって、細胞が炎症を誘導する物質を放出し、さらに炎症や発熱が重症化するケースがあります(サイトカイン・ストームと言う奴ですね)。

このサイクルの中で、通常は”3. → 1.”の間に、ウイルスの外被タンパク質が宿主や、感染した細菌のプロテアーゼで部分分解を受けるステップがありますが、培養細胞ではその部分が生体とは違っていて、きちんと部分分解されないため外部からプロテアーゼ(トリプシン)を加えてやります。しかし、それでは生体で起きる感染サイクルを正確に再現できないため、動物実験がどうしても必要になる、ということのようです。もっとも、フェレットがヒトのモデルとしてどのくらい近似できるか難しいところですが、倫理的にも経済的にも、やたらと霊長類を使うわけにも行きません。悩ましいところでしょうか。

これまで開発された抗ウイルス薬であるタミフルやリレンザは、ノイラミニダーゼ(NA)を標的にした阻害剤で、3.の細胞からの放出をピンポイントで止めます。なので、あまり細胞外のウイルスが増えてしまってから薬を投与しても感染の拡大を止めることはできません。また、NAもウイルス外被タンパク質なので、比較的変異が起こりやすく耐性ウイルスが出現しやすいのも泣き所と言われています。

RNAポリメラーゼは、NAよりも比較的保守的である(変異しにくい)と考えられているので創薬のターゲットにしやすいことが予想さ れます。また、1918株のように重症化するインフルエンザに特異的な、広い範囲の細胞で増殖する能力がRNAポリメラーゼ自体によって与えられるのであれば、その働きを薬で止めることができれば重症化は避けられるかも知れないという希望が持てます。

一方、こんな論文も出ています。

Morens, D.M., Taubenberger, J.K. & Fauci, A.S. Predominant role of bacterial pneumonia as a cause of death in pandemic influenza: implications for pandemic influenza preparedness. J Infect Dis 198, 962-70(2008).  

一言で言ってしまえば、「スペイン風邪の死者の大半は細菌の二次感染による肺炎だった。」という論文です。もし、そうであれば現在の医療の水準を持ってすれば、感染爆発(パンデミック)は起きても、それによる死者はかつてよりも大幅に少なくすることができるはずだ。

いずれにしても、現状でもインフルエンザ・ウイルスに感染した場合の対策は、とりあえず軽症で済ませるために水分と栄養の摂取と解熱剤、それに二次感染を抑 える抗生物質くらいしかありません。それに加えて特に高齢者は、肺炎双球菌に対するワクチン接種もした方が良いかも知れません。結局、パンデミックの場合もそうでない場合も、備えるべきは一緒だったということかもしれません。

# 同じ備蓄するなら、タミフルよりも抗生物質の方が良いかも?

 

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2009年1月 4日 (日)

安全と安心と

安全と安心
よく混同される 言葉だ。安全かどうかは客観的に評価できるが安心はアンケートでもとらないと評価できない、とか制度で担保できるのは安全であって安心ではないという区別がある。

最近、こういう混同はいかんなぁと思ったのは以下の記事。12/25の日本経済新聞より。

地域医療強化へ対策会議初会合開く

 政府は26日午前、「地域医療の機能強化に関する関係閣僚会議」の初会合を首相官邸で開いた。医師不足問題への対応や医学部の定員増など地域医療に関する各省の取り組みについて意見交換。各省の連携を強化することを確認した。

 会議には麻生太郎首相のほか、河村建夫官房長官、舛添要一厚生労働相、塩谷立文部科学相、鳩山邦夫総務相らが出席。首相は「救急患者の受け入れができな いなど地域医療は深刻な状況になっている。地域における医療の確保は国民の安心の基盤中の基盤だ」とあいさつした。(13:06)

これは記事を起こす際の書き間違いではない。私はこの会合冒頭の総理の談話をNKHのニュース映像で見てがっかりした。私思うに、この文脈で総理大臣が言うべきことは「地域における医療の確保は国民の”生命の安全”の基盤中の基盤だ」ではないかと。地域医療の強化は、数値目標に照らして達成度を評価すべき種類の政策課題であって、国民が安心できればそれでいいというものではない。

ちなみに、日本国憲法では、

第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

となっている。

生命(略)に対する国民の権利」は公共の福祉に反しない限り、最大限尊重することが規定されているが、少なくとも憲法は我々に安心を保証される権利を規定していない(逆を言えば政府は国民の安心を保証する義務を、憲法上は負っていない)。安心できなければ幸福ではないと言うのであれば、強いて読ませれば「幸福追求に対する国民の権利」だろうか。

優先順位を考えれば、政府が対応するべきは、まずは国民の生命の安全であって、安心は後回しで良い。実質的な安全を伴わない根拠のない安心の方が、根拠のある不安よりもよほどたちが悪いのだから。

# 総理の漢字の読み間違いよりは、こういう勘違いの方が問題だと思うがマスコミは食いつかないね。考えるのが苦手なんだろうか。

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2009年1月 2日 (金)

足が速い奴も蔑まれたかも知れない

「勉強ができる」という蔑称”というエントリーを読んで思った。

(仮説) ヒトが他人を蔑視する場合、対象に対する何等かの危機感を持っているのではないか。

# 「他人」でなく「他国」でも良いし、「蔑視」でなく「敵視」でも良い。構造的には同じことだ。もっとも、私はこの仮説が検証できるとは思っていない。

ヒトの生存にとって、狩猟や格闘の能力が重要だった時代にはそれらの能力に長けた人間が「蔑視」の対象であったかも知れない。例えば、狩猟がヒトの生存に重要な時代には、”あいつは足が速い奴だ”という具合に。

平和な現代においては、身体能力の高低はもはや生存競争のキーではない。卓越したスポーツ選手の能力のように、決められたルールの中で発揮され、評価される。それは、洗練され、様式化された故に、生存に必要かどうかという生臭い現実を離れ、我々は一種のフィクションとして見ることができる。

だから、プロスポーツ選手が何十億円の所得を得ようが、もはや「蔑視」の対照にはならないのだ (”頭でっかち”とは言うが、”体でっかち”とは言わないでしょう?)。

そのかわり、今や社会的な地位を高く維持する適応能力が「蔑視」の対照になっているのではないか。そのベクトルは、官僚や政治家や医師、そしていわゆるお金持ちに向けられている様に思う。

生物の”個体”にとっての生存競争は、遺伝子の存在を賭けた環境と個体との戦いである。一方、コンラート・ローレンツがテーマとしている、”闘争”は同種の生物との生存競争を指す。同種の動物同士の”闘争”は、しばしば鳥のダンスやディスプレイのように”様式化”されており、力ずくで相手をねじ伏せるケースの方が例外的である。

ヒトの蔑視に起因するネガティブ・キャンペーンも、様式化された”闘争”の一つの形態ではないだろうか。”ことば”によるそれは、理性に基づいた行動ではなく、我々の本能のうちに植え付けられた、拭いがたい刻印ではないのか。

また、”ことば”による蔑視の表明は滅多に非難されることはない(朝日新聞の”素粒子”程に言葉が過ぎれば別だが)。一方、元厚生労次官宅連続襲撃事件のように、直接的な暴力に訴える場合は当然処罰される。闘争の流儀としては、前者はルールに則っており、後者はそうではないのだろう。

足の引っ張り合いは”全体として損をする”というのは、その通りだ。しかし、その蔑視がヒトとしての本能的な”闘争”であれば、たとえ全体として損であっても、われわれがそのことに気づいて理性を働かせない限り避けることはできないのだ。

アメリカでもgeekという言葉は一種の別称として使われている様なので、知的に秀でた個人を抑圧する行為を、日本の精神風土と片付けるべきではないだろう。

それは、”日本は金持ちだから”とみる近隣諸国の羨望と軽蔑の入り交じった視線にも似てはいないだろうか。

# かつて日本人もまた、米国人に対してそのような視線を送っていたことがあったのではなかったけ?

以下横道。
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マスコミはしばしば、官僚や政治家や大企業をバッシングする。その動機は、読者がそれを本能的に喜ぶ(と思っている)からだろう。行政や政治や製品・サービスを現状よりも本気で良くしたいのであれば、ネガティブキャンペーンよりやるべきことはほかに幾らもある。組織として働くマスコミ各社が気づかないはずはないのだ。それにもかかわらず、ネガティブキャンペーンに終始しているのは、読者に迎合することでより多くの読者を捕まえておくこと自体を目的として、自己の行動を最適化した結果であろう。

新聞や民放は、メディア(媒体)である。報道も行うがその収益の源は広告だ。広告に依らないメディアが不偏不党かといえば週間金曜日や赤旗、聖教新聞を見ればわかるとおり、理想とはほど遠い有様なのだが、広告収入に依存している限り、読者の本能に迎合した紙面にならざるを得ないのだ。

そして、”(新聞社の思い描く)消費者とはこんなものだ”という独善が、ついにこのような結果を招いたのではないか。J-castニュースより。

毎日・産経が半期赤字転落 「新聞の危機」いよいよ表面化
2008/12/26

  朝日新聞社の赤字決算が新聞業界に波紋を広げるなか、その流れが他の新聞社にも波及してきた。毎日新聞社と産経新聞社が相次いで半期の連結決算を発表した が、両社とも売り上げが大幅に落ち込み、営業赤字に転落していることが分かった。両社とも背景には広告の大幅な落ち込みがある。景気後退の影響で、さらに 「右肩下がり」になるものとみられ、いよいよ、「新聞危機」が表面化してきた形だ。

「販売部数の低迷、広告収入の減少など引き続き多くの課題」

  毎日新聞社は2008年12月25日、08年9月中間期(08年4月~9月)の連結決算を発表した。売上高は前年同期比4.2%減の1380 億3100万円だったが、営業利益は、前年同期26億8300万円の黒字だったものが、9億1900万円の赤字に転落。純利益も、同12億5600万円の 黒字が16億1900万円の赤字に転じている。

  単体ベースで見ると、売上高は前年同期が734億2500万円だったものが、6.5%減の686億8400万円に減少。営業利益は同5億 4100万円の黒字が25億8000万円の赤字に転じ、純利益は1億8900万円の赤字がさらに拡大し、20億7800万円の赤字と、約11倍に膨らん だ。

   発表された報告書では、

    「当社グループを取り巻く新聞業界は、若年層を中心として深刻な購買離れによる販売部数の低迷、広告収入の減少など引き続き多くの課題を抱えている」

とし、業績不振の原因として、販売部数と広告収入の落ち込みを挙げている。

   毎日新聞社の常務取締役(営業・総合メディア担当)などを歴任し、「新聞社-破綻したビジネスモデル」などの著書があるジャーリストの河内孝さんは、

    「『上期で赤字が出ても、下期で巻き返して通期では黒字にする』ということは、これまでにもあった」

と話す。ところが、今回は事情が違うといい、広告の大幅落ち込み傾向もあって、通期でも赤字が出る可能性が高いと予測している。河内さんは、

    「仮に通期で赤字が出たとすれば、事実上倒産し、1977年に現在の『株式会社毎日新聞社』に改組されて以来、初めての事態なのでは」

と話している。

産経新聞も営業赤字に転落

   産経新聞も08年12月19日に、08年9月中間期の連結決算を発表している。こちらも、毎日新聞と同様、不振ぶりが読み取れる。

  子会社の「サンケイリビング」をフジテレビに売却した関係で、売上高は978億500万円から17.4%減の808億1900万円にまで落ち込んだ。9億 2900万円の黒字だった営業損益は、4億3400万円の赤字に転落。特別損失として「事業再編損」16億8400万円が計上されており、純利益は前年同 期では1億1700万円の黒字だったものが、19億8400万円の赤字となっている。

  単体ベースでは、売上高は前年同期が588億1200万円だったものが539億4300万円に8.3%減少。営業利益は9億2700万円の黒字が10億 7800万円の赤字に転落。一方、純利益は、特別利益として「関係会社株式売却益」39億100万円が計上されたことなどから、前年同期は2億 2900億円の黒字だったものが、5億8300万円に倍増している。

   同社の報告書では、業績不振の背景として、毎日新聞と同様、広告・販売収入の落ち込みを指摘している。また、同社は新聞社の中ではウェブサイトへの積極的な取り組みが目立つが、報告書でも

    「(同社グループ)5サイトは月間合計8億ページビューを記録するなど順調に推移している。『MSN産経ニュース』は産経新聞グループの完全速報体制が構築されており、新聞社系のインターネットサイトの中でも特にユーザーの注目を集めている」

と、自信を見せている。一方で、ウェブサイトが同社の収益にどのように貢献したかについての記述は見あたらない。

”読者が離れる → 広告媒体としての用をなさない → 広告のスポンサーが離れる”という構図がある。

これを市民が理性的にネガティブ・キャンペーンから目を背け始めた兆し、と信じたい。

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2009年1月 1日 (木)

新春を言祝ぎ謹んでご挨拶申し上げます

年賀状というのは字数制限があって、あらかじめ書きたいことをまとめておかないと紙面に収まりきらないという見苦しい有様になってしまいます。その点、ブログだと、いかにだらだらと書き連ねようとも、長さに制限はなし切手代がかかるわけでなし、お気楽です。また、あれこれ外部情報にリンクできるのも重宝です。

というわけで、あらためて新春を言祝ぎ謹んでご挨拶申し上げます。

昨年は原油高・穀物高で生産活動が苦しくなったかと思えば、サブプライム・ローン問題で信用収縮が起こって、一転して生産活動が滞り → 原油価格が下落し、穀物価格も安値安定、生産活動低迷のあおりで非正規労働者の雇用が一気に不安定になる・・・と言う具合に経済情勢がめまぐるしく変わった一年でした。

# 以下、経済学畑の方から見れば屁理屈かも知れません。

日本では職を失う方々が8万5千人を超える見通しと言われていますが、10億の国民を擁する中国では失職した農民工だけで2000万人とも3000万人とも言われています(「白髪三千丈」のお国柄なので鵜呑みにして良いのか迷いますが、四川大地震による失業者はこのうち140万人くらいだとか)。人口比では日本:中国=1:10ですので単純計算では失業率は235-350倍になります(労働人口の年齢による補正は行っていません)。

北京オリンピックの建設ラッシュもとうに一段落しているし、その際の雇用の期限は最初から見えていたので建設関係の離職者については整理が済んでいるはずですが、経済の停滞の影響は”世界の工場”に対してより濃い影を落としたと言うことでしょう。もちろん、我が国の8万5千人の失職は大問題なのですが、私は日本の経済規模に比してむしろ影響が小さかったのではないかと考えています。

その理由の一端は、日本の鉱工業生産にしめる”手仕事”の割合が近年、著しく減っていることにあるように思うのです。そのものずばりの統計があればよいのですが、当たらずとも遠からずというデータを示します。産業量ロボットの国別導入台数の比較データが外務省のサイトにあるので、グラフにすると次の通りです。
Robots_2
日本の保有台数は35万台あまり。二位のアメリカ(約15万台)、三位のドイツ(約13万2千台)、四位の韓国(約6万8千台)の合計よりも若干多いくらいです。これは、日本の製造業の現場では、もともと労働者が行ってきた作業をロボットが行う様になってきたことを示すデータと考えることもできるのではないでしょうか。その結果、単純労働者が非常に少なくなってきたのだと

日本は高度経済成長期以来、農村部からの労働力を鉱工業に移転して、”三ちゃん農業”、ひいては”一ちゃん農業”を生み出し、農村部から労働力と、労働力の調整能力をすっかり奪ってしまいました。そのおかげで(いびつな形ですが)農業の機械化も進みました。今や、都市部で失業しても帰れる田舎など無くなってしまいました(そう言う意味では中国の農民工のように農村に帰るわけにも行かず、それよりもマシと言えないかも知れないのです)。

政治家も行政官も財界人も、しばしば産業構造改革と言う言葉を口にします。新聞もそれを悪し様には書き立てません。しかし、これまで産業構造の高度化の美名の下に行われてきた労働力の移転の結果がこれなのです。はたしてこれを、大失業時代の回避に成功したと受け止めるべきなのでしょうか。

これで良かったのか、日本はこれからもこの方向を推し進めていくのか。そして、私達はどう対応して暮らしていくのか。そんなことを常に頭の片隅でちらちらと考えながら今年も宜しくお願い申し上げます。

# ちなみに、今日は閏秒の調整でいつもよりも1秒余計に考える時間があります。

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