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2008年12月7日 - 2008年12月13日の記事

2008年12月13日 (土)

美味しいお米は気象変動に弱いのかも知れない。

まず、美味しくなさそうなお米のニュース。
http://narc.naro.affrc.go.jp/inada/press/2008/press081210.html

  • 製麺用に”越のかおり”と言う品種を育成した
  • インディカの遺伝資源を利用してアミロース含有率33%
  • 収量水準はコシヒカリの90%程度
  • タンパク質は6%台でコシヒカリ並み

実は、”美味しくなさそう”というのは炊いて食べる場合の話。麺で利用する場合はその限りではない。

デンプンには枝分かれ構造の異なる二種類の分子が含まれており、枝分かれが極少ないものをアミロース、枝分かれが多いものをアミロペクチンと呼んでいる。穀類のアミロース含有率は分光光度計を使って、ヨードデンプン反応を比色法で計測する場合が多い。この測定方法では、アミロースとアミロペクチンの比率が同 じ場合でも、アミロペクチンの枝分かれの程度や脂質の混入程度によっても測定値が変動し、推計に誤差が生じることが知られており、ヨードデンプン反応によ るアミロースの測定値は科学的には”見かけのアミロース含有率”(apparent amylose content)と呼ばれている。

イ ネのアミロース含有率は通常0-32%とされている(Nakagahra et al., 1986)。なかでも粳米では、インディカタイプの方がジャポニカタイプよりもアミロース含有率が多いことが知られている。典型的なジャポニカタイプの粳 米のアミロース含量は13-17%程度(要出典)だが、インディカタイプでは20%以上のものも珍しくない。

多くの穀類でアミロース含有率は20%台であることを考えると、それと比べても”越のかおり”アミロース含有率33%というのはかなり高い。デンプン合成系の遺伝子に何らかの突然変異を持っていると考えるのが自然だ。

ちなみに、イネは登熟期に高温にさらされるとアミロース含有率が低下することが知られており、その原因はアミロースの伸長反応を行うGBSSI遺伝子の転写産物が減少することが関係していると考えられている(Yamakawa et al., 2007)。

インディカタイプとジャポニカタイプの粳米では、GBSSI遺伝子に由来するWaxyタンパク質の蓄積量が異なっており、その原因はジャポニカタイプの GBSSI構造遺伝子のスプライシング・サイトに生じた点突然変異に由来するmRNAのスプライシング効率の違いであることが確かめられている (Wnag et al., 1995; Cai et al., 1998; Hirano et al., 1998; Isshiki et al., 1998)。

一方、ジャポニカタイプのGBSSI遺伝子では低温によってスプライシングの効率が向上してGBSSI転写産物の蓄積量が増えることと(Larkin and Park 1999)、 上記の高温登熟によるGBSSI遺伝子の転写産物の減少と併せて考えると、少なくともジャポニカタイプのGBSSI遺伝子を持つイネは登熟期間の温度に よって、低温であればアミロース含有率が増加し、高温であれば逆に低下するため、結果として食味が不安定になりがちであると言える。
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結局、小難しい理屈を並べてきたが、そこから見えることは、日本のお米が”美味しい”のは、ジャポニカタイプのイネの気象に影響されがちなGBSSI遺伝子 の微妙な遺伝子発現調節と、そこそこの効率でスプライシングが起きる日本の秋の気温との絶妙なバランスに支えられて成り立っているのだ、ということなの だ。

将来も”美味しい”お米を食べたければ、地球温暖化に耐えられるように、GBSSIの発現を登熟温度に左右されないように低水準に保つように制御する技術が必要ということだろう。遺伝子産物の量を微妙にコントロールする技術は今のところ確立していない。

もっとも、ヒトの感覚で”美味しい”という、あてにならないスタンダードを変えるという選択もあるのだが。
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コメの成分についてのOECDコンセンサスドキュメント(日本語版)
http://www.oecd.org/dataoecd/25/45/34643764.pdf

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2008年12月11日 (木)

何が見えているのか?

脳の視覚野に伝わった刺激を間接的に可視化できるようになったとか。平たく言うと、ヒトが見た映像を脳から取り出すことに成功した、ということだ。

http://www.atr.co.jp/html/topics/press_081211_j.html

電波系の盗聴妄想が現実のものになる可能性を秘めた技術。ますます「意識を盗聴されている」と騒ぐ輩が出てきそうで、その波及効果が心配だが、今のところはfMRIで計測する必要があるしMRIの装置自体も巨大なものなので遠隔的にヒトの脳を計測することはでない。

も しMRIを使わずにそんなことができれば、ALSや脊髄損傷で体が動かせなくなっても健常者とコミュニケーションがとれるようになるだろう(ブレイン・マ シンインタフェースというらしい)。ひょっとしたら、インターフェース次第では体が動かせなくても、自分でロボットを操作して背中をかいたり、インター ネットをブラウジングしたりできるかもしれない。

マスコミの報道では今ひとつピンと来なかったのだが、ATRのプレスリリースを見ると画像の再構成に使われたアルゴリズムと、データの分解能(時間 x 空間)が凄いらしい。これまでも測定データはとれたのだが、そのデータから画像をうまく再構成することができなかった。測定データから被験者が見た画像を 推定する技術が新しいと言うことだ。プレスリリースの計算手法の解説図をみると一種のニューラルネットワークのようにも見える。

研究の目的が、ブレイン・マシンインタフェースの開発であるのなら、さらに高精度化、高速化していくことになるのだろう。朝のニュースで見た限り、ほぼリアルタイムで読み取れていたので高速化はかなりのところまで来ているのだろう。

またプレスリリースにはこうある。

”またデザインや芸術創作活動において、言語化するのが困難な映像表現を脳信号からそのまま映像として取り出すなど、新たな創造的活動の手段を提供することができるかもしれない。”

究 極的には、たとえば映画監督の脳内映像を直接画像化するということを言ってるのだろうか。かつて、映画バットマンの撮影の際にハリウッドの俳優組合が監督に対して、俳優が演じることができるシーンにCGを使わないでほしいと要求したことがあった様に思う。これは、その遙か先を行くことになるかもしれない。

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2008年12月 9日 (火)

ダイズ・ゲノムのドラフトシ-ケンス公表

アメリカエネルギー省(DOE)の研究グループがダイズ・ゲノムのドラフトシ-ケンスを公表(2008/12/08)。年内発表が目標だったということなので、ほぼ予定通りの進捗なのでしょう。

データは、以下のURLから
http://www.phytozome.net/soybean

プレスリリースはこちら。
http://www.jgi.doe.gov/News/news_12_08_08.html

ダイズはwhole genome shotgunで配列を決めた生物種の中では最大級のゲノムサイズだろう。USDAのファンドではなく、DOEが主導したプロジェクトであるところに、アメリカに於けるダイズの地位が透けて見える様に思う。以下は、プレスリリースより。

”Soybean not only accounts for 70 percent of the world’s edible protein, but also is an emerging feedstock for biodiesel production. Soybean is second only to corn as an agricultural commodity and is the leading U.S. agricultural export.”

"According to 2007 U.S. Census data, soybean is estimated to be responsible for more than 80 percent of biodiesel production."

食料というよりは、戦略物資なのだ。なお、日本のNEDO (経産省系の独立行政法人)の文書でも次のように紹介されている。

"DOE JGI が大豆ゲノム配列の解析に関心を抱いているのは、大豆が、再生可能な代替燃料の中でも最もエネルギー含有量の多いバイオディーゼルの主要な原料となるからである。"

http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/1017/1017-07.pdf

なお、農水省・農業生物資源研究所関係者による米国ダイズ・ゲノム研究の調査報告と、この分野に於ける日本の研究方針等については以下の文書が公表されている。
http://www.s.affrc.go.jp/docs/kankoubutu/foreign/no46.pdf

我が国のダイズの自給率は5%程度。食用に限っても20%程度。いくら国内でダイズ・ゲノム研究に力を入れても、そして、それが育種に利用され、研究成果が国内生産に還元されたとしても、国内消費されるダイズの最大でも5-20%程度の消費量に対する幾ばくかの生産性の向上にしか反映されないことを考えると、大規模な投資を必要とする全ゲノム の解析は経済的な波及効果から見て、非常に説明し難い。それよりは、全ゲノム情報はアメリカで決定されたものを利用し、日本にとって特に重要な形質に焦点を絞って研究を進めた方が効率的。

第二次世界大戦でも実証されたように、米国に物量作戦で対抗するのは無駄ですから。

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アメリカがダイズをエネルギー作物でもある戦略物資と位置づけるのであれば、当然、バイオエタノール原料であるトウモロコシも戦略物資と言うことになる。

エネルギー作物の普及は石油への依存を軽減することにより、アメリカの中東への発言力の強化につながる。ロシアやアメリカ以外の産油国は概ねイスラム教国なので、ロシアもイスラム教国も嫌いなアメリカ大統領らしい施策ではある。

ただ、その施策の結果はといえば、現状でも、これらの作物に食料を依存することで、特に途上国では食料価格の高騰に由来する政情不安が起きている。政情不安が広がって政府が弱体化した国では得てして治安が悪くなる。

・・・これではかえって、テロの温床になっている気がするのだが。軍事産業に対する補助金投入の口実がほしかった訳ではないと思いたいのだけれど。

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[業務用覚書]

おかしいな。 deletion mutantのはずなのにPCRで遺伝子のサイズを確認したら野生型の方がサイズが小さい?

野生型とリファレンス系統の増幅産物のシーケンスをしておかないと、PCRで何が増えてるのか今ひとつ信用できないではないか。困った困った。しかも明日は出張だ。

2008年12月 8日 (月)

マウスの脂肪細胞(白色脂肪細胞及び褐色脂肪細胞)からプリオン病が感染することがわかった。

ニュースソースはEurekAlert!

オリジナルの論文はPLoS Pathogensに掲載された。

これまで、BSE等のプリオン病は神経系や胸腺などの”特定危険部位”(政府で使われているこの訳語は不適切であると思う)を介して家畜から人に感染すると考えられてきた。この論文で著者は以下のように示唆している。

Our results suggest that fat tissues of domestic or wild animals infected with prions may pose an unappreciated hazard for spread of infection to humans or domestic animals.

我々の結果は、次のことを示唆している。プリオンに感染した家畜や野生動物は、ヒトや家畜へのこれまで認められなかった感染の危険性を引き起こすかもしれない。

もし、表題どおりの現象が通常のウシでも起きるのであれば、全頭検査は言うに及ばず、”特定危険部位”という括りでリスク管理をしてきたことが、ほぼ無意味であったことになる。なにしろ、大量にある皮下脂肪でもプリオンが感染するということなのだから。ただし、そのプリオンの量と感染力がどの程度かによってとるべき対応は大きく違ってくるはずなのだが。

この論文を読むにあたり、留意するべき事項

要するに、ウシに適用しうる結果か?

     
  1. 使用されたマウスはプリオンに対する感受性が高いものが使用されていないか?(通常の動物では問題にならない水準ではないのか?)  
         
    • 組織へのプリオンの分布の調査は野生型のマウスだった(TGマウスも比較に用いている)。    
    • 脳の感染力価は野生型もTGも同等。(感染力価は8.9 vs. 9.8)    
    • 脂肪組織(皮下)の感染力価は、野生型ではTGの約1/2-1/3(4.7 vs. 8.6)    
    • しかし、この値は特定危険部位にあたる脳の1/2であり、舌(野生型では、4.7)と同等。安全と考えられている血清(野生型では1.8)の2倍以上にあたる。  
     
  2. 使用されたマウスは高齢ではないか?(例えばウシでは20ヶ月例以下では問題にならないレベルのものではないか?)  
         
    • 6-12ヶ月齢の若いマウス  
     
  3. プリオンの接種の方法は特別か?(近年、リスクとなりうる原発性のBSEを模している状況と言えるか、あるいは脳内接種?)  
         
    • 脳内に組織磨砕物の希釈系列を50uL投与  
     
  4. 脂肪細胞に蓄積していたプリオンの量は、神経細胞と比べて多いか少ないか?(仮にウシの脂肪で同等量が蓄積していた場合、ヒトが摂取する可能性のある見積量はどの程度か?)  
         
    • 感染力価で表現しているので分からない  
     
  5. 22Lスクレイピーに感染したマウスの組織は、感染力価は確認されているのだが、WTではImmunoblottでは脳以外の組織にプリオンが検出されていない。これは謎

など。

immunoblotと感染力価が対応していない、野生型個体については組織免疫染色でも脂肪組織そのものにはプリオンが確認されていない、など若干データに不整合があるように感じる。

論文の表題でも、”Detection of Prion Infectivity in Fat Tissues of Scrapie-Infected Mice”とあるとおり、プリオンそのものが脂肪細胞から検出された、と言うわけではない。感染性の基礎となる現物のプリオンが検出されないのは???

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