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2008年9月28日 - 2008年10月4日の記事

2008年10月 2日 (木)

東京大学の農場で水銀剤を使用 -試験ほ場の収穫物を売るのは止せばいいのに-

生産物を販売する目的で反復的・継続的に作物を栽培し収穫するのが農業であるならば、 研究所や大学の農場で行われている作物の栽培は農業ではない。生産物の販売を目的として生産活動を行っている訳ではないからだ。

研究所や大学の農場にある田や畑は、本来、生産物を販売して利益を得る目的で使用されるものではない。 農家の田畑は工場と同じような生産手段なのだが、研究機関の田畑は研究上のデータを得る為の手段であり、 そこで作られる生産物は副産物と言っても良い。

そう考えると、今回の一件の一因は、大学農場の生産物を処分せずに「販売」してきた慣行にあるように思う。

大学のほ場は一般の農家よりも小さいことが多い(もちろん例外はある。東大農場は22 ha以上とかなり広い)。 農薬の使用量も少ないのが一般的。今回使用された水銀剤も、73年以降は流通していないはずなのに24年以上たった97- 99年にかけて使われていたことからもわかる。東大農場に占める水田の面積はさほど広くないのだろう(米の収穫は年間1.3トンだ。10 aあたりの収量が500 kg程度なので、計算上26-30 a程度の水田面積ということになる。ちなみに朝日新聞では実習用水田は30 aと書いてあったので間違いないだろう)。

水銀剤は種子消毒剤としては強力で、しかも残効性があるので苗立ちまでイネをカビや細菌から守ることができる。 種籾を吸水させる際に水銀剤の水溶液に浸すだけで良いので手間もかからず比較的少量しか使わない。・・・なので、 やはり一度買うといつまでも減らない。そのかわり、問題になるのは種子消毒に使った後の廃液だ。水銀を含んでいて、 排水として流す訳にもいかないので産業廃水として処理しようとすると処分費用がかかる。農薬登録が抹消されたのも、 農家で水銀剤を使う場合は相応の量の廃水が出るので、農薬としての実用性があまりなくなってしまったためかも知れない。

種子消毒に使用した際に種子に残る程度の量の水銀剤は、土壌汚染を引き起こすほどの量にはならない。また、 その植物体が生育した際に濃縮されたとしても、元々の量が非常に少ないので収穫された米から検出することも難しいだろう。 ヒトが摂取する量としては、カジキやキンメダイの方が遙かに高濃度であるに違いない。また、酢酸フェニル水銀はメチル水銀とは異なり、 人体に蓄積しにくい性質があるので、10年前に問題の米を食べた市民から水銀剤由来の水銀が検出されるとは非常に考えにくい。

なお、「禁止農薬」という言い回しは正しくない。農薬取締法では一般原則は何でも禁止する仕組みで、 登録された農薬についてのみ認めている。さらに、平成15年の法改正で特定の農薬の販売および使用を禁止するルールになったことから、使用の制限に関しては「禁止農薬」というよりは使用禁止農薬 と言った方が良いだろう。

特定の農薬の使用を禁止するルールにはなっていないので、使用に関しては「禁止農薬」 というよりは無登録農薬と言った方が良いだろう。

・・・と言う前提で、以下の記事。毎日新聞より。

 

禁止農薬:東大農場で使用 米栽培し販売…90年代後半
 

 東京大大学院農学生命科学研究科附属農場(東京都西東京市)で、   使用禁止となっている水銀系農薬が少なくとも3年間、米の実習栽培で使用されていたことが分かった。   収穫された米は地域の住民に販売されており、東大は残留農薬などの調査に乗り出した。今のところ、健康被害の情報はないという。  
 
   東大によると、問題になっているのは、73年に使用禁止になった「酢酸フェニル水銀」が含まれる農薬。97~99年、   職員が米の種もみの消毒に使用。06、07年にも、同じ職員がカキやリンゴの苗木の消毒に使った。カキはまだ実をつけておらず、   リンゴは食用ではなかった。酢酸フェニル水銀は農薬取締法で、研究目的での使用を認められており、使用禁止後も農場に保管されていた。  
 
   この職員は、大学の調査に「使用禁止と知っていた。田んぼが荒れたり、稲に病気が広がった時期があり、効果があったので使った」   と説明したという。
 
   この3年間に収穫された米は、4トン前後に上るとみられ、大半が住民に販売されたり、学生が食べたりした。酢酸フェニル水銀は長期間、    摂取すると腎臓に悪影響が出る可能性があるが、東大は「食べる段階まで残留していた恐れは小さい」と話している。   人体への影響の有無のほか、他に使用していた職員がいないか聞き取りを進めている。2日午後には、住民への説明会を行う。

   東大農場のホームページによると、農場は東京ドーム約5個分に相当する22・2ヘクタールの敷地があり、   米のほかにも野菜や果樹の栽培も行われている。
 
   2日、記者会見した濱田純一副学長は「住民や関係者に不安を与えたことを深くおわびします」と陳謝した。【川崎桂吾】

結局、イネに使用された時期は「97~99年」の今から見れば10年前。一方、「この3年間に収穫された米は、 4トン前後に上るとみられ、大半が住民に販売されたり、学生が食べたりした。」と記事にはある。 調査結果如何だがこの時期の米は水銀剤と関係があるのか?よく分からない記事だ。

ちなみに、農業試験場では登録前の新しい農薬(当然、無登録農薬だ) の有効性や薬害を調べる試験が行われるところが多い。試験用の水田に無登録農薬を散布することになるのだが、 試験の目的からしてこれを禁止してしまっては新しい農薬が開発できなくなるので、農薬取締法でも試験研究用の使用自体は認められている。

しかし、収穫物の流通となると話は別で、収穫物から無登録農薬が検出された場合、 その濃度が一律基準以下でなければ食品衛生法違反が疑われる。先般、非食用米として処分されたもののうち、 新潟県の農業試験場から売り渡されたものはこの種のコメであると考えられる。

私は、試験用に栽培した作物は、もともと食用としての販売を意図して生産している訳ではないのだから、 その収穫物は流通させない方が良いと思う。食べられない訳ではないので、みすみす捨てるのはもったいないと言う考え方はある。 それはわかるのだが、明らかに無登録農薬を使っている試験場で生産した生産物なので、 ドリフトや収穫物の混入で無登録農薬が検出されるリスクはそこそこ高いし、そうならないためには、農薬の散布や収穫物の管理、 収穫に使う機器の扱いに相当の神経を使うし、それなりのコストもかかる。 わずかな収穫物の売却益のために少なからぬ職員の労力を使うというのは、行政のムダと言うやつではないのか?

コメやムギを例にとれば、だいたいそう言う案配だが、他の作物の場合は私にはわからない。

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2008年10月 1日 (水)

危険な澱粉質食品にも法的規制を!?

朝日新聞より。読んでいて頭が痛くなってきた。

 

こんにゃくゼリー、また幼児死亡 対策取られず17人目

  2008年9月30日12時10分    

     国民生活センターは30日、兵庫県の男児(当時1歳9カ月)がこんにゃく入りゼリーをのどに詰まらせる事故が7月にあり、9月20日に死亡したと発表した。こんにゃくゼリーは子どもや高齢者には窒息の危険があるとされ、95年以来の死者はわかっているだけで17人となった。規制する法的な枠組みがないとして抜本的対策がとられず、被害が広がっている。  
 
     センターによると、事故のあった製品は業界最大手「マンナンライフ」(群馬県富岡市)の「蒟蒻(こんにゃく)畑 マンゴー味」。凍らせたものを7月29日に祖母が与えたという。  
 
     こんにゃくゼリーでは95~96年に8件の死亡事故が相次いだ。センターの注意喚起や業界団体の注意表示で97~04年は8年で3件と減ったが、     05~07年の3年で5件と再び増加の兆しを見せている。昨年3月には三重県伊勢市で男児(当時7)が学童保育所でおやつに出されたゼリーで窒息死した。  
 
     センターは昨年7月にも業界団体や国に対して事故防止策の検討を要望。しかし、食品衛生法を所管する厚生労働省は「食中毒対策など衛生面で危害の恐れがない」、日本農林規格(JAS)法所管の農林水産省は「表示の問題ではない」などと主張。いずれの省庁も現行の法体制では規制できないとして、「すき間事案」のままになっている。  
 
     こんにゃくゼリーは通常のゼリーより硬く、弾力性が強いため、のどに詰まらせやすい。全国こんにゃく協同組合連合会や全日本菓子協会など業界3団体は昨年10月から商品袋の表面に「お子様や高齢者の方はたべないでください」と書いた統一警告マークを表示しているが、01年以降に事故が相次いだEU(欧州連合)や韓国では、既に販売が禁止されている。(上田学)  
 
         ◇  
 
     マンナンライフの話 これまでの事故を受けて、業界団体で協議し、商品に警告マークをつけてきた。表示を大きくするなど、消費者にさらにわかりやすく改良したい。製造を中止する考えは今のところない。  
 
     佐野真理子・主婦連合会事務局長の話 これだけ多くの方が亡くなり、「行政のすき間」の商品として問題となっていたのに、行政が何もせず放置してきた結果、また1人亡くなった。警告マークをつけて済む問題ではないことが明らかになったし、そもそも高齢者や子どもが食べてはいけないお菓子が流通していること自体おかしい。早急に消費者庁を設置して、規制すべきだ。  

事故件数から言えば多分、モチの方が多い。と思ったら、厚労省のまとめでもそうなっている。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/chissoku/dl/01.pdf

救命救急センターの調査によれば、モチ、ごはん、パンが食品による窒息事故の原因のトップ3で、 1年間の事故例371のうち、モチ(91)、パン(43)、ごはん (28)、で43%を占める。パンやごはんは毎日食べるものなので、その分事故の件数は多いのだろうが、 モチはそんなに食べるものではないはずなのに、これだけの事故を起こしている。しかも、こんにゃくゼリーよりも、 のどに詰まって窒息しやすいことは広く周知されているはずだ。なにしろ日本人はモチをおそらく千年以上は食べ続けており、 これまでも少なからぬ人々が亡くなっているのだから。

食品による窒息事故を減らすと言う意味では、 13年間で17件の事故に結びついたこんにゃくゼリーのような些末なものに目くじらを立てるよりも、 モチでのどを詰まらせないように対策をとる方が効果的だろう(事故発生率でいえばこんにゃくゼリーの方が高いかも知れないが、 対策の有効性で議論するには発生件数で考えた方が良いと思う)。たとえこんにゃくゼリーの生産や流通を止めたところで、 もともと消費量はたいして多くないのだから、食品による窒息事故全体としては、あまり減らないのだ。

・・・と言う意味で、主婦連合会事務局長の話はピントがずれている。朝日新聞も 「規制する法的な枠組みがないとして抜本的対策がとられず、被害が広がっている。」という言いぶりはどうなのだ。バランスから言えば、 より死亡事故の多いモチにこそ規制する法的な枠組みを設けて抜本的な対策をとるべきではないのか?同じコストをかけるのであれば、 そちらの方が消費量が遙かに多いだろうから、税金の使い道としては数倍有効だろう。

ところで、法律でモチを規制するという判断は合理的だろうか?私はそうは思わない。 消費者が食い物をのどに詰まらせないように気をつけなくても良いように、政府や業界が対策をとるのが当然と言う論法はおかしい。 そのくらいは消費者が自分で気をつけるべきことだ。モチに限らず食べ物の物性を法律で規制するのは行き過ぎだ。消費者は無知で、 のどに食い物を詰まらせないように注意することさえ知らない赤ん坊のように無力な存在だというのであれば別だが。

あえて当たり前のことを言うが、どんな食べ物でも良くかんで飲み込まなければ窒息死の危険はある。 事故原因から見ても、それが事実だ。そのことを学習できないヒトはいずれ何かを喉に詰まらせて窒息死するリスクが高い。 我々が自分の身を守る方法は、食べ物を良くかんで飲み込むことにつきる。

昔読んだ星新一のショートショート小説だったか、モチが非合法化されて好事家がヤミで流通するモチを、 目を白黒させてむさぼり食う、というのがあった。私はそんな未来はごめん被る。

# マンナンライフは朝日新聞にあまり広告を出していないのでしょうか。それとも、 朝日新聞に全面広告を出して消費者に注意喚起しなさいという意味でしょうか。広告料が少ないので叩かれた、というのは勘ぐりすぎでしょうか。

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同様の視点のblogがこちらにも。

http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20081001_chissoku/

http://blogs.dion.ne.jp/doramao/archives/7666295.html

http://yawanews.blog82.fc2.com/blog-entry-824.html

※ 野田聖子大臣もトンチンカンですね。職員にそんなことを検討させないでください。

2008年9月30日 (火)

遺伝学的検査に対する規制の要望

ゲノム研究の光と影、といおうか遺伝子型の判別が簡単にできるようになってきた。しかし、特定の遺伝子型と疾病のリスクの関係は未だクリアカットには分からない問題だし、今後も大抵の疾病については確率を云々できる程度にとどまるだろう。・・・というか、必ず不治の病になると宣告される方がよほど恐ろしい。

以下、毎日新聞より。

 

遺伝子検査:学会「監督検討を」…医療機関通さぬ普及に

 肥満や糖尿病のなりやすさなど遺伝的な体質を判定する「遺伝学的検査」(遺伝子検査)が医療機関を通さず広く行われるようになったことに関し、日本人類遺伝学会(中村祐輔理事長)は29日、「厚生労働省などが検査の監督方法を早急に検討すべきだ」との見解をまとめた。

 同学会によると、個人の遺伝情報を明らかにするDNAは、採血などの医療行為によらなくても毛髪やツメ、粘膜から得ることができる。このため、医療機関を通さず、インターネットなどで募集し、検体や結果を郵送でやりとりするサービスが盛んになっている。ネット上で、少なくとも50社が肥満や骨粗しょう症、アルコール分解関連などの遺伝子を判定する検査を8000~4万円程度で受け付けているという。

 見解は「検査の多くは、個人の体質を確実に表すものではなく、体質や発症リスクについて確率を示しているに過ぎない」と指摘。さらに「個人遺伝情報や、使用後のサンプルが適切に処理されているか」などの危ぐを示し(1)     依頼から結果解釈までのプロセスへの専門家の関与(2)監督方法の早急な検討(3)消費者が不利益を受けないような教育・啓発--などを行うよう求めている。

 医療機関を通さない遺伝学的検査については、国際的なガイドラインはあるが、国内では経済産業省の個人情報保護ガイドラインのみ。同学会倫理審議委員長の福嶋義光・信州大教授は「募集の多くが不適切な広告で、正確な情報を消費者に伝えるためには専門家の関与が欠かせない」と話している。【足立旬子】

検査は技術的には簡単にできるようになってきたのだが、その検査結果の解釈は未だ経験知の集積が足りない。 従って、健康診断の際の血液検査や尿検査の結果のような疾病のマーカーとするには心許ない状況だ。だから”遺伝学的検査”そのものや、 その解釈は医学的な意味合いでの診断とまでは言えない場合の方が多い。

なので、検査そのものは他の臨床検査会社の行うサービス同様、医療行為ではないので医師法の規制は受けない。 一方、検査を行った会社が、 検査結果の解釈や生活習慣に関するアドバイスまで踏み込んだサービスを提供する場合は医療行為になる可能性がある。 その辺は厚労省の解釈次第なのだろう。

一方で、学会の危惧は検査を依頼する側のゲノム情報に対する”リテラシー”に対しても表明されているようだ。 「消費者が不利益を受けないような教育・啓発」というのがそれだろうが、血液型占いにはまるような消費者を啓発できるものかどうか・・・。

たしかアメリカでも一頃、遺伝学的検査の品質が問題になったことがあり、 検査結果に対する品質保証と言う点にも何等かのガイドラインは必要だ。また、「個人遺伝情報や、使用後のサンプルが適切に処理されているか」 という観点では、今のところ顧客から医療機関を通さずに検査会社に直送されるDNAサンプルについてはは、匿名化されていないため、 企業が法律の規制を受けずに究極の個人情報であるゲノム情報を手に入れることが可能になっている。

なお、「経済産業分野のうち個人遺伝情報を用いた事業分野における個人情報保護ガイドライン」 というものもあるので、個人情報の保護については野放しというわけではない。罰則や行政指導の根拠法は”個人情報保護法”だ。・・・ なので検査の品質や検査結果の解釈に対してはノータッチということか。

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2008年9月29日 (月)

Adenovirusベクターでガン化しにくいiPS細胞の誘導?

毎日新聞より。

iPS細胞がん回避 米ハーバード大チームが作製に成功

2008年9月26日10時40分

 がん化する恐れをなくした万能細胞(iPS細胞)を作ることに、 米ハーバード大のコンラッド・ホッフェリンガー准教授のチームがマウスで成功した。万能細胞をつくる際に、 細胞核の遺伝情報に影響を与えないウイルスを使った。25日付の米科学誌サイエンス(電子版)に発表された。

 iPS細胞は、ウイルスを使って特定の遺伝子を細胞内に送り込んでつくる。チームは、 細胞内に入るが細胞核には入り込まないアデノウイルスという風邪ウイルスの一種を使って、がん化する恐れを回避した。 細胞核は遺伝情報をつかさどっている。作製した万能細胞に、がん化の兆候はないという。ただ、作製効率は従来の方法より低く、 今後の課題となる。

 このウイルスは、iPS細胞の開発者である京都大の山中伸弥教授も安全性向上の方法の一つとして名前を挙げていた。 これまでは、レトロウイルスやレンチウイルスを使った。これらは細胞核の遺伝情報を書き換えるため、 がん化などの長期的リスクが指摘されていた。

 iPS細胞の安全性向上の研究は世界中で加速しており、ウイルスの改良のほか、 ウイルスを使わずに化合物のみで作製する方法なども試みられている。他の方式に比べ、現時点では、 高い安全性の見込めるiPS細胞ができたことになる。(竹石涼子)

オリジナルの論文はこちらSupporting materialはご家庭でも無料で見られます(・・・見ないか)。

エピゾームとして存在するアデノウイルスの方がレトロウイルスよりはガン化しにくいだろう。だが、 アデノウイルスが核に入り込まないと言う見解は正しくない。以下の論文を参照。

Targeted Chromosomal Insertion of Large DNA into the Human Genome by a Fiber-Modified High-Capacity Adenovirus-Based Vector System

アデノウイルスベクターを利用して相同組換えで核ゲノムの狙ったところに遺伝子を導入することができる。 先に照会した産総研のヘルパー依存型アデノウイルスベクターによるES細胞の相同組換えでも、その性質を利用している。

この論文のセールスポイントは、レトロウイルス以外のベクターを使って、 ゲノムに挿入変異をおこさずに実際にiPS細胞を作成し、キメラマウス作成まで漕ぎ着けており、 アデノウイルスで作成したiPS細胞の多能性を示したところだろう。iPS細胞の誘導の条件をこれまでと違う技術で行って、 少しずつ足場を固めてきていると言う意味では一歩前進。ただし、成功確率は低いし出発材料を選ぶので、実用性はあまり高くない。 科学としては着実な進歩なのだが、技術としては使えない。

記事では「他の方式に比べ、現時点では、高い安全性の見込めるiPS細胞ができたことになる。」 と評価しているが、その通りだろう。この分野は日進月歩なので、発表が1年後どころか半年後でも、 このクラスの雑誌には載らなかったかも知れない。技術的には、E3欠失型Ad5を使用しており、 センダイウイルスベクターやヘルパー依存型アデノウイルスベクターよりも古い世代のもの(枯れた技術といえるかも)なので、 宿主細胞への指向性が一つのボトルネックになってしまっているように思う。

もしVSV-Gエンベロープを被ったアデノウイルスベクターやセンダイウイルスベクターがあれば、 細胞指向性の問題はほぼ解決するだろうが、感染が若干遅いためタイミングが違ってくる可能性は残る。 それが吉と出るか凶と出るかは分からない。

 

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