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2008年9月7日 - 2008年9月13日の記事

2008年9月13日 (土)

最初の一頭、あるいは原発性BSE

読売新聞より。 

遺伝性のBSE発見、牛の体内で異常プリオン

 【ワシントン=増満浩志】BSE(牛海綿状脳症)の病原体である異常プリオンが、外部から感染しなくても、   遺伝子の変異によって牛の体内で作られ、発症につながる例もあることが、米農務省国立動物病センターなどの研究で分かった。

   研究したユルゲン・リヒト現カンザス州立大教授は「BSEがないと言われているどの国でも、この病気は発生しうる」と指摘、専門誌プロス・パソジェンズに11日発表した。            

 遺伝性のBSEが見つかったのは、米アラバマ州で2006年に発症した当時約10歳の雌牛。 

 牛肉の輸入再開をめぐる日米交渉が続く中、感染源が注目されたが、同省などの疫学調査では手がかりがつかめなかった。同センターで遺伝子を解析した結果、異常プリオンを作る変異が初めて見つかった。人間にも同じタイプの変異が知られ、遺伝性のクロイツフェルトヤコブ病(CJD)を引き起こすという。

 BSEは1980年代に英国で急拡大した。その始まりについては、遺伝性の異常プリオンが肉骨粉などの形で牛のえさになった――    という説があり、リヒト教授らは「今回の発見がその説を支える証拠になる」としている。 

    (2008年9月12日23時04分  読売新聞)  
  オリジナルの論文はこちら。PLoSに掲載された論文はすべてオープンアクセスなので、ご家庭でもご覧になれます(・・・読まないか)。
 
  BSEがどのように発生したのかについては諸説有る。ヒツジのスクレイピーがウシに伝染したとか、原発性のウシのBSEが最初だ、とか。後者については、遺伝的にBSEを発症しうる「最初の一頭」が確認されていなかったが、今回の発見は後者の説を補強する材料だ。
 
  この波及効果は小さくは無い。つまり、オーストラリアや中国のように、公式にはBSEが発生していないと言われる、いわゆる”清浄国”においても、今回発見されたようなタイプのウシの遺伝子型頻度によっては、原発性のBSEの発生を否定できないということでもあるし、日本国内でも飼料チェーンから肉骨粉を締め出した今日でも、ある頻度でBSEが発生しうることを示している。
 
  さて、日本国内のウシについては、家系の管理がしっかりしているので(そのはず・・・人工授精の際にゴマカシが行なわれていなければ、であるが)、家系ごとにPrnp遺伝子のシーケンスを決めて疑わしい家系を淘汰してしまえば、有効性の疑わしい(・・・というか、科学的には有効といえない)BSEの全頭検査よりも、長期的にはより低コストで、より効果的に変異型プリオンを持つ可能性が高いウシを排除できることになる。
 
  なお、この論文で報告されたE211K(プリオンタンパクの211番目のアミノ酸が、E(グルタミン酸)からK(リシン)に変異している)の変異(21Kと呼ばれる)の発見される頻度は、アメリカでは2000頭に1頭以下とされている   (日本では分からない)。
 
  遺伝子を調べるのであれば屠殺場で血液サンプルをとればできるので、日本でも主要な家系の代表だけでも良いので、こういうサーベイをやっておいた方が良いのではないだろうか。
 
  もっとも、原発性のBSEが発症したケースは10歳(120ヶ月!)という超高齢のウシなので、大抵のウシが生後20-30ヶ月程度で食肉になってしまうことを考えると、原発性BSEに対するもっとも実効性のある対策は高齢のウシを作らないこと、なのかもしれない。
 
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2008年9月12日 (金)

「立入検査」の権限は、これを犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

御政道向きの話をすると、お上の監視の目が厳しいらしい。

だが今般は報道の論調に頷けないところが多々あるのでメモしておこう。
---
様々な業界に対して監督官庁は法律によって与えられた立入検査の権限を持っている。今般、 三笠フーズに対して農政事務種が過去96回の立入検査をしたのに不正を見抜けなかったと報道されている。

しかし、過去に農政事務種が行った立入検査は非食用米の転用の有無を調査する目的で行われたものなのだろうか?というか、 法律ではそういう検査を行えるようになっているのだろうか?

農林水産省職員に食料用の米、麦を扱う事業者に対する立入調査の権限を与えている法律と言えば、
主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律だろうか。 この法律の立入検査に関する条文は以下の通り。

   
    第五十二条   農林水産大臣は、この法律の施行に必要な限度において、機構若しくはセンターその他業として主要食糧の出荷、販売、輸入、加工若しくは製造を行う者に対し、その業務若しくは資産の状況に関し報告をさせ、又はその職員に、これらの者の事務所、営業所、販売所、事業所、倉庫若しくは工場に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。  
 
 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、     関係者に提示しなければならない。  
 
 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。    
 
 
  他の法律でも、官庁の調査権限については「立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。」とされているはずだ。ちなみに、「覚せい剤取締法」でさえ、通常業務に関する立入検査については「前二項の規定は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」と書いてある。
 
  # もっとも、マルサの国税庁の立入りについても同じなのかどうかは知らない。  
 
  行政調査は通常業務の範囲にある行為について「間違い」がないかどうかは監督官庁の権限で検査するためのもので、「最初から意図的に違法行為を行う」こと、すなわち犯罪に対して監督官庁が捜査権限を持っている訳ではない。  
  「間違い」か「犯罪」かの線引きは、性善説に基づいており事業者意図次第なので甘いと言えば甘いのだが、私は公権力が肥大して何でもかんでも犯罪捜査として強制できる事の方がよほど恐ろしい。  
 
  基本的に、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律に基づく立入検査では、”主要食糧の出荷、販売、輸入、加工若しくは製造を行う者”が検査の対象だ。従って、仮に、この法律に則って非食用の米麦についての立入検査を行うには相応の覚悟がいる。不服申し立ての訴訟を起こされた場合に負けることも覚悟しなくてはならないからだ。  
 
  というわけで、「96回も立入検査したのに分からなかったのか!」とマスコミに責められる次官は気の毒だ。そうやって監督官庁を責めると、結果として役所の権限と業務の拡大に繋がっていく可能性が高いと言うことが、マスコミは分かっていないのではないだろうか。それは誰にとっても幸福な未来ではない。  
 
  とはいえ、非食用米を食用米に偽装して転売していたのだから、食用米の流通に関してきちんと把握できていなかった点については瑕疵を認めた方が良い。そこは他人事ではない。
 
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2008年9月11日 (木)

酵母とネズミ

遺伝子組換え生物の不適切な扱い再び。あとを絶たないですね。

毎日新聞より。

遺伝子組み換え:不適切な取り扱いで厳重注意 文科省

 文部科学省は9日、遺伝子組み換え生物の不適切な取り扱いがあったとして、独立行政法人酒類総合研究所(広島県東広島市) と熊本保健科学大に文書で厳重注意した。いずれも環境への影響はないという。

 酒類総合研究所は4月、遺伝子組み換え酵母を使った発酵実験の際、 使用した容器の洗浄液の一部を滅菌処理せずにそのまま下水に流していた。酵母は下水処理の過程で死滅するという。

 熊本保健科学大では3月、遺伝子組み換えラット6匹を実験に使用した際、逃亡防止措置を取っていなかった。 実際に逃亡はしなかった。【西川拓】

文部科学省のプレスリリースはこちら

特に繁殖能力の旺盛な遺伝子組換え酵母でも無い限り、その辺ではびこることはまずありません。酵母の場合、 遺伝子組換えのようなそうで無いような・・・という微妙なものも作れます。 酒類総合研究所のはそうではなかった、ということでしょう。ともあれ、どんなお酒を醸していたのか興味津々ではあります。

遺伝子組換えラット、というのは組換えマウスほどポピュラーではないのですが、こちらのホームページによれば2003年に初めて作られたとのこと。 実験室の出入り口にネズミ返しを設けるのと、”P1A (遺伝子組換え動物飼育中)” の張り紙1枚でクリアできる規制で厳重注意されてしまうのは残念な限りです。

安全性に問題が無いとしても、法令は守らなくてはいけません。ま、カルタヘナ法に限った話ではありませんけどね。

知らない法律は守れませんので、業務従事者の教育訓練は怠りなく!

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2008年9月10日 (水)

カンゾウの甘味成分、グリチルリチンの合成系遺伝子の同定

 横浜市大、理研、千葉大グループの成果です。 シトクロームオキシダーゼP450の一種”CYP88D6”をカンゾウから単離しました(カンゾウ=甘草です。 肝臓ではありませんのであしからず)。

 理研のプレス・リリースはこちら PNASの論文もオープンアクセスになっていますので、ご家庭でも手軽に読めます(・・・読まないか)。

 グリチルリチンはトリテルペン・サポニンの一種。生体内での合成経路には大方の目星は付いていたところなので、 触媒する酵素がシトクロームオキシダーゼ P450の一種であることは最初から予想できたでしょう。問題は、 グリチルリチンでは糖鎖の付いている特定部位について、その前駆物質で酸化しておく酵素が見つからなかったこと、だそうです。この論文では、 単離した遺伝子の構造からP450であることを確認したもの(”CYP88D6")について、 試験管内と組換え酵母とで酵素活性を確認しています。


# 遺伝子の単離自体は、力仕事なので動機と財力があれば多くの研究室でやれるだけの潜在的な能力はあるでしょう。しかし、 この活性の確認の部分はメタボローム解析のノウハウがないと一朝一夕にはできるものではないでしょう。


横浜市大、天然甘味成分の酵素遺伝子を発見 大量生産に道

9月9日8時49分配信 産経新聞

 砂糖の150~300倍の甘さを持つ低カロリーの天然甘味成分「グリチルリチン」を作る酵素遺伝子の一つを、 横浜市立大学と理化学研究所などのグループが突き止めた。医薬品としても需要があるグリチルリチンの大量生産に道を開く成果で、 米科学アカデミー紀要(電子版)に近く、論文が掲載される。
 グリチルリチンはマメ科植物のカンゾウ(甘草)の根や地下茎に含まれ、肝機能補強や抗ウイルスなどの効果も知られる。
 横浜市立大・木原生物学研究所の村中俊哉教授(植物生理学)らは、 カンゾウの根と地下茎で活発に働き地上部ではほとんど働かない遺伝子の中から、 4段階からなるグリチルリチン合成の最初の段階で働く遺伝子を特定した。2番目の遺伝子もほぼ明らかになっているという。
 栽培種のカンゾウでは、グリチルリチンの蓄積量が少なく甘みが足りないうえ、収穫までに数年を要する。 野生種は乱獲で絶滅が懸念されている。今回の成果は、栽培種の品種改良や人工合成につながると期待され、村中教授は「第一歩だが、 全部の遺伝子の特定も間近」と話している。



 グリチルリチンの大量生産・・・までは、全合成経路の再構築ができないとなかなか難しいところ。また、 製造にあたっては遺伝子組換え技術が使われることになるでしょうから、食品安全委員会の評価が前提になります。

 天然のカンゾウの採取による環境破壊も馬鹿にならないご時世なので、 間接的に遺伝子組換え技術が環境保全に貢献することになるのでしょうか。

 

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2008年9月 9日 (火)

アグロバクテリウム法で遺伝子組換え作物を開発している人には微妙なニュース

まれなケースではあるものの、新しい知見。

Nature Biotechnology 26, 1015 -   1017 (2008)  
Published online: 31 August 2008 | doi:10.1038/nbt.1491
T-DNA–mediated transfer of Agrobacterium   tumefaciens chromosomal DNA into   plants

Bekir Ülker, Yong Li, Mario G Rosso, Elke   Logemann, Imre E Somssich & Bernd Weisshaar

アグロバクテリウム法で作成した、アラビドプシスのタグラインのT-DNA領域近傍の染色体DNAを調べてみたら、 遺伝子を含むアグロバクテリウムのゲノム DNAが検出された、と言う論文。375,000個体以上の形質転換体を調べて、 検出頻度は約1/250 (0.4%)、ゲノムDNAの断片長は最大18 kbp (結構大きい)。アグロバクテリウムのホスト・ ストレインはC58株を使用した。
---
アグロバクテリウム法でしばしば起きるベクターの挿入から見れば低頻度なので、事実上それほど問題になることは無いだろうと考えられる。 今の日本の規制ルールでは、 食品として組換え作物を開発する場合に導入遺伝子の挿入部位の両側の塩基配列をしっかり調べておくことが必須なので、 仮に運悪くT-DNAの近くでアグロバクテリウムのゲノムDNAの混入が起きたとしても、わかった時点で淘汰することはできる。

アグロバクテリウムのゲノムは4つの複製単位(レプリコンと言う。線状DNA、環状DNA、2つの大型プラスミド)からなるが、 このうち線状DNAに由来する挿入配列がもっともよく見られる。

このアグロバクテリウムのゲノムDNAの挿入が起こった機構については、T-DNAの組込の際に認識される25 bpのRB配列と似た配列(完全に同じものではない)が、ゲノム上に散在していて、 その配列を介在してT-DNAと同じ機構でゲノムに組み込まれることが理由と著者らは考えている。

これは、またT-DNAとは独立に、 RB配列と似た配列を媒介したアグロバクテリウムのゲノムDNAの挿入の可能性を示唆すると著者らは書いている。

・・・実に嫌なところに着目している。もしあったとしても-おそらくこれも低頻度だろうけれども- そのような現象を効率的に探し当てる方法は今のところ無いので、仮にこちらの方は起きていてもわからない。

いずれにしてもアグロバクテリウムは健康な人に対する病原性は無いし、作成された組換え体の栄養組成は実測することが義務づけられている。 従って、この論文で示された事実は、感染性や栄養欠損という面では、直ちに食品衛生上の危害要因にはならないと考えて良い。

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