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2008年8月31日 - 2008年9月6日の記事

2008年9月 5日 (金)

HHV6は一般的な内在性ウイルスか?

先のエントリーにコメントを戴きました。

latent protein …「潜在タンパク質」

というのが,ヒトDNAに組み込まれた内在ウイルス遺伝子のタンパク質だとしたら,この記事で間違いではないのかも(いい文章ではないですが)と思いました。

とのことですが、うーん・・・。私はウイルスの専門家ではないのですが、教科書的にはHHV6などのヘルペスウイルスのゲノムは2本鎖の線状DNAで、核内に局在します。ですので、相同組換えでヒトの染色体内に内在化(integration)しないとは言い切れないのですが、なにせヘルペスウイルス属のゲノムサイズは一般的に120 kbp以上(HHV6Aでは159,321 bpというのがあります。こちら)とウイルスとしては巨大な方なので、よくあるレトロウイルスの内在化のような現象は起こりにくいのではないかと思います。

・・・とおもって調べてみると、そう言う内在化の事例がありました。こちらなど。

1: Daibata M, Taguchi T, Nemoto Y, Taguchi H, Miyoshi I.
Inheritance of chromosomally integrated human herpesvirus 6 DNA.
Blood. 1999 Sep 1;94(5):1545-9.
PMID: 10477678 [PubMed - indexed for MEDLINE]

2: Morris C, Luppi M, McDonald M, Barozzi P, Torelli G.
Fine mapping of an apparently targeted latent human herpesvirus type 6
integration site in chromosome band 17p13.3.
J Med Virol. 1999 May;58(1):69-75.
PMID: 10223549 [PubMed - indexed for MEDLINE]

3: Daibata M, Taguchi T, Kubonishi I, Taguchi H, Miyoshi I.
Lymphoblastoid cell lines with integrated human herpesvirus type 6.
J Hum Virol. 1998 Nov-Dec;1(7):475-81.
PMID: 10195269 [PubMed - indexed for MEDLINE]

などなど。しかし、いずれもレアケースなので、レトロウイルスの内在化のように誰にでも起きている現象という訳ではない模様です。つまり、HHV6に感染しているヒトは少なくはないにしても、内在化を起こしているケースは希であると考えた方が良いでしょう。

となると、先のニュースのlatent proteinの一件は、ヒトゲノムに内在化したHHV6由来のタンパク質に限定されるものではなく、やはり、ヒトに感染したHHV6に由来する”HHV6のタンパク質”と言うべきだと思います。

また、HHV6は慢性疲労症候群との関連も言われておりますが(因果関係はまだ決定的ではありません)、このblogでも取り上げた新聞記事から得られる情報で、FFがヒトの一般的な疲労のセンサーになっているという解釈はしない方が良いと思います。

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2008年9月 4日 (木)

タンパク質は疲労を感じない

見出しを見て疲労のセンサーとして機能しているタンパク質を発見したのかと思ったが・・・。 朝日新聞より。

疲労感じる原因たんぱく質を発見 慈恵医大教授ら

2008年9月4日3時0分

 疲れを感じる原因となるたんぱく質を、東京慈恵会医科大がマウスを使った研究で突き止めた。 このたんぱく質は、徹夜や運動の直後に心臓や肝臓、脳などで急激に増え、休むと減る。元気なマウスに注射すると、急に疲れた。 疲労の謎を解く鍵として、科学的な疲労回復法の開発につながりそうだ。沖縄県名護市で開かれている国際疲労学会で4日、発表する。

 近藤一博教授と大学院生の小林伸行さんは、 人が疲れると体内で増殖するヘルペスウイルスに関係するたんぱく質に注目、 疲労因子を意味する英語からFFと名付けた。水があると眠れないマウスを、 底に1センチほど水を張った水槽に一晩入れて徹夜状態にし、その直後に臓器を取り出し、FFの量を調べた。

 その結果、睡眠をとったマウスに比べ、徹夜マウスでは、FFが脳、 膵臓(すいぞう)、血液で3~5倍、心臓と肝臓では10倍以上も増えていた。2時間泳がせた場合も、同様に変化した。 どちらも休息後は平常値に戻った。

 さらに、FFを元気なマウスに注射すると、 大好きな車輪回し運動をほとんどしなくなった。疲れの程度に応じて増減し、かつ、外から与えると疲れが出現するという 「疲労原因物質」の二つの条件を満たした。

 FFは、細胞に対する毒性が強い。心臓、肝臓で特に増えるため、 過労に陥ると心不全や肝障害が起きやすくなる、という現象に関係している可能性が高い。

 人が疲れを感じる仕組みは、まだ十分解明されていない。 運動疲労の原因とされていた乳酸は、運動すると筋肉中に増えるが、疲労の程度とは関係せず、筋肉に注射しても疲れが出現しないため、 原因物質ではないことが数年前に実証されている。

 近藤教授は「FFは、疲労が起きるとすぐに反応するため、 疲労に対し最初に働く回路だろう。正確な疲労の測定装置や、科学的な疲労回復法の開発につながる」と話す。(編集委員・中村通子)

次は、”ヘルペスウイルスに関係” するFFを過剰発現する疲労モデルマウスを開発して抗疲労薬の開発か?あるいは、 FFをノックアウトした疲れ知らずのマウスや新手の遺伝子ドーピング時代の始まりか?・・・とも思ったのですが、 国際疲労学会のプログラムを見ると様子が違うようです。

国際疲労学会プログラムより

9:10 S2-03 Identification of novel HHV-6 latent protein associated with mood disorders and molecular
mechanism of fatigue due to overwork
Kazuhiro Kondo

新聞記事で言うFF というのが、"HHV-6 latent protein"であれば” ヘルペスウイルスに関係するタンパク質”ではなくて、”ヘルペスウイルスのタンパク質” と言うべきです。これは、内生の”疲労を感じる原因たんぱく質”ではありません。なぜならば、 疲労を感じる仕組みはヘルペスウイルス(HHV-6)に感染していようが、感染していまいが、 全てのほ乳動物にもともと備わっているものだからです。

FFは疲労マーカーにはなるだろうし、外から与えると疲労が起こるのであれば疲労原因物質の” 一つ” であることは間違いありません。問題は細胞内にFFが蓄積した場合に、 内在性の遺伝子発現やタンパク質の相互作用がどう変わって、FFによる疲労シグナルを全身に伝えているか、です。 外部から与えたFFが疲労を起こすのであれば、FFは哺乳動物がもともと持っている疲労を起こす信号伝達の経路の入口で、 哺乳動物が元々持っている疲労物質と同じように作用しているはずですから。

疲労タンパク質の本命は、”FFと相互作用する動物側のタンパク質”に対して、信号伝達経路の上流で相互作用するタンパク質、 でしょう。

 

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2008年9月 3日 (水)

ホモ接合で離婚のリスクが高くなる遺伝子

9月2日の時事通信より(読売新聞の記事より格段に良く書けているので) 。

遺伝子の個人差で離婚危機2倍=スウェーデン男性900人調査

 草原などに生息するハタネズミ類で固定した夫婦関係(一夫一婦制)を好むかどうかを左右する遺伝子がヒトにもあり、男性ではこの遺伝子が特定のタイプの場合、そうでない場合に比べ、結婚より同居を選んでいたり、離婚や別離の危機を経験したりする確率が2倍高いことが分かった。スウェーデンのカロリンスカ研究所や米エール大などの研究チームが2日までに調査した。論文は米科学アカデミー紀要の電子版に掲載される。
     この遺伝子「AVPR1A」は、脳神経で神経伝達物質のアルギニン・バソプレシン(AVP)を受け取るたんぱく質(受容体)を生み出す機能がある。ハタネズミ類ではAVPが多かったり、受容体がよく働くタイプだったりすると、社会性が高く、 一夫一婦を好むようになることが実験で確認されており、ヒトでは自閉症の発症リスクに影響する可能性が指摘されてきた。    
     研究チームは、パートナーがいるスウェーデン人男性約900人を対象に、2本がペアになっている12番染色体にあるこの遺伝子の一部DNA塩基配列が特定のタイプかどうかを調査。その結果、2本とも特定タイプの男性が結婚ではなく同居している割合は32%、過去1年に離婚や別離の危機を経験した割合は34%と、2本ともそうでない場合の17%、15%の約2倍だった。(2008/09/02-20:26)

オリジナルはこちら。  

どうしてバソプレッシン受容体に目をつけたのか?というところがまず不思議なのですが、 2004年Natureにハタネズミ属(Vole)のバソプレッシン受容体遺伝子と婚姻形態の関連を研究した論文が載っていたようです ()。

関連した情報では、

  1. Variation in the vasopressin V1a receptor promoter and expression: implications for inter- and intraspecific variation in social behaviour. Hammock EA, Young LJ., Eur J Neurosci. 2002, 16:399-402.    
  2. AVPR1A and OXTR polymorphisms are associated with sexual and reproductive behavioral phenotypes in humans. Mutation in brief no. 981. Online. Prichard ZM, Mackinnon AJ, Jorm AF, Easteal S., Hum Mutat. 2007 28:1150.      

など、いくつか先行した仕事があって、 AVPR1A遺伝子はホルモン受容体でありながら、同時に5'上流域にマイクロサテライトがあって非常に多型的であることが知られています。 最初は、ハタネズミでは多型的マーカーとして集団遺伝学的解析に利用されていたのでしょう。

また、 動物ではバソプレッシン受容体が繁殖行動に関連しているという傍証があって、そういった積み重ねの上で、 ヒトに対しても当てはまると考えたのでしょう。

一方、 このPNASの論文の背景には色々面白そうな事情がありそうです。たとえば、

     
  • スウェーデンは同棲の割合が高い。というか同棲してから結婚というつきあい方が一般的だそうです。なので、「結婚ではなく同居している割合は32%」という日本的視点からは、あらら、と言う状況が出現しうる。           
  • スウェーデンはプロテスタントが多い。これがカソリックが多い国だと、社会的に離婚が認められないため、”離婚の危機”と言う認識に対する閾値が高くなるので、こういうデータには「この程度では離婚の危機とまでは言えない」と言う認識にかたよる強いバイアスがかかる。
  • スウェーデンは女性の社会進出が世界一進んでいるので、女性が経済的に自立している()。なので、女性が経済的理由で結婚生活にしがみつく必要がないので、そうでない国よりは離婚しやすい。   
などなど。

人間を調査対象とする場合、 実験動物と違って生活環境や社会環境をコントロールできませんので、文化的な要因にも注意を払わないと、 こういう研究は成立しにくいのでしょう。

さて、結局のところ、 離婚リスクが高くなる対立遺伝子の遺伝子頻度とホモ接合率ってどのくらいなんでしょう。また、 浮気の虫も遺伝子のせいであれば仕方がないと考えるべきなのでしょうか。色々と考えさせられることの多い論文です。

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2008年9月 1日 (月)

文部科学省研究二種告示改訂の意見募集

福田総理辞任のニュースが飛び込んできた。短命な政権だった。次の総理も難しい国会運営を強いられるのは明らかだけど、 景気対策だけはしっかりやっていただきたいところ。補正予算はどうなるのだろう?

折りしもアジアの株式市場は全面安の展開で、日本の株式市場も混迷を深めることは必至。

---

さて、8月27日から、ひっそりとカルタヘナ法、 研究目的第二種使用にかかわる告示の改訂についてパブリックコメントが募集されている。

パブコメのURLはこちら

改定の内容は、ウイルスの追加と名称変更、学名の修正など、あまり大規模な改訂では無い。 幾つか気になる点があるので、メモしておく。

     
  1. サルモネラ属細菌は原則クラス2、クラス3にSalmonella paratyphi A型、   Salmonella typhi、クラス1に、Ames testに使用するS.   typhimuriumのTA98株及びTA100株はクラス1に位置づけてあるのは、改訂されずにそのまま。・・・ですが、    このところのSalmonella属細菌の分類では、この学名はもはや推奨されていない。一応、   スタンダードな学名を記載した”The Approved Lists of Bacterial Names”   には残されているので使用することはできる。しかし、最近の分類では、パラチフス菌(Salmonella paratyphi A型)は"Salmonella enterica subsp. enterica serovar Paratyphi   A"としてS. entericaの亜種の一つに統合。チフス菌も”     Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhi ”になった。 そのへんの命名についてはこちらのホームページに詳しい。 その結果、一つの種内に病原性の異なる血清型が含まれる状況になっており、ウイルスのワクチン株とそうでない株の関係のように、serotypeやgenotypeを決めないと実験分類がわからないという、若干困った状況。
  2.  
  3. 自立増殖性ウイルスの中で、大臣確認が不要なものをリストアップした別表3が改訂されている。 これをいじる場合に気をつけないと、これまで大臣確認が不要だった物にいきなり規制がかかることがあるので要注意。
  • (旧)「5 ファージ及びこれらの誘導体(別表第一に掲げる宿主のうち細菌を自然宿主とし、哺乳動物等に対する病原性を付与しないものに限る。)」→「5 バクテリオファージ及びこれらの誘導体(哺乳動物等に対する病原性を、細菌に持たせないものに限る。)」とある。
  •  
  • 基本的には変わらないのだが、以前から加えた方がいいのにな、と思っていたものが入っていない。バクテリオファージの宿主であるバクテリアの範囲を真性細菌と考えるとアーキアを宿主とするファージはこれに入らない。また、藻類を宿主とす組換えファージも大臣確認が必要なままだ。分類学上の立場が三界説だというなら話は別で、藻類を宿主とするウイルスも植物ウイルスに入れられるのだが、今時この考え方はかなり厳しい。藻類自然宿主とするファージは、別にリストアップした方がよいだろう。ミクロキスティスなどアオコに寄生するファージを材料とする研究者は、それらのファージがアオコにしか寄生しないという論文等を添えて要望を出しておくべきだろう。また、真菌類を宿主とするウイルスについても大臣確認は必要。

  • ちょっと気になるのは、酵母のキラー因子は、「外被を持たない二本鎖RNAウイルス」と言われているが、これも大臣確認が必要   (それってウイロイドじゃないのか?どうなの、酵母なヒト)。

実際のところ、哺乳動物等への病原性等の特段のリスクが無いにも関わらず大臣確認が求められるウイルスはまだ結構有るように思う。 昆虫や植物のウイルスは自律増殖性でも大臣確認が要らないのだから、古細菌、真菌、 藻類のウイルスについても同様の扱いをしても良いのではないだろうか。

# 魚類のウイルスはちょっと微妙ですが。

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