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2008年8月17日 - 2008年8月23日の記事

2008年8月21日 (木)

[業務用覚書] 酵母の相同組換えの効率とDNA断片の相同領域の長さの関係に関する論文

古い論文ですがオープンアクセスになっているのでメモ。
Micro-homology mediated PCR targeting in Saccharomyces cerevisiae.
P Manivasakam, S C Weber, J McElver, and R H Schiestl
Nucleic Acids Res. 1995 July 25; 23(14): 2799– 2800.

PCR産物両末端の酵母ゲノムとの相同領域の長さを変えて、相同組換えの頻度を測定している。

相同領域の長さ30 bpと25 bpで劇的に効率が上がる。45 bp以上は600bpでもあまり変わらない。 ホストの株によっても効率が結構違う。導入した遺伝子の違いによる影響は見られない。それが、DNA断片導入の効率なのか、 細胞内での相同組換えの効率なのかは、この実験系では切り分けできないが、長さに対する依存性が高いようなので、 おそらくは相同組換えの効率によるものだろう。・・・だとしたらホストの違いはどうのように影響しているのか?謎。

せめてよく使うプラスミドで、それぞれの株の形質転換効率を調べておいてくれたらな、と思う次第。 この実験系では相同組換えによるUra3+株と非相同組換えによるUra3+株の合計が母数になるので、DNAの導入効率は分からない。

もっともこの実験ではターゲットが核ゲノムの遺伝子なので、 マルチコピーのプラスミドの場合は組換え体が取れてくる頻度は数十倍程度は上るかもしれない。

なお、この論文は1995年のものなので、相同組換えへのMRXの関与が見つかる前のものだと思います。 その後のRad54による二本鎖DNA領域への進入とゲノムの相同領域の長さとの関係を直接調べた仕事はあるのだろうか?それとも、 今でもまだそこまで行っていない?

実験的には30-40 bpの相同領域を作っておけば高頻度の組換えが起こることがこの論文から分かるので、 実用上はそれでよしとしましょう。地味だけど貴重な基礎データです。まえもってこれを読んでいたらなぁ・・・あと5 bpプライマーを延ばしておいたのに。

しかし考えてみると、線形にしたプラスミドとPCR断片の間の相同組換えでは、 一本鎖の3'突出末端同士の会合が起きている場所でフォーク構造をとっているんだろうか?この論文で行ったような、 ゲノムDNAと二本鎖DNA断片の間の相同組換えとは若干様相が違う気もする。

# ちなみに、上記で言うホストとは飲食店従業員の方とは関係ありません。

 

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2008年8月20日 (水)

アスパラギン酸はアスパラガスにしか含まれて居ないの!?

朝日新聞より。

記憶の仕組みにアスパラガスのアミノ酸 岡山大が解明

 

2008年8月20日9時18分

 アスパラガスに含まれるアミノ酸の一種「アスパラギン酸」が、   神経細胞で情報伝達にかかわる仕組みを、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の森山芳則教授(生化学)らが突き止め、   米科学アカデミー紀要電子版に発表した。この仕組みの異常で、発達障害などが起こる難病になる可能性も示され、記憶・   学習の仕組み解明につながりそうだ。
 
   

 記憶にかかわる脳の海馬で、アスパラギン酸が神経伝達物質のグルタミン酸とともに存在することなどは知られていた。     大学院生の宮地孝明さんらは、細胞内でアスパラギン酸を運ぶたんぱく質を特定し、小胞型興奮性アミノ酸トランスポーター(VEAT)      と名づけた。

   

 VEATは、神経細胞のつなぎ目にある神経伝達物質を蓄える袋に、アスパラギン酸を運びこむ。蓄積されたアスパラギン酸は、      この袋から分泌されて神経伝達物質になるとグループはみている。

   

 これまでVEATは別の働きで知られており、その異常で、幼児期から精神発達や運動障害が起こる「サラ病」     になることがわかっていた。今回の発見で、サラ病は神経細胞の情報伝達の異常で起こる可能性が示された。

   

 森山教授は「グルタミン酸だけでは説明が難しい情報伝達の仕組みが、     アスパラギン酸の働きを調べることでわかるかも知れない。認知症などの薬の開発につながる可能性もある」と話している。(赤木基宏)        

 
 

神経細胞内でアスパラギン酸の蓄積に関わる膜タンパク質が同定されました、という研究。   小胞型興奮性アミノ酸トランスポーターと言う名前なので、刺激に応答してアミノ酸の運搬の状態が変わるのでしょう。しかし、   この研究で明らかになったのは、神経細胞にある、とあるタンパク質の機能の一端であって、「記憶の仕組み」   ではありません。その点でもこの見出しは不適切です。

 

さらに私が反応してしまったのは、このトンチンカンな説明です。「アスパラガスのアミノ酸」・・・繰り返します。   「アスパラガスのアミノ酸」・・・こう言い換えて、   アスパラギン酸を説明しようとしています。

 

へー、アスパラギンもあるのに、という冗談はさておき、この見出しを付けた方は、   アスパラギン酸が肉でも魚でも卵でも、   多くのタンパク質にごく普通に含まれていることをご存じないのでしょうか。こういう無理矢理な言い換えは、   不正確な上にかえって正しい理解を妨げるので、止めた方が良いと思います。

 

物事をわかりやすく説明するのは大切ですが、わかりやすい、   ということは複雑な現実から多くの情報が捨て去られていると言うことでもあり、正確さには欠けます。   往々にして単純化の匙加減が難しいのですが、科学の世界では、   もうどうにもこうにもそれ以上の単純化や言い換えのしようがないものがあります。例えば元素の名前や惑星の名前がそれです。   アミノ酸の名称も特定の構造を持った分子に固有の呼び方ですので、○○の様なもの、という喩えは意味を持ちません。

 

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2008年8月19日 (火)

もし35Sプロモーターでも、こんなことが起こっていたら?

# 職業的な専門知識がなければ、以下のような連想はしないだろうな、と思いつつ。

翻って植物では、イネ・ゲノムを俯瞰してみると、100 kbpといえばBACクローン1個分くらいのサイズで、 遺伝子が複数詰まっている領域もあれば、砂漠のごときなーんにも無い領域もある、といいうことが分かっています。 哺乳動物で先鞭のつけられたこの研究と同様の現象が植物でも起きているかどうかは分かりませんが、もし起きているとしたら、 結構興味深い現象が見られるかも知れません。

研究用に開発された遺伝子組換え植物の中には、アクティベーション・タギング・ライン(activation tagging line)というものがあります(たとえばこちら)。 強発現プロモーターを植物ゲノムにランダムに割り込ませて、その下流の遺伝子を強制的に発現させるというもの。 遺伝子を無理矢理発現させているので、まともに生育できないケースや種子を採るまでに途中で死んでしまうケースも多々あるようです。 多くの場合、アクティベーション・タギング・ラインの作成にはCaMV35Sプロモータという、強力で、 しかも植物体の広い領域で転写が始まる植物ウイルス由来のプロモーターが利用されています。

では、こういうプロモーターを組換え植物の作成に使うと何が起こるでしょう。もし、 植物細胞でも動物細胞と同じように、転写が活性化している広い領域で様々な遺伝子の転写が同時に活性化しているとしたら?

ひょっとしたら、CaMV35Sプロモータで選抜マーカーを発現させている組換え作物等では、 本来は発現していない遺伝子が予想外に異所的に転写されているかも知れません。もちろん、植物が本来持っている遺伝子が発現するだけなので、 異種生物のタンパク質が大量に蓄積するとか、未知のアレルゲンがどうの、というSF的な状況にはなりません。しかし、 いかに食経験のある植物でも、我々は例えばイネやダイズの”根”を食べたことはありません。しかし、 もし組換え作物で異所的な遺伝子発現がおこっていて、本来根や葉で発現しているタンパク質を食べさせられるのだとしたら、 あまりありがたい話ではありません。

今のところ植物では、 そのような遺伝子組換えによって誘導された異所的な遺伝子発現に関する科学的な知見はありませんので、 食品安全委員会で採用している遺伝子組換え作物の食品安全性評価基準を見直すべき理由も何もありません。

# もっとも、誰かがアラビドプシスのアクティベーション・タギング・ラインをTiling arrayで解析して、組換え植物では遺伝子組換えによって異所的な遺伝子発現が活発に誘導される、なんて言い出さない限りは、ですが。

なお、最近の遺伝子組換えイネでは選抜マーカーの発現に組織特異的プロモーターを使っているので、 この種の心配は起こらないはずです。

 

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8月11日の京都新聞より。

       
         

RNA増加 未知の機能も
          京大グループ、英科学誌に発表

       
      
       

 ある遺伝子DNAが読み取られてRNA(リボ核酸)が作られる「転写」のときに、         その遺伝子の近くの領域も活性化して別のRNAも一緒に増えることが、京都大生命科学研究科の西田栄介教授(細胞生物学)、          大学院生の戎家美紀さんらの研究で分かった。         一見無駄に作られているRNAが未知の機能を果たしている可能性があるという。 英科学誌ネイチャー・セル・         バイオロジーで11日発表した。

       

 ■DNA転写で領域活性化

       

 マウスの細胞で、細胞増殖などで働く因子MAPKによって引き起こされるRNAの増加を調べた。         MAPKによって働く転写因子SRFが結合するDNAの付近を見ると、SRFによって転写される遺伝子だけでなく、         少し離れた遺伝子や、タンパク質を作らない遺伝子間領域も活性化し、それぞれのRNAの量が増えていた。DNAを巻き取る         「糸巻き」のタンパク質ヒストンを調べると、         RNAが増えている領域では糸巻きがゆるんで構造的に転写されやすくなっていることが示唆された。

       

 西田教授は「転写には、必要な遺伝子だけピンポイントで狙うという従来のイメージとは異なり、波及効果があった。         一緒に出てきたいろいろなRNAは、転写の効率を上げるなどの機能を果たしているのかもしれない。なぜ、         あいまいな制御がなされているのか突き止めたい」と話している。

       

新聞の見出しでは、何がなにやらわかりにくいのですが、         この研究を乱暴に要約すると哺乳動物の細胞では、ゲノム上のとある遺伝子が盛んに転写されるとき、その両側の全体で100         kbp位の領域にわたってゲノムが、遺伝子のみならず遺伝子間領域まで転写されているよ、というこです         (オリジナルはこちら)          。論文の表題の"Ripples"には”波動”という意味もあり、ニセ科学マニアには垂涎の的かも?いえいえ、         至極まっとうで興味深い論文です。

       

ゲノム全体をカバーするTiling arrayがあると、こういう仕事ができるんですね。         この論文では、他にもノザン、RT-PCR、SAGEなど転写産物を測定するあらゆる方法を駆使していて、         ゲノムの特定領域のディープ・トランス・クリプトームとも言うべき研究になっています。          また、特にハウスキーピング遺伝子について未成熟な産物転写(スプライシングされていないもの)         と成熟したmRNAの量比の変動も追っていて、転写レベルの変動ほどには成熟mRNAのレベルは動かないので、         ハウスキーピング遺伝子についてはRippleの影響は及びにくい、という考察もあり、かなり仕事が丁寧です。

       

ちなみに酵母では転写の活性化が起きるときの領域のサイズは3 kbp位と言われていますから、          哺乳動物のそれは巨大です。しかし、この研究で見られたような転写の活性化が、物理的な領域のサイズで決まるのか、         遺伝子の密度や染色体上の位置、近傍のゲノムのメチル化等とどのような関係があるのか、というのは今後の課題でしょう。        

      

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