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2008年8月10日 - 2008年8月16日の記事

2008年8月15日 (金)

Molecular gastronomy的? トマトソースのレシピ

仕事のメモではありませんが、業務上得た知識と関係なくもありません。

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庭先のクッキングトマトが500 gほど収穫できたのでトマトソースを作ることにした。デルモンテのイタリアンレッドを2株栽培しているのだが、 今年はもう 2 kg以上収穫できた。CMVワクチン接種苗(*) なので少々値段は張ったのだがもう元はとれた。

* 弱毒CMVを農薬だと考えると、農薬登録されていない気がするのでちょっと微妙な技術です。   家庭菜園用なら無登録でも良いのでしょうか。弱毒ウイルス製剤を販売していないにしても、種苗として販売するための育苗は”業”なので、    農薬取締法の使用規制の対象ではないかと思うのですが。ZYMVについては登録農薬があるのですが。

トマトソースの作り方は数々あるが、トマトという植物の化学的組成や生物としての特性に着目した調理法はあまり知られていない。以前、 NHKのためしてガッテンという番組でトマトソースの作り方を特集していたのだが、固形成分の歩留まりに問題がある様に思ったので、 製造プロセスの改良を試みた。

ガッテンのレシピはこちら。 抜粋すると以下の通り。   

  • 材料   
    • トマト 6個
  • 作り方
    1. トマトのヘタをとり八つ切りにし、ミキサーで粉砕する。       
    2. [1] をこしきでこし、フライパンに入れて20分弱火で加熱する。
    3. ヘラで字がかけるくらいになったらできあがり。
      ※冷蔵庫で1週間ほど保存できる

生化学的な実験では細胞を破砕する(こわす)場合には、水溶液のpHを調整するための緩衝液や、 各種の酵素の阻害剤を加える。その目的は、細胞内では糖、有機酸、ポリフェノールといった様々な物質が膜で仕切られており、 酵素と接触しない様になっているのだが、細胞を破壊するとそれらの物質が酵素と接触したり、空気中の酸素と反応して一期に変質するので、 それを防ぐことにある。

たとえば、リンゴをおろし金ですり下ろしてガーゼなどで絞り汁を濾過すると、 絞り汁はリンゴそのものの果肉とは似てもにつかない褐色になる。これは、リンゴの細胞内に含まれるポリフェノールオキシダーゼという酵素が、 空地中でリンゴの細胞が壊れた際に放出されるポリフェノールを酸化した結果、 ポリフェノールの酸化物が私達の目には茶色に見えているのだと考えられている。

もちろん、酸素と接触して成分が変化すること自体が調理する上で必ずしも悪いことではないし、 鍋で加熱するとどのみち酸化するので、今回の製造プロセスの改良の眼目はそこではない。それに、 料理の際に緩衝液や酵素の阻害剤を入れると、それは料理とは”別のもの”になりはててしまって、 もう食べられない。

問題は、ステップ2.にある。生のトマトの細胞は、細胞壁の間にペクチンがあり、 糊のように機械的に細胞をつないでいる。ペクチンは加熱調理によって低分子化する(野菜を煮ると柔らかくなるでしょ?ま、 加熱で変化するのはペクチンだけではありませんが。そういう論文もあるんです)。生のトマトを、 ミキサーで破砕すると、機械的に細胞を壊すことはできるが、この時点ではペクチンの低分子化はまず起こらないだろうと考えられる。

その結果、ミキサーにかけた生のトマトは、塊のままの細胞がトマトジュースに浮遊している状態になる。 これをこしきで漉すのだが、生の細胞が固い上、よほど強力なミキサーでなければ繊維分が十分に切り刻まれないために、 こしきの上に結構な量の残渣が残ってしまう。トマトがあまり熟していない場合や果実内の成熟が不均一な場合には、この残渣が増える。 逆にトマトが完熟している場合は、 トマト自身が生産したポリガラクチュロナーゼ(PG)という酵素によってペクチンの部分分解が起こっているために、 果実が柔らかくなっており残渣は少なくなる。

このような経験を踏まえて考えてみると、ミキサーにかける前にペクチンが低分子化していれば、 こしきで漉す効率が高くなり加工歩留まりが向上すると考えられた。そこで、以下のように加工プロセスの改良を試みた。

  • 材料         
    • トマト 6個
  • 作り方
    1. トマトのヘタをとって4つ切りにし、食塩適量と共に真空パックして95度のお湯で5-10分間加温する。       
    2. 真空パックを50度以下まで水道水で冷却、又は空冷してミキサーで粉砕する。
    3. [2] をこしきでこし、中華鍋に入れて15分中-弱火で加熱する。
    4. ヘラで字がかけるくらいになったらできあがり。
    5. 保存容器に入れ、表面に厚さ1-2 mmのオリ-ブオイルの層を作り、殺菌のため電子レンジで2分間加熱し、自然冷却する。
    • 保存期間は保障しませんが、ガッテンのレシピよりは保つはずです。

裏ごし歩留まりの評価を定量的に行っていないため、 こちらの方がどれだけ歩留まりが良くなったかは評価できないが、裏ごし操作に必要な所要時間は1/2程度にとどまる(それに、 固形分が柔らかくなっているので力が余りいりません)。裏ごしされた液体は、生のままミキサーにかけた場合よりもとろみがある (粘度の測定は行っていない。というか家のキッチンの設備ではできません)。すでにペクチンが可溶化されているためであると考えられる。

加熱にはフライパンではなく中華鍋を使用しているが、中華鍋の方が熱効率が良く、 粘度のあるトマトソースでも対流が起こるため、焦げ付かずに濃縮できる。そのため、加熱時間は若干短縮できる。

一方、お湯を沸かす必要があるため二回加熱することから、 CO2排出量はオリジナルのレシピより増えてしまう欠点があるものの、加工中の食品残渣は改良プロセスの方が少なくなる。

肝心の食味は、変哲のない普通のトマトソースです。もちろん、 生のトマトから作っていますので缶詰では楽しめない香りがあります。

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トマトを栽培していない方が、以上の加工プロセスをより簡便に、かつ安価に行う為には、 ホールトマトの缶詰を買ってきてミキサーにかけるとより簡単です。また国内でのCO2排出量を増やしたくないと言う方は、 本場イタリア産のトマトソースの缶詰がお勧めです。加熱調理の際のCO2排出量はおそらくイタリアが負担してくれますし、 工場で加工する方が家庭のガス器具よりも熱効率は良いでしょう。なお、 缶詰の内側のコーティング剤からは微量のビスフェノールAが溶出されることが知られていますが、 缶詰1個から溶出するビスフェノールAの女性ホルモン活性の方が、 納豆1パックに含まれるダイズ由来のゲニステインの女性ホルモン活性よりも低いのではないかと思います。 どちらも通常の食品として問題のないレベルです。

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2008年8月14日 (木)

遺伝子組換え作物の安全性はどこまで解明されたか

・・・タイトルは、実はこけおどしです。

一般の方から、表題のような質問を頂くこともあるし、本のタイトルに「○○はどこまで解明されたか」というものも結構ある。 しかし、科学的にどのような事実が明らかになったか、と言う現状を伝えるのに「どこまで」という言い回しはおそらく適切ではないように思う。 設問の立て方が論理的に間違っていると、決して正しい答えに到達することはできない。

「○○はどこまで解明されたか」という言い回しが生まれる誤解の背景には、科学的に「解明される」あるいは「理解される」 とはどういうことか、専門家と非専門家の間、あるいは専門家の間でもとらえ方に大きな違いがあるように思う。

科学の探究は0%から100%の有限の区間の間で計れるものではなく、新しい事実が分かれば、 そこからまた新しい疑問が発生するのが通例だ。

たとえば、ある生物のゲノムの解読が終わった結果、ゲノムの至る所からRNAが転写されている現象が確認され、 結局のところこれまで考えていた”遺伝子”とは何だったのかがかえって曖昧になってきたこともある。また、分野が変われば、 火星に探査機を送って地表の成分を分析したら過塩素酸塩が発見されて、その生成過程が新たな謎として浮かび上がったこともあり・・・ 小さな例も含めれば枚挙に暇がない。

つまり、科学的事実の解明とは「どこまでも解明され続ける」ものであり、逆の言い方をすると”果て”が無い以上 「100%解明されることはあり得ない」ものでもある。論文の考察でも必ず残された問題は付きもので、この研究で完璧!全部分かった、 といういかがわしいものは見たことがない。

また、「○○はどこまで解明されたか」と言いうるためには、「解明」の程度を計るための定量的な尺度が必要だ。例えば、 特定の目的地があって、そこへ到達するためのロードマップが示されている場合を考えればよいだろう。 製品の開発のように一定水準の基準値をクリアする技術開発であれば、達成程度を数値化することもできるだろう。 自然科学の専門家ではない方々や、専門家でも定量的尺度がもてる分野の方では、科学的に「解明される」ことについて、 このような定量的な尺度があるものをモデルとしているのではないだろうか。

従って「○○はどこまで解明されたか」と言う本のタイトルは、正確を期するならば、大抵は「○○について、これまで何が解明されたか」 とするのが妥当なところだ。たとえば次のようなタイトルがインターネット上で見られる。

  • 慢性痛はどこまで解明されたか
  • 香りの科学はどこまで解明されたか
  • 少子・高齢化はどこまで解明されたか
  • 地球温暖化はどこまで解明されたか
  • 準結晶はどこまで解明されたか
  • 森林群集はどこまで解明されたか
  • PET研究により統合失調症は. どこまで解明されたか
  • 鉄骨の破断現象はどこまで解明されたか、 当面の対策技術
  • 痴呆の基礎研究 痴呆はどこまで解明されたか
  • 高血圧遺伝子はどこまで解明されたか
  • 自閉症はどこまで解明されたか
  • GERDの病理はどこまで解明されたか
  • 宇宙史はどこまで解明されたか
  • ウナギ大回遊の謎はどこまで解明されたか

書いているのは、ほぼ専門家だろうが、正直なところ、どれも 「どこまで解明された」とは言い難いテーマを取り扱っているとうに思う。

私自身、高血圧なので例にとると「高血圧遺伝子はどこまで解明されたか」 というテーマなど、「どこまで」と言う取り上げ方をしてはいけないものののように思う。私は医学関係者ではないが、「本態性高血圧」 という用語の意味を知ったときには唖然としたものだ(興味のある方は自分で調べてみてください)。こちらのホームページ(東大医学部付属病院) にはこう書いてある。

高血圧は原因の明らかな二次性高血圧(腎臓疾患や内分泌疾患による。 全体の約5%)と、原因のはっきりしない本態性高血圧に分類されますが、ほとんどは本態性高血圧です。

つまり、高血圧の95%ははっきりした原因が分からず、それを、 とりあえず本態性高血圧と一括りにしている、ということだ。そこに、 何らかの遺伝子の関与があるらしいということが分かってきたので、「高血圧遺伝子はどこまで解明されたか」 というタイトルになっているのだが・・・95%の高血圧を原因不明と言っている現状を踏まえれば、 何かが解明されれば「高血圧遺伝子が科学的に解明された」 というゴールへと到る定量的な尺度でものごとを語れる状況でないように思うのだが。

話は戻って、遺伝子組換え作物の食品として、あるいは生態系への安全性について考える場合も「どこまで解明されたか」 という疑問に対して専門家は答えることができない。それは、一つには質問が論理的に正しくないからだ。しかし、 これまで開発されてきた具体的な遺伝子組換え作物のそれぞれについて「これまで何が解明されたか」を答えることは”概ね” できる。

# 2008年7月13日の朝日新聞、be reportの末尾にある、”確かなのは「どこまで解明され、未解明なのか」 といった科学的な議論を含め消費者への情報提供がないまま・・・”という表現にインスパイアされて書いてみました。

# なお、この記事は一般に広く知られている事実から構成されているものであり、職務上知り得た秘密には該当しません。

 

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2008年8月13日 (水)

地味だけど結構いいかも。"MSB Spin PCRapace"

以前試供品をもらって放ってあったPCR精製キット "MSB Spin PCRapace" を使ってみた。 よくあるPCR精製キットは、

  1. PCR反応液を結合バッファーで希釈し、
  2. 遠心や減圧濾過でスピンカラム内のメンブレンに吸着させ、
  3. 洗浄液で洗浄し(Qiagenは1回+カラのカラムで遠心、Monofasは1回のみ)
  4. 溶出バッファーでメンブレンを浸潤させ、遠心でDNA溶液を回収する

という4ステップを行う。回収率はフラグメントサイズにもよるが、2-3 kbpの断片だと40%以下になることもある。 そのくらいの大きさのDNA断片だと、プライマーの除去とバッファーの交換・濃縮だけで良ければ、PEG沈の方が収率は良いくらいだ。

"MSB Spin PCRapace"は、驚いたことに精製ステップが3段階しかない。

  1. PCR反応液を結合バッファーで希釈し、
  2. 遠心や減圧濾過でスピンカラム内のメンブレンに吸着させ、
  3. 溶出バッファーでメンブレンを浸潤させ、遠心でDNA溶液を回収する

つまり、洗浄液で洗うステップがないので操作が簡便で、ピペットのチップの消費も少なくて済む。

結合バッファーの組成に秘密があるらしいのだが、そのあたりはあまり関心がないので置いておいて、操作が簡便なのに加えて、 回収率が非常に高い点が優れている点は良い。 メーカーカタログで85-90%の回収率をうたうキットは多いが、私が使ってきたキット (BIO101のGeneClean, Qiagen のQIAquick, Minelute, 京都モノテックのMonoFas, 日本ジェネティクスのNucleoSpinなど)のうち本当に80%以上回収できたものは、これくらいだ。また、 扱えるDNA断片長も80 bp- 30 kbpと、QIAquickよりも幅広い。QiagenのMineliteは、がんばれば5 uL位のボリュームの溶液にDNAを回収できる点は優れているのだが、扱えるDNA断片のサイズが4 kbpまでなのでlong PCR産物の精製に使うには厳しい。MonoFasは35 kbpまでいけるらしいが、経験上、回収率はあまり期待できない (悪くすると30%くらい)。"MSB Spin PCRapace"の回収量は溶出用バッファーは最低10 uL以上使えとあるので、 溶出ボリュームは大体Mineluteと同等だろう。

まだ、試供品で3回くらいしか試していないが、製品を購入してもう少し詳細をみてみたい。一応、 制限酵素処理後の精製にも使えるとは書いてあるが、高塩濃度のカオトロピック塩は使っていないらしいので、 酵素の種類によっては失活しない可能性がある。PCR産物の精製専用にするか、 熱で失活することがわかっている酵素との組合せで使った方が無難だろう。

ちなみに、国内販売は和光純薬。定価ベースで250本で\42,000 (\168/1本)。MonoFasは250本で\44,000。 QIAquickは250本で\56,000 (\224/1本)、Mineluteは250本で\60,000 (\240/1本) なので、価格的にもお得かもしれない(実売価格はどうかわかりませんが)。

# なお、この製品情報は一般に広く公開されているものであり、職務上知り得た秘密には該当しません。

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2008年8月12日 (火)

食べられる蛍光タンパク質

うーん、どこに蛍光タンパク質が入ってるのかな、とおもいつつ晩飯に中国産ウナギの蒲焼きを食した。

蛍光タンパク質が入っているといっても、遺伝子組換え生物に限った話ではない。もちろん、 食べたのはウナギなのでオワンクラゲやサンゴでもない。

実は、ウナギの筋肉には、もともと蛍光タンパク質が含まれている。鹿児島大学 水産学部教授 林征一 先生の研究テーマで、 特許も出願されている(P2007- 254371A)。
このタンパク質はの詳細は特許明細にかかれているが、蛍光波長はEx. 450-490, Em. 500-550 (望ましくは527 nmなのでGFPよりちょっと長波長、EYFPとは一緒)、分子量16.5 kDaの単量体 (これまで知られている蛍光タンパク質の中では相当に小さい)で、何より面白いのは日本種ウナギAnguilla japonica の筋肉に含まれている点だ。つまりGFPやDsRed等と違って、 ヒトの食経験のある蛍光タンパク質ということになる。食品安全委員会の審査をパスしやすいタンパク質だ。

しかも、脊椎動物由来の蛍光タンパク質というのは、まだ他には知られていない初めての発見ではないだろうか?
# ウナギ以外の魚類や両生類には無いのだろうか?

これは遺伝子組換え植物の識別用マーカー遺伝子使えば、トレーサビリティーを確保する上で有効なツールになるかもしれない。

しかし、特許明細を見た感じでは、まだ遺伝子がクローニングされていない様子。となると、自分で単離するのはしんどいなぁ。 牛久沼で天然物を捕まえてきて、蛍光タンパク質を単離・精製して、N末の構造を決めてオリゴDNAを作って、RACEでcDNAを拾って、 発現ベクターにクローニングして、大腸菌で発現させて蛍光を確認して・・・で、残ったウナギは焼いて食べる、 と言うわけにも行かないだろうな。時間も金もかかるし、既に遺伝子についても特許申請されているし。 遺伝子が取れてもご苦労さんと言われておしまいですね。

# なお、この情報は一般に広く公開されているものであり、職務上知り得た秘密には該当しません。

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