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2008年4月13日 - 2008年4月19日の記事

2008年4月18日 (金)

新型インフルエンザ対策

日本では通常のインフルエンザの流行期をほぼ過ぎた。

一方、亜熱帯-熱帯アジアではこれから夏場がインフルエンザの流行期に入る。インフルエンザウイルスは乾燥に対しては耐性が強いため、 野外での寿命が長くなる乾燥した時期が流行期になるのだろう。

18日付のScienceには世界各地で単離されたA型インフルエンザウイルス(H3N2型)の分化から起源地を特定 (推定と言うべきか)した論文が掲載された(論文ニュース) 。現在まで行われてきたインフルエンザの流行予測に関して科学的な補強材料を与える研究と言えるだろう。

この論文の価値は、新聞で言われているように、これまで言われてきた起源地が分かったと言うことだけではない。その他に、 伝播経路が明らかになったことと、伝播中に蓄積する突然変異のパターンが網羅的に明らかにされたという重要な点にもある。

ちょっとぞっとするのは、東-東南アジアでのインフルエンザウイルス流行の起源から、 南米に見られるもっとも遅い流行までの期間が6-9ヶ月と短いことだ。これは日本での標準的なインフルエンザワクチンの製造に要する期間 (6ヶ月)ととんとん。南米で6-9ヶ月ということは、日本ではもっと早く流行が始まるので東- 東南アジアでの流行前にウイルス株の予測をしてワクチン製造することが求められるということだ。それができないのなら、 培養細胞で短期間でワクチン製造をする技術が必要になるだろう。

また、起源地から離れるほど、同時に時間が経過するほどに抗原型が分化していくことが示されている。つまり、 流行起源地に近い程ウイルスの抗原型が変異していないので、起源地に近い地域では、起源地で単離したウイルス株由来 (あるいは変異を入れて弱毒化したりすることもあると聞く)のワクチンが効く可能性が高いということだ。逆を言えば、 起源地から遠い地域では、 できるだけ近くで流行したウイルス株からワクチンを作らなければウイルスの変異に追いつけないために効かないかも知れないということでもある。

起源地に近い日本では、もし、東-東南アジアで流行し始めたウイルス株を早急に捕まえて、 迅速にワクチンが作れれば流行を防ぐことができるかも知れない。

一方、ワクチンについては抗体価がが上がりにくい集団(つまり、ワクチンが予防効果を発揮しにくい集団)が居る。乳幼児と高齢者だ。 高齢化が進む日本では、免疫機能の働きの弱い高齢者が多くなるため、ワクチンが感染予防に対して効果を持ちにくくなっていくはずだ。 感染予防をワクチンだけに頼る施策を続けると危ないかも知れない。

タミフルやザナビルなど、ウイルス側の構造をターゲットにした医薬品の場合は、耐性ウイルスが出てくることは明らかで、 いつまでも有効とは限らない。これも、ワクチンの代用にはなりにくい。

他の方法も必要だ。長期的には徳島大学の木戸先生達の研究のように、 ヒトの体の感染を成立させている機構をターゲットにした医薬品が必要かも知れない。・・・とはいえ、 気道の分泌型プロテアーゼを阻害するとウイルスの活性化はブロックできるかも知れないが、 細菌感染が起こるのではないかと若干心配ではあります。その時は、抗生物質を同時に投与しておくと良いのかも知れませんが。

 


 

今日のツッコミどころ。読売新聞の社説

 これに加え、「新型」は、鶏の有精卵を使う今の製造法がうまく適用できるか定かではない。 鳥インフルエンザのように、鶏が大量死するタイプなら、製造に使う卵が先に傷んでしまう。大量生産に用いることができるだろうか。

鶏が大量死するタイプの強毒型ウイルスをそのままワクチン製造に使うことを想像しているのですね。 この筆者は想像力が足りません。そういう場合は、遺伝子組換えや人為突然変異で増殖能を抑えた変異株を作って卵が傷まないようにするんです (若干時間がかかるのが難点ですが)。実際、WHOの配布しているモックアップワクチン用の株は弱毒化してあります。

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2008年4月16日 (水)

「植物の尊厳」を認める答申!?

以下のニュースで、「生の尊厳」と言う言葉にどのような意味を込めているのかよく分からないので、 コメントが難しいのだが、今日目にしたビックリニュース。

 
    植物の尊厳を認める報告書、スイスで
  • 2008年04月15日 10:24 発信地:ジュネーブ/スイス

【AFP】「植物にも尊厳があり、みだりに花を摘むことは非倫理的行為である」とするスイスの専門家らによる報告書が14日、   発表された。
 
   この報告書は連邦政府機関「Federal   Ethics Committee on Non-Human Gene Technology   (ヒト以外の種の遺伝子工学に関する連邦倫理委員会)、ECNH」    がまとめた『植物界における生の尊厳(the dignity of the creature in the plant   world)』で、理由なく花を摘むのは「斬首」に等しいと論じている。
 
   一方で、同委員会メンバーのBernard   Baertsche氏は記者会見の席で、日常の楽しみの一環として道ばたの花を摘むことは許容範囲と述べ、「植物の尊厳」   についてはケースバイケースであるとの寛容性も見せた。
 
   同様に、「植物に対する行為が人類の存続を目的としている場合は倫理的行為の範囲内である」と認めた。また、遺伝子工学についても   「植物の自主性(繁殖能力や適応能力)」を脅かすものではないとして許容している。
 
   今のところ、「植物の尊厳」に抗議の意を示している団体はごく少数で、   スイス国民の大多数は報告書内容は彼らの倫理的価値観を侵害しないと受け止めている。(c)AFP

「植物の自主性」・・・って?えっ!?という感じです。

このような報告書を政府機関が纏めるということ自体が驚きです。 どのような分野の専門家を集めて議論すればよいのか見当も付きません。

植物に始まり、果ては昆虫の尊厳(人類の存続に関係のない理由で蚊をみだりに叩き潰してはいけない)とか、 細菌の尊厳(人類の存続に関係のない理由でみだりに除菌してはならない)とか言い出しはしないかと、ちょっとハラハラします。”尊厳” を云々するのは、せめて哺乳動物くらいにしてほしいものです。

なお、我が国においては、動物の生存権、Animal rightsを保障する一連の有名な法律を世界に先駆けて作った実績があります。Wikipediaによれば、今を去ること321年前、 1687年のこと。通称、”生類憐れみの令”って総称されてますけどね(1709年には廃止)。

むやみに動植物を痛めつけたり殺したりするのは、私も反対です。しかし、 業務上の合理的な理由で植物を痛めつけたり(作物の収穫、調理、遺伝子組換えなど)、家畜や実験動物、 あるいは野生動物を殺さなくてはならないのは、もう仕方がないのです。

職業人である以上、それらの行為を強制的に止めるのは、職業人としてのヒトに対する生存権の侵害です。(Sea shepherdにもヒトの生存権に思いをいたしてほしいものです。)

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2008年4月15日 (火)

遺伝子組換え実験の掟

大学、国公立の研究所、企業で行われてきた遺伝子組換え実験については、実験者や法人が守るべきルールがある。

平成16年2月19日以降は、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」 (通称、カルタヘナ法あるいは”かるた”と略す人もいる)。違反者には行政指導や、刑事罰が適用される。

それ以前は、実験の実施主体によって所管官庁が異なるものの、大学、研究機関では「組換えDNA実験指針 (平成十四年文部科学省告示第五号)」(旧指針)の遵守が求められてきた。こちらは指針なので、基本的に罰則はない。(が、違反があれば、 やんわりと科研費返納等を促したことはあるらしい。)

遺伝子組換え実験の規制の歴史に興味がある方は、この組換えDNA実験指針のWeb魚拓でも取っておいた方が良いかも知れない(ま、 居なさそうなので自分で取っておきました) 。廃止された規則がまだ役所のホームページにあると、そのルールが生きているのと勘違いする人がでてくるので、削除する予定となっている(・ ・・って3年以上も放ってあるのですが)。

旧指針の解説資料については、 これはこれで結構味わい深いことが書いてある。

     
  • 遺伝子組換え実験指針の歴史
    • 旧文部省、旧科技庁の取り組み(昭和51年?平成13年)   
    • 省庁統合による文部科学省統一指針の誕生(平成14年?平成16年)
    •    

遺伝子組換え実験をしたことがない市民や、平成17年度以降に初めて遺伝子組換え実験を始めた人にはなじみがないのだが、 日本では昭和54年(1979年)にアメリカで1975年に開かれたアシロマ会議の議論を受けて、 初めて大学の遺伝子組換え実験に関する指針が設けられている。以来、平成16年(2004年) の廃止までの25年間に実に20回の改訂が行われている。

現在、遺伝子組換え実験の規制をしているカルタヘナ法の下部規則である「研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令 (平成16年 文部科学省・ 環境省令第1号) 」(通称、二種省令)には、この旧指針の考え方が色濃く残されており、 基本的なルールは激変的には変わっていない。それまでの指針自体が合理的なものであったことと、 現場の混乱を避けるための配慮とがあったのだろう(それでも結構、混乱していましたし、 私はその渦中でもがいておりました)。

このあたりの「昔語り」をどなたかにしてほしいものだ。例えば、

     
  • ”昔はなぁ、ヒトや霊長類のゲノムDNAをクローニングすると言うだけでP3レベルが要求されたものだった”
  •  
  • ”あの頃は、窓の開く温室で組換え植物を栽培する実験は、開放系と言うて、ぜえんぶ大臣確認実験だった”     (私も申請書を書いたことがあります)
  •  
  • ”そうそう、そういえば自律増殖性の組換えウイルスを作る実験も、あの頃は大臣確認だった”     (今でも大臣確認ですって。)
  •  
  • ”機関承認実験と機関届出実験という区別まで指針の中に事細かに書かれていたものだ”

なんて具合に。リスク評価の集積が進んだことで、20年前から見ると大幅に規制緩和されている様子が分かることだろう。

このところ新聞沙汰になっている神戸大学大学院の事案については、様々なblogや果ては2chでも色々と喧伝されている。やれ、 「役人が現場の状況も知らないで勝手なルールを作るからいけない」だとか。・・・しかし、 滅菌していない組換え大腸菌を流しに捨ててはいけないというのは、 20年以上も前の組換えDNA実験指針が運用されていた頃からどこの現場でも通用しているルールだ。プロなら知らないはずはない。

無原則に様々な組換え微生物を普通に流しに捨てる状況の方が、現状より良いと考える人はおそらく居ないのだろうから、 何らかの行動基準は必要なのだ。要は廃棄の前に”不活化”できていれば良いのだから、オートクレーブが面倒だったら、 流す前に塩素系漂白剤を入れて一晩放置とか、他にも方法はあっただろうに。それさえもやらなかったのであれば極めて残念なことだ。

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2008年4月14日 (月)

組換え実験中止ですか

神戸大学が全学で遺伝子組換え実験を中止しているらしい。朝日新聞より。

 

神戸大、遺伝子組み換え実験を全学で停止

 

2008年04月12日

 
   

 神戸大大学院医学研究科(神戸市中央区)の久野(くの)高義教授(57)の研究室(分子薬理・薬理ゲノム学)が、     遺伝子組み換え実験に使った大腸菌などを未処理のまま廃棄していた問題を受け、同大学は学内すべての研究室などに対し、     遺伝子組み換え実験の停止を命じた。あわせて、実験に携わった研究者と学生らに廃棄方法などを尋ねるアンケートを配った。

   

 同大学によると、電子メールで11日、理学、農学、工学などの研究科と付属病院など12部門に通知した。     医学部では問題発覚直後から実験を自粛していたが、学内調査で久野教授と研究生らの証言に食い違いが出ていることなどから、     実態が解明されるまで全学レベルで実験を停止させることにした。     すでに遺伝子を組み換えたマウスなどの実験動物の飼育は認めるという。

   

 アンケートは遺伝子組み換え実験の期間や内容、廃棄方法など4項目を問うもので、署名と押印を求めている。     回答期限は16日午前10時。また同大学は11日夜、医学研究科棟周辺のマンホールを開けて下水を採取し、     久野教授の研究室の流しから廃棄された遺伝子組み換え大腸菌などが残留していないか調べている。

 

新年度早々、事件と直接関係のない部署にとっては大変な迷惑である。中には科研費が通ったという通知をもらって、 さぁやるぞ、と張り切ったところで腰砕けになってしまった方も居るに違いない。一部の不届きもののせいで迷惑を被るのでは、 全くもって気の毒としか言いようがない。

しかし、「遺伝子組み換え実験の期間や内容、廃棄方法など」の調査って言ってもね・・・ 全学で行われている遺伝子組換え実験の種類は、事務方の想像を超えるものだろう。私の居る独法でも、課題数だけでも数百の実験が、 東京ドームの数倍のフロア面積の実験スペースで実施されいる。総合大学ともなると、もしかすると、もっと大規模かもしれない。 調査が終わってからの集計作業も相当大変なことになるのは間違いない。それまで実験中止ならば連休も返上で作業しても1ヶ月で済むかどうか。 事態の収拾は、どのくらいマンパワーを割けるかにかかっている。

廃棄したという事実の追跡については、ベクターをちょこっと改変するだけなので中間産物はとっておかない、 とかcDNAを発現ベクターに載せ換えるまでの増幅とか、ちょっと増やしておしまいという組換え大腸菌の廃棄まで入れると、 正確な記録に残っていない(実験ノートから推定するしかない)組換え大腸菌の廃棄も相当数あるはずだ。聞かれた方も、 どこまで回答したものかと迷うことだろう。

下水の大腸菌の分離まではやらないのでは、と思っていたが、やるんですね。 採ってきた下水の水を大型遠心機にかけてゴミを落として、高速遠心機でペレットして、生理食塩水で段階希釈して、 アンピシリン入りのLBプレートに撒くのでしょうか。標準的な検出法が確立されていないので、難しい問題です。

結局、最終的な判断は、単に何らかの組換え大腸菌が下水にいるかどうかではなく、 問題の研究室で作られた大腸菌がどのくらいの頻度で環境中に居るのか、と言う問題です。技術的には難しいのですが、 抗生物質なしの培地でのコントロールも取っておかないと。でないと、ものすごく高感度な検出法を使うと、環境中ではほぼゼロに近い、 なにがしかの組換え大腸菌を増幅してしまう事になります。 最後は久野研究室で使用していたクローンに特異的プライマーでコロニーPCRでもするのでしょうか。環境からDNAのPCRだと、 死滅した組換え生物由来のDNAまで検出されるので、高感度ではあるが信頼性は低いし。

不用意に環境中の大腸菌を増幅する実験をすると、 危険性から言えば組換え大腸菌どころではない病原性大腸菌を繁殖させることになりかねないので、要注意です。

 

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