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2008年4月6日 - 2008年4月12日の記事

2008年4月11日 (金)

遺伝子組換え微生物を流しに捨ててはいけません。

下記の記事の内容が仮に事実であるとすれば、こういう事をしていると、 違法と言うだけでなく研究者や所属している組織の社会的な信用も失います。

 

遺伝子組み換え大腸菌、実験室の流しに捨てる…神戸大研究室

 

 神戸大医学研究科(神戸市中央区)の久野高義教授の研究室(分子薬理・薬理ゲノム学)が、   実験に使った遺伝子組み換え大腸菌や酵母を実験室の流しに捨てて処分し続けていたことが10日、複数の同研究室関係者の証言でわかった。  

 

 遺伝子を組み換えた生物は、遺伝子組み換え生物等規制法で、熱や薬品で死滅させて廃棄すると定められている。   同教授が文部科学省の調査に事実を隠ぺいしたとの証言もあり、同省は「早急に詳細な調査をする」という。

 

 関係者によると、久野教授らは、発がんのメカニズムなどの研究で、遺伝子を組み換えた大腸菌や酵母を使用。5年以上前から、   菌の入った培養液を処理せず実験室内の流しに捨てた。菌を育てた寒天状の培地も一般廃棄物としてごみ箱に捨てていた。

 

 加熱処理して菌を死滅させる機器は実験室に3台あるが、ほとんど使われていなかったという。医学研究科によると、   捨てられたとされる菌の危険度は低いというが、排水は一般の下水道に直結しており、人の体内に入る可能性も否定できない。

 

 文科省は、不適切な処理を伝える匿名の通報を受けて3日に、研究室を立ち入り調査。神戸大側は翌日、   組み換え大腸菌の培養器を廊下に置いていた違法行為があったと発表したが、処理については「すべて適正と確認した。周囲の汚染はない」   と説明していた。

 

 久野教授は「手を抜くスタッフがいた可能性は否定できず責任は私にあるが、違法な処理や隠ぺいを指示したことはない」   と話している。

 
    (2008年4月11日03時10分  読売新聞)  

 さて、こういう事態になると、まず生きた組換え体を廃棄した事実(いつ、何を、どこに、どれだけ) があるかどうかということの事実関係を確認しなければなりません。次に、その事実があったとして、 廃棄された組換え大腸菌や組換え酵母が人体や環境に対してどのような影響があるかを検証しなければいけません。

 いずれも、文部科学省からの聞き取りに対して、事業者としての神戸大学の責任で行うことになります。 学内の遺伝子組換えに関する安全委員会や総務部門等がその担当になるでしょう。 実験で頻繁に作る組換え微生物の廃棄については記録を残していない事も多いでしょうから、追跡は大変だと思います。

 もし関係者が事実関係を認めれば、流しのトラップの水を取ってきて、 選択培地にストリークしてプラスミドを取って調べる、というところまでする必要はないと思います。もし、下水にまで漏出していれば、 これは環境省マターでもありますので事態の収拾は長期化するかもしれません。

 人体に対する影響については、通常の組換え実験に使われる酵母Saccharomyces cerevisiae (出芽酵母)あるいはSchizosaccharomyces pombe(分裂酵母) であれば、病原性もありませんので感染の心配はありません。また、大抵は栄養素要求性を持った変異体を使うので、 特殊な培地でなければ生育できない事が多く、自然環境下では生きていけないようにしてあります。

 一方、大腸菌については、通常遺伝子組換え実験用にはK-12株由来、B株由来、 W株由来 (これはちょっと微妙なポジション)のものが使われていますが、いずれも人には感染しないことが確かめられています。 環境中での生存率もかなり低い(・・・とはいえ、 0ではない)ので、生き残っているものも絶対に居ないとは言えません。が、 普通は環境中に居る様々な常在菌と拮抗しあうので、生態系に影響を与えるほど大繁殖することはできません。

 問題となっている菌株が、上記のものであれば深刻な事態にはならないはずですので、そうであることを祈ります。

 こういう事態になったのは、果たしてスタッフの手抜きというだけで済む問題だろうか?「手抜き」というのは、 違法だという認識があって、それにもかかわらず、ばれなければ違法行為をしても良いと考えているということになるのだ。 廊下にインキュベーターを出していた一件は、「だって狭かったんだもん」と言うことなのだろうが、こっちの方は 「だってめんどくさかったんだもん」とでも言うのだろうか。困ったラボだ。

 文部科学省研究振興局生命倫理・安全対策室には相当の負荷がかかっていることでしょう。毎週、 神戸に日帰り出張という有様かもしれません。職員の皆さんも過労で体をこわさないように気をつけて下さい。国家公務員の約1.2% は鬱や統合失調症などの精神疾患で長期休養を取っているそうですので。

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2008年4月10日 (木)

「役に立たない」方が幸せな研究

世の中には「役に立たない」方が幸せな研究というものがある。

バイオテロ対策、飢餓対策、放射線防護、地震対策など、ハザードに備えるための基盤研究は、その成果が世の中の役に立つ時には、 世の中が不穏な時代になっていると考えられる。

ちょっと旧聞ですが、3/17の新聞発表より。

東芝、 警察庁や帯畜大と共同でDNAチップを用いた生物剤検知システムを開発

DNAチップを用いた生物剤検知システムの開発について
-高精度な生物剤検知用DNAチップの開発を完了-

 警察庁 科学警察研究所(以下、科警研)は、国立大学法人 帯広畜産大学 大動物特殊疾病研究センター(以下、帯畜大)、 株式会社 東芝(以下、東芝)と共同で、生物剤検知用DNAチップ(*1)を開発しました。

 今回開発したDNAチップは、科警研、帯畜大の持つ生物剤(=病原体)検出に関する技術と、東芝の電流検出型DNAチップ技術(*2) を融合することで、生物剤の混在が疑われる試料に対し、生物剤の迅速かつ簡便な多項目同時検知を可能にします。

 近年、NBCテロ(*3)が国民の安全・安心に対する大きな脅威となっていますが、そのような事案が発生した際には、 迅速な検知と情報伝達が被害の最小化や蔓延防止、および犯罪捜査に最も重要となります。特に、生物剤を用いたバイオテロの場合、 使用された生物剤の種類によって、その後の対応が大きく異なることから、 複数の生物剤を迅速に同時検出するシステムの構築が求められますが、 これまでの検査方法は操作が煩雑で多項目の同時検知が難しいなどの課題がありました。そこで、科警研、帯畜大、東芝は、 現場レベルで迅速かつ簡便に複数の生物剤を同時検知可能なシステムの構築を目指し、 DNAチップをベースにした生物剤検知システムの開発を進めており、まずは今回、 そのキー技術となる生物剤検知用のDNAチップの開発に成功しました。

 今後、三者は、更なる検出の迅速化、簡便化を進め、当生物剤検知用DNAチップを搭載した「全自動モバイル型生物剤検知システム」 の実現を目指して、共同開発を継続していきます。

 なお、今般の開発は、科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業(JST・CREST)の「先進的統合センシング技術研究領域 (平成17年度採択)」の一環として実施したもので、 3月24日より国立京都国際会館で開催される第81回日本細菌学会総会において発表を予定しています。


*1:DNAチップとは、ガラスやシリコン基板上に、複数種のDNA分子を固定したもので、 試料中のDNAと結合するか否かを調べることで、試料中に目的のDNAが存在するかを調べることができる。

*2:電流検出方式とは、電気化学的に活性な核酸挿入剤を用いる東芝オリジナルのDNA検出技術。

*3:Nuclear/Biological/Chemical terrorism 核物質、 生物剤又は化学剤若しくはこれらを使用する兵器を用いた大量殺傷型のテロ。

研究代表者が大学時代の同級生だったのでビックリ。僭越ながらGood Jobと申し上げます。

炭疽菌や野兎病菌のような人獣共通感染症の病原菌の研究は、獣医畑でないとなかなか専門的にはやれないので、 北大や帯広畜産大はこの分野の研究者を養成する上で非常に重要な教育研究機関になっている。・・・というか、 日本は公衆衛生の向上によって感染症が減ったために、多くの大学で医学部での感染症研究が昔から見ると下火になってきているのも一因だ (これ自体、「役に立たない」方が幸せな研究ではあるのだが)。

こういう社会基盤の安定のための研究にはなかなかお金がつかないものなので、JSTの資金提供にもGood Job!と言ってあげたい。

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2008年4月 9日 (水)

京都大学のOpen Course Ware

Open Course Ware(OCW)については、wikipediaあたりで調べてください・・・ と思ったらwikipediaには載っていなかった。

OCWとは、MITで始められた大学の講義を人類共通の知的資産として無料で開放しようという気前の良い運動。 本家はこちら

日本でも2005年から、大阪大学、京都大学、慶應義塾大学、東京工業大学、東京大学、 早稲田大学の6大学が自発的に合同で企画を始め、今日では日本オープンコースウエア・ コンソーシアムとして活動しています。

以前のエントリーで、クリエイティブコモンズ・ライセンスの教材について書きましたが、オープンコースウエアといえども、 著作権についてはクリエイティブコモンズ・ライセンスではない様ですので、教材の二次的使用には制限があります。

それはさておき、以下のニュース。

臓器移植映像や湯川博士の業績解説

 京都大とネット検索最大手の米グーグルは8日、 同社傘下の世界最大規模の動画投稿サイト「ユーチューブ」で講義や教材などの動画の無料公開を始めたと発表した。 社会貢献とともに、国内外から優秀な学生、研究者を獲得するためのPRが狙いだ。

 ユーチューブによる講義の配信は、明治学院大(東京)、嘉悦大(同)に次いで3番目。

 公開しているのは、講義の録画や授業で紹介された教材など199本。医学部生向けに解説した臓器移植の映像、ノーベル賞受賞者・ 湯川秀樹博士の業績を京大教授が解説した画像もある。誰でも視聴できるが、単位は認定されない。

 京大は2005年から大学の講義をネット上で公開する「オープンコースウエア」に取り組んでいる。グーグルとの提携で、 人気サイトのユーチューブを通じて視聴者の拡大を目指す。

 当面、これまでの公開分をユーチューブで配信し、将来はすべての講義を対象にするという。

 京大学術情報メディアセンターの土佐尚子教授は「学問は学内に閉じ込めておくものではない。共有してこそ価値がある」と話す。 米グーグル副社長の村上憲郎・グーグル日本法人社長は「専門性の高い動画を見たいという利用者の要望に応えたい」としている。

2008年4月9日   読売新聞)
いいですねー、知の開放。良い講義は社会人だけではなく、高校生にも見せてあげたいですね。また、自前のサイトでなくYouTubeで動画を公開というところが今風です。 視聴した方のコメントも付くので双方向っぽい感じになりますしね。
ついでに、日本のOCWの総合ポータルサイトなんていうものはないんでしょうかね。 どの大学の講義が魅力的か、 学生を飽きさせない工夫をしているかがよく分かるようになります。
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2008年4月 8日 (火)

ヘルシア緑茶に除草剤混入

4月4日、毎日新聞より。

異物混入:花王「ヘルシア」から除草剤成分 何者か混入か

 「花王」(東京都中央区)が販売する清涼飲料水のペットボトル「ヘルシア緑茶」(350ミリリットル) を飲んだ練馬区の会社役員の男性(43)が下痢の症状を訴え、花王が成分を調べたところ、除草剤の成分が検出されたことが分かった。 花王に脅迫などはないものの、警視庁捜査1課は何者かが意図的に混入した疑いもあるとして威力業務妨害容疑で捜査を始めた。【川上晃弘、 古関俊樹、山本太一】

 調べでは、男性の妻が3月26日に練馬区内のスーパーでヘルシア2本を購入。31日にそのうちの1本を男性が飲んだところ、 洗剤や薬のような味がしたため、のどに指を入れて吐き出したという。男性は下痢を訴えたが、既に回復しており入院などはしていない。

 男性によると、ペットボトルのキャップが少し緩かったといい、混入経路を調べている。 男性はもう1本のヘルシアを27日に飲んだが異常はなかった。他の客からの被害の訴えはないという。

 花王によると、除草剤の成分が検出されたものを含むヘルシアは3月5日に山口県の委託先の工場で33万本が製造され、 14日に出荷された。物流拠点には約2万本が残っているが、開封して確認したところ異常はみられなかった。 練馬区のスーパーには20日に納入され、翌21日から26日まで陳列されていた。

 除草剤は一般に市販されているものとみられる。花王は、除草剤は多量に入っていたとみられるものの、 1本すべて飲んでも致死量には達しないと説明している。

 除草剤はヘルシアの原材料には含まれておらず、製造段階ではなく流通過程で混入されたとみている。

もう一つ。

除草剤混入:内閣府の情報把握は、通報から4日後

 岸田文雄国民生活担当相は7日の記者会見で、花王の清涼飲料水「ヘルシア緑茶」への除草剤混入事件に関し、 被害者の男性が3月31日に花王に連絡したが、内閣府が情報を把握したのは4日後だったことを明らかにした。 政府は先の中国製冷凍ギョーザによる中毒事件を受け、情報収集・伝達体制の見直しに乗り出したばかり。 今回は格好の試金石となったが、「合格点」とはいかなかったようだ。

 内閣府によると、東京都内の男性がヘルシア緑茶を飲んだ後に下痢の症状を訴え、3月31日夜に花王に連絡。 同社は4月1日に現品を回収し、異物の混入を確認した3日に保健所と警視庁に通報した。東京都は4日に厚生労働省に連絡し、 同省が内閣府に伝えた。

 これに関連し、岸田氏は会見で「厚労省に報告のあった1件しか(被害が)確認されなかったので、 緊急事態には当たらないと判断した」と釈明。そのうえで「省庁間の情報共有もギョーザ事案に比べてかなりスピードアップした」 と自賛した。ただ、厚労省は「下痢と緑茶に因果関係が疑われる状態だったので、速やかに保健所に通報してほしかった」(監視安全課) と同社の対応を疑問視している。

 政府は7日夕、ギョーザ事件を踏まえた緊急時対応訓練を実施したが、今回の緑茶事件によって一足先に「実戦」 での対応力を問われた形だ。【木下訓明

毎日新聞 2008年4月7日 18時39分

えーと、事実関係を整理すると、

  • 4月1日:回収
  • 4月3日:分析終了・異物確認
  • 4月3日:保健所、警視庁に通報
  • 4月4日:東京都→厚労省に連絡
  • 4月4日:厚労省→内閣府に連絡

事実関係が明らかになってからの連絡は、特に遅くないのでは?保健所から厚労省への連絡が1日縮まるかどうかというところだが、 これ以上早くしようとすると事実関係の確認はともかくとりあえず通報、ということになりはしないか?

たとえば、

  • いろいろなものを食べて下痢をした→
  • 下痢をした本人が食品メーカー数社に連絡→
  • 原因究明はともかく、食品メーカーから保健所に連絡。(「異物混入かもしれないし食あたりかもしれませんが、 当社製品を喫食したあとで下痢をしたお客さんが居ます!」と)→
  • 保健所から厚労省に連絡。(「下痢をした人がいます。いろんなものを食べてますが原因はわかりません」)→
  • 厚労省・・・全国から食あたりの情報がほぼリアルタイムで集まる。

・・・という感じでしょうか。これでは危機管理にも何もあったもんじゃありません。毎日新聞社はどうしてほしいんでしょうか。 危機に際しては通報が早ければそれに超したことはありませんが、緊急事態かどうかの見極めも重要です。このタイムコースを見ると、 政府が情報を把握してから後は遅いとは言えないでしょう。

それを、”緊急事態には当たらないと判断した」と釈明。”だの、” ギョーザ事案に比べてかなりスピードアップした」と自賛した。”だのと書く。

事実関係としては、質問に対して”緊急事態には当たらないと判断した」と回答”、 対応状況については”ギョーザ事案に比べてかなりスピードアップした」と感想を述べた。” と言えば済むものを、あえてこの言葉を選んだセンスが、私は残念でならない。とりあえず政府を叩いておけば、 国民が喜ぶと思っているのだろうか。それとも、毎日新聞はメーカーによる異物の分析を早くしろと言うのだろうか。そう言う主張なら、 記事の見出しは不適切です。

なお、この件について政府の対応に矛先を向けたのは、ざっと見たところ毎日新聞一社のみなのは少し安心した。独自の視点ではあるが、 明後日の方を向いている。また、毎日新聞社は食品安全にかかわる内閣府の機能を何だと思っているのだろう? 食品衛生法に基づいて回収などの措置命令を出すのも、注意喚起の呼びかけをするのも結局は厚労省の仕事だ。犯罪の場合は警察庁だし。 とりあえず、今の食に関する危機管理体制は、このようになっているらしい。

どう見ても、事実関係の把握に時間がかかったものの、内閣府に情報が入るのが遅いと批判される理由はないように思う。どこが、 「合格点」とはいかないのかさっぱりわからない。

 

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