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2008年3月16日 - 2008年3月22日の記事

2008年3月21日 (金)

ダイズの7S,11Sグロブリンの血清脂質プロファイルに対する効果は限定的?

NIH public accessになっている論文。個人的にはショッキングだったのでメモしておく。

 


 

Adams, M.R. et al. Replacement of dietary soy protein isolate with concentrates of soy 7S or 11S globulin has minimal or no effects on plasma lipoprotein profiles and biomarkers of coronary risk in monkeys. Atherosclerosis. 2008, 196: 76-80.

[超訳メモ]

ダイズの7Sあるいは11Sグロブリンを抽出し、飼料のカゼインなどのタンパク質と置換して、サルに食べさせ、 血清中のコレステロール、トリアシルグリセロールの濃度を測定した。また、冠リスクのバイオマーカー(soluble E-selectin, VCAM-1, MCP-1, TGF-β-1,  PAI-1) との関連を調査した。

ダイズ粗蛋白抽出物では、総コレステロールとVLDL + LDL コレステロールは有意に改善し、HDLも増加した。しかし、 7Sと11S抽出物では大した効果はなかった。7S抽出物では、総コレステロールが7%増加(主にVLDL + LDLコレステロールの増加によると見られる)した。バイオマーカーについては、どの蛋白でも改善は見られなかった。

要するにサルでは、飼料のタンパク質を単離した7S,11S蛋白へ置換しても、血清リポ蛋白のプロファイルを改善しないし、 冠リスクのバイオマーカーも改善しない。

 


 

作業仮説としては、培養細胞やマウスで血清リポ蛋白のプロファイルを改善する要因になってきたものは、 比較的少数の特定のタンパク質と考えており、粗蛋白で見られた効果が、精製分画ではよりシャープに現れると期待しての実験だったのだろう。 結果は、全く意外。齧歯類で確認されたような精製タンパク質の効果は、サルでは認められなかったということ。 n=32の試験で標準誤差もよくコントロールされている様に見えるので、データの精度は高そう。

なお、ダイズ7S分画は主にβ-コングリシニン、11S分画はグリシニンからなる。11Sの方は豆腐の主成分なので、 食品のタンパク質としては日本人にはなじみ深い。

うーん。この実験結果は、かなり痛いですね。これまで、 どの蛋白がコレステロール低減や脂質改善に効果があるかを培養細胞やマウスで詰めてきた研究が多々あって、 いよいよヒトに近い霊長類でモデル実験をしたところが、コレですから。がっかりした研究者は結構多いのでは無いかと思います。 この実験結果を信じるのであれば、 コレステロールのコントロールと冠リスクに関するバイオマーカーの改善にはどの分画が良いかと言う議論は白紙に戻ったことになるわけですから。

血清リポ蛋白のプロファイル改善のような特別な効果を期待しなければ、ダイズ由来食品は蛋白源としては肉よりもずっとまし。 そもそもダイズにはコレステロールが含まれていない。でも中性脂肪が気になるのであれば、 豆腐やあぶらげにも結構な量の脂質が含まれているので、加工食品として総合的に考えるのであればケースバイケースの判断が必要。結局、 特定のダイズ蛋白が心疾患等の予防によいというヘルスクレームの根拠が無くなるかもしれなということ。

一方、この実験ではアテローム性動脈硬化に対する評価はされていないので、高血圧に対する効果については情報がない。また、 生理活性を表す実体は、タンパク質が部分分解されたペプチドだと考えられているので、 投与されたタンパク質が非常に効率よく消化されてしまって、生理活性を表すのに十分な量のペプチドが残存しなかった場合にも、in vitroの実験結果と一致しない事も起こりうる。タンパク質の消化性をコントロールして、 機能性ペプチドの状態で吸収できるようになれば、また状況は変わるのだろうが、 今度は食品アレルギーを起こす可能性が高くなるのでそちらも気をつけなくてはならない。

ところで、全く消化しないものは食べ物にならないが、植物由来の食品には加工程度によってあまり消化性の良くないものもある。 ダイズそのものは、裸のタンパク質とは違って細胞壁に囲われた細胞でできている。細胞壁自体はヒトの消化酵素に耐性があり、 胃や小腸では消化されないため、組織という細胞の固まりの状態は腸管まである程度維持されると考えられる。たとえば、枝豆や水煮ダイズは、 裸のタンパク質である豆腐やあぶらげよりも消化されにくいだろう。 納豆は粒の形状が残っているが納豆菌のプロテアーゼでタンパク質は相当程度程度分解されているが、ポリグルタミンの粘液(糸の成分) でコートされているので、ゆっくりと消化が進む(そのため遅発性アナフィラキシーが起こることがある)。従って、 抽出されたタンパク質の生理機能性と食品のそれは、消化性が異なることもあるので一致しないことも十分にあり得る。

この論文の動物実験では、抽出済みのタンパク質を加えた混餌飼料なので、 ダイズ粉末を使用した場合とも消化吸収の状況が異なると考えられる。食品という複雑なものを科学の領域で扱えるまでに単純化・ 抽象化することは、なかなか難問だ。

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2008年3月19日 (水)

ミートホープ事件結審

北海道新聞より。

 


 

ミート社偽装 田中被告に懲役4年 札幌地裁「食の安全脅かす」(03/19 13:43)

 苫小牧市の食肉加工製造卸会社「ミートホープ」(破産手続き中)の食肉偽装事件で、 詐欺と不正競争防止法違反(虚偽表示)の罪に問われた元社長田中稔被告(69)=苫小牧市船見町二=の判決公判が十九日、 札幌地裁で開かれた。嶋原文雄裁判長は「会社と自己の利益を計るため、食の安全への信頼を根幹から揺るがした背信的な犯罪」として、 懲役四年(求刑・懲役六年)を言い渡した。

 食の安全、安心を脅かし、食品の表示偽装が各地で表面化するきっかけとなった事件で、 判決は田中被告の刑事責任を厳しくとらえ実刑とした。

 判決理由で嶋原裁判長は、一九七六年のミートホープ設立から数年後に食肉偽装が始まったと認定。 牛肉以外の肉を混ぜたことについて、「田中被告が長年の経験を悪用し、犯行を主導した。昨今みられる食品偽装の中でも大胆さ、 悪質さは際だつ」と述べた。

 また、田中被告が公判で、「(安い肉がほしいとの)取引業者の要望を断りきれなかった」 「安価でおいしい製品を工夫して供給しようとしたため」などと、偽装を繰り返した動機を供述したことに、嶋原裁判長は 「自らが社会に及ぼした影響に対し、悔悟や罪の意識が乏しい」と非難した。

 弁護側は、田中被告とミートホープが自己破産し、社会的制裁を受けていることなどから、 執行猶予を含む寛大な判決を求めていた。

 判決によると、田中被告は二〇〇六年五月から○七年六月にかけて、 三百二十七回にわたり牛肉に豚肉などを混ぜて製造したミンチ肉に「牛100%」などと表示し、 取引先十数社に約百三十八トンを販売した。このうちの約百トンを納入した北海道加ト吉(赤平市)など三社から、 代金約三千九百万円をだまし取った。

 


 

さて、判決理由には「食の安全捨てた」 と言う言葉は使われていないようだな。とすると、この見出しはおかしい。理由は後述する。もう一つ、中国新聞から判決要旨。

 


 

食肉偽装事件の判決要旨 札幌地裁


 食肉加工販売会社「ミートホープ」の食肉偽装事件で、元社長田中稔被告に対し、札幌地裁が19日言い渡した判決の要旨は次の通り。

 田中被告はミートホープ設立当初、肉加工の際に出るくず肉の処理に困り、 設立数年後には、牛のほかに豚や羊のくず肉を混ぜた牛ひき肉の製造を始めた。本件各犯行は、 同社で行われていた偽装行為の一環だ。

 被告は取引業者や最終的に食品を口にする一般消費者を顧みず、 偽装が容易なひき肉を利用し、安価な原材料費で多額の売り上げを得て、会社や自分の利益を図ろうとした。動機は極めて利欲的、 自己中心的で、厳しい非難を免れない。

 牛肉に豚肉、鶏肉、羊肉などを加える犯行は大胆で悪質さは際立っている。 昨今の食肉偽装の中でも、原産地偽装などの事案とは一線を画す。偽装表示、詐取行為は長期間、多数回にわたって繰り返され、 取引業者の信用も傷つけた。

 食肉業界での公正な競争を害したほか、 一般消費者に食品表示に対する不安を抱かせ、食の安全への信頼を根幹から揺るがしたことは明らかで、犯情は非常に悪い。

 本件各犯行は、会社ぐるみの大規模かつ組織的犯行であり、 代表取締役の被告が専門知識を悪用し、率先して偽装方法を発案し従業員に具体的に指示するなど、自ら中心となって主導した。

 さらに、被告は犯行の発覚後、 偽装に使用していた豚の心臓などを工場外に運び出して処分し、証拠隠滅を図るなど犯行後の情状も良くない。

 被告は食品の製造・ 加工に携わる者として食の安全に関する規範意識が強く求められる立場にありながら犯行を行っていたばかりか、公判で 「取引業者の要望を断り難かった」「工場間取引には表示義務がなかった」などと述べ、 自らの行為や社会的影響を真摯に省みて悔悟する姿勢がない。

 他方で、 ミートホープは偽装牛肉の取引による利益のみに依存していた会社ではなく、捜査・ 公判を通じて事実をすべて認め反省の弁を述べているほか、 被告とミートホープはともに破産宣告を受けるなど一定の社会的制裁を受けており酌むべき事情も認められる。

(初版:3月19日12時40分)

 


 

読売新聞、中日新聞でも裁判所の判断は 「食の安全への信頼を根幹から揺るがした」であったと伝えられているので、そうなのだろう。論告求刑の際に、 検察側は『食の安全』を捨てた恥も外聞もない行為 と言ったと伝えられている。本件裁判では「食の安全」 に関わる食品衛生法違反が裁判の争点になっていないにもかかわらず、 である。どこかズレている。

一方、裁判所はさすがに「食の安全を揺るがした」とは言っていない。 そのかわり「食の安全への信頼を根幹から揺るがした」と言った。 この犯罪が揺るがしたのは「安全」そのものではなく「安全への信頼」だったと。流石に、 裁判の争点になっていないことを判決理由にはできなかったのだろう。

それを知って、私は少しほっとしているところだ。 司法の公正に対する信頼が少し揺るぎかけていたところだったので。

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2008年3月17日 (月)

「きぼう」への投資を回収する?

宇宙空間に日本の物置小屋ができた・・・今般のシャトルで打ち上げられた「保管室」の取り付け成功は、つまるところそういうことだ。

20年の歳月と巨額のプロジェクト運営経費、最高の製造技術、そしてロボットアームを操作する匠の技をもってして為し得た成果。新聞各紙の書きぶりではそんな感じだ。それを物置小屋と言っていけなければ、倉庫だ。実験室本体ではないので、保管室というユニット自体の機能はきわめて限定的だろう。

私は、ここまでの成果を貶すつもりはさらさら無いが、新聞社の社説を見ていると、早くも成果を口にし 始めているので、私は冷めた目で現状を見直したいのだ。各紙の社説では喧しくも、早く資本を回収しろと言わんばかりの論調が飛び交っている。まだ実験室さえできていないのに、何を言ってるんだろう。寝言を言うのは寝ているときだけにしていただきたいものである。

 


 

読売新聞から。

これまでに政府は、ステーション計画に6000億円以上の予算を投入した。今後、ステーションの維持や日本独自の無人輸送船開発・ 運用などを合わせると、1兆円を超える費用がかかる。

 巨額の投資を無駄にしないよう幅広い活用策を模索し、役立てることも大事だ。国際協力は、そのひとつだ。 宇宙実験にアジア地域の国に参加してもらうなどの取り組みにも期待したい。

朝日新聞から。「「きぼう」―1兆円を生かせるか」

 しかし、肝心なのは、そこをどう使い、どう生かしていくかだ。

 きぼうの建設費は約5500億円、物資の輸送など運用に今後、毎年約400億円かかる。 準備段階も含めれば合計1兆円に達する巨大プロジェクトである。どのようにして巨額の投資に見合う成果を上げるのかが問われている。

(中略)

日本として何をめざすのか。今こそ、しっかりした計画が必要なときだ。

 


 

大新聞社にかかると、JAXAも文科省も、まるでなーんにも考えてない様な言われぶりだ。

 


 

日本経済新聞から。「宇宙実験、夢より成果見せよ(3/12)」

 日本は計画参加に伴い、実験棟の製作などに約7000億円つぎ込み、 2015年まで毎年400億円を投じる。つまり実験棟は総額が1兆円に及ぶプロジェクトである。 当初の経緯に加え各国との付き合いもあっただろうが、さほど深慮もせず計画を続けてきたことは否定できまい。

 実験棟は無重量状態だから、当初は革新的な材料や新薬の開発ができると言われてきた。その期待は薄れつつある。 実験装置の性能が上がり、地上実験で十分との指摘もある。目を見張る成果が出ればいいが、出ないのなら実験棟を見限ることも必要だ。 有人宇宙活動は費用がかさむ。それがどれだけ役立つのか。費用対効果を見極めるべきである。

 


 

さすが投資家向けの新聞です。7年先までにはどれだけ役に立つか示せと・・・。

いずれも、建設までに5,500-7,000億円の巨費を投じたこと自体を問うており、 2015年までの7年間で費用対効果に見合ったかどうか評価しろ、と言っている。短期で資本を回収させるタイプの製品向けの技術開発でもあるまいし、何を考えているのかさっぱり理解できない。だいたい、大雑把な見積金額でも1,500億円も違っちゃってて、彼らは何を見てるのだろう。概算値の端数だけでiPS細胞の研究費(5年で100億)の15倍、単年度20億だとすると75年分の研究費に相当する。年間400億の事業費というところは二社共通だから本当なのだろうが、これだって医学・生物学の分野から見ると桁違いの巨額だ。

※ 書いててだんだん腹が立ってきた。

今のところモノオキが一つできただけで、実験室の完成はこれから控えている大仕事だ。それさえも、研究のための設備が整ったということに過ぎない。宇宙実験室が本領を発揮するためには、そこで研究が行なわれなければならない。それがなければ、”箱物行政”と一緒だ。

ちなみに、私は研究に投じた経費から、それに見合った成果を回収しようと考えてはいけないと思っている。手作りの装置でちまちま実験してノーベル賞を取る人もいれば、スーパーカミオカンデやITERのように巨大装置を建造しないと実験できない人も居る。紙と鉛筆で良い人もいれば、スパコンが必要な人もいる。研究の遂行に必要な資源の投資は、ピンキリだ。

研究のアウトプットも様々。それが世の中に役立つこともあれば、役立たないこともある。すぐに役立つこともあれば、100年を経てようやく役に立つ研究も、1,000年経とうが役に立たない研究もある。研究成果が社会的に意味をもつまでの時間のスパンは様々だし、波及効果の現れ方も様々だ。いずれにしても、短期的な経済的波及効果で研究の真価を計ることは誰にもできないし、人類に対する貢献という意味では、その尺度は適当ではない。

つまり、「投資に見合った成果」というものは、成果自体を評価するための明示的で、なおかつ社会的に合意のある尺度が存在しない以上、幻想に過ぎない。(定量的な議論の前提が成り立たない、ダメな議論、と言う奴だ。)

まして、宇宙空間で行われる実験を必要とする研究に対して、「日本の国際競争力」がどうの、とか「公費で行われる研究なので納税者に対する説明責任」がという戯言は聞きたくもない(後者は耳が痛い)。そんなものに役立つことが予めわかっている研究なんておよそつまらない。また、私の想像力では、国際宇宙ステーションでできる生物学実験が、かつての”宇宙メダカ”以上のどんなインパクトを社会に与えうるのか全くわからない(・・・私の頭が硬くなってきてるのかな)。

私人のblogなので、またしても勝手なことを言うが、科学は、芸術やスポーツと似ているかもしれない。音楽に酔い、絵画を楽しみ、競技者の超絶的な技量を楽しむように、科学を楽しんでほしい。オペラハウスを作るのに巨費を投じたのに、つまらない演奏をしやがってとか、巨大サッカースタジアムを建ててやったのにJ2かよ!などと言ってほしくないのだ。プレイをする場の値段は、そこで行われる演奏、競技、研究の価値とは関係ないのだから。

日本経済新聞風に言えば、「宇宙実験、成果より夢見せよ」だ。すでに建設には巨費を投じてしまった。回収できる目処はまずないのだから、あとはどんな夢を描かせてくれるかが勝負だ。

※ さて、今シーズンはコンサドーレもJ1だ。これを、器に見合ったチームという評価をする人が居るのだろうか?

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