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2008年3月9日 - 2008年3月15日の記事

2008年3月14日 (金)

葉緑体形質転換のちょっと微妙なところ

日本国内で遺伝子組換え生物を作成する場合、カルタヘナ法の規制がかかる。研究開発段階の遺伝子組換え生物の使用等(たとえば実験) の場合は、文部科学省の研究開発二種省令に従って拡散防止措置を執らなければならない。

遺伝子組換え植物を栽培する場合、大抵は最初はP1Pレベルの拡散防止措置を執って栽培するが、 やがて組換え体の評価が進んで個体数も増え、栽培室が手狭になってくると、特定網室レベルの拡散防止措置を執る場合がある。

特定網室で普通に栽培できる(つまり大臣確認をしないで)遺伝子組換え植物の条件は、研究開発二種省令では、 第五条第四号に次のように定められている。

ホ 次の(1)から(4) までに掲げる要件のいずれにも該当する遺伝子組換え生物等 別表第五に掲げる特定網室の拡散防止措置とすること。


(1) 供与核酸が同定済核酸であり、かつ、哺乳動物等に対する病原性及び伝達性に関係しないことが科学的知見に照らし推定されること。
(2) 供与核酸が宿主の染色体の核酸に組み込まれており、かつ、転移因子を含まないこと。
(3) 花粉、胞子及び種子(以下「花粉等」という。) の飛散性並びに交雑性が宿主と比較して増大しないことが科学的知見に照らし推定されること。

(4) 微生物である遺伝子組換え生物等を保有していない植物であること。

大抵の組換え植物は問題なくクリアできるが、ちょっと引っかかるのが(2)。葉緑体形質転換の場合は、 導入した供与核酸は葉緑体ゲノムに取り込まれるのだが、葉緑体のcpDNAを「染色体」と言っちゃって良いのだろうか?

(2)の文章の意図は、 「供与核酸がエピゾームとして挙動したりトランスポゾンそのもののように転移して組換え生物の特性がどんどん変化するものは、 リスク評価済みとは言えないよね」というところだろうから、仮にcpDNAを「染色体」と言えなかったとしても、 リスク管理上は葉緑体形質転換植物を特に強く規制する必要はない。

なぜならば、葉緑体は一般に母性遺伝することから、そこに外来遺伝子を導入した遺伝子組換え植物では、 雄性配偶子である花粉を媒介した外来遺伝子の拡散を防ぐことが期待されており、 医薬品成分などフードチェーンに入ってほしくない物質を組換え作物で生産させる際のキーテクノロジーの一つとなることが期待されている。 リスク管理という点では花粉を媒介して外来遺伝子が拡散する可能性が非常に低いことから、 特定網室での栽培を規制するべき理由はないことになる。

だが、cpDNAを含む葉緑体内の構造を日本語で葉緑体の「染色体」と呼ぶかと言えば、普通は言わない。 良くって、核様体(chloroplast nucleoid)。英語表現では"Chloroplasd chromosome"と言わなくはないが、PubMedで見ても、この10年くらいはあまり使われていない表現だ (私が学生の頃は、まだそういう論文を見たことがあった)。従って、杓子定規に文言を解釈すると、葉緑体形質転換植物は(2) の条件を満たせないかもしれない。

なので、葉緑体形質転換体を特定網室で栽培しようと考えている研究者の皆様には、 その前に文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理安全対策室に、cpDNAを「染色体」 と言って良いかどうか照会することをお勧めします。

もし、規制当局から「染色体」と呼べないと解釈された場合には、 栽培の前に大臣確認申請をしてきちんと手続きをしておく必要があります(怠ると、ひょっとすると科研費をカットされちゃうかも知れませんね) 。

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2008年3月13日 (木)

高オレイン酸ダイズと低リノレイン酸ダイズ

遺伝子組換えダイズのうち、脂肪酸組成を変化させて加工後にトランス脂肪酸を発生させにくくした物がある。

デュポンの高オレイン酸ダイズモンサントの低リノレイン酸ダイズがそれだ。ダイズの脂肪酸組成におけるオレイン酸、 リノレイン酸の比率は環境変動が大きいものの遺伝的にコントロールすることができる。

デュポンの高オレイン酸ダイズは、遺伝子組換え技術で脂肪酸組成を変化させたもので、食品安全性の確認は平成13年3月に行われている。 なお、食品安全委員会の設立は平成15年なので、当時の審査は厚生労働省の食品衛生調査会バイオテクノロジー特別部会で行なわれた

一方、モンサントの低リノレイン酸ダイズ(商品名"VISTIVE")は、いくつかのバージョンが開発されており、 現在普及しているものは、遺伝子組換え技術で除草剤耐性を付与しているものの、低リノレイン酸の性質については従来型の育種で達成している。 除草剤耐性については既に評価済みであり、低リノレイン酸の性質については食品安全性の確認は不要という事になる。

なお、モンサントでは次期バージョンでは遺伝子組換え技術でその他の形質を改善した物も準備中

私は、この2つを混同してしまって、電話であった問い合わせに”VISTIVEについても食品安全委員会で審査中だったと思う” と回答してしまった。カワダさんごめんなさい。二重に間違えました。

「遺伝子組換えダイズであって、健康に良い物を指向して開発された」と言う意味では、 質問に照らしてどちらも間違ってはいないんですが、「健康によい物を指向して遺伝子組み換えされた」というものではありませんでした。 機会があればお詫びして訂正いたします。

# 先ほどアクセスログを見ると、今日の電話の直後に、県庁からこのblogをご覧になってる様でしたが。

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2008年3月12日 (水)

植物性乳酸菌でダイズのアレルゲンを除去

uneyamaさんの食品安全情報blog経由。

http://www.eurekalert.org/pub_releases/2008-03/uoia-uoi030608.php

植物性乳酸菌 Lactobacillus plantarum でダイズを発酵させると、アレルゲン性が低下する。 目標はアレルギーのヒトに対するゼロトレランスの達成だそうです。

乳酸菌は菌体外に酵素を分泌するので、その性質を利用して腎臓病食用のお米の除蛋白に既に使われている。ダイズでもできるという、 当たり前と言えば当たり前の研究。

なお、納豆菌 Bacillus subtilis nattoも菌体外にプロテアーゼを出します。が、 納豆にするとダイズが最終的にアレルゲンフリーになるかどうかは不明です。納豆による遅発性アナフィラキシーの症例もあるので、 よっぽどよく発酵させないとアレルゲンフリーにはならないんでしょうね。

 

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2008年3月11日 (火)

食品安全委員会がメタミドホスの急性参照用量(ARfD)を公表

以前、朝日新聞のちょっとどうかと思う勘違い報道をもとに、食品安全委員会農薬専門調査会幹事会でとりまとめられたメタミドホスのADIとARfDについてのエントリーを書いた。

今回はその続報。今回は審議案がパブコメにかかっているので、国民が行政に意見を言える機会としては、 前回の原案時点よりも重要なはずのだが、大手新聞社は1社もフォローしていない。この分だと、パブコメ終了に(案) が取れても誰も関心を持たないんじゃないだろうか。行政手続きの流れから考えれば、評価書原案よりも評価書案、 評価書案よりも評価書のほうが重要なのだが。

以下、食品安全委員会のホームページを勝手に要約。

 

食品安全委員会、メタミドホスの摂取許容量について意見募集開始

3月6日 食品安全委員会は第229回委員会でメタミドホスの健康影響評価案をとりまとめ、農薬評価書(案)として審議案を公表した。審議案では、動物実験の結果から推定したメタミドホスの一日許量摂取量(ADI)と急性参照容量(ARfD)が提案された。

なお、ADIは長期間に亘って毒性物質を摂取した場合でも悪影響が現れない一日あたりの摂取量。ARfDはADIに比べて多量の毒性物質を一日あるいはより短時間に摂取した場合でも悪影響が現れない摂取量を指す。

今回、公表された審議案は各界の意見を聴取する目的で、3月6日から4月4日までの間、意見募集   (パブリックコメント)が行われている(審議案に対するご意見はこちらへ)    。

評価書案を見ると、

  1. 14Cあるいは32Pで標識したメタミドホスを使用した動物実験の結果から、経口摂取されたメタミドホスは、効率よく吸収されること(投与24時間以内に糞便中にはほとんど排泄されない。3-21日後までに8-21%排出される)
  2. 14Cあるいは32Pで標識したメタミドホスを使用した動物実験の結果から、経口摂取されたメタミドホスは、効率よく分解されること(投与24時間以内に、投与した標識物質の70%が呼気と尿中に排出される)      
  3. 急性毒性試験による経口のLD50はSDラットでは16mg/kg(♂)、13mg/kg(♀)。マウスでも11-23mg/kg。無毒性量は0.3mg/kg(ラット)。      
  4. 急性遅発性神経毒性は、光学異性体の間で異なること。(神経障害標的エステラーゼの再活性化程度からして、おそらく光学異性体間で代謝速度が異なるためか?)
  5. ADIの設定基準になる慢性毒性試験の概要(無毒性量は0.06mg/kg/day、イヌ、1年間)。
  6. 遺伝毒性については、変異原性、発がん性、催奇形性はいずれも陰性。      
  7. この他、試験過程に曖昧さがあるため判定に用いられなかった試験もある。      
  8. 以上の事実に基づき、食品健康影響評価を行い、急性毒性の無毒性量0.3mg/kgより100倍安全な0.003mg/kg/dayをARfD、慢性毒性の無毒性量0.06mg/kgより100倍安全な0.0006mg/kg/dayをADIに設定した。      

以上。

これ以外に検討すべき科学的事実をご存じの方は、パブコメで意見募集しているところなので意見として提出しましょう。

なお、毒劇法の基準では経口経路で50mg/kg以下のLD50の物質は毒物にあたるため、 毒劇法の規制対象になる。仮に農薬として使用された場合は、無登録の農薬として農薬取締法の規制対象にもなるでしょう。

しかし、遺伝毒性はなく、代謝も比較的速いことから(ただしヒトの場合、遅発性の神経障害が2年程度残るため、疼痛があるらしいが)、 毒物としてはまだマイルドな方です。一頃、コリンエステラーゼ阻害活性があると言うだけで「サリンと同じ!」 と声高に仰っていた大学のセンセイがいらっしゃいましたが、uneyamaさんも指摘しているように、 代謝されやすさが全然違うので毒性物質に暴露された際の予後についてもサリンよりもずっと良好なはずです。

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2008年3月10日 (月)

「食の安全」巡る摘発、昨年は最多52件・・・本当か?

食品の産地偽装、原材料の虚偽表示は、食品衛生上のリスクとは概ね無関係。

例えば、インド洋産のミナミマグロを太平洋産のメバチマグロと表示するのは、原材料も産地も偽装している事になる。法律違反だが、 食品衛生上のリスクはない。もちろんそうでないケースもあり得る。

一方、警察庁の法律違反の事例の発表では、現実のリスクとは別に違法行為として摘発されたものが全部入っている。従って、 以下の記事の見出しは記事の内容にそっているとは言い難い。

「食の安全」巡る摘発、昨年は最多52件
 全国の警察が昨年1年間に産地偽装や衛生上の問題など「食の安全」に関連して摘発した事件が、 統計を取り始めた2002年以降で最多の計52件に上ったことが、警察庁のまとめでわかった。
 このうち、北海道苫小牧市の食肉製造加工会社「ミートホープ」(破産)による食肉偽装など、原料や産地、 消費期限の偽装で21人が摘発されたほか、無許可営業などの食品衛生法違反でも69人が摘発された。

 一方、ヤミ金融の摘発件数も前年比161件増の484件で、2003年以来4年ぶりに増加に転じた。

 このうち233件で昨年1月の出資法改正で新設された「超高金利」が適用され、 確認されたヤミ金融による総被害額は約304億円に上った。

 同庁によると、約3割の事件で、暴力団関係者が摘発されるなど、依然として暴力団の資金源になっているという。

 特に「090金融」と呼ばれる他人名義などの携帯電話を利用した手口が目立ち、同庁は「巧妙化しており、取り締まりを強化する」 としている。
(2008年3月6日10時36分  読売新聞)

ま、ヤミ金も「食の安全」とは関係ないけどね。消費期限の偽装は、場合によっては食の安全上のリスクもある。

しかし、「このうち」(=52件のうち)「食肉偽装など、原料や産地、消費期限の偽装で21人が摘発されたほか、 無許可営業などの食品衛生法違反でも69人が摘発された。」とあるが、この文の食品衛生法違反にかかるのは「無許可営業などの」 という部分だけなんだろうか?

だとしたら、ひょっとして衛生上の問題について食品衛生法違反で摘発したケースは一つも無いのではないか?・・・ もし食品衛生法が、実際は「食の安全」の担保に役立っていないとしたら・・・

いかんいかん。そんな、あってはならない事を妄想してはいけない。民主党の皆さんも、食品安全庁構想もいいけど、 こういうトピックについてこそ「質問注意書」を出してほしいものだ。

ついでに、もう1件。毎日新聞より。

偽装牛ミンチ:元社長の「反省」どう判断 札幌地裁19日判決

 苫小牧市の食肉加工卸会社「ミートホープ」(自己破産手続き中)の偽装牛ミンチ事件で、 不正競争防止法違反(虚偽表示)と詐欺罪に問われた元社長、田中稔被告(69)。法廷では起訴事実を全面的に認めながら、 その言動は国民の「食の安全」を脅かした自覚に乏しく、裁判長が判決前に田中被告を諭す異例の場面もあった。検察側は懲役6年を求刑。 実刑も含めた厳しい判決が予想される。【芳賀竜也】

 「私の知識と経験を皆さんにお返ししたい。他の人がスーパーで(肉製品を)見ても(偽装は) 分からないけど、私には分かる」

 2月18日、札幌地裁で開かれた第2回公判。弁護人による被告人質問で、 今後の身の振り方を問われた田中被告は真剣な表情でこう答えた。検察官が「それは食品Gメンのようなものか」と確認すると「そうです」。 その自信にあふれた態度は、食肉の知識を悪用し、利益追求のため長年にわたって偽装を続けた行為への反省とはかけ離れていた。

 田中被告は何度か「反省」を口にしたが、それは消費者に対するものではなかった。

 「詐欺事件の被害者は(偽装牛ミンチを購入した)業者かもしれないが、本当の被害者は誰ですか」。 嶋原文雄裁判長が尋ねた。田中被告が「消費者ですか?」と答えると、裁判長は「そうですよ。(起訴状に)名前も出てこないんですよ。 みんなだまされて食べていたんだ。消費者のことがあなたの口から出てこない。その辺をよく考えてください」と一気にまくし立てた。 田中被告の不誠実な態度に業を煮やしたようだった。

 3月5日の論告求刑公判。結審間際、田中被告に最終陳述の場が与えられた。「深く反省しています」。 嶋原裁判長はまたも不審に思ったのか「求刑は6年だが、どう思うか」と聞いた。田中被告の答えは「私には分かりません」。 投げやりな答えが、51人の傍聴人で満席となっていた法廷に響いた。

 「服役する覚悟はできていますね」と検察官に問われ「はい」と答えた田中被告。弁護側の最終弁論には 「執行猶予付きの判決を求める」という言葉はなかった。判決は19日午前10時半。

 起訴事実 06年5月30日から07年6月19日の計327回、冷凍食品会社「北海道加ト吉」(赤平市) など取引先17社に豚肉などを混ぜた偽装牛ミンチ約140トンを「牛100%」と虚偽表示して出荷した=不正競争防止法違反の罪。 06年6月3日から07年5月3日の計14回、 取引先3社に偽装牛ミンチ約100トンを出荷し計約3900万円を代金としてだまし取った=詐欺罪。

2008年3月10日

検察だけズレているのかと思ったら、裁判所もズレていた。この裁判のどこに「食の安全」 についての議論があるというのか。裁判長は「みんなだまされて食べていたんだ。消費者のことがあなたの口から出てこない。 その辺をよく考えてください」と言うが、これ自体は「食の安全」の問題ではない。もし、 牛ミンチと思って豚ミンチを口にしてしまったモスレムの方が居れば、気の毒という他ないが。

なお、以前のエントリーに引き続き言っておくが、私はミートホープもその元社長も弁護する気はさらさらない。

この裁判を通じて言えることは、もし今回の事案で「食の安全」を脅かす事態があったのであれば、 それを罪に問えない法律の不備ではないだろうか。むしろ、 裁判所からその点についてのコメントがないのであれば、法の番人としては機能不全である。逆に「食の安全」 を脅かす違法な事態がなかったのであれば、法律上は「食の安全」が争点になっていないのだから、検察も裁判所もこの裁判で「食の安全」 を問う資格はないはずだ。

もし、被告人側が同じようにズレた発言をしたら、検察側からは「異議あり! 被告人側の発言は本件訴訟とは関係ありません。」、裁判所からは「異議を認めます。」・・・ なんて具合に冷たくあしらわれるのではないだろうか。

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