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2008年11月の記事

2008年11月27日 (木)

[業務用覚書] Rolling Circle Amplification (RCA) 産物で酵母の形質転換

世間ではインド、ムンバイ市でおきた同時多発的テロ事件のニュースが流れている。280人以上死傷(うち101人死亡)とのこと。大惨事だ。
---
Ding et al. (2003)によれば、RCAで増幅したプラスミドの分枝状コンカテマーで酵母の形質転換が可能とのこと。Two-hybridにも使える。恐らく酵母菌体内での相同組換えで環状になるのだろう。
上手く使えば実験のスループットが少し上げられる。

現在の実験のスキーム

  1. PCR産物+線状ベクターバックボーンで酵母の形質転換。Transformation Associated Recombinationでベクターを構築。(2-3日間培養)
  2. プレート上のコロニーをグラスビーズで掻き取ってプラスミド抽出(液体培養から見ると抽出効率が悪い)。
  3. 大腸菌の形質転換(1日)
  4. コロニーPCRでベクターの構築を確認
  5. コロニーを液体培養で増やす(1日)
  6. 液体培養からプラスミドを抽出してシーケンスの確認
  7. 目的のプラスミドで酵母の形質転換(1.とは異なる株)(2-3日)

全工程で足掛け2週間(1.の最初の形質転換を木曜か金曜に行うと楽しい月曜日を迎えられるので)。問題は3.のステップで、プラスミドの収量が少ないので形質転換大腸菌があまりとれてこない。とれたとぬか喜びしてたらフレームシフト変異が入っていて全部のクローンが使い物にならなかったということもある。 これが、

  1. PCR産物+線状ベクターバックボーンで酵母の形質転換。Transformation Associated Recombinationでベクターを構築。(2-3日間培養)
  2. プレート上のコロニーからDNAを簡易抽出して、安いTaqでベクターの構築を確認
  3. 同じDNAをRCAで増幅(4hrs-1日)
  4. シーケンスの確認
  5. 目的のプラスミドで酵母の形質転換(1.とは異なる株)(2-3日)

という具合に、酵母のプラスミド抽出と大腸菌の形質転換のステップを省略できる。実験全体が早くなる上、ベンチタイムが非常に短いことも魅力的だ。

RCA用のキット(TempliPhi)だと1サンプル\470-\254(large constraction kitの場合)なので、コストもそれほどでもない。サンプル数にもよるが酵母のプラスミド抽出、大腸菌の形質転換とプラスミド抽出のコストで相殺されるのではないだろうか。大腸菌の形質転換自体の手間はたいしたことは無いのだけれど、廃棄物が結構出るし。

ただ、酵母のコンピテントセルの調製に一晩かかるので、シーケンスを確認しつつ、同時に次のコンピテントセルの調製を始めておかないとやっぱり1サイクル足掛け2週間かかる。
# 大腸菌のW株のようにむちゃくちゃ増殖が早い株ってないものだろうか。

phi29 DNA polymeraseを単体で買う場合は、
New England Biolabs (1,250U, \44,000)
AR Brown (10,000U, 価格不詳)
だが、exonuclease-resistant hexamerが別途必要。PNA-DNAハイブリッドのランダムヘキサマー等特注品になる?Dingらの論文でも使っているので、おとなしくTampliPhiを使った方が良いだろう。

このシステムを使うと酵母用の複製開始点を持ったベクターを線状にしておいて、大腸菌用のベクターのRCA産物と一緒に形質転換すればコンストラクトの載せ換えも簡単にできるはずだ。今度やってみよう。

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[業務用覚書] 酵母のBiFC

タンパク質の相互作用を調べるのに、Yeast Two-hybrid system (YTH)が使われてきた。もともと転写因子など核タンパク質の相互作用を調べるためのシステムなのだが、トウモロコシの種子貯蔵タンパク質間の相互作用 解析などにも応用範囲は広がってきている。

だが、原理的に核移行シグナルを持たないタンパク質の相互作用解析には向いていないはずであり、その点の克服を意図してLexA-VP16を利用したシステムも開発されている。

近年、緑色蛍光タンパク質(GFP)を2つの部分に分割すると蛍光を発しなくなるが、再び会合させると蛍光を発するようになる性質を利用して、bimolecular fluorescence complementation (BiFC) というタンパク質分子間の相互作用を調べる実験系が開発されている。

Barnerdらは酵母の任意の核遺伝子のC末端側にGFP分子の一部を導入するベクターシステムを開発した。図で見るとこんな感じ。酵母の複製開始点を持たないタイプのベクターでNBRP酵母のサイトから入手できる。

出 芽酵母の栄養素要求性ura3やtrp1を相補するのに近縁の酵母Kluyveromyces lactis由来のURA3やTRP1をマーカーとして使用している。これらのサイトで予定外の相同組換えがおきることを防ぐ意味で有効な手段だ。選抜 は、Trp, Uraで行えば2つの遺伝子のC末端側にGFP分子の一部が導入された株が単離できる。
この論文では、酵母本来のオルガネラでの局在の異なるタンパク質遺伝子にsplit-GFPを導入してタンパク質の局在が一致して相互作用が見られる場合に緑色蛍光が観察されることが示されている。

相互作用を調べたいタンパク質の細胞内での局在が自由な所は、これまでのYTHにはない自由度の大きさだ。

一方、この論文のシステムでは酵母のタンパク質に専ら焦点を絞っており、異種生物のタンパク質には着目していない。ある意味、ライブラリーをスクリーニングできるYTHに見られる規模のメリットには目をつぶっているとも言える。使い分けが肝心と言うことか。

古典的なYTHのベクターのGAL4の代わりにsplit-GFPを入れると比較的簡単に汎用型のBiFC検出システムが作れそうだ。

この論文
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18493658?ordinalpos=2&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_DefaultReportPanel.Pubmed_RVDocSum

では、恐らく酵母用の発現ベクターにsplit-GFPを組み合わせている。残念ながらAbstractしか読めない。

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2008年11月20日 (木)

[業務用覚書] カルタヘナ法、文部科学省二種告示改正、パブコメの回答公表

11月19日付けで、文部科学省二種告示”研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令の規定に基づき認定宿主ベクター系等を定める件(平成16年文部科学省告示第7号)”改定のパブコメの結果が公表された。

結果公表はこちら

ほぼ原案通り。一部、「バクテリオファージ」を「原核生物を自然宿主とするウイルス」と訂正するとのこと。それを見ていて、やはり気になったのは以前も書いたのだが、哺乳動物等に病原性の無い自律増殖性ウイルスのうち、大臣確認の要るものが結構ある。

  • 藻類を宿主とするウイルスは、「植物ウイルス」の範疇に入るかどうか微妙。ひょっとすると大臣確認が要る。
  • 古細菌を宿主とするウイルスは、「原核生物を自然宿主とするウイルス」の範疇に入るかどうか微妙。ひょっとすると大臣確認が要る。古細菌を原核生物扱いするかどうかだ。
  • いもち病菌や紋枯れ病菌を宿主とするマイコウイルスの組換え実験は、基本的には大臣確認が要る。

あまり研究者が多くない分野ですが、東京農工大、岡山大や農研機構にはこの種の実験を行う可能性のある専門家がいる模様。

たとえば、これ。
http://jstshingi.jp/abst/p/08/814/tuat5.pdf
機能解析のために欠損株のウイルスを作成する前には文科省に確認されることをお勧めします。

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2008年11月18日 (火)

お隣の原発?

今日、世間では元厚生事務次官とその家族に対する殺害および傷害事件がおきている。不穏な事件だ。

旬のニュースではないが、”Technobahn 2008/11/12 19:14” より。

アメリカ、Hyperion Power Generation社が、移設可能な超小型の原子力発電装置の”営業活動”を始めたとのこと。繰り返すが、研究開発ではなく営業活動だ。

一台で米国の20,000世帯分の電力をまかない、5年間は連続運転できるらしい。装置そのものも50年間の耐用年数があるとのことなので、大抵の建築物並ではある(でも、設計寿命だからなぁ)。

核 廃棄物はどうするんだろう?とか、アメリカでは原子炉等規制法のような法律はどうなってるんだろう?とか、会社が倒産したら残された原子炉をどうするん だ?とか疑問は尽きない。機動部分が無い装置らしいので、原発のような”原子炉”というよりは、かつて人工衛星に積まれていた”核燃料電池”のようなもの かも知れない。地下に埋設することを想定しているらしいのだが、日本のように地震が多い地域、すぐに地下水脈に突き当たる地域、さらに洪水が起きやすい地 域には向かないかも知れない。そもそもの発想がとってもアメリカンではないか?

また、移設可能ではあるけれども立地条件は結構選びそうな気はする。いくらCO2を出さないし、暴走できない構造なので安全性に問題はないと言っても、日本人の神経では”お隣の原発”と言うものには耐えられそうにないし。

日本国内に設置することを想像してみよう。多分、電気事業法に基づいて事業者として経済産業大臣の許可をとらなきゃいけない。核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に則り、経済産業大臣の許可をとらなきゃいけない。多分、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律へ の対応も必要だろう。地域によっては都道府県、市町村との協定の締結もいるだろうし、周辺住民への説明も必要だ。それでも、関係のない連中がどこからか やってきて反対運動をするかも知れないし、さらにはGReeeeN Peaceがやってきて、証拠を押さえるためと称して不法侵入と窃盗を行うかも知れない。そりゃぁもう多変な労力を必要とすることだろう。

一方、冬場には結氷で海上封鎖されて発電や暖房用の石油さえ滞ってしまうような離島にとっては、それでも朗報かも知れない。リスク・ベネフィットを秤にかければ、状況によってはこれもアリではないだろうか。

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2008年11月17日 (月)

定額給付金を辞退したい。

昔、父から「理由のわからないお金はもらってはいけない」と教えられた。今でも、それはもっともなことだと思う。

今般、政府は「景気対策」として国民一人あたり\12,000を支給するという。しかし、2兆円の財政出動をする施策なのに、個人に支給するため支出の使途については何の制約もない。政府がそれで一体何をしたいのかさっぱりわからない。生活支援と言う意味であれば、辞退の対象がサラリーマンであれば2,000万円以上の給与所得がある方だそうなので、線引きの水準が高すぎる。

ちなみに、日本の世帯収入の分布が厚生労働省のホームページにある(国民生活基礎調査、H20)。これによると、年収2,000万円以上の世帯は、全世帯の1.4%しかいない。所得の中央値は451万円。平均値は556万8千円。

生活意識の状況では、やや苦しい(33.2%)、大変苦しい(24.0%)となっており、57%以上の世帯では生活が苦しいと感じている(資料はこちら)。生活支援という意味では、こういう世帯を対象に現在の予定の二倍の額の支援をしたほうが、まだましなのではないか?いずれにしても、景気対策としての効果のほどは分からないが。

・・・ということで、私は国民の一人として、この企画段階で有効性が十分に検証されていない施策に反対し、定額給付金の受給を拒否する権利を主張する

---

一方で、わが国では近年、所得の格差が広がっているとも言われている。真偽のほどは確かめていないが、一方でこういう資料もある。出典はUNICEFの世界子供白書だ。「所得最下位40%の世帯あたりの所得の分布」という資料である。

分かりにくい表題だが、「世帯全体の中で、所得の少ない階層の40%に対して、国の所得全体の何%が配分されているか?」ということを意味する。パーセンテージが大きいほど所得配分が公平にいきわたっていることになる。この資料によれば、所得の少ない階層の世帯40%が、全所得の25%以上を得ている国は統計のある国の中では日本とチェコくらいだ。資料の見方が間違っていなければ、そして、この指標を富の配分の尺度としてよいのであれば、日本は世界中でもっとも所得格差の小さな国の一つ、と言うことになる。

にもかかわらず、一方には57%以上の世帯では生活が苦しいと感じているという状況がある。これはもう、税による富の再配分で所得格差を小さくするくらいでは、もうどうにもならないところまで来ていることを意味しているのでは無いだろうか?所得の底上げをする必要がある。

可処分所得を増やすには、

  1. 社会保険料を所得から差し引くことを止める
  2. 足りなくなる分は、消費税の増税と法人税(年金の事業者負担分相当分)でまかなう

で、所得は相当に増える。おそらく5%内外は。所得税率がそのままであれば、基礎控除額が減るので所得税は若干増えるかもしれない。なにしろ、消費税は給与から天引きされない。これで計算上は可処分所得が増えるのだ。
・・・これはこれでイヤだなぁ。

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2008年11月12日 (水)

Bonsai effect?

PLoS One より。
Yi Zhang, John G. Turner 2008 Wound-Induced Endogenous Jasmonates Stunt Plant Growth by Inhibiting Mitosis.

盆栽にした植物の大きさはそうでないものよりも5%以上は小さくなる。それにストレスが関係していることはわかっているのだが、ストレスがどのように植物を小さくするのかが分からなかった。

モデル植物のアラビドプシスでは葉に障害をうけると、茎頂組織での細胞分裂が減り、数日以内に植物の生育が抑制される。新しい葉の大きさは通常の半分になるが、細胞の大きさは変わらず、その数が減少していることがわかった。

予 想外なことに、茎頂での細胞分裂の抑制は、傷害ホルモンであるジャスモン酸 - 障害を受けた成熟した葉で合成されるのだが - によるシグナル伝達を通じておきる。ジャスモンサンに反応しない変異体(合成できないか応答しない)では、植物体は通常のものよりも大きいし、傷害ス トレスに応答してな小さくなることもないとのこと。

http://www.eurekalert.org/pub_releases/2008-11/plos-tbe111108.php

を参考にしました

問題の所在は、”植物が小さくなる”ことのように考えがちだが、実は”植物が大きくならない”ことにある。大抵の器官・組織の細胞分裂は成長点付近で早い内に止まって、あとは細胞の伸長で器官・組織のサイズが大きくなるのだとすると、サイズが大きくならない理由は、

  1. 細胞が少ない
  2. 細胞が小さい

のいずれか(あるいは、その両方)だ。

1. の細胞数減少の結果として組織・器官が小さくなるのであれば、形態形成の時期だけ細胞数が増えないように制御してやれば、その効果は生涯続く。2.の仕組 みで器官・組織を小さくしようとすると、植物が生長している間中ずっと細胞が大きくならないようなシグナルを出し続けなくてはならない。しかも、盆栽のよ うに植物体全体が小さい場合には、そのシグナルは常に植物体全体に行き渡っていなくてはならない。これは、あまりにコストがかかる仕組みだ。ということ で、この発見は植物の大きさの制御が結構合理的な仕組みで働いていることを示している。

各種のmutantでジャスモン酸の働きを追っているあたりは道具立てがアラビでなければなかなかできないことだ。

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2008年11月11日 (火)

「花粉症」3か月で改善? すぐに直りはしませんが

読売新聞より。理研で取り組んでいるスギ花粉症ワクチンも生物研で取り組んでいるスギ花粉症緩和米も要らなくなってしまうかも知れない研究。

「花粉症」3か月で改善、スイスの研究チームが新治療法

 【ワシントン=増満浩志】花粉症などのアレルギー患者に原因物質を繰り返し注射する「減感作療法」を、3か月で済ませることに、チューリヒ大学病院(スイス)などの研究チームが成功した。

 皮下でなく、そけい部のリンパ節に注射する方法で、副作用も従来の方法より少ないという。米科学アカデミー紀要電子版に10日、発表された。

 減感作療法は通常、原因物質のエキスを少量ずつ、約3年かけて注射する。研究チームは、皮下注射したエキスが体内の免疫システムをつかさどるリンパ節へは一部しか達しないことに注目。58人の花粉症患者に対し、リンパ節へ直接、1か月おきに計3回だけ注射する新手法を試してみた。

 開始から4か月後に検査したところ、アレルギー症状が劇的に緩和され、治療前に比べ平均10倍の花粉量がないと鼻炎が起きなくなっていた。効果は開始から3年後も持続していた。

 従来の減感作療法を行った別の54人では、じんましんなどの軽い副作用が18件、入院の必要なぜんそくの副作用が2件起きた。新手法では、軽い副作用が6件起きただけだった。

(2008年11月11日13時18分  読売新聞)

オリジナルの論文はこちら。Open accessの論文ですのでご家庭からでも読めます(・・・読まないか)。

記事にはありませんが、この論文で言う花粉症とはイネ科花粉症です。スギ花粉ではありません。スイスなので牧草の花粉による花粉症が主流なのでしょう。

処理あたり50 人規模の臨床試験で追跡調査も3年行っていますから、試験としてはかなりしっかりしたもの。副作用も少なく軽度であること、治療成績が皮下注射と同等かより良いこと(微妙ですが)、注射の回数も少なく注射自体の苦痛も皮下注射よりも少ないこと(これまでの54回注射がたったの3回!)などから、もう少し臨床試験が行われれば、いずれは従来の減感作療法に代替できるかもしれません。
# しかも、たいした設備投資は要りません。

治療効果については記事の通りで、アレルゲンの点鼻投与に対する反応では、治療開始後4ヶ月目で従来の治療法よりも改善しています(自然暴露ではありません)。3年間の追跡では、従来の治療法と同等かそれ以上の効果。

アレルゲン投与開始初年度における抗ヒスタミン剤投与など他の治療法の必要性は従来法よりも低くなっています。点鼻投与に対する反応では、効果の持続性も3年後では従来の治療法とそう変わりません。また、皮下に希釈したアレルゲンを注射して炎症反応を調べるprick testでも3年間のデータでは従来の治療法と同等の効果を上げており、アレルギー反応を媒介する特異的IgEの値は3年後には初年度よりも、1/3程度まで低下する傾向にあります(つまり、このまま行けば完治するかも!)。

肝心の臨床的な症状も、自然暴露の状態で3年後には初年度よりも相当に症状が改善しています(ただし、Simptom scoreをVAS(visual analogue scales) で示していますが、VAS=2というのは”少し痛い”相当なので、仕事の妨げにならない程度とはいえ、この治療では完治とまでは行かないようです)。初年度のheyfever様の症状のVASは6-8程度はあるので、アレルゲンの点鼻投与ではそこそこ効果はあるものの、臨床的には”かなりつらい”と言う状況のようです。ですから”「花粉症」3か月で改善”と言う見出しは間違ってはいませんが3ヶ月ではおそらく治療効果はあまり実感できないのではないでしょうか。

Pain# 痛みを10段階で表現するVASというものがあるとは知らなかったなぁ。でもVAS=10ともなると、こんな感じではなかろうか。

精製アレルゲンの注射にあたっ てはエコー(超音波)で針先をガイドしながらゆっくりと大腿リンパ節に注射、しかもリンパ節から血管へのアレルゲンの移行を抑えるためにあらかじめ吸引しておくといった処置が必要とのこと(これを怠るとアナフィラキシーのリスクが大きくなる)。また、注射する部位がそけい部なのでアレルギー外来で処置する 場合患者さんの心理的な抵抗もあるかも知れません。

アレルゲンを注射する大腿リンパ節は長さ1.5cm程度、太った患者さんでも皮下数mmの浅い所にあるのでそこを選んだ様です。素人としては、もうちょっとやりようは無いものかと思ったりもするのですが。

アレルギー・マーチという言葉があるくらい、何かのアレルギーを持っている患者さんは他のアレルゲンに対しても反応をおこしやすくなっています。できれば全部のアレルゲンに対して治療をしてしまいたいところでしょうが、単一のアレルゲンに対して54回も注射しなくてはいけないのであれば、軽いアレルギーであれば複数のアレルゲンについてまで治療までしなくても、と思ってしまうかも知れません。注射の痛み、注射後の経過観察、医療費・・・負担は小さくありません。実際、この研究でも途中で治療に来なくなちゃった患者さんが少なからずいた模様です。研究なので治療費は免除されているのでしょうけど、注射がよほど痛かったのでしょう か(皮下注射では54人中22人は3年間の試験中に脱落。そけい部の注射では最初の注射で脱落したのが66人中の8人)。

この研究の成果は、アレルゲン1種類に付き注射3回で済むのであれば、各種のアレルギーに対して現実的な治療の機会を提供できることではないでしょうか。

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2008年11月10日 (月)

バクテリアの種類が多い=”キタナイ”という短絡

Technobahnより。

男性よりも女性の方が一般的にきれい好きのように思われているが、米研究機関が行った手のひらのバクテリアの保有量の調査結果により、菌の保有量に関しては女性の方が多いことが米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された論文により明らかとなった。

 この研究を行ったのは米コロラド大学のロブ・ナイト准教授を中心とする研究グループ。

  研究グループは52名の学生の両手の手のひらからサンプルを採取し、DNAを使ってバクテリアを特定する最新の手法を使うことで、手のひらに居るバクテリ アの種類を特定する実験を実施。その結果、ヒトの手のひらから合計4742種のバクテリアを特定することに成功すると同時に、男女別では女性の方が保有し ているバクテリア数が多いこと、保有しているバクテリアは右左の手で別々であることが多いことなどが判明したとしている。

 研究グループ では女性の方が保有しているバクテリアの数が多いというのは意外としながらも、男女の汗腺の数の違いや、女性の方が化粧品を使うということが多いことや、 皮下脂肪の厚さの違いなどの要因が女性の方がバクテリアが多く生息する原因となっているのではないかとまとめている。

 研究グループでは研究結果から女性の方が保有するバクテリアの数は多いことが明らかとなったが、テクテリアの多くは無害か、むしろ人体によい影響を与えるものも多く、バクテリアが多いことが分かったからといって不安に感じる必要性はないとも述べている。

このニュースサイトは生物学に関してはどうもいただけません。
PNASにそれらしい論文が見つからない。後日探しておこうか。

しかし、”バクテリアの保有の調査結果”って・・・。バクテリアの種類を同定したと言ってるのに、この解釈は何なんだろう?

種類と量の区別が付かないというのはおかしい。しかもバクテリアの種類が多い=”汚い”と言う解釈をするのは科学的には全く不適切だ。

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2008年11月 7日 (金)

じわり、パーソナル・ゲノミックスの時代へ

Natureで”個人ゲノム特集” (こういう書き方をすると、Googleの検索で出てくる楽天の広告みたいだ)。
http://www.natureasia.com/japan/nature/focus/webfocus.php?id=31
アジア人アフリカ人の個人のゲノムシーケンスが解読された。どちらの論文もFree Accessなので、ご家庭でも読めます(・・・読まないか)。

どちらの論文も、Illuminaのスーパーシーケンサーを使用。ただし、使用したチップとシーケンス反応は違っている。いずれにしても、個人のゲノムを決定したという論文は今後しばらくは色々な切り口で(例えば画期的に低コストになった等)増えていくことだろう。

しかし、illuminaのシーケンサーでは、まだ一人当たり10万円というところまでは下がらないだろうから、そのためにはもう一段の低コスト化は必要。

こういうスーパーシーケンサーの開発競争は華々しいのだが、一方で普通の研究室で使っているシーケンサー、たとえばABI 3130xlと同等以上の能力で低コストの次世代シーケンサーというものは出てこないのだろうか。現行機種でもかつての3100よりはメンテナンス性も良いし、シーケンス反応後の精製(BigDye XTerminater)も格段に楽になってはいる。しかし、もっと小回りの効く低価格のシーケンサーは出てこないものか。一台300万くらいの。

・・・アガロースゲル代わりの泳動装置でさえ400万円くらいはするらしいので当分は無理でしょうけどね。

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2008年11月 5日 (水)

ダメな科学記事の一例

世間では次期アメリカ大統領にオバマ氏(何度打っても小浜市になる・・・)が選出されたニュースでもちきり。

とりあえず、「人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます! 」

ニュースサイト"technobahn" より。記事の見出しは
降雨が多いと自閉症の発生件数も多くなる、米研究者
記事本文はこちら

どこがダメか?記事には次のようにある。
”教授を中心とする研究グループは1987年から1999年にかけてのカリフォルニア州、オレゴン州、ワシント ン州での自閉症児の発生件数と降雨件数との因果関係に関する調査分析を実施。その結果、降雨件数が多いと学童児における自閉症の発症件数も増えるという明 らかな因果関係があることが判ったとしている。”

オリジナルの論文はこちら。残念ながらご家庭ではAbstractしか読めません(・・・読まないか)。
論文にはこうある。
"County-level autism prevalence rates and counts among school-aged children were positively associated with a county's mean annual precipitation."

”年間平均降水量降水量と学童の自閉症の有病率には、正の相関がある”と言っているのみ。

因果関係と相関関係を一緒くたにしてはいけない。事実関係としては”降水量が多い地域では学童の自閉症の割合が高い”という観察結果が得られたということと、”降水量が多いと、そのせいで自閉症になる”ということは違うのだ。

上記のケースで”正の相関関係がある”というのは、言い換えれば、””学童の自閉症の割合が高い地域では降水量が多い”でも、”降水量が多い地域では学童の自閉症の割合が高い”でも算術的には同じこと。二つの変数の一方が増えれば他方も増えると言う傾向があると言うに過ぎない。

因果関係となると、例えば”降水量を増やすと必ず(あるいは高い確率で)学童の自閉症の有病率を増やせる”あるいは”自閉症の学童を集めると、降水量を増やせる”という関係にある場合を言う。

二つの変数の間に、原因と結果という関係性が(場合によっては実験的に)証明できない場合には、因果関係と言ってはいけない。ましてや脳機能と気象の間には様々な媒介があって然るべきなので、単純な因果関係は非常に成り立ちにくいと考えられる。

本当に”降雨件数が多いと学童児における自閉症の発症件数も増えるという明 らかな因果関係があることが判った”というのであれば、センセーショナルなのだが記者の早とちりでニュースにするのはいかがなものか。

ちなみに、上記の論文では”California, Oregon, Washington” の3地点を対象に調査をしている。従って、観測地点の緯度から考えれば、降水量の代わりに平均日照時間でも夏場の平均気温でも同じような相関関係が導かれ る可能性が高いのではないだろうか。気象条件と人間の脳機能の関係については、これ以外にも季節性気分障害(Seasonal affective disorder, たとえば冬季性うつ病)のように日照時間の影響があることはよく知られている。緯度と冬季の日長には相関があるので、上記の3地点での比較においても必ず 変数としては関与しているはずなので、年間降水量をなぜフィーチャーしたのかは結構謎だ。他の変数よりも圧倒的に信頼性が高いということがあったのだろう か。

記事の論評ではなく、論文についてのコメントになってしまったが・・・。
# いや、ダメな論文について書かれたダメな記事だとは思いたくない。それではあまりに情けない。

2008年11月 4日 (火)

核が生きていればクローンの再生は可能

世間は小室プロデューサー詐欺容疑で逮捕の話題でもちきり。

(写真は理研のホームページより。今日の話題の主は左のマウス)

毎日新聞より。

解説:死滅細胞からクローン 技術、理論に追い付く

 マンモスなどの絶滅動物をクローン技術で復活させる考え方は、クローン羊ドリー誕生の発表(97年)以来繰り返し議論されてきた。しかし、ボロボ ロに壊れて完全に死んだ細胞からのクローン作成は技術的に不可能だった。今回、凍結マウスからクローンを作った若山照彦・理化学研究所チームリーダーは 98年、世界初のクローンマウスを作った一人。核を操作するガラス管や培養液の工夫など技術面で改良を積み重ね、理論を現実に近づけた。

 クローン技術は、ある細胞と同じ遺伝情報を持った細胞を作る手法として研究が続けられてきた。ところが、山中伸弥・京都大教授によるiPS細胞 (人工多能性幹細胞)の開発で状況が変わる。クローン技術は卵子を使うため、特にヒトへの応用面で倫理的な問題が指摘され、卵子を使わないiPS細胞はこ の点で有利だった。人間の病気を治す再生医療用ではiPS細胞が有利だろう。しかし科学の発展において、クローン技術が今後も必要なのは間違いない。

 例えば臭覚細胞など体内にわずかしか存在しない細胞の研究では、その細胞のクローンES細胞を作り、大量に増やして性質を調べる方法が使われた。 調べたい臭覚細胞が10個もあれば、同じ遺伝情報を持つクローンES細胞が作れる。iPS細胞の作成は成功率が低く、10万個ほどの細胞に遺伝子導入をす る必要がある。

 絶滅動物の復活も、個体を作り観賞する目的に限らない。絶滅動物の細胞だけを再生し、進化の様子を遺伝子レベルで調べたり、当時の過酷な環境を生き延びた特性を、現代の家畜改良に生かす研究への応用などが期待される。【奥野敦史】

論文はこちら。理研のプレスリリースはこちら

”-20度で16年間保存したマウスの死体から健全なクローンマウスを生産”

とのこと。しかし、よくわからないのはこの解説。

”例えば臭覚細胞など体内にわずかしか存在しない細胞の研究では、その細胞のクローンES細胞を作り、大量に増やして性質を調べる方法が使われた。”

とのことだが、核移植をしてES細胞にした時点で細胞は初期化してしまうのではないかな。論文をご存じの方があればご教示いただきたいところ。

この研究の主な成果は、
  1. 死体から体細胞クローンを作成できたところ、
  2. クローン胚を直接移植しても個体が得られない場合には、無限に増殖できるES細胞を経由することでクローン胚の発生の機会を稼げることを示したところ、
  3. 凍結死体の多くの臓器の核が移植可能であることを実証したところ、
である模様。

# なお、表題の”核が生きていれば”の生きていると言う表現はjargonですね。

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