文部科学省二種告示に無い新規病原体:XMRV
ニュースソースは10/28の毎日新聞。
XMRVというのは2005-06年頃に新しく見つかったウイルスなのですね。
今のところ、"Xenotropic MuLV-related virus"(XMRV)は文部科学省の研究二種告示のポジティブリストに載っていない模様。ですので、宿主として組換えウイルスを作成する場合や、未同定核酸のクローニング(例えばウイルスゲノム全長)にあたっては大臣確認申請が必要です。
関連分野の研究者の方は文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室までお問い合わせされることをお勧めします。
XMRVに発がん性があるかどうかはまだわからないとのことですが、一頃のHIVのように感染した場合の致死率は高くないようなので、推定上の実験分類はクラス2として、とりあえずはP2レベル以上の拡散防止措置で安全に取り扱えるのではないかと思います。
前立腺がん:患者がXMRVウイルス感染 日本人で初検出
日本の前立腺がん患者が、XMRVと呼ばれるウイルスに感染していたことが、大阪府赤十字血液センターや京都大などの調査で分かった。米国の前立腺がん患者で感染が確認されているが、日本人では初めて。ウイルスががんの原因かどうかは不明だが、実態調査が急がれそうだ。27日、岡山市で開かれた日 本ウイルス学会で発表した。
研究チームは、事前承諾を得た前立腺がん患者30人と、献血で集まった血液から無記名・無作為に選んだ136人の血清を調べた。その結果、2人のがん患者と献血した5人から、ウイルスの陽性反応がみられ、このうち患者1人が詳細検査で感染が確認された。
XMRVはマウスの白血病ウイルスに近いとされ、前立腺がん患者では06年に米国で初めて感染が確認された。がん細胞の周辺組織が感染していたこ とから、がん発症を誘発している可能性が指摘されている。また、細胞の増殖抑制にかかわる遺伝子の一部が変異した患者で感染率が高い傾向がある。
国内の感染者では、一部の米国人患者で見つかった遺伝子の変異はなかったが、ウイルスのDNAは一致。研究チームは両者から検出されたウイルスは同一と判断した。
前立腺がんにウイルスの関与が確認されれば、ワクチン予防が可能となる。研究チームはがんとウイルスの関係、感染経路などの分析を急ぐ。【永山悦子】
えーと、ウイルスと病気の関連が明らかになれば、すぐにワクチンが開発されるということにはなりません。HIVやHTLVのワクチンは完成していませんし、HCVのワクチンもまだだと思います。私はワクチンについては素人ですが、ウイルスの変異のしやすさ(どのタンパク質が抗原にできるか)、感染の部位(皮膚にしか感染しないウイルスにワクチンは効くか?)、感染しやすさ(感染の成立に必要な密度や接触からの所要時間)などによってもワクチンが有効かどうかが異なるはずです。
ですので、「前立腺がんにウイルスの関与が確認されれば、ワクチン予防が可能となる。」というのは言い過ぎ。「前立腺がんにウイルスの関与が確認されれば、ワクチン予防の可能性につながる。」くらいが適当だと思います。
関連する論文
その1. XMRVのフルシーケンスと前立腺がんのRNAse変異体のヒトから見つかったよ、と言う論文
その2. ヒトの内在性のXMRVはよく似た構造のMMLVベクターを相補することが実験的に確かめられたので、臨床的にも注意は必要かも、という論文
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