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2008年10月の記事

2008年10月30日 (木)

文部科学省二種告示に無い新規病原体:XMRV

ニュースソースは10/28の毎日新聞。

XMRVというのは2005-06年頃に新しく見つかったウイルスなのですね。

今のところ、"Xenotropic MuLV-related virus"(XMRV)は文部科学省の研究二種告示のポジティブリストに載っていない模様。ですので、宿主として組換えウイルスを作成する場合や、未同定核酸のクローニング(例えばウイルスゲノム全長)にあたっては大臣確認申請が必要です。

関連分野の研究者の方は文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室までお問い合わせされることをお勧めします。

XMRVに発がん性があるかどうかはまだわからないとのことですが、一頃のHIVのように感染した場合の致死率は高くないようなので、推定上の実験分類はクラス2として、とりあえずはP2レベル以上の拡散防止措置で安全に取り扱えるのではないかと思います。

前立腺がん:患者がXMRVウイルス感染 日本人で初検出

 日本の前立腺がん患者が、XMRVと呼ばれるウイルスに感染していたことが、大阪府赤十字血液センターや京都大などの調査で分かった。米国の前立腺がん患者で感染が確認されているが、日本人では初めて。ウイルスががんの原因かどうかは不明だが、実態調査が急がれそうだ。27日、岡山市で開かれた日 本ウイルス学会で発表した。

 研究チームは、事前承諾を得た前立腺がん患者30人と、献血で集まった血液から無記名・無作為に選んだ136人の血清を調べた。その結果、2人のがん患者と献血した5人から、ウイルスの陽性反応がみられ、このうち患者1人が詳細検査で感染が確認された。

 XMRVはマウスの白血病ウイルスに近いとされ、前立腺がん患者では06年に米国で初めて感染が確認された。がん細胞の周辺組織が感染していたこ とから、がん発症を誘発している可能性が指摘されている。また、細胞の増殖抑制にかかわる遺伝子の一部が変異した患者で感染率が高い傾向がある。

 国内の感染者では、一部の米国人患者で見つかった遺伝子の変異はなかったが、ウイルスのDNAは一致。研究チームは両者から検出されたウイルスは同一と判断した。

 前立腺がんにウイルスの関与が確認されれば、ワクチン予防が可能となる。研究チームはがんとウイルスの関係、感染経路などの分析を急ぐ。【永山悦子】

えーと、ウイルスと病気の関連が明らかになれば、すぐにワクチンが開発されるということにはなりません。HIVやHTLVのワクチンは完成していませんし、HCVのワクチンもまだだと思います。私はワクチンについては素人ですが、ウイルスの変異のしやすさ(どのタンパク質が抗原にできるか)、感染の部位(皮膚にしか感染しないウイルスにワクチンは効くか?)、感染しやすさ(感染の成立に必要な密度や接触からの所要時間)などによってもワクチンが有効かどうかが異なるはずです。

ですので、「前立腺がんにウイルスの関与が確認されれば、ワクチン予防が可能となる。」というのは言い過ぎ。「前立腺がんにウイルスの関与が確認されれば、ワクチン予防の可能性につながる。」くらいが適当だと思います。

関連する論文

その1. XMRVのフルシーケンスと前立腺がんのRNAse変異体のヒトから見つかったよ、と言う論文

Urisman A, Molinaro RJ, Fischer N, Plummer SJ, Casey G, Klein EA, Malathi K, Magi-Galluzzi C, Tubbs RR, Ganem D, Silverman RH, DeRisi JL. Identification of a novel Gammaretrovirus in prostate tumors of patients homozygous for R462Q RNASEL variant. PLoS Pathog. 2006 Mar;2(3):e25. Epub 2006 Mar 31

その2. ヒトの内在性のXMRVはよく似た構造のMMLVベクターを相補することが実験的に確かめられたので、臨床的にも注意は必要かも、という論文

Dong B, Silverman RH, Kandel ES. Free in PMC A natural human retrovirus efficiently complements vectors based on murine leukemia virus. PLoS ONE. 2008 Sep 4;3(9):e3144.

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2008年10月29日 (水)

遺伝子組換え紫トマトの追加情報

畝山さんの食品安全情報blogでもとり上げられていました。
オリジナルの組換えトマトの論文はこちら

まずはオリジナルの論文を読んでおくのだった。色素合成の酵素遺伝子ではなく、その発現を制御する転写因子をキンギョソウから導入したとのこと。なので、昨日の記事の通り酵素遺伝子の発現を異所的に行わせたことになる。

なお食品安全当局のChief Scientistから、”騒ぎすぎ”とのコメントあり。
http://www.fsascience.net/2008/10/27/purple_haze

研究レベルではアントシアンの投与で発がんモデルマウスの寿命が有意に延長したとのことだが、だからと言ってヒトが日常生活でアントシアンを摂取した場合に効果があるかどうかまでは言えない。

" But, in the meantime, you can take steps to keep yourself healthy by eating a balanced diet with plenty of fruit and vegetables. "

結局(健康維持のためには野菜や果物を沢山食べてバランスの良い食事をしましょう)とのこと。ごもっとも。

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2008年10月28日 (火)

ガンを予防?遺伝子組換え紫トマト

ロイター通信より。

英研究チーム、がん予防効果の紫色トマト開発

10月28日7時25分配信

 [ロンドン 26日 ロイター] 英国の研究チームが26日、がんの予防効果があるという紫色のトマトの開発に成功したと発表した。遺伝子組み換えによって作られたこのトマトは、マウス実験でその効果が確認されたという。
 英国政府が資金援助を行う「英国ジョン・イニス・センター」の植物生物学者、キャシー・マーティン氏が率いる研究チームが、専門誌「ネイチャー・バイオテクノロジー」で発表した。
 新たに開発されたトマトには、通常ブラックベリーなどの濃い色のベリー類にみられる栄養素アントシアニンが含まれている。アントシアニンには、がんや心臓疾患などのリスクを下げる効果があるとされる。
                           

最終更新:10月28日7時25分

普通は”ジョン・イネス・センター”と呼んでますが。

詳しくは論文を当たるべきですが、とりあえずわかっている情報ではキンギョソウのアントシアン合成系の遺伝子を導入して果実で発現させているとのこと。

こちらに写真が載っています。

(EurekAlart!より)
結構な紫色です。このくらい色が濃いとおそらく渋みというかエグ味というか「アントシアンの味」が出てしまうと思います。紫サツマイモの極濃紫色の品種もふかしただけで食べてみると、エグいのですが。

こちらによれば、Professor Cathie Martinは"And certainly the first example of a GMO with a trait that really offers a potential benefit for all consumers. The next step will be to take the preclinical data forward to human studies with volunteers to see if we can promote health through dietary preventive medicine strategies."

次の前臨床試験(=動物実験)で安全性や効果を確認するまでは良いのですが、その次の段階で"dietary preventive medicine strategies"というのはどうなのよ!?という感じがします。だって、ガンの予防効果でしょ?コントロールの人はどうするの?とか、発がん誘発は非人道的なのでやらないとすると、自然にがんが発生するまで長期追跡試験をするのでしょうか?

現実的には、非常に難しいアプローチになると思います。なお、日本では医学的な効能・効果を標榜すると医薬品になるらしいですし。

ところで、トマトは品種によっては果皮にアントシンを蓄積するものがあります。桃太郎のような日本でポピュラーなピンク系のトマトでは若干アントシアンを蓄積します。また、黒トマトと通商される品種では、もっと色の濃いアントシアンを果皮や種子周辺にため込みます。

つまり、トマトは本来、アントシアンの前駆物質までは、最初から持っていて色素合成の遺伝子も品種によっては持っている。あとは、合成酵素を異所的に発現させればOKという状況だと思うのです。となると、この技術のブレークスルーはアントシアンの”歩留まり”にあるように思います。結局、どれだけ高濃度か?という。

しかし、なんですね、以前PNASに遺伝子組換えでカルシウムを沢山貯蔵させたニンジンを作ったという論文を見ましたが、そのカルシウム含有量は食品成分データベースで調べた小松菜の価よりも低かったので驚いたことがありました。このトマトのアントシアンも、紫サツマイモのそれよりも多くなければ、わざわざ遺伝子組換えでこのような作物を作る意義は薄いのではないでしょうか。

# そう思うのは、私が小松菜もサツマイモも食べる日本人だからかもしれませんが。色々な食材が食べられるのは実にありがたいことなのです。

実は日本人が日々食べている食材の種類はかなり多様です。個々の食品のもつ栄養的な利点をとらえて比べてみると、遺伝子組換え技術で何か他の作物を無理矢理改変してみても、特徴ある食材の水準を上回るのはなかなか難しいのではないかと思います。

ま、欧米人に無理矢理、小松菜や紫サツマイモを勧めても食べないでしょうから、こういう研究もよいのでしょうね。

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2008年10月27日 (月)

心寒い日は手を温めよう

本当か?だとすると・・・

手を温めるとやさしく親切に行動 米大学実験

2008年10月27日14時59分

 飲み物や温湿布で手が温まった人は、他人への評価や行動がやさしく親切になる――米コロラド大とエール大のグループがこんな実験結果を米科学誌サイエンスに発表した。

 グループは、消費行動に関する調査という偽の目的で、エール大生41人を集めた。実験会場までのエレベーターに乗っている間、偶然を装い、コーヒー入りのカップを持たせた。その後、面識のないある人物に関する印象を評価させると、ホットコーヒーを持っていた人の方がアイスコーヒーを持っていた人より「寛大」「社交的」「思いやり」などの得点が高かった。

 同様に一般の人53人に、商品テストと称して、温湿布と冷湿布を使わせた。その後、実験参加のお礼として、友人への商品券か自分用にプレゼントをもらうかを選ばせたところ、温湿布を使った人は54%が友人用を選んだが、冷湿布組は25%だった。グループは、本人が無意識のうちに、物理的な温かさが人間関係の温かさに結びつくとしている。(鍛治信太郎)

自分の意識しない要素で自由意志(?、そもそも本当にあるかどうか怪しいものではあるが)が影響を受けているとすれば由々しき事態です。

たかだか手が冷たくなったくらいで寛容さを失うような小さな人間にはなりたくないなぁ、とは思うものの、ヒトという生き物がそんな風にできているのは認めざるを得ないのかもしれない。せめて、自分に寛容さが足りないような気がする日には手を温めて、もう一度良く考えてみるとしよう。

まぁ、”アイスコーヒーは人を冷淡にする”と言う見出しではなくて良かったね。

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2008年10月26日 (日)

蛍光タンパク質含有絹糸

新聞にも採り上げられたようです。
GFP、YFPやDsREDなど蛍光タンパク質を含む絹糸のニュース。
http://www.nias.affrc.go.jp/press/20081024/ref3.html

下村さんのノーベル賞受賞のおかげで蛍光タンパク質に注目が集まっているおかげでしょうか。

実は、遺伝子組換えをしやすい系統は絹糸の品質が今ひとつ、逆に絹糸の品質の良い系統は遺伝子組換えがしにくいということは良くある・・・これは植物でもよくある話だ。ラウンドアップ・レディー・ダイズの場合もそうだった。

カイコの場合も遺伝子組換えをしやすい素材をベースに組換え体を作成して、交配で実用形質を持った系統に外来遺伝子を持ち込んでいる。

農林水産省のホームページでは遺伝子組換え技術のメリットを次のような図で説明している(画像は農水省のホームから引用しています)。


だが、実際はなかなかこの右の図のようにはいかない。どちらかといえば、左の図の”サングラス・トマト”に遺伝子組換えをして、従来の交配による育種の過程を経て実用的な品種を育成していることが多い。

世間では、遺伝子組換えで簡単に新品種ができるというようなイメージが流布しているようだが実際のところ、従来の育種技術との混合戦略の方が現実的だ。どんな優良品種でも完璧ではない。だから、交雑育種で様々な特性を改良しながら、なおかつ従来の技術ではどうしようもない限界を遺伝子組換え技術で克服していく、というのがモンサント等の先進的な種苗会社で行なわれている取り組みだ。

なお、イネの場合はむしろ例外的で、コシヒカリを含めて大抵の主力品種で遺伝子組換えができるようになった。関係者の努力の賜物、と言っていいだろう。もっとも、開発中の組換えイネを交配して、大規模な水田で系統の展開をしようとすると、隔離圃場栽培の規模も馬鹿にならないので、日本の社会的な背景においては上記のような混合戦略は現実的ではない、という事情もあるのだが。

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2008年10月23日 (木)

KOD FXで出芽酵母のコロニーPCR

東洋紡の耐熱性DNAポリメラーゼでKOD FKで出芽酵母のコロニーPCRをしてみた、というお話。

これまで同じく東洋紡のBlend Taqで大腸菌や酵母のコロニーPCRをしていました。大腸菌は問題が発生することはまずありませんでしたが、酵母は冷蔵庫で数日プレートを保存するとど うにもPCRがかからない、とか発現ベクターを入れてガラクトース培地で発現を誘導した際に弱い増殖阻害がおきる株では、なぜかコロニーPCRに失敗する ことが多い、と悩んでいたところ。

KOD FXのアプリケーションに酵母のコロニーPCRが 寄せられていたのでZymolyase処理無しの方法を試してみたら、これまでにないくらい良く増えてびっくり。増幅率は、DNA断片の定量はしていませんが電気泳動像を見る限りでは、15-20 μLの反応系でPCRして2 μL泳動して増幅を確認、残りをPEG沈してシーケンスできるくらい良く増えていました。

あとはランニングコストの問題ですが、定価ベースでは20 μLのPCR1本で70円と、価格はちょっと高めなので(\35,000/10,000 μL反応ボリューム、研究所の調達価格はもっと安いけれども公表できない・・・)、用途を選びそうです。ここ一番、絶対に失敗はしたくないという場合につかいま しょう。どこまで安定にスケールダウンできるかが検討課題ですが。

普通にPlasmidを抽出してPCRをすればまず失敗はないのですが、本数が多い場合には時間と試薬コストがコロニーPCRよりも高く付いてしまいます。そこでZymolyase処理で簡易抽出する方法もあるのですが、これは増殖期の酵母 の細胞壁には良く効くのですが、コロニーが古くなってくるとなかなかうまく分解してくれない。また、Zymolyaseもそう安くはない。

時間と手間、失敗のリスクを踏まえたコストを考えると、KOD FXで出芽酵母のコロニーPCRというのは現実的な選択です。

定価ベースで低コストなその他の製品には、島津のアンプダイレクトという製品があります。使用している酵素が普通のTaqなので、エラーはそこそこ入るはずですし、伸長速度はあまり速くなりません。形質転換の確認など、用途を選べばそれなりに使えるとは思います。
# が、KOD FXで良い。あんまり色々買って無駄にするのはいやなので。

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2008年10月21日 (火)

世界同時食糧危機(2)食糧争奪戦~輸入大国・日本の苦闘~のまとめ

10/19 放送 「世界同時食糧危機(2)食糧争奪戦~輸入大国・日本の苦闘~」のまとめ
http://www.nhk.or.jp/special/onair/081019.html

  • 穀物価格上昇の要因
    • 中国・インドの輸入急増
    • 投機的資金の流入
    • 穀物増産が人口増加に追いつかない
  • 業界第2位の味噌メーカーの苦闘
    • 味噌メーカーの値上げ交渉
    • 1.8万トンのダイズを年間に使用 コスト削減のみでは限界→安値で調達できるタイミングで購入
    • リーマンショックで副社長はダイズの下落を予想→11ドル前後で買入を商社に指示→思ったほど下がらず調達不調
    • アメリカの農家は契約に応じなくなってきた→バイオ燃料用トウモロコシへ転換。
    • 安定供給できる新規調達先を南米に求めつつある→ブラジルは外国企業の進出を制限。→パラグアイに着目。
    • 20トンのパラグアイのサンプルで検査
    • 品種の色調に問題→改良を要望。
    • しかし当面は無理→中国・黒龍江省での調達へ
    • 中国・黒龍江省は豊作。政府の輸出規制はあるか→地方政府では問題ないが、中央政府の対応は分からない→国内向けが優先ではある
    • 中国の港湾には国内向けの備蓄用サイロがある。 トウモロコシは輸出制限がある。ダイズは不確定。
  • ウクライナにおける農地獲得競争
    • ダイズ生産はアメリカ、ブラジル、中国で世界生産の90%
    • あとは他の地域で栽培面積を増やすのみ→ウクライナでの栽培
    • ウクライナには耕作放棄地が増えている→日本の農家が進出している(青森で100 haの耕作をしている)。 300 haを借りる契約。← 日本の商社は及び腰。→出遅れて5 haしか借りられなかった。
    • イギリスの実業化(Landcom)が同様のアプローチ。土地を囲い込み。GPSで測位、データベースに登録。12万haを確保。機械の稼動もコンピュータで管理。 投資家から出資を募る。
    • 輸出先は、アラブ、中国、日本など資金のある輸入国。 ウクライナの治安の悪さがボトルネック
    • フランス、アグロKMR社も進出。(フランスが小麦の輸入国に?)
    • カナダ、ユニレム社。アラブに輸出
    • ルイドレファス社、グレンコア社がランドコムと交渉。→ヨーロッパEU域内で家畜飼料?
  • 組換え作物の役割(南アを例に)
    • 農地拡大→8%/年、一方、消費拡大→55%/年
    • 足りないので→遺伝子組換え技術で増収をねらう
    • 南ア→トウモロコシが主食。作付けの60%をGMに転換。
    • Btコーンで特定の生産者は50%の増収。全土でも40%増収。
    • アメリカ、モンサントの品種を使用。主流はRRと説明。
    • 南アでも南部乾燥帯では増収できず。従来品種の40%しか取れなかった。伝統農業への回帰も検討。
  • 日本と遺伝子組換え作物
    • 讃岐うどんを例示→小麦の高騰の原因→オーストラリアに依存→オーストラリアは5年間干ばつ
    • オーストラリアでは乾燥ストレス耐性の遺伝子組換え小麦の開発中(アデレード大学)←研究者「リスクが無いとは言えないが冷静に判断すれば受け入れてもらえるだろう」
    • 生物研もちょこっと紹介
  • 輸入がダメなら米がある
    • コメ粉の利用
    • 飼料イネ→休耕田で飼料イネ品種を栽培
    • 地元養鶏場に出荷←トウモロコシ価格は4倍に高騰、コメとの価格差縮小
    • 黄身が白っぽい→差別化
    • 休耕田100万haで飼料米を作ればトウモロコシの輸入は不要になる
    • 作物研の超大粒、多籾数の品種を照会。従来比150%の増収
  • まとめ
    • 皆さんはどう考えますか?
    • 家庭の生ごみ調査→28%が捨てられている。

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なんだか半端な番組だ。次の疑問が残る。

  1. なぜ、味噌メーカーは遺伝子組換えでないダイズを調達する必要があるのか?
  2. パラグイアイの品種では何故いけないのか?(品種の違いを埋めるような加工技術がない?)
  3. 南アの乾燥帯で遺伝子組換え品種の導入に失敗したが、これはそもそも遺伝子組換え技術とは関係ない。外国の品種を導入する際に、栽培試験をきちんと行って地域への適応性を確認しておかなかったためではないのか?農学的には初歩的なミスのようだが、なぜそれが問題になる?南ア全土では140%の増収になったというのに。
  4. トウモロコシに代えて飼料米をというが、コメはトウモロコシよりもタンパク質が少ない。重量で等価な国内産量があったとして家畜飼料として完全に代替できるのか?番組では鶏を取り上げていたが、濃厚飼料を必要とするのはウシやブタでも同じこと。タンパク質所要量としては足りないのではないか?

話はちょっとそれる。
畜肉や穀物の輸入は、”窒素の輸入”であるというのはよく知られていると思う(環境省のホームページにもある)。一見、肉や穀物を輸入しないで済めばそれに越したことは無いように思えるのだが、肉や穀物を自給しようとすると、それらの生産のためには窒素肥料が必要になる。

窒素肥料も全部自給できれば良いのだが、それができないので窒素肥料の輸入量が増えることになる。この場合、農畜産物の国内生産の過程では窒素分が100%作物に吸収される訳はないし、家畜の排泄物としても放出されるので、日本の土壌や水系にこれまでよりも余計に窒素分が放出される恐れがある。

・・・となると日本の窒素の収支を考えると、環境中に無駄に放出される窒素分は海外に置いてきて、エッセンスだけを肉や穀物として輸入した方が”日本の”環境には優しいかも知れないのだ(定量的なデータは専門家に譲ります)。
# 畜肉ではなく魚やクジラをタンパク源に求める場合には、窒素分の集積による環境問題へのインパクトはずっと控えめだ。しかし、再生産可能な資源かどうかといえば大いに心許ない。

窒素の例だけを取り上げたが、リン酸塩やカリウム塩についても、肥料として輸入する場合には似たような問題が起こることが考えられる。

食料安全保障において、調達先を多様化する意味で自給率を上げるのは良いと思うのだが、生産資材の調達先の多様化や、廃棄物や家畜排泄物の処理にも目を向けてパッケージとしての施策にしておかないと、食料自給率を上げたことによるしわ寄せがどこかに来るような気がしている。

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2008年10月20日 (月)

[業務用覚書] 酵母の迅速タンパク質抽出法

SDS-PAGE用のサンプル抽出法としての酵母タンパク質のalkaline prep.

オリジナル

Kushnirov, V. Rapid and reliable protein extraction from yeast

http://www3.interscience.wiley.com/journal/72504790/abstract?CRETRY=1&SRETRY=0

改良版

von der Haar, T. Optimized protein extraction for quantitative proteomics of yeasts.

http://www.plosone.org/article/info:doi/10.1371/journal.pone.0001078

試してみたら簡単便利。培養液150-200 μL相当(OD600=2.0-5.0)までスケールダウンして、細胞をボイルするステップにサーマル・サイクラーを使えば大量処理もできる。粗タンパクの抽出効率はグラスビーズによる破砕よりは劣るが、きわめて簡便でチューブ1本で処理できる点では非常に優れている。

ただ、アルカリでポイルすると膜タンパクは凝集するので、その用途には向いてないとの情報あり。しかし、電気泳動の際にwellにスタックすることは無かったので、まずは試してみる価値はある(膜タンパクが完璧に不溶化して沈殿している可能性は否定できないが)。

オリジナルを見るとbeta-MEの効果が絶大なことがわかる。あるのと無いのとでは細胞からのタンパク質のリリースの効率が格段に違う。プラスミド抽出や形質転換の際にもbeta-MEやDTTで効率が上がるという論文もあり(大抵入れているし)、酵母の細胞壁をゆるめるには、この種の還元剤が良く効くのかもしれない。

・・・けど、酵母のコロニーPCRに還元剤を入れると言う話は聞かないな。今度入れてみよう。多分、beta-MEの0.1-1%で十分だろう。細胞壁を緩くするというのが本当なら、それなりの効果はあるはずだ。

澱粉の多い植物組織からのタンパク質抽出からみると、酵母は簡単です(特殊なものはわかりませんが)。
 

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2008年10月19日 (日)

生物学か生命科学かはたまたバイオテクノロジーか

http://elangel.exblog.jp/9952805

こちらからトラックバックは頂いたものの・・・私のお気楽なもとのエントリーと、先方の苦悶に満ちたトラックバックの乖離に、トラックバックの意図を把握しかねているところ。それはさておき・・・

物質としての生物、生物が生きているという状態としての生命これは概念として違うもの。それらを研究対象とするScienceとしての生物学と生命科学もまた違うものと考えた方がいいだろう。(さらには、生命現象の操作を目的とする工学としてのバイオテクノロジーと言うものもあるが、technologyの問題にはここでは触れない。)

生物学には、非常に広範な研究分野が含まれている。深海や極地の氷床の下に新種の生物を探すのもまた生物学。統計遺伝学もあれば植物病理学もある。研究対象としての生物の多様性そのままに研究分野も多様に分化している。ピペットを握って実験するのも生物学の一端だが、フィールドで観察して知見を集積するのまた生物学だ。どんな生物学を選ぶかは本人の自由だ。

生命科学はというと、もう少し範囲が絞られている。生命と言う状態の記述を追及するOmicsは概ねこの範疇に入る。

しかし、トラックバック先で言われるようには、私はOmicsが「バカらしい」とは思わない。カネ、ヒト、モノという研究資源をあらんかぎりOmicsに注ぎ込むのは、科学の発展を考えればあきらかに間違っているが、プレ・ゲノムの時代には、遺伝子を一つ単離して論文一本というペースでしか物事が進まなかったのから見れば、Omicsという基盤研究のおかげで生命現象に対する理解はそれ以前よりは、かなりマシになっている。また、分析機器の進歩のおかげでOmics自体も労働集約的ではなくなってきていることは認めざるを得ないだろう。

理論は重要だが、観察し、測定し、事実を抽象化して記述するというステップなしに、一足飛びに仮説も理論も構築できないのだから。それ自体、砂を噛むように退屈な労働であったとしても、それが理由で労働の価値が損なわれるものではない。

私は、Omicsのもっとも大きな成果は次のようなものだったと思う。例えばゲノム研究であれば、それが終わってみると当初考えられていたようにゲノムの全体像がすっきりとわかったかといえば、ゲノムのどの構造単位が、機能単位してのいわゆる”遺伝子”に対応するのかが、かえって曖昧になってしまった。結局、大規模な観察の結果、最も単純なセントラルドグマに対する例外が山ほど見つかって仮説の修正が必要になったことだと感じている。

かつて、年配の研究者から「イネゲノムの解読が終わって、もう新しい遺伝子の単離と言えなくなってしまって若い人は気の毒だね」と真顔で言われたのを覚えている。しかし、私はそうは思わなかった。Gene Ontologyでどれほどの遺伝子の機能が既知とされているかを見れば明らかなように、ゲノムの解読が終わった結果、機能未知あるいは推定されているだけ、という遺伝子(?)が山ほどあることが明らかになったのだから。何が分からないのかが分かっただけでも結構なことではないだろうか。

そういう意味では私はOmicsの成果を肯定する。ただし、私は学生が労働集約的なOmicsに従事してひたすら労働することが正しいとは思わない。学生が実験ばかりしていて考えることを怠っていて、研究した気になるというのでは、科学者を育てるという大学の役割が果たせていないことになるからだ。一方で、基礎的な実験操作や観察・計測・記録の技術を身につけないまま大学院を出た学生が職にありつくのも結構大変なことだろう。

あまり穏当な喩えではないが、建物の設計図を書く側には居る人間はそれほど多くない(新たなパラダイムを提唱する人間は一握り)。一方、設計図に沿って作業をする労働者は沢山必要だ(既存のパラダイムに沿って論文を書く研究者が大多数)。自分の好きな建物しか設計しない建築家と、どんな現場でも仕事をする土方と、どっちがくいっぱぐれないかは自明だが、どちらに身を置くかは本人の自由だ。

# 私? 筋金入りの土方です。

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2008年10月17日 (金)

和風PC

Nicholas Falzonの製作したPC。 これを発想したのが日本人ではないのにちょっと驚いた。

私なら、 ノートパソコンのほうがうれしいですね。天板が箱根細工で、柘植のキー、キートップには”天童の駒” 風に漆で文字が刻印されているというのがあれば性能の如何を問わず買ってしまいそうです。 これに、 堅牢な輪島塗のマウスとか、燻竹のUSBメモリーがあればなお良いですね。

考えてみると、 かつては一眼レフのボディーなんかは、手になじむ革張り(あるいは人工皮革)のものが結構普通だったのですが、 今時は革張りのマウスとかノートPCというのはあまり普通ではない。なんでだろう。

 

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2008年10月16日 (木)

シーボルトのお土産

http://search.japantimes.co.jp/cgi-bin/nn20080719f3.html
これによると、イタドリ(Japanese knotweed)を英国へ持ち込んだのはシーボルト先生だとされている。以来、各地で野生化して強害雑草として猛威をふるっているようだ。日本では珍し くもない植物だが、所変わって競合する生物があまりいない場合には周囲の植物を制圧するほどに繁殖する。そこでイタドリを食害する生物を導入して制御しよ うと考えていたようなのだが・・・

一般的には、それはそれでリスクがある。イタドリだけ食べる捕食者というものはそうはいない。他に餌があればそっちも食べるので、思わぬ植物が食害をうける可能性が排除できない。従って、導入前に良く検討しておく必要がある。 今回導入が検討されているものは、阿蘇に生息しているAphalara itadoriという昆虫でイタドリしか食べないらしい。一見よさげ。

http://www.eurekalert.org/pub_releases/2008-10/uol-pt101408.php
によれば、英国ではイタドリの雌株が生態系を脅かす外来生物(Superweed !)とされており、防除のために捕食(?)昆虫の導入が計画され、許可を待っている状態とのこと。ただしイタドリの専門家によれば効果は限定的と見られている。

たしかに、Aphalara itadoriの生息地である阿蘇でもイタドリが根こそぎになっている訳ではないので、駆除の効果も限定的と考えておいた方が良いだろう。

ちなみに、イギリスではイタドリの駆除がビジネスにもなっているらしい。
http://www.knotweed.co.uk/
※ 日本のシロアリ駆除サービスのような感じかな。

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2008年10月15日 (水)

冷凍インゲンから毒物を検出 消費者に健康被害か

私なら表題のような見出しを付けます。また意図的な毒物混入の疑いです。朝日新聞より。

検査4度くぐる 農薬冷凍インゲン 異常検出されず

2008年10月15日14時5分

中国製冷凍インゲンを食べた東京都八王子市の主婦(56)が体調不良を訴え、基準値の3万4500倍にあたる農薬ジクロルボスが検出された問題で、該当する商品は国内外の会社や検疫所で実施された計4回の検査を受けて流通していたことがわかった。

 輸入したニチレイフーズと販売したイトーヨーカ堂の担当者が15日、厚生労働省で記者会見し、明らかにした。

 ニチレイフーズが輸入した「いんげん」(250グラム)を製造したのは、中国の北緑食品(黒竜江省)と煙台北海食品(山東省)。

 北緑食品の農場で原料を収穫し、残留農薬の検査をした後、洗浄などを経てゆでて仮包装。煙台北海食品に送られ、同社が残留農薬の検査を実施した。中国国内での輸出前検査を経て出荷され、いずれの段階でも異常は報告されていなかったという。

 国内の検疫所でも抜き取り調査は実施されているが、該当する種類のコンテナが含まれていたかどうかは不明。その後、ニチレイフーズでも自主検査を実施したが異常はなく、同社の担当者は「(生産段階での)混入は考えられない」としている。

 主婦がイトーヨーカドー南大沢店で購入した11日には計46個が販売され、同店はこれまでに38個を回収。15日正午現在、主婦が食べた商品以外に農薬検出の報告はないという。

何度も報道されていますが、抜き取り検査はロットの代表値しか調べられないので、このような希なケースを検査で阻止するには全数検査をするしかありません。しかし、食品の毒物を非破壊で検査する方法は現在ありませんので、検査で毒物の混入を阻止するのは不可能です。しかも、大半の冷凍インゲンにはそもそも高濃度の殺虫剤は元々含まれていないので、「農薬冷凍インゲン 異常検出されず」というのも当たり前のこと。何を考えてこのような見出しをつけたのか、朝日新聞社の理解力を疑います。

「検査4度くぐる」と言う言い回しは、読者の不安を煽る以外に何の効用も持ちません。検査が5度だろうが100度だろうが、抜き取り検査では散発的な出来事の検出は不可能なのですから。

毎日新聞では次のように書いています。

 残留農薬の有無については、まず収穫前の原料検査を実施、その後、製品化されるまでに2回行い、日本への輸入後も複数回行われるという。しかし、いずれの検査も一部のサンプルを調べるだけで、今回問題となった「いんげん」は検査をすり抜けた可能性が高いという。

残留農薬のように、ロットを構成する原材料全体に同程度に農薬が残っていることが予想される場合には、抜き取り検査、あるいはサンプル調査と言っても良いですが、それで対応できます。繰り返しになりますが、全数調査は無理です。検査試料は粉砕しなくてはいけませんので、農薬の抽出過程で食べ物では無くなってしまいますから。

その範囲では、ニチレイフーズの検査態勢は間違っていないでしょう。検査の信頼性については判断材料がありませんので何とも言えませんが。

食品に限らず、製品の安全を担保するのは、結局の所、消費者に良いものを届けたいと願う食品の作り手の「志」しかありません。厳罰主義で製造現場を縛ろうとする考え方では対応を誤ります。

残念なことではありますが、今回のように作り手の良心を信じられない事態に至った場合にはもう、そこから製品を調達するのはあきらめるほかありません。

それにしても、ギョーザ事案の教訓でしょうか、製品の撤去、事実関係の公表・消費者への呼びかけ、工場への聞き取り調査、製造工程の洗い直しなど、まだ完了していない部分はありますが、12日の事故発生から殺虫剤の検出・公表までの今回の行政の対応はきわめて迅速です。

ただ、ジクロルボスのリスクに関する報道はお粗末。基準値の何万倍という言い回しを相変わらず使っています。マスコミにももう少し学習していただきたいものです。

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2008年10月14日 (火)

愚問愚答

イチローは凄い。王貞治もすばらしかった。私は、北島康介にも感動したし、内柴正人もすばらしかった。特に、北島は200mを平泳ぎで早さを競ったのだ。 早ければよいのなら走ればもっと早いのに、わざわざ泳いでさえあんなに早かったのだ・・・と言ってしまうのは、個々の競技のルールに則って勝敗を競うス ポーツというものの本質を理解していない証拠になるだろう。

スポーツを極めると「何の役に」というのは、このように誰が考えても愚問であろう。芸術も然り。

実は、科学も本質的には「何の役に」と言うことを指向してはいない。自然哲学として始まった科学の成り立ちからして、何かの役に立とうとは考えてこなかった。基礎研究とは本来そうしたもので、言うなれば精神的な文化活動だ。

一 方、科学とは別に実用的な必然性から発達してきた技術(technique)は、生まれた時から「役に立つ」ことを目指して進化してきた。技術は進化の過 程で科学の果実を取り込んで工学(technology)へと変貌を遂げてきた。単なる経験の束ではなく、体系的な知へと変化してきた。技術や工学は、文 化ではなく物質文明に根ざした活動といえるかも知れない。しかし、日本ではScience & Technologyを一緒くたにして「科学技術」と呼ぶ。せめて「科学・技術」と区別してほしいものだが。

科学の発展が工学の発達を促す例はいくらもある(原子力発電も然り)。逆に技術の発展が科学の証明に役立つこともある(スーパーカミオカンデの光電子増倍管も然り)。しかし、一般的には科学は研究者以外の飯の種にはなり得ないものだ。

以下の論説は、一種の壮絶なギャグ、かもしれない。産経新聞より。
http://sankei.jp.msn.com/science/science/081013/scn0810130913002-n1.htm

【風を読む】論説委員長・皿木喜久 「何の役に」は愚問である

2008.10.13 09:12

 ハワイ島に設置されている大型望遠鏡「すばる」の開発にあたった天文学者、小平桂一さんは、予算措置を要望するため に会う政治家や官僚から、決まってと言っていいほど、同じ質問を受けた。「宇宙の果てを見たいのです」という小平さんに「それが何の役に立つのですか」 だった。

 著書『宇宙の果てまで』に書いている話である。何億もの税金をかける計画だから当然かもしれない。小平さんは科学の歴史をひもときながら答えたようだがはて、どこまで理解されたか。

 今年のノーベル物理学賞に決まった京大名誉教授、益川敏英さんたちも同じような質問を何回も受けたに違いない。こちらは「宇宙の果て」ならぬ「宇宙の成り立ち」をさぐる素粒子の研究だ。

 大型望遠鏡と違い、鉛筆と紙とがあればいい。膨大な予算など必要としない。それでも「何の役に…」と冷たい視線を向けられたこともあるだろう。

 だがこれは「愚問」と言える。「宇宙の生成」など人間の知的探求心が究極的に行き着く課題である。そんな探究心があって初めて技術開発も成り立つ。日本でも湯川秀樹、朝永振一郎氏らの世界的に優れた基礎研究があったから、技術立国も経済繁栄も可能になったのだ。

 だが今、大学でも企業の研究所でも商品開発などに「すぐに役立つ」研究が花盛りである。愚直でも知的好奇心を満足させる基礎研究はおろそかになっている気がしてならない。

 一度に3人のノーベル賞受賞で日本中が沸いた。果たしてこの熱気で伝統の基礎研究が見直されることになるのだろうか。なってもらわねば困るのだが。


日本でも湯川秀樹、朝永振一郎氏らの世界的に優れた基礎研究があったから、技術立国も経済繁栄も可能になったのだ。」という部分が本音であれば、筆者の理解では、結局のところ基礎研究の意義は”お金”ということになろう。

”「何の役に」は愚問である”・・・それは全くその通りだ。しかし、”世界的に優れた基礎研究があったから、技術立国も経済繁栄も可能になった”という答えもまた愚答である。

研究者に向かって、「何故研究するのか」とか、「何の役に立つのか」と尋ねるのは愚かしい。アスリートや芸術家に向かって「何故泳ぐのか」、「なぜ音楽を演奏するのか」と問うたり、「何の役に立つのか」と問うのと同じくらい無駄なことだ。

答えは「そうしなければ生きていけないから」、あるいは「そうしなければ生きている気がしないから」ということになるだろう。新聞等で今回のノーベル賞受賞者の下村博士の生活を垣間見るにつけそう思う。

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2008年10月13日 (月)

ポスト・ネリカ米の技術支援

こういうODAのあり方も良いと思います。朝日新聞より。

日本、150億円規模の拠出 途上国の農業・防災支援へ

2008年10月12日

 【ワシントン=松村愛】世界銀行と国際通貨基金(IMF)の合同開発委員会が12日開かれ、日本政府は、食料価格の高騰や相次ぐ災害による被害にあえぐ アフリカなど途上国で、農業生産性向上や防災への取り組みを進めるため、世銀が持つ信託基金に今後5年間で1億5千万ドル(約150億円)規模の資金拠出 を行うことを表明した。

 農業生産性の向上策では、主にアフリカを念頭に、高温少雨に耐えられるイネの品種開発、肥料の活用拡大、高度な農業技術を教える農業指導員の育成といった取り組みを資金面から支援。世銀や国際協力機構(JICA)と協力して普及に努める。

 また、近年の気候変動の影響で、過去10年間に起きた大規模災害の件数が70年代の約3倍に増えていることに注目。「最も貧困で脆弱(ぜいじゃく)な層の生活の保護」をめざし、まずは防災設備の整備や、ハザードマップ作製による防災意識の向上などを促す。

日本で品種育成を行う場合も海外で品種育成を行う場合も、費用の多くは現地での人的な労働に支払われます。コストパフォーマンスで比較するなら、ダムや道路を造るよりも、人件費の安い海外で品種育成を行ってその国の農業生産を向上させるのは良い方法かも知れません。

というのは、品種を育成するのと同時に品種育成に当たる技術者を現地で育てることになります。長期的に見た場合の波及効果が大きく、ダムや道路と違って、老朽化するどころか裾野が広がりますし、品種育成は概ね機械や装置があまり要らないローテクなので教育がきちんと継続される限りは(往々にしてそこが問題だという話も聞きますが)、投資の効果が長く続きます。

こういう論はあまり聞いたことがないのですが、日本の品種育成は欧米先進国から見ると非常に集約的で小さな土地で少ない人力で行う方法が定着しています。品種育成の現場に行ってみて始めて分かることですが、たとえばカナダの大学と日本の農業試験場では面積比で1/5-1/10、スタッフの人数でも1/2-1/3は日本の方が小規模です。

遺伝子組換えでもマーカー育種でもない日本式の集約的育種技術は、労働力をあまり割けない国には向いているのかも知れません。

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2008年10月10日 (金)

ウイルスベクターを使用しないiPS細胞

毎日新聞より。

iPS細胞:ウイルス使わず作成、実験成功…山中教授ら

 さまざまな細胞に変化する可能性を持つ「人工多能性幹細胞」(iPS細胞)を、ウイルスを使わずに作ることに、山中伸弥・ 京都大教授らが、マウスの細胞を使った実験で成功した。従来は、ウイルスの一種(レトロウイルス)の使用が必要で、 細胞に発がんなどの遺伝子異常をもたらす危険が指摘されてきた。ウイルスなしで作れたことで、 今後iPS細胞から作った細胞を移植する際の、患者に対する安全性向上につながるとみられる。

 10日、米科学誌「サイエンス」電子版に論文が掲載される。

 iPS細胞を作るには、皮膚細胞など基になる細胞に4種類の遺伝子を導入する必要がある。 従来はこの4遺伝子をレトロウイルスの内部に組み込み、ウイルスごと細胞に注入していた。このウイルスは、 細胞が元々持っている遺伝子の集まり(染色体)に入り込む。この際に細胞の遺伝子に異常が生じ、がんなどが起きる心配があった。

 山中教授と沖田圭介・京大助教らは、レトロウイルスの代わりに大腸菌などが持つ環状の遺伝子「プラスミド」 を使ってiPS細胞を作ることに成功した。プラスミドは一般に染色体内に入らず、遺伝子異常を起こす心配がないとされる。

 4遺伝子のうち、細胞作成に欠かせない3遺伝子を一つのプラスミドに、 作成効率を上げる1遺伝子を別のプラスミドに組み込んだ。これらをマウス胎児の皮膚細胞に4回に分けて注入すると、 実験開始から25日目にiPS細胞ができた。染色体を調べ、外から遺伝子が入った形跡がないことを確認した。

 今後はヒトの細胞で同様の方法でのiPS細胞作成を目指す。山中教授は 「iPS細胞を患者の治療に使うために重要なワンステップだ」と話している。【野田武】

論文はこちら

いきなり余談ですが、iPS細胞化のマーカーにはノーベル化学賞で一躍有名になったGFPの融合タンパク質を使っています。

プラスミドベクターを使用して、CAGプロモーター(サイトメガロウイルス、チキン・アクチン由来の強発現プロモーター)でOct3/4, Klf4, Sox2の3遺伝子の間を口蹄疫ウイルス2A遺伝子由来の自己開裂ペプチドで繋いだポリシストロニックなタンパクとして発現させている。 第4の遺伝子c- Mycは別のプラスミドに組み込まれている。

# この方法だと、本来の内在性の遺伝子に対してちょっぴり余計なペプチドを付けてしまうようなので、 最終的な導入遺伝子の機能については検証が必要なところは面倒かも知れない。引用文献はこちら。 これによると、
口蹄疫ウイルス2A遺伝子は翻訳中にリボゾームを滑らせる機能があるようなので” 自己開裂ペプチド(・・・自己消化などで分解するペプチド) という言い方はあまり正しくないような気がする・・・。

プラスミドベクターの場合、ウイルスベクターよりも遺伝子の導入効率は低くなりがちだが、 導入する遺伝子を一つのプラスミド上に構築することで、全体としては遺伝子導入効率を高くすることができる。たとえば、 A,B,Cの3種類の遺伝子を個々に発現ベクターに載せて細胞に導入する場合、最終的にA,B,Cの全てが細胞に導入される効率は、 それぞれの導入効率の積になる。つまり、A,B,Cの導入効率がそれぞれ10%(=0.1)の場合、 3つとも導入される効率は0.1x0.1x0.1=0.001=0.1%程度になる。従って、 最初から一つのプラスミド上に導入したい遺伝子を全て載せておく方が効率は良い、と言う発想だ。

そのかわり、大腸菌や酵母でもプラスミドの分子量が大きくなると導入効率は下がる傾向にあるので、サイズの効果による導入効率の低下と、 単一のベクター上に遺伝子を集積することによる導入効率の向上のバランスの上で戦略を選択することになるだろう。
c-Mycについてはがん遺伝子ということもあり、そのうち使わずに済ませたいと考えて、分けているのかもしれない。

なお、この論文ではプラスミド導入を4回分けて行うことで、プラスミドの核ゲノムへの組込を抑えることに成功している。 たとえウイルスでないプラスミドでも核ゲノムに挿入してしまっては発がんリスクがあるため、それを抑える技術は重要だ。 論文では上手くいったケースと同様のプラスミドを最初に導入した実験で、核ゲノムへの組込が起こってしまっていたのだが、 最終的には導入プロトコルを改良することで克服している。なお、 プラスミドの検出にはバックボーンにプライマーを11カ所設定してPCRを行ってチェックしている。

# ・・・だが、どうしてそのあたりを改良できたのかは素人目には結構謎です。それから、 導入されたプラスミドはどこへ行っちゃうんでしょうね。

カルタヘナ法との兼ね合いで言えば、細胞に感染性の組換えウイルスを使用する場合は大抵P2レベルの拡散防止措置が必要だが、 プラスミドの場合はそのステップで拡散防止措置を執る必要はない。従って、学内・病院内での手続きが若干楽になるメリットはある。

いずれにしても、遺伝子導入の効率を確保しながら発がん性をおさえると言う点では、アデノウイルスを使った方法と同様、 まだ効率に課題があるようです。

 

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2008年10月 9日 (木)

コムギ・ゲノム解析の幕開け

ローマ人は言った。”分割して統治せよ”

コムギのゲノムは、そのサイズが巨大なことで知られている。ヒトゲノムの5倍もあるため、全ゲノムのシーケンスは、 シーケンサーの能力がかつてよりも飛躍的に発達した今日でさえ、容易な事業ではない。 今後さらにシーケンサーの能力が向上してコストが下がらない限り、コムギ・ゲノムの全塩基配列の決定は困難だろう。

全ゲノムの塩基配列の決定といっても、ゲノムの塩基配列を端から順番に決めるということは技術的にはできない。現在の技術では、 全ゲノムの塩基配列をランダムに決定して計算機上で組み上げる”全ゲノムショットガン法”か、染色体を複数の領域に分割してクローン化、 整列しておいてからDNAクローンごとに塩基配列を決定する”階層的ショットガン法”が採られている。 未だゲノムの全塩基配列が決められていない生物について、どちらの戦略を採るかは今後スーパー・シーケンサーの能力がいかに上がろうとも、 あまり関わりはない。それは、むしろ塩基配列情報を組み上げるコンピューターの能力に関わっている問題だ。

階層的ショットガン法で塩基配列を決めるには、まず百数十 kbp以上の巨大なDNA断片をクローニングして整列化する作業がある。技術的には、 やればできることはわかっている作業なのだが実際に予算を投入し、組織を率いて、その作業を完遂することは今以て困難な事業だ。しかも、 クローンの整列化にかかわるコストは今後ともそれほど下がりそうにはない。

"A Giant Leap for Wheat Genome" -コムギ・ゲノムへの偉大な一歩-
アポロ11号からアームストロング船長が人類で初めて月面に降り立った際に言った言葉になぞらえた記事が、 10月2日のScienceに掲載された。若干大げさな喩えではあるが、パンコムギの3B染色体の物理地図を完成させた論文を表して、 そう取り上げたものだ。

この記事では、物理地図を作成する意義を次のように要約している。"Devide and conquer"・・・「分割して統治せよ」 ローマ帝国が世界帝国を築く際に重宝した考え方で、問題を細かく分けてから個別に解決しなさい、 とか戦闘の際に敵軍を分断してから個別に撃破しなさいと言う具合に使われる言葉だ。

巨大な染色体のシーケンスにあたってもこの考え方が当てはまる。染色体を幾つもの領域に分けて管理しながら塩基配列を決定し、 組み上げていくのだ。今後、シーケンサーの能力はさらに向上し、コストは下がっていくだろう。その日に備えて、コムギ・ ゲノムの研究チームは着実にクローンの整列化を進めている。そのマイルストーンとも言うべき研究が報告された。論文はこちら

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2008年10月 8日 (水)

ノーベル化学賞、下村脩さんに。 GFPの発見で。

オワンクラゲの緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein, GFP)を発見した功績で、下村脩さんらに3名にノーベル化学賞が贈られた。 下村さんは平成19年に朝日賞を受賞されているので年表はこちら

近頃、遺伝子組換え技術を駆使する人々の間ではGFPはよく知られたツールになっている。遺伝子導入の効率や調節遺伝子の働き (プロモーターアッセイ)を調べる方法は色々あるのだが、遺伝子組換え生物を生かしたまま遺伝子発現を観察できるところが画期的だ。 生かしたまま観察できると言うことは、同じ個体が発生してから死ぬまで観察を続けることができると言う点で、他の技術が及びも付かない。

最近では、黄色や青の蛍光を発する改良版や、 サンゴ由来のDsRED(赤)などGFPそのものの改変や、その発見から派生した蛍光タンパク質もまた、有用なツールになっている。

タンパク質の立体構造解析もままならない時代に発色団の分子構造モデルを提唱されたとのことなので、 それも驚きだ(ちなみに午後8時過ぎのWikipdiaのGFPの項目には、もう「2008年にノーベル化学賞を受賞した」と書いてあった。 早い!)。

もっとも、ご本人は純粋に蛍光タンパク質が何故光るかに関心があったのでしょうから、 その後GFPがレポーター遺伝子として幅広く使われ始めたことについて、どうお考えだったのかはわかりません。 どんなコメントを出されるか楽しみです。以下、読売新聞より。

ノーベル化学賞に下村脩氏ら3人、緑色蛍光たんぱく質を発見

スウェーデン王立アカデミーは8日、2008年のノーベル化学賞を、元米ウッズホール海洋生物学研究所上席研究員の下村脩博士 (80)ら3人に授与する、と発表した。
 下村さんは、発光するクラゲの中から緑色の蛍光たんぱく質(GFP)を世界で初めて発見、精製することに成功。 このGFPを目印にして、生きた細胞中のたんぱく質の振る舞いを直接観察することが可能になり、 生命科学の研究に飛躍的な発展をもたらした。
 日本人3人が受賞した7日の物理学賞に続く快挙で、日本人受賞者は計16人になる。化学賞の受賞は、02年の田中耕一さん以来だ。 1000万スウェーデン・クローナ(約1億4000万円)の賞金は、3人で分ける。授賞式は、12月10日、ストックホルムで行われる。

 3人の授賞理由は「緑色蛍光たんぱく質GFPの発見と開発」。
 下村さんは1961年、米シアトル近郊にあるワシントン大臨海実験所で、オワンクラゲと呼ばれる発光クラゲを研究中、 発光物質の抽出に成功、オワンクラゲの学名から「イクオリン」と命名した。
 しかし、イクオリンは青色に発光するのに、クラゲは緑色に光ることに疑問を持ち、さらに研究を継続。 イクオリンの精製中に見つけた別の物質を調べたところ、酵素なしで自ら緑色に光るたんぱく質であることを突き止めた。当時の学界では、 たんぱく質は、単独では光らないというのが常識で、その常識をくつがえす革新的な発見だった。
 このGFPの遺伝子を使い、調べたいたんぱく質が細胞内のどこに存在し、どこに動いていくかの振る舞いを、 直接観察することができるようになった。現在、この技術を使った論文は年間1000本以上発表され、生命科学の研究には不可欠な「道具」 となっている。
(2008年10月8日19時30分  読売新聞)

えと、他の二人はこちら。 線虫で始めてGFPをレポーター遺伝子に使用したMartin Chalfieと、 蛍光を発する仕組みを追求してGFPを改良し続けたRoger Y. Tsien。 いずれも、現在のレポーター遺伝子としてのGFPの普及に功績が認められたということでしょう。発見、発現そして改良の三拍子。

受賞理由はこちら(pdfです)。 詳しいけれども分かりやすい。さすが。マスコミも”日本人が”と言うことだけでなく、 こういうバックグラウンドの情報もしっかり伝えてほしい。

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2008年10月 7日 (火)

ノーベル医学生理学賞はHIVとHPVの発見者に

夕方のニュースではノーベル物理学賞が日本人三氏に贈られたとのこと。

私は生物学畑なので、今日のお題はこちら。なんだかHIV+HPVで合わせ技で一本、みたいなノーベル賞です。毎日新聞より。

    ノーベル医学生理学賞: エイズウイルス発見の2博士らに

 スウェーデンのカロリンスカ研究所は6日、08年のノーベル医学生理学賞を、独がんリサーチセンターのハラルド・ツア・ハウゼン名誉教授(72)と、仏パスツール研究所のフランソワーズ・バレシヌシ教授(61)、仏パリ大のリュック・モンタニエ名誉教授(76)に授与すると発表した。授賞理由は、ツア・ハウゼン氏が「子宮頸(けい)がんを引き起こすヒトパピローマウイルスの発見」。バレシヌシとモンタニエ両氏は「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の発見」。この2種類のウイルスは性交渉が原因で感染が広がる。ウイルスの発見で病気の理解が深まり、治療法の開発につながったと評価した。  

 授賞式は12月10日にストックホルムで開かれる。賞金1000万スウェーデンクローナ(約1億4000万円)のうち、半分をツアハウゼン氏、残りをバレシヌシ氏らが等分する。

 ツア・ハウゼン氏は、83年に子宮頸がんの患者からヒトパピローマウイルスのDNAを発見、そのウイルスの遺伝子を複製した。これが、感染を防ぐためのワクチン開発につながった。子宮頸がんと診断された大半からパピローマウイルスが見つかり、毎年50万人が感染している。

 バレシヌシ、モンタニエ両氏は83年、後天性免疫不全症候群(エイズ)   の患者から原因となるウイルス(HIV)を発見。HIVにより発症したエイズが原因でこれまでに約2500万人が死亡した。両博士の発見で、ヒトのリンパ球の機能が弱まる仕組みが分かり、ワクチン開発の道が開かれた。世界保健機関によると、HIV感染者は3320万人(07年末現在)に上っている。【河内敏康】

 ◇HIV「最初の発見者」論争、米仏で6年以上

 HIVの発見を巡っては、モンタニエ氏らと、米国のロバート・   ギャロ氏が共に「最初の発見者」と主張し、論争を繰り広げた。

 モンタニエ氏らは、エイズ患者から初めてウイルスを分離、「LAV」   と命名して83年に発表した。一方、ギャロ氏はその翌年、別のウイルス名で「エイズの原因ウイルスを発見した」と発表した。論争は米仏両国を巻き込んで6年以上続いたが、遺伝子分析などで両者がほとんど同じと判明。このウイルスは後にHIVと命名され、モンタニエ氏に軍配が上がった。

 松下修三・熊本大教授(感染免疫学)は   「ギャロ氏はHIVの大量培養法や検査キットなどを開発し、治療薬の開発につなげた。ノーベル賞は最初のウイルス分離を重視しモンタニエ氏らに贈られたが、病気克服への貢献という意味では両者の果たした役割は同じ程度に大きい」と語った。【西川拓】

  HPVの方はオーストラリアでIan Frazerによって効果的なワクチンが開発され、各国で実用化されている(日本では治検段階とか)。ただ、一旦子宮頸がんを発症すると、日本では外科手術が治療の中心とのこと。転移もしやすいようなので重症化すると予後は良くない。ZARDの坂井泉水さんも、これが元で入院していました。日本ではHIVほど有名ではありませんが、少なからぬ人が感染している重要な病原体です。
  HIVの発見は最初から波乱含みだったのは記事にもある通り。HIVの方は、症状を押さえ込む薬物療法がどんどん進歩してはいるものの、完全に進行をおさえるのはまだ難しい。   免疫担当細胞が攻撃されるので手術でどうにかなるというものではないし予防に役立つワクチンの開発もまだです。
 
  いずれも厄介な病気ですが、完全に克服する医薬品が開発されれば、再びのノーベル賞ものでしょう。

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2008年10月 6日 (月)

超ミニがお好き? -ナノ・ブタ!-

超ミニを超えるとマイクロミニ?スカートの丈と同じ発想なのかいな。ミニブタよりもさらに小さなブタを開発中とのこと。朝日新聞より。

 

体重10キロ「ミニミニ豚」 医療実験用に品種改良

   成熟しても中型犬程度(約10キロ)の大きさにおさまる世界最小クラスの「極小ミニ豚」を、   静岡県富士宮市の畜産業者が開発した。豚は臓器の生理機能や皮膚の特徴が人間に似ていて、欧米では実験用動物に用いられている。   畜産業者は県とともに品種改良に取り組んでいる。  

 極小ミニ豚は03年、富士宮市の農事組合法人「富士農場サービス」が生み出した。現在は4世代まで生まれて、約80匹に増えた。    今後「マイクロミニ」(仮称)として品種登録する予定だ。

 医療実験には、マウスやモルモット、ビーグル犬のほか、欧米では体重40~50キロの「ミニ豚」も使われている。しかし、   ミニ豚は小型動物に比べて体が大きく、飼育や新薬投与にコストがかかり、国内の使用例は少ない。

 しかし、極小ミニ豚ならば、飼育施設や飼料費を小型動物なみに抑えることが可能という。今後は、個体差を少なくしたり、   繁殖能力を高めたりして、10年度をメドに品種改良を実現させる。成功すれば、国内外で新薬開発などへの貢献が期待される。

 県中小家畜研究センター研究主幹で獣医学博士の河原崎達雄さんは「まず、遺伝子の解析に取り組む。   いますぐ実験に使えるわけではないが、ぜひ計画を成功させたい」と話している。(中野渉)

大人でも体重10キロ程度というの非常に画期的です。これまでのミニブタでも25 kg以下というのが非常に小さい部類らしいのですが、これはその半分以下ですから、 これはもうマイクロを通り越して今はやりの"nano"をつけて"ナノブタ"と呼んであげたいくらいです。

小さければよいと言うのであればマウスの方が当然小さいのですが、 マウスは脂肪酸代謝系がヒトと違っているらしいので、循環器系の疾患や高脂血症、 高コレステロール血症などのメタボリックシンドロームのモデル動物としては使いにくかったのだそうです(参考)。

とはいえ、実験動物としては体重は中型犬並なのでよく食べる方でしょうから、 経口毒性試験用のモデル動物としてはあまり使いたくありません。26や52週の週亜慢性毒性試験をしようとすると、 実験材料を確保するのが大変そうなので。

一方、家系管理をするため遺伝的にある程度均一にできるので、 野生集団由来のサルよりも精度の良い試験ができるかも知れません。

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2008年10月 2日 (木)

東京大学の農場で水銀剤を使用 -試験ほ場の収穫物を売るのは止せばいいのに-

生産物を販売する目的で反復的・継続的に作物を栽培し収穫するのが農業であるならば、 研究所や大学の農場で行われている作物の栽培は農業ではない。生産物の販売を目的として生産活動を行っている訳ではないからだ。

研究所や大学の農場にある田や畑は、本来、生産物を販売して利益を得る目的で使用されるものではない。 農家の田畑は工場と同じような生産手段なのだが、研究機関の田畑は研究上のデータを得る為の手段であり、 そこで作られる生産物は副産物と言っても良い。

そう考えると、今回の一件の一因は、大学農場の生産物を処分せずに「販売」してきた慣行にあるように思う。

大学のほ場は一般の農家よりも小さいことが多い(もちろん例外はある。東大農場は22 ha以上とかなり広い)。 農薬の使用量も少ないのが一般的。今回使用された水銀剤も、73年以降は流通していないはずなのに24年以上たった97- 99年にかけて使われていたことからもわかる。東大農場に占める水田の面積はさほど広くないのだろう(米の収穫は年間1.3トンだ。10 aあたりの収量が500 kg程度なので、計算上26-30 a程度の水田面積ということになる。ちなみに朝日新聞では実習用水田は30 aと書いてあったので間違いないだろう)。

水銀剤は種子消毒剤としては強力で、しかも残効性があるので苗立ちまでイネをカビや細菌から守ることができる。 種籾を吸水させる際に水銀剤の水溶液に浸すだけで良いので手間もかからず比較的少量しか使わない。・・・なので、 やはり一度買うといつまでも減らない。そのかわり、問題になるのは種子消毒に使った後の廃液だ。水銀を含んでいて、 排水として流す訳にもいかないので産業廃水として処理しようとすると処分費用がかかる。農薬登録が抹消されたのも、 農家で水銀剤を使う場合は相応の量の廃水が出るので、農薬としての実用性があまりなくなってしまったためかも知れない。

種子消毒に使用した際に種子に残る程度の量の水銀剤は、土壌汚染を引き起こすほどの量にはならない。また、 その植物体が生育した際に濃縮されたとしても、元々の量が非常に少ないので収穫された米から検出することも難しいだろう。 ヒトが摂取する量としては、カジキやキンメダイの方が遙かに高濃度であるに違いない。また、酢酸フェニル水銀はメチル水銀とは異なり、 人体に蓄積しにくい性質があるので、10年前に問題の米を食べた市民から水銀剤由来の水銀が検出されるとは非常に考えにくい。

なお、「禁止農薬」という言い回しは正しくない。農薬取締法では一般原則は何でも禁止する仕組みで、 登録された農薬についてのみ認めている。さらに、平成15年の法改正で特定の農薬の販売および使用を禁止するルールになったことから、使用の制限に関しては「禁止農薬」というよりは使用禁止農薬 と言った方が良いだろう。

特定の農薬の使用を禁止するルールにはなっていないので、使用に関しては「禁止農薬」 というよりは無登録農薬と言った方が良いだろう。

・・・と言う前提で、以下の記事。毎日新聞より。

 

禁止農薬:東大農場で使用 米栽培し販売…90年代後半
 

 東京大大学院農学生命科学研究科附属農場(東京都西東京市)で、   使用禁止となっている水銀系農薬が少なくとも3年間、米の実習栽培で使用されていたことが分かった。   収穫された米は地域の住民に販売されており、東大は残留農薬などの調査に乗り出した。今のところ、健康被害の情報はないという。  
 
   東大によると、問題になっているのは、73年に使用禁止になった「酢酸フェニル水銀」が含まれる農薬。97~99年、   職員が米の種もみの消毒に使用。06、07年にも、同じ職員がカキやリンゴの苗木の消毒に使った。カキはまだ実をつけておらず、   リンゴは食用ではなかった。酢酸フェニル水銀は農薬取締法で、研究目的での使用を認められており、使用禁止後も農場に保管されていた。  
 
   この職員は、大学の調査に「使用禁止と知っていた。田んぼが荒れたり、稲に病気が広がった時期があり、効果があったので使った」   と説明したという。
 
   この3年間に収穫された米は、4トン前後に上るとみられ、大半が住民に販売されたり、学生が食べたりした。酢酸フェニル水銀は長期間、    摂取すると腎臓に悪影響が出る可能性があるが、東大は「食べる段階まで残留していた恐れは小さい」と話している。   人体への影響の有無のほか、他に使用していた職員がいないか聞き取りを進めている。2日午後には、住民への説明会を行う。

   東大農場のホームページによると、農場は東京ドーム約5個分に相当する22・2ヘクタールの敷地があり、   米のほかにも野菜や果樹の栽培も行われている。
 
   2日、記者会見した濱田純一副学長は「住民や関係者に不安を与えたことを深くおわびします」と陳謝した。【川崎桂吾】

結局、イネに使用された時期は「97~99年」の今から見れば10年前。一方、「この3年間に収穫された米は、 4トン前後に上るとみられ、大半が住民に販売されたり、学生が食べたりした。」と記事にはある。 調査結果如何だがこの時期の米は水銀剤と関係があるのか?よく分からない記事だ。

ちなみに、農業試験場では登録前の新しい農薬(当然、無登録農薬だ) の有効性や薬害を調べる試験が行われるところが多い。試験用の水田に無登録農薬を散布することになるのだが、 試験の目的からしてこれを禁止してしまっては新しい農薬が開発できなくなるので、農薬取締法でも試験研究用の使用自体は認められている。

しかし、収穫物の流通となると話は別で、収穫物から無登録農薬が検出された場合、 その濃度が一律基準以下でなければ食品衛生法違反が疑われる。先般、非食用米として処分されたもののうち、 新潟県の農業試験場から売り渡されたものはこの種のコメであると考えられる。

私は、試験用に栽培した作物は、もともと食用としての販売を意図して生産している訳ではないのだから、 その収穫物は流通させない方が良いと思う。食べられない訳ではないので、みすみす捨てるのはもったいないと言う考え方はある。 それはわかるのだが、明らかに無登録農薬を使っている試験場で生産した生産物なので、 ドリフトや収穫物の混入で無登録農薬が検出されるリスクはそこそこ高いし、そうならないためには、農薬の散布や収穫物の管理、 収穫に使う機器の扱いに相当の神経を使うし、それなりのコストもかかる。 わずかな収穫物の売却益のために少なからぬ職員の労力を使うというのは、行政のムダと言うやつではないのか?

コメやムギを例にとれば、だいたいそう言う案配だが、他の作物の場合は私にはわからない。

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2008年10月 1日 (水)

危険な澱粉質食品にも法的規制を!?

朝日新聞より。読んでいて頭が痛くなってきた。

 

こんにゃくゼリー、また幼児死亡 対策取られず17人目

  2008年9月30日12時10分    

     国民生活センターは30日、兵庫県の男児(当時1歳9カ月)がこんにゃく入りゼリーをのどに詰まらせる事故が7月にあり、9月20日に死亡したと発表した。こんにゃくゼリーは子どもや高齢者には窒息の危険があるとされ、95年以来の死者はわかっているだけで17人となった。規制する法的な枠組みがないとして抜本的対策がとられず、被害が広がっている。  
 
     センターによると、事故のあった製品は業界最大手「マンナンライフ」(群馬県富岡市)の「蒟蒻(こんにゃく)畑 マンゴー味」。凍らせたものを7月29日に祖母が与えたという。  
 
     こんにゃくゼリーでは95~96年に8件の死亡事故が相次いだ。センターの注意喚起や業界団体の注意表示で97~04年は8年で3件と減ったが、     05~07年の3年で5件と再び増加の兆しを見せている。昨年3月には三重県伊勢市で男児(当時7)が学童保育所でおやつに出されたゼリーで窒息死した。  
 
     センターは昨年7月にも業界団体や国に対して事故防止策の検討を要望。しかし、食品衛生法を所管する厚生労働省は「食中毒対策など衛生面で危害の恐れがない」、日本農林規格(JAS)法所管の農林水産省は「表示の問題ではない」などと主張。いずれの省庁も現行の法体制では規制できないとして、「すき間事案」のままになっている。  
 
     こんにゃくゼリーは通常のゼリーより硬く、弾力性が強いため、のどに詰まらせやすい。全国こんにゃく協同組合連合会や全日本菓子協会など業界3団体は昨年10月から商品袋の表面に「お子様や高齢者の方はたべないでください」と書いた統一警告マークを表示しているが、01年以降に事故が相次いだEU(欧州連合)や韓国では、既に販売が禁止されている。(上田学)  
 
         ◇  
 
     マンナンライフの話 これまでの事故を受けて、業界団体で協議し、商品に警告マークをつけてきた。表示を大きくするなど、消費者にさらにわかりやすく改良したい。製造を中止する考えは今のところない。  
 
     佐野真理子・主婦連合会事務局長の話 これだけ多くの方が亡くなり、「行政のすき間」の商品として問題となっていたのに、行政が何もせず放置してきた結果、また1人亡くなった。警告マークをつけて済む問題ではないことが明らかになったし、そもそも高齢者や子どもが食べてはいけないお菓子が流通していること自体おかしい。早急に消費者庁を設置して、規制すべきだ。  

事故件数から言えば多分、モチの方が多い。と思ったら、厚労省のまとめでもそうなっている。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/chissoku/dl/01.pdf

救命救急センターの調査によれば、モチ、ごはん、パンが食品による窒息事故の原因のトップ3で、 1年間の事故例371のうち、モチ(91)、パン(43)、ごはん (28)、で43%を占める。パンやごはんは毎日食べるものなので、その分事故の件数は多いのだろうが、 モチはそんなに食べるものではないはずなのに、これだけの事故を起こしている。しかも、こんにゃくゼリーよりも、 のどに詰まって窒息しやすいことは広く周知されているはずだ。なにしろ日本人はモチをおそらく千年以上は食べ続けており、 これまでも少なからぬ人々が亡くなっているのだから。

食品による窒息事故を減らすと言う意味では、 13年間で17件の事故に結びついたこんにゃくゼリーのような些末なものに目くじらを立てるよりも、 モチでのどを詰まらせないように対策をとる方が効果的だろう(事故発生率でいえばこんにゃくゼリーの方が高いかも知れないが、 対策の有効性で議論するには発生件数で考えた方が良いと思う)。たとえこんにゃくゼリーの生産や流通を止めたところで、 もともと消費量はたいして多くないのだから、食品による窒息事故全体としては、あまり減らないのだ。

・・・と言う意味で、主婦連合会事務局長の話はピントがずれている。朝日新聞も 「規制する法的な枠組みがないとして抜本的対策がとられず、被害が広がっている。」という言いぶりはどうなのだ。バランスから言えば、 より死亡事故の多いモチにこそ規制する法的な枠組みを設けて抜本的な対策をとるべきではないのか?同じコストをかけるのであれば、 そちらの方が消費量が遙かに多いだろうから、税金の使い道としては数倍有効だろう。

ところで、法律でモチを規制するという判断は合理的だろうか?私はそうは思わない。 消費者が食い物をのどに詰まらせないように気をつけなくても良いように、政府や業界が対策をとるのが当然と言う論法はおかしい。 そのくらいは消費者が自分で気をつけるべきことだ。モチに限らず食べ物の物性を法律で規制するのは行き過ぎだ。消費者は無知で、 のどに食い物を詰まらせないように注意することさえ知らない赤ん坊のように無力な存在だというのであれば別だが。

あえて当たり前のことを言うが、どんな食べ物でも良くかんで飲み込まなければ窒息死の危険はある。 事故原因から見ても、それが事実だ。そのことを学習できないヒトはいずれ何かを喉に詰まらせて窒息死するリスクが高い。 我々が自分の身を守る方法は、食べ物を良くかんで飲み込むことにつきる。

昔読んだ星新一のショートショート小説だったか、モチが非合法化されて好事家がヤミで流通するモチを、 目を白黒させてむさぼり食う、というのがあった。私はそんな未来はごめん被る。

# マンナンライフは朝日新聞にあまり広告を出していないのでしょうか。それとも、 朝日新聞に全面広告を出して消費者に注意喚起しなさいという意味でしょうか。広告料が少ないので叩かれた、というのは勘ぐりすぎでしょうか。

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同様の視点のblogがこちらにも。

http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20081001_chissoku/

http://blogs.dion.ne.jp/doramao/archives/7666295.html

http://yawanews.blog82.fc2.com/blog-entry-824.html

※ 野田聖子大臣もトンチンカンですね。職員にそんなことを検討させないでください。

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