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2008/10/08

ノーベル化学賞、下村脩さんに。 GFPの発見で。

オワンクラゲの緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein, GFP)を発見した功績で、下村脩さんらに3名にノーベル化学賞が贈られた。 下村さんは平成19年に朝日賞を受賞されているので年表はこちら

近頃、遺伝子組換え技術を駆使する人々の間ではGFPはよく知られたツールになっている。遺伝子導入の効率や調節遺伝子の働き (プロモーターアッセイ)を調べる方法は色々あるのだが、遺伝子組換え生物を生かしたまま遺伝子発現を観察できるところが画期的だ。 生かしたまま観察できると言うことは、同じ個体が発生してから死ぬまで観察を続けることができると言う点で、他の技術が及びも付かない。

最近では、黄色や青の蛍光を発する改良版や、 サンゴ由来のDsRED(赤)などGFPそのものの改変や、その発見から派生した蛍光タンパク質もまた、有用なツールになっている。

タンパク質の立体構造解析もままならない時代に発色団の分子構造モデルを提唱されたとのことなので、 それも驚きだ(ちなみに午後8時過ぎのWikipdiaのGFPの項目には、もう「2008年にノーベル化学賞を受賞した」と書いてあった。 早い!)。

もっとも、ご本人は純粋に蛍光タンパク質が何故光るかに関心があったのでしょうから、 その後GFPがレポーター遺伝子として幅広く使われ始めたことについて、どうお考えだったのかはわかりません。 どんなコメントを出されるか楽しみです。以下、読売新聞より。

ノーベル化学賞に下村脩氏ら3人、緑色蛍光たんぱく質を発見

スウェーデン王立アカデミーは8日、2008年のノーベル化学賞を、元米ウッズホール海洋生物学研究所上席研究員の下村脩博士 (80)ら3人に授与する、と発表した。
 下村さんは、発光するクラゲの中から緑色の蛍光たんぱく質(GFP)を世界で初めて発見、精製することに成功。 このGFPを目印にして、生きた細胞中のたんぱく質の振る舞いを直接観察することが可能になり、 生命科学の研究に飛躍的な発展をもたらした。
 日本人3人が受賞した7日の物理学賞に続く快挙で、日本人受賞者は計16人になる。化学賞の受賞は、02年の田中耕一さん以来だ。 1000万スウェーデン・クローナ(約1億4000万円)の賞金は、3人で分ける。授賞式は、12月10日、ストックホルムで行われる。

 3人の授賞理由は「緑色蛍光たんぱく質GFPの発見と開発」。
 下村さんは1961年、米シアトル近郊にあるワシントン大臨海実験所で、オワンクラゲと呼ばれる発光クラゲを研究中、 発光物質の抽出に成功、オワンクラゲの学名から「イクオリン」と命名した。
 しかし、イクオリンは青色に発光するのに、クラゲは緑色に光ることに疑問を持ち、さらに研究を継続。 イクオリンの精製中に見つけた別の物質を調べたところ、酵素なしで自ら緑色に光るたんぱく質であることを突き止めた。当時の学界では、 たんぱく質は、単独では光らないというのが常識で、その常識をくつがえす革新的な発見だった。
 このGFPの遺伝子を使い、調べたいたんぱく質が細胞内のどこに存在し、どこに動いていくかの振る舞いを、 直接観察することができるようになった。現在、この技術を使った論文は年間1000本以上発表され、生命科学の研究には不可欠な「道具」 となっている。
(2008年10月8日19時30分  読売新聞)

えと、他の二人はこちら。 線虫で始めてGFPをレポーター遺伝子に使用したMartin Chalfieと、 蛍光を発する仕組みを追求してGFPを改良し続けたRoger Y. Tsien。 いずれも、現在のレポーター遺伝子としてのGFPの普及に功績が認められたということでしょう。発見、発現そして改良の三拍子。

受賞理由はこちら(pdfです)。 詳しいけれども分かりやすい。さすが。マスコミも”日本人が”と言うことだけでなく、 こういうバックグラウンドの情報もしっかり伝えてほしい。

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