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2008年9月10日 (水)

カンゾウの甘味成分、グリチルリチンの合成系遺伝子の同定

 横浜市大、理研、千葉大グループの成果です。 シトクロームオキシダーゼP450の一種”CYP88D6”をカンゾウから単離しました(カンゾウ=甘草です。 肝臓ではありませんのであしからず)。

 理研のプレス・リリースはこちら PNASの論文もオープンアクセスになっていますので、ご家庭でも手軽に読めます(・・・読まないか)。

 グリチルリチンはトリテルペン・サポニンの一種。生体内での合成経路には大方の目星は付いていたところなので、 触媒する酵素がシトクロームオキシダーゼ P450の一種であることは最初から予想できたでしょう。問題は、 グリチルリチンでは糖鎖の付いている特定部位について、その前駆物質で酸化しておく酵素が見つからなかったこと、だそうです。この論文では、 単離した遺伝子の構造からP450であることを確認したもの(”CYP88D6")について、 試験管内と組換え酵母とで酵素活性を確認しています。


# 遺伝子の単離自体は、力仕事なので動機と財力があれば多くの研究室でやれるだけの潜在的な能力はあるでしょう。しかし、 この活性の確認の部分はメタボローム解析のノウハウがないと一朝一夕にはできるものではないでしょう。


横浜市大、天然甘味成分の酵素遺伝子を発見 大量生産に道

9月9日8時49分配信 産経新聞

 砂糖の150~300倍の甘さを持つ低カロリーの天然甘味成分「グリチルリチン」を作る酵素遺伝子の一つを、 横浜市立大学と理化学研究所などのグループが突き止めた。医薬品としても需要があるグリチルリチンの大量生産に道を開く成果で、 米科学アカデミー紀要(電子版)に近く、論文が掲載される。
 グリチルリチンはマメ科植物のカンゾウ(甘草)の根や地下茎に含まれ、肝機能補強や抗ウイルスなどの効果も知られる。
 横浜市立大・木原生物学研究所の村中俊哉教授(植物生理学)らは、 カンゾウの根と地下茎で活発に働き地上部ではほとんど働かない遺伝子の中から、 4段階からなるグリチルリチン合成の最初の段階で働く遺伝子を特定した。2番目の遺伝子もほぼ明らかになっているという。
 栽培種のカンゾウでは、グリチルリチンの蓄積量が少なく甘みが足りないうえ、収穫までに数年を要する。 野生種は乱獲で絶滅が懸念されている。今回の成果は、栽培種の品種改良や人工合成につながると期待され、村中教授は「第一歩だが、 全部の遺伝子の特定も間近」と話している。



 グリチルリチンの大量生産・・・までは、全合成経路の再構築ができないとなかなか難しいところ。また、 製造にあたっては遺伝子組換え技術が使われることになるでしょうから、食品安全委員会の評価が前提になります。

 天然のカンゾウの採取による環境破壊も馬鹿にならないご時世なので、 間接的に遺伝子組換え技術が環境保全に貢献することになるのでしょうか。

 

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コメント

カンプトテシンに続いて、論文のご紹介ならびにコメントありがとうございます。
メタボ云々について突っ込みが無くてホッとしました。

ESTを片っ端から読んで行っても、その中に目的遺伝子が入っていなければアウトなので、振り返れば非常にスリリングな研究でした。この論文で画期的な技術は、酵母に代謝産物を生産させるたことで、これによりNMR分析に必要な量の代謝産物が得られ、構造決定に持ち込めたところです。新旧技術を合わせた総力戦であったことはご指摘の通りです。

組換え植物なり組換え酵母なりで全合成出来るようになるには、まだ役者の数が足りませんが、おそらく近いうちに全てが明らかになるでしょう。

conocono様、コメントありがとう御座います。

"この論文で画期的な技術は、酵母に代謝産物を生産させるたことで、これによりNMR分析に必要な量の代謝産物が得られ、構造決定に持ち込めたところです。"・・・とのこと。

二次代謝産物を研究しようとすると、そういう道具立ても必要なんですね。勉強になります。

”メタボ”云々は突っ込みどころですが、薬理作用もある単価の高いものを砂糖代わりにどんどん使うわけもなく・・・理研のプレスリリースにもそう書いてあるのは驚きを禁じえない(笑)ところです。傷に塩をすりこむのもいかがなものかと。

グリチルリチンの大量合成ができるようになった暁には、次のハードルは薬事法のクリアでしょうか。これまで人工のグリチルリチンは存在していなかったので、成分は日本薬局方と一緒でも、遺伝子組換え医薬品とみなされることになるかもしれませんね。

「この論文で画期的な技術は、酵母に代謝産物を生産させるたこと」とのことですが本当にそうでしょうか?論文を読む限り、まずバキュロウイルス/昆虫細胞で調べて活性を見いだし、次に酵母で検討した、となっています。つまり酵母での仕事は、「結果が出るとわかった仕事」です。サイエンスでのブレイクスルーは、結果が出るか出ないかわからいけど、最大限の期待値を上げて(この場合は多数のESTと、発現との相関性チェック)、チャレンジするところにあるのだと思います。ここでの酵母での仕事は、論文を読む限り、「ついで」の仕事だと思います。

nonnoko様

酵母での酵素活性の確認の部分は、一連の研究の途上で生み出される個別の論文の構成要素としては、次の段階に若干差しかかる仕事であるようにもみえますので、ご指摘のように、この論文の必須要素ではないのかも知れません。その辺は、著者(とレフェリー)が判断することですので、私はその判断を尊重します。しかし、もしかすると、ここら辺で論文にまとめておかないといけないような、何か”大人の事情”があるのかもしれません。

一方、in vitroのbeta-amyrinを基質とする酵素活性の確認と、in vivoで培地中の代謝産物の確認の順番はご指摘の通りですが、私は、”in vitroで、ある酵素活性が活性が示される”ということと、beta-amyrin以前の前駆物質から"in vivoで植物細胞に見られる一連の酵素反応を実際に模倣できる"ということは、大きく違うと思っています。
研究の最終的な目標はグリチルリチンの合成系の再現にあるようですので、beta-amyrin以前の前駆物質からの代謝も含めて酵母で目的とする物質生産を行って、生産物の構造と歩留まりを確認するのは欠かせない仕事だと思います。そういう意味では、in vivoの代謝産物の構造決定と代謝産物の歩留まりも、やってみるまで結果はわからないチャレンジングな要素であると思います。

# 蛇足ですが・・・「ついで」と言う言い方は、仕事を行った人に対して敬意を欠く言い回しのように感じます。たまたま、論文の共著者もこのblogを読んで下さってます。公共の場での発言は、たかがblogと言えどもくれぐれも慎重に。

なお、まさかそんなことは無いと思いますが、nonnokoさんがこの論文の著者の一人でしたら、内輪もめはどこか他所でやってくださいませ。

こちらのコメント欄でのことを知り合いに聞いて、あわてて覗きに来ました。
nonnokoさん、論文を丁寧にお読みくださいまして有り難うございます。

研究のストラテジーはnonnokoさんの仰る通りです。ゴマンとあるESTの中から次 第に追い詰めて行く過程を楽しんでいただけたのでは無いかと思います。それで、私の先のコメントは、土門さんの「しかし、この活性の確認の部分はメタ ボローム解析のノウハウがないと一朝一夕にはできるものではないでしょう。」を補足する形で書いたつもりでした。流行のメタボロームに対比していささか古典的な感のある構造決定のところも、今でも重要な要素であると・・。

ちょっと誤解がある書き方だったのかも知れませんが、画期的な「技術」と書いたことにご留意いただければと思います。私も、酵母での仕事が「サイエンス」 のブレークスルーであるとか、この技術がこの論文の本質であると言うつもりは ありません。ただ、この技術によって得られたNMRデータは、質量分析データし か得られないビトロ実験を十分補うもので、代謝物の同定に厳格な天然物化学関 係の方に納得いただける内容となっていると考えています。研究のどの部分が重要であると考えるかは専門によっても違うと思いますが、天然物の中では古くから研究がなされていて、思い入れのある研究者の多いグリチルリチンですから、MS分析だけでは納得の行かない方が多かろうと予測したのです。

全てが判って振り 返って見れば、ついでの実験に見えるかも知れませんが、MSのデータだけでは「ああ、MSだけで同定って言うのね・・フフン」となる可能性が高かったと思う のです。また、土門さんも仰るように、まだまだ未熟な技術ですので、酵母で必 要量の代謝物が得られるかどうかは、やってみなければわかりませんでした。MS分析だけでは曖昧感のあったのが、酵母&NMR分析によってよりハッキリと見えるようになったのです。そういう意味で画期的と書きました。

ところで、「結果が出るとわかった仕 事」・・・というと、遺伝子の数は有限ですから、片っ端から調べて行けばいつ か必ず結果が出ると分かった仕事・・と言えなくもないですね(冗)。蛇足ながら、私は酵母実験の担当者ではありませんが、「ついで」と言われるよ うな書き方をしてしまったので、これは弁解せねばと思いまして・・。

土門さま・・・内輪もめではありません(・・・と思います)が、私のコメント が不適切と判断されましたら、削除いただいて構いません。

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