2020年4月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    

最近のトラックバック

どこからきたの?

  • なかのひと

Google Analytics

« 2008年8月 | トップページ | 2008年10月 »

2008年9月の記事

2008年9月30日 (火)

遺伝学的検査に対する規制の要望

ゲノム研究の光と影、といおうか遺伝子型の判別が簡単にできるようになってきた。しかし、特定の遺伝子型と疾病のリスクの関係は未だクリアカットには分からない問題だし、今後も大抵の疾病については確率を云々できる程度にとどまるだろう。・・・というか、必ず不治の病になると宣告される方がよほど恐ろしい。

以下、毎日新聞より。

 

遺伝子検査:学会「監督検討を」…医療機関通さぬ普及に

 肥満や糖尿病のなりやすさなど遺伝的な体質を判定する「遺伝学的検査」(遺伝子検査)が医療機関を通さず広く行われるようになったことに関し、日本人類遺伝学会(中村祐輔理事長)は29日、「厚生労働省などが検査の監督方法を早急に検討すべきだ」との見解をまとめた。

 同学会によると、個人の遺伝情報を明らかにするDNAは、採血などの医療行為によらなくても毛髪やツメ、粘膜から得ることができる。このため、医療機関を通さず、インターネットなどで募集し、検体や結果を郵送でやりとりするサービスが盛んになっている。ネット上で、少なくとも50社が肥満や骨粗しょう症、アルコール分解関連などの遺伝子を判定する検査を8000~4万円程度で受け付けているという。

 見解は「検査の多くは、個人の体質を確実に表すものではなく、体質や発症リスクについて確率を示しているに過ぎない」と指摘。さらに「個人遺伝情報や、使用後のサンプルが適切に処理されているか」などの危ぐを示し(1)     依頼から結果解釈までのプロセスへの専門家の関与(2)監督方法の早急な検討(3)消費者が不利益を受けないような教育・啓発--などを行うよう求めている。

 医療機関を通さない遺伝学的検査については、国際的なガイドラインはあるが、国内では経済産業省の個人情報保護ガイドラインのみ。同学会倫理審議委員長の福嶋義光・信州大教授は「募集の多くが不適切な広告で、正確な情報を消費者に伝えるためには専門家の関与が欠かせない」と話している。【足立旬子】

検査は技術的には簡単にできるようになってきたのだが、その検査結果の解釈は未だ経験知の集積が足りない。 従って、健康診断の際の血液検査や尿検査の結果のような疾病のマーカーとするには心許ない状況だ。だから”遺伝学的検査”そのものや、 その解釈は医学的な意味合いでの診断とまでは言えない場合の方が多い。

なので、検査そのものは他の臨床検査会社の行うサービス同様、医療行為ではないので医師法の規制は受けない。 一方、検査を行った会社が、 検査結果の解釈や生活習慣に関するアドバイスまで踏み込んだサービスを提供する場合は医療行為になる可能性がある。 その辺は厚労省の解釈次第なのだろう。

一方で、学会の危惧は検査を依頼する側のゲノム情報に対する”リテラシー”に対しても表明されているようだ。 「消費者が不利益を受けないような教育・啓発」というのがそれだろうが、血液型占いにはまるような消費者を啓発できるものかどうか・・・。

たしかアメリカでも一頃、遺伝学的検査の品質が問題になったことがあり、 検査結果に対する品質保証と言う点にも何等かのガイドラインは必要だ。また、「個人遺伝情報や、使用後のサンプルが適切に処理されているか」 という観点では、今のところ顧客から医療機関を通さずに検査会社に直送されるDNAサンプルについてはは、匿名化されていないため、 企業が法律の規制を受けずに究極の個人情報であるゲノム情報を手に入れることが可能になっている。

なお、「経済産業分野のうち個人遺伝情報を用いた事業分野における個人情報保護ガイドライン」 というものもあるので、個人情報の保護については野放しというわけではない。罰則や行政指導の根拠法は”個人情報保護法”だ。・・・ なので検査の品質や検査結果の解釈に対してはノータッチということか。

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!

2008年9月29日 (月)

Adenovirusベクターでガン化しにくいiPS細胞の誘導?

毎日新聞より。

iPS細胞がん回避 米ハーバード大チームが作製に成功

2008年9月26日10時40分

 がん化する恐れをなくした万能細胞(iPS細胞)を作ることに、 米ハーバード大のコンラッド・ホッフェリンガー准教授のチームがマウスで成功した。万能細胞をつくる際に、 細胞核の遺伝情報に影響を与えないウイルスを使った。25日付の米科学誌サイエンス(電子版)に発表された。

 iPS細胞は、ウイルスを使って特定の遺伝子を細胞内に送り込んでつくる。チームは、 細胞内に入るが細胞核には入り込まないアデノウイルスという風邪ウイルスの一種を使って、がん化する恐れを回避した。 細胞核は遺伝情報をつかさどっている。作製した万能細胞に、がん化の兆候はないという。ただ、作製効率は従来の方法より低く、 今後の課題となる。

 このウイルスは、iPS細胞の開発者である京都大の山中伸弥教授も安全性向上の方法の一つとして名前を挙げていた。 これまでは、レトロウイルスやレンチウイルスを使った。これらは細胞核の遺伝情報を書き換えるため、 がん化などの長期的リスクが指摘されていた。

 iPS細胞の安全性向上の研究は世界中で加速しており、ウイルスの改良のほか、 ウイルスを使わずに化合物のみで作製する方法なども試みられている。他の方式に比べ、現時点では、 高い安全性の見込めるiPS細胞ができたことになる。(竹石涼子)

オリジナルの論文はこちらSupporting materialはご家庭でも無料で見られます(・・・見ないか)。

エピゾームとして存在するアデノウイルスの方がレトロウイルスよりはガン化しにくいだろう。だが、 アデノウイルスが核に入り込まないと言う見解は正しくない。以下の論文を参照。

Targeted Chromosomal Insertion of Large DNA into the Human Genome by a Fiber-Modified High-Capacity Adenovirus-Based Vector System

アデノウイルスベクターを利用して相同組換えで核ゲノムの狙ったところに遺伝子を導入することができる。 先に照会した産総研のヘルパー依存型アデノウイルスベクターによるES細胞の相同組換えでも、その性質を利用している。

この論文のセールスポイントは、レトロウイルス以外のベクターを使って、 ゲノムに挿入変異をおこさずに実際にiPS細胞を作成し、キメラマウス作成まで漕ぎ着けており、 アデノウイルスで作成したiPS細胞の多能性を示したところだろう。iPS細胞の誘導の条件をこれまでと違う技術で行って、 少しずつ足場を固めてきていると言う意味では一歩前進。ただし、成功確率は低いし出発材料を選ぶので、実用性はあまり高くない。 科学としては着実な進歩なのだが、技術としては使えない。

記事では「他の方式に比べ、現時点では、高い安全性の見込めるiPS細胞ができたことになる。」 と評価しているが、その通りだろう。この分野は日進月歩なので、発表が1年後どころか半年後でも、 このクラスの雑誌には載らなかったかも知れない。技術的には、E3欠失型Ad5を使用しており、 センダイウイルスベクターやヘルパー依存型アデノウイルスベクターよりも古い世代のもの(枯れた技術といえるかも)なので、 宿主細胞への指向性が一つのボトルネックになってしまっているように思う。

もしVSV-Gエンベロープを被ったアデノウイルスベクターやセンダイウイルスベクターがあれば、 細胞指向性の問題はほぼ解決するだろうが、感染が若干遅いためタイミングが違ってくる可能性は残る。 それが吉と出るか凶と出るかは分からない。

 

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!

 

 

2008年9月27日 (土)

夏休み、というか・・・

ようやく夏期休暇を消化した。地の果てにあるインターネットの繋がらない実家ですごした。

実家のある稚内は秋というよりは、もう初冬の趣。最高気温は13℃くらい。利尻島では初冠雪を観測したし、 平地でもみぞれが降っていた。

土地柄、野菜も米も採れず、栽培できる植物はほぼ牧草のみ。それと広大な土地を有効利用しようと、”宗谷の黒牛” と称して第三セクター方式で和牛の生産をはじめたものの失敗。地方紙によれば”社団法人宗谷畜産開発公社”の解散手続き中とか (解散に到る経緯は、稚内市のホームページにも出ている) 。

地域特産物にしたかったのかも知れないが、肉牛生産についての基本的な知識が不足していたのだろうか。 品質は悪くなかっただけに残念なことだ。

一方、元気なのはこち ら。CIMG1106

NEDOの事業(大規模電力供給用太陽光発電系統安定化等実証研究) で設置中の大規模太陽光発電実証研究施設。現在、三期工事途中だが、最終的には野球場3面くらいの面積(14 ha)になるらしい。 冬の日照は弱いし雪は降るし、ここよりも気象条件が悪いのは根室・釧路あたりくらいではないかと思う。

ここで上手くいけば、日本中どこでもいける?というくらいの気象条件なのだが、 気温が低い方が太陽電池パネルの発電効率が高まるとかで、日射量が少ないのは補えるらしい。

そして、もう一歩先を行っているのは風力発電。宗谷岬ウインドファーム。 こちらは産業ベースでもう動いている。宗谷丘陵に向かって国道を車で走っていると、道の先の方には林立する直径60 mの巨大風車が勢いよく回っている。宗谷海峡は凪が無いのではないかと思えるくらい年中強風が吹いているので、風力発電には打って付けだ。

しかし、クリーンエネルギーの基地になるはよいのだが、残念ながら、これはあまり雇用には結びつかないのだ。 漁業の町として栄えた稚内市は、最盛期には5万8千ほどあった人口が今や、4万人を切ってしまった。 道北の都市は面積がやけに広いので市町村合併をすると大変な広域行政になってしまうし、財政状態の良くない町村も多いと聞くので、 合併のモチベーションは低いだろう。

自然エネルギーの生産には良い所なのかも知れないが、 このまま人口が減り続けると生産する自然エネルギーだけで消費エネルギーをまかなえる過疎地帯になっていくかもしれない。 それが良いことなのかどうか。

 

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!

 

2008年9月23日 (火)

ヴィジュアル系の科学雑誌の時代?

いやー、時代の変化を感じます。

職場のメールアドレスにとある雑誌がPubMedにインデックスされたよ、と言うメールが出版社から送られてきたのですが、

Journal of Visualized Experiments (JoVE) is the first video journal for biological research accepted in PubMed.

・・・だそうです。ビデオ・ジャーナル。 研究発表のためのYouTubeみたいなもんですな (Natureでは'YouTube for test tube'なんてオヤジギャグ並みに洒落てますが)。YouTubeとは違って、 科学雑誌を標榜するからには掲載するのに内容が適当かどうか、まず査読(?)があるのでしょうね。

# 投稿規約は見つけられませんでした。

2004年、PLoS biologyにPPAR deltaの発現調節で持久走が得意になったマウスの論文動画が掲載されていたのでびっくりしたものですが、 もう全編動画の研究論文(?)が出現する時代に突入していたのですね。 学会発表でもパワーポイントに動画を仕込むのもそれほど珍しくはない状況になりつつありますので自然な流れなのでしょう。

肝心のビデオ論文はというと、実験プロトコル関係が多いようです。 PDFにしてしまうと実に味気ないけれども、 実験操作を見るとよく分かる、百聞は一見にしかずという感じのものには向いています。研究者が自分で喋ってたりするので、 結構ルックスが大事だったりして・・・でも、研究者の外見がイケていないと損するというのもなんか嫌だなぁ。

また、研究者でない一般の方々に実験の雰囲気を味わって戴くには良いかも知れません。 実際の実験の有様は動画よりももっと時間がかかるものなので、実際の料理と料理番組くらいの違いはありますが。

# 「2時間半PCRします」、「30分間電気泳動します」、「ゲルを30分染色、 30分脱色するとこんな風になります」というのをリアルタイムで動画にできるわけもなく・・・。

研究論文では、文章で伝えるよりは、一つのグラフや顕微鏡写真の方が雄弁な場合が多々あります。しかし、 グラフや写真は情報量は多いのですが、受け手の側のリテラシーもそれなりに要求します。例えば、

  • 棒グラフのヒゲの意味は何?(エラーバー)
  • 免疫電子顕微鏡写真の黒いポツポツは何?(金コロイド)
  • バンドとか言っている黒い線の意味は何?(サザン、ノザン、ウエスタンetc.)
  • ヒートマップとか言っているけど赤と緑のグラディエーションの意味は何?(アレイのデータ)
  • 植物の組織を半分に割ってる写真で青く染まってるのはなぜ?(GUS活性染色)

などなど。データの表現方法や実験手法についての基本的な了解が成り立つだけの知識がなければ、論文を読んでも当然理解できません。 しかし、逆にデータの見方がわかれば、これほど有効な情報伝達手段も滅多にありません。

動画に関しては、まだ標準的な表現方法も決められていないし、今後とも何でもありのような気がしますが、 言語表現を超えたデータの開示方法は、これからまだまだ発達していくのでしょう。自ら”ビジュアル系研究者”になる気はありませんが、 この分野の将来が楽しみです。

# 時折思うのですが、新聞記事にグラフが登場することはあっても、小説にグラフが登場することはないなぁ、とか、 法律の文章には表はあってもグラフは無いなぁとか。科学論文とは逆に、 あえて情報を減らすことで多義的な解釈を成り立たせない様にしている文章表現の分野では、 伝えるために表現方法に工夫を凝らすということは今後とも無いのだろうな。

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!

 

2008年9月22日 (月)

パン+ワイン=ビール? 酵母の話ですけどね

ビールの醸造に使われる酵母の種(species)は、一種類ではない。

ビールにもエールとラガーという異なるタイプのものがある。発酵の方法がエールは上面発酵、 ラガーは下面発酵と発酵のさせ方が違うことは良く知られている。酵母の側からみれば生育環境が違うということでもあり、 それぞれの生育環境に適応している酵母の種も違っている。

エールを作るのは、Saccharomyces cerevisiae。ラガーを作るのはS. pastorianus.

S. pastorianusのゲノム解析の結果、ビール酵母はパン酵母(S. cerevisiae)とワイン酵母(S. bayanus-related yeasts)の雑種に起源することが明らかになってきた。しかも、その雑種形成は少なくとも2回、独立に起こっていたと考えられる・・・ とのこと。論文はこちら。 雑種形成の際の二種類のS. cerevisiaeのご先祖様までほぼたどり着いた、 と言うところがすばらしい。

なお"we have determined that the most likely S. cerevisiae ancestral parent for each of the independent S. pastorianus groups was an ale yeast, with different, but closely related ale strains contributing to each group’s parentage."と言うわけで、ラガー酵母のご先祖様のS. cerevisiaeもまた、 一生懸命エールを作る酵母だったのか。

パン酵母は有性生殖する。おそらく、ビール酵母も。とすると、 最初からある程度の規模で雑種形成が起こらないと有性生殖はできないのではないかな?しかも、 そのような雑種形成が歴史上二回以上おこったのか。

・・・それを人が選抜して、麦芽を醸すことがなければ、あの素晴らしいラガー・ビールも生まれなかった訳で。 酒飲みの飽くなき探究心に乾杯!です。

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!

2008年9月21日 (日)

「覆面調査員」?ミシュランでもあるまいし。

朝日新聞より。誤報であることを切に祈ります。

最新技術の「芽」つかめ 「覆面調査員」制度を新設へ

2008年9月20日15時0分 

 政府の総合科学技術会議(議長・福田首相)は、国内外の学会にたえず参加しているような第一線の科学者や技術者を「覆面調査員」に指名する新制度を設ける。世界の最新研究動向や有望な技術革新の「芽」について、いち早く報告を寄せてもらい、追加予算の重点配分に生かすなど、日本の国際競争力を高める狙いがある。

 調査員の正式名は「革新的技術推進アドバイザー」。調査対象の分野を熟知するだけでなく、世界に人脈を持つ大学や企業などの「目利き」の研究者が候補。100人程度を選び、今秋に委嘱する。所属機関のしがらみに縛られたり、働きかけを受けたりするのを避けるため、メンバーは公表せず、活動内容にも守秘義務を課す方針だ。

 調査員は、人の新型万能細胞(iPS細胞)や高効率な新型太陽電池など、 社会や産業に大きな影響を及ぼしそうな研究動向を総合科学技術会議に報告する。iPS細胞のような飛躍的な進歩が起きた時や日本が優位な分野で海外の追い上げが激しいとわかった時には、同会議が国内研究チームに1件あたり数億から10億円程度の研究費をすばやく追加投入して研究を加速させる。設備の充実だけでなく、海外の有力研究者を引き抜くことも考えている。    

 資金枠として文部科学省が140億円を来年度予算概算要求に盛り込んだ。ただ、一歩間違えば恣意的(しいてき)な判断や無駄遣いにつながりかねないため、運用ルールが慎重に検討されている。(安田朋起)

おっかしいなぁ、この第一線の科学者や技術者っていうのを誰が選考するんだろ?まさか文部科学省の推薦? 今でも文部科学省には助教・準教授クラスに調査業務を委嘱する学術調査員という制度はある。それとは違うのだろうな。

大体、「第一線の科学者や技術者」っていうのは、こんなことをやってられないほど忙しいのではないだろうか。 しかも、こんなのを引き受けちゃうと自分にはファンドつけられないし。 調査のための国際学会に参加するための出張旅費なんてどうやって処理するんだろう。”出所不明”の公的資金?それとも個人の銀行口座に、 なんにでも使える掴み金として振り込む?こういう業務を上司の了解なく引き受けることはできないだろうから、 研究室内や上司の管理職には知れるだろうし。匿名性を担保するのも大変だろう。

まして、”日本の国際競争力を高める”狙いで”海外の有力研究者を引き抜く”? 何を言ってるのかぜんぜん理解できない。海外の研究者に、折角の知的財産権を「日本においていけ」よいうのだろうか。

海外の優秀な研究者のために日本でラボを設けてあげるのだろうか? 分野によっては日本で研究するメリットもあるのかも知れないが、研究補助の人材(専業のラボテク。日本ではパートさんくらいしかいない。) や研究の支援体制(調達一つとっても、一般競争入札になるとそのたびに数ヶ月ロスする)、 年度を越えたり費目を移用したりという予算の弾力的運用、試薬や機械の価格(日本では妙に高い)etc.、 他にも遺伝子組換えやRIの利用に関わる規制も厳しいなど、 日本で研究しないで済む第一線の研究者が海外に流れていく理由なら山ほど思いつく。そのせいで、制度上不適切な随意契約や、 産総研や放医研のように業者に研究資金をプールするケースが後を絶たないのだ。

いくら金だけ積んでも現在のような研究環境が改まらない限り、そう簡単に研究が進むことは無い。 今の日本の研究環境では、伯楽だけ用意しても名馬を飼い殺しにしてしまう恐れがある。

# ちなみに、私、仮に「覆面調査員」を委嘱されてもお断りいたします。そもそも、第一線の研究者じゃないし (爆)

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!

2008年9月20日 (土)

そもそも非食用米から作ったデンプンに有害物質は含まれているのか?

島田化学工業で事故米をコメ・デンプンの原料に使っていた件。

問題のコメ・デンプンには有害物質が含まれていたのだろうか?工業製品としての食用澱粉はそれ自体に毒物が含まれていなければ、 食品安全性に問題ありとして食品衛生法で取り締まることはおそらくできないのではないだろうか。

非食用米を米澱粉の原材料に使用したことの問題点は、農林水産省が売却時につけた、 食用に転用しないと言う契約条件を反故にしたことにある。消費者の信頼を裏切った、という結果責任はもちろんあるが、 そもそも消費者は事業者をそんなに信頼しているのか?われわれ消費者はどこの誰が作ったとも知れない加工食品を日々、 考えもなく食べているだけではないのか。

 

事故米食用転売:島田化学の米でんぷん、ロット番号を公表--農政事務所 /   新潟

 
   

 農林水産省新潟農政事務所は19日、島田化学工業が事故米を転用製造した米でんぷんの「ロット番号」を公表した。     番号は製造年月日を示しており、納入業者に帳簿などに記録があれば事故米混入製品かどうかを確認できるという。製品名は、姫粉、     マイ・アルファK、ベターフレンド、ミクロパールの4種。

   

 農政事務所が公表した番号は次の通り。

   

 150526、150805~150827、150901~150909、160714~160720、170117、     170202、180719、190811(以上4種共通)▽190822(ミクロパールを除く3種)▽180726、     180919(マイ・アルファKのみ)【畠山哲郎】

 
 
   

毎日新聞 2008年9月20日 地方版

 

ロット番号が明らかになっている製品については、製品に含まれる有害物質の検査を行なうべきだろう。

なお、私の知る限り、どの植物のデンプンも精製する際にはタンパク質や脂質、 ポリフェノール類による着色等を取り除くために、希薄なアルカリや界面活性剤、さらにはそれらを除くためにしつこく洗う。コメ・ デンプンも例外では無いだろう。原材料は兎も角も、島田化学工業のデンプンの品質が確かであれば、 殺虫剤もアフラトキシンB1も検出限界以下になっている可能性が高いのだが。

製品回収云々の前に、まずは個々の製品の安全性の確認をするべきだろう。

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!

2008年9月18日 (木)

食塩を使わないPEG沈殿

温故知新のプロトコルの紹介。

昔々、GIBCO-BRLのホームページでPEG沈殿によるDNAのサイズフラクションの方法を書いた短い論文が出ていた。 1998年にダウンロードしたと思しきタイムスタンプのPDFが手元にある。

今でも掲載されているかな?と思ってGoogle scholarで調べてみたらまだあった。

http://www.invitrogen.co.jp/focus/181027.pdf

吸収合併で会社はGIBCO-BRLからInvitrogenに変わってしまったが、一応ジャーナルと言う位置づけだからか、出版された論文のサポートは続いている模様。

 さて、この論文で紹介しているPEG沈殿は一風変わっている。大抵のプロトコルは1.5 M以上の濃度で食塩を入れるのだが、このプロトコルでは30 mMという低濃度の塩化マグネシウムを入れる。つまり、 PCR産物をPEG沈後にシーケンス反応に持ち込みたい場合やライゲーションに持ち込みたい場合にも、必ずしも70%エタノールなどで洗う必要が無いので、これは結構便利だ。勿論、丁寧にPEGまで除去したいのであれば、 Phenol/CIAA処理か市販のカラムでも使わなければいけないが、70%エタノールでリンスするだけでもdNTPやプライマーの持ち越しはきれいに除去できる。

 また、この論文ではPEGの濃度依存的にDNAのサイズフラクションがかかることを示している。私は30 mMの塩化マグネシウム液を30% PEG, 30 mM MgCl2溶液とは別に作っておいて、 Mg++のイオン濃度は変えずにPEG濃度のみ下げていくことでPEGの最終濃度を15-7%くらいの間で振ってサイズフラクションをかけている。

 ・・・なんに使えるのか?PCRの際にサイズの小さなextra bandが増えてダイレクトシーケンスに差し支えそうなときに、とか、PCR産物をプライマーに仕込んでおいたサイトで制限酵素処理して、小さな断片を除去したいときには便利。 アガロースゲル電気泳動ほどの分解能はないのでサイズの近いDNA断片の分離には使えないものの、小さなDNA断片を除去したいときには電気泳動要らずなので手っ取り早い。

 ランニングコストも1サンプルあたり数円~十円くらいなので、シーケンスの前処理としては、ExoSAPよりも安いし、どのPCR産物の精製カラムよりも安い(もっとも遠心と上澄みの除去と言うステップがあるので大量処理にはあまり向いていない)。

 けれども、最近はあまり出番が無いなぁ。考えてみると、このところプラスミドのシーケンスばかりだったので、今日PCR産物のダイレクトシーケンスをしたのは3-4年振りだった。

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!

2008年9月17日 (水)

ハチ毒のアナフィラキシーショックには気をつけましょう。

秋口になって気温が下がり始めるとハチもストレスを感じて攻撃的になると言われています。財団法人日本アレルギー協会によると、 「ハチに刺された人の多くは、刺された局所の発赤、熱感、腫れなどの症状を認め数日後には消失します。しかし、約20%の人は、 何らかの全身症状(蕁麻疹、顔面の腫れ、吐気、嘔吐、呼吸困難、動悸等)を認め、約2-3% の人にショック症状を起こすことが報告されております。そして、このような全身症状の出現は、ハチに刺されてから5-30分後に認められ、 治療が遅れることによって死亡する可能性があります。」とされています。

即ち、ハチに刺された人の2-3%は手当が遅れると死亡する危険があるということになりましょうか。ハチといえども侮りがたいものですね。

さて、以下は日本経済新聞の本日のニュースより。

リーマン破綻の影響、与謝野氏「ハチが刺した程度」

 自民党総裁選に立候補している5人の候補者は17日午前、島根県出雲市で街頭演説した。 与謝野馨経済財政担当相は米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻に関して「日本にももちろん影響はあるが、ハチが刺した程度。 これで日本の金融機関が痛むことは絶対にない。沈着冷静な行動が求められる」と述べ、日本経済への影響は限定的との見方を示した。

 与謝野氏は同時に「日本は世界経済の一員であり、世界に積極的に貢献していく。 政府も日銀も力の限り努力しなければならない。これが5 人の共通認識だ」と指摘した。小池百合子元防衛相も 「金融の世界で大きな地震が米国発で起きた。対岸の火事として見てはいられない」と、日米欧の国際協調の必要を訴えた。

 麻生太郎幹事長は「リーマンのこともあったが、日本経済は全治3年と言ってきた。どうみても優先順位からいえば景気対策だ」 と持論である景気重視論を展開した。 (12:55)

ハチの一刺しには十分に気をつけましょう。

 

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!

 

2008年9月15日 (月)

リスクに見合った手続きが必要

Blogのaccess logを見ていたら、こちらから来られる方が増えています。

"よろしい、ならば増税だ!

という刺激的なタイトルが付いていますが、私はそうは思っていないので、トラックバックさせていただきます。私は、法律家でも官僚でもありません。専門分野以外の問題について書く際には、間違った考えを持って書いているかも知れませんので、読む際にはその可能性を割り引いておいてください。

今回の三笠フーズの偽装は消費者に対するものではなく、事業者同士の商取引の間で発生しています。商品の偽装の防止に関する法律・・・というか

  1. 適正な表示に関わる法律
  2. 食品安全に関わる法律

には各種あって、それぞれ目的も所管する官庁も違います。厚生労働省のホームページに一覧表があって参考になります。この一覧表には、今回問題になった”お米”に関する主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律は含まれていません。需給と価格安定に関する法律なので目的からいっても、食品衛生や表示には関係ありませんので。

今回の一件では、農産物であるお米が、最初は食品であったはずが、品質に問題があったので工業用原料になった、それを再度食用に転用した、という経緯があったようです。

となると、その過程で、取り締まる法律も、

  1. 食用のお米の流通: 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(所管:農水省)
  2. 食用のお米の品質: JAS法(所管:農水省。ただし、過去においては事業者間の流通は規制対象に含まない)
  3. 食用でないお米を食用に転用しての流通: 景品表示法(所管:公正取引委員会)、食品衛生法(所管:厚生労働省) 、不正競争防止法(所管:経済産業省)

と変わってきます。

同じ事業者が”モノ”でも、用途によって規制のルールも所管する官庁も違うので、どこで違法な扱いが発生し、その結果誰に対して(消費者?事業者?)、どのような被害が想定されるか(金銭的損失?健康被害?)によっても、適用される法律が違います。

法律の制定された歴史的な経緯や、目的を考えると致し方ない部分はありますが、その結果、事故に対して即応しにくい状況ができあがっています。

マンパワーを割いて検査を厳しくして事故の発生を抑えるという対応は今の小さな政府を指向する国民(あるいは産業界)の要望には合致しませんし、実際の所、あまりコストパフォーマンスの良い施策とも思えません。ですので、私は”よろしい、ならば増税だ”という方向性が正しいとは思いません。

ではどうするか?というと、ここでもう一度さきほどの一覧表を見ていただきたいのです。罰則については、北海道新聞のホームページの方が良いかも知れません。

  • JAS法: 改善の指示に従わなければ業者名を公表、さらに改善命令にも応じなければ50万円以下の罰金
  • 食品衛生法: 営業許可の取り消し、営業の禁止または停止。処分に違反して営業すると6カ月以下の懲役または3万円以下の罰金
  • 景品表示法: 排除命令を行い、業者名を公表。命令に従わなければ2年以下の懲役または300万円以下の罰金
  • 不正競争防止法: 3年以下の懲役または300万円以下の罰金

どれも、基本的にあえて犯罪を犯す事業者はいない、という発想なので、不正競争防止法以外は”直罰”にはなっていません。まずは行政指導、それでもダメなら罰則、というやり方です。いちいち告発しなくても良いので規制官庁のフリーハンドが大きくなり、機動的に対応できるのがメリットです(当然、デメリットもあります)。

で、何が言いたいかというと、違法行為によって数千万円から数億円の利益が上げられる場合には、たかだか3万円から300万円の罰金で犯罪は防げないと言うことです。しかも、行政指導を食う前に数億円の利益を上げて会社をたたんでしまえば、事業者名を公表されても痛くもかゆくもないし、経営者は一生食うには困らないのですから。

なので、必要なのは、厳罰化でも、直罰化でも良いでしょう。ともかく、不正な手段で利益を上げる行為が事業として割に合わないようにすることです。まず、お金のかからない罰則強化から、が良いでしょう。
# 飲酒運転も罰則強化で、行政コストをあまりかけずに効果を上げています。

それから、各種の規制法が入り組んでいる状況は、規制に関わる人員・部局の重複で行政コストもかかりますし、官庁の縦割りの影響で連携があまり宜しくないという問題があるようです。今回の三笠フーズの一件も、農林水産省には関連した事業者名を公表するための法的な権限がありませんでしたし。・・・ということで、これが整理できれば、議員の先生の大きな腕の見せ所ではないかと思います。

なお、自民党総裁選で石原先生が、検査の権限を自治体に渡せと仰っています。機動力という意味では、それで良いかも知れませんが三笠フーズのように事業所が全国に散らばっている場合、地域横断的な対応ができないと全容解明は望めません。地域横断的な事件に対応するためのコントロールタワーをどうするのか?というのが課題になります。

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!

2008年9月13日 (土)

最初の一頭、あるいは原発性BSE

読売新聞より。 

遺伝性のBSE発見、牛の体内で異常プリオン

 【ワシントン=増満浩志】BSE(牛海綿状脳症)の病原体である異常プリオンが、外部から感染しなくても、   遺伝子の変異によって牛の体内で作られ、発症につながる例もあることが、米農務省国立動物病センターなどの研究で分かった。

   研究したユルゲン・リヒト現カンザス州立大教授は「BSEがないと言われているどの国でも、この病気は発生しうる」と指摘、専門誌プロス・パソジェンズに11日発表した。            

 遺伝性のBSEが見つかったのは、米アラバマ州で2006年に発症した当時約10歳の雌牛。 

 牛肉の輸入再開をめぐる日米交渉が続く中、感染源が注目されたが、同省などの疫学調査では手がかりがつかめなかった。同センターで遺伝子を解析した結果、異常プリオンを作る変異が初めて見つかった。人間にも同じタイプの変異が知られ、遺伝性のクロイツフェルトヤコブ病(CJD)を引き起こすという。

 BSEは1980年代に英国で急拡大した。その始まりについては、遺伝性の異常プリオンが肉骨粉などの形で牛のえさになった――    という説があり、リヒト教授らは「今回の発見がその説を支える証拠になる」としている。 

    (2008年9月12日23時04分  読売新聞)  
  オリジナルの論文はこちら。PLoSに掲載された論文はすべてオープンアクセスなので、ご家庭でもご覧になれます(・・・読まないか)。
 
  BSEがどのように発生したのかについては諸説有る。ヒツジのスクレイピーがウシに伝染したとか、原発性のウシのBSEが最初だ、とか。後者については、遺伝的にBSEを発症しうる「最初の一頭」が確認されていなかったが、今回の発見は後者の説を補強する材料だ。
 
  この波及効果は小さくは無い。つまり、オーストラリアや中国のように、公式にはBSEが発生していないと言われる、いわゆる”清浄国”においても、今回発見されたようなタイプのウシの遺伝子型頻度によっては、原発性のBSEの発生を否定できないということでもあるし、日本国内でも飼料チェーンから肉骨粉を締め出した今日でも、ある頻度でBSEが発生しうることを示している。
 
  さて、日本国内のウシについては、家系の管理がしっかりしているので(そのはず・・・人工授精の際にゴマカシが行なわれていなければ、であるが)、家系ごとにPrnp遺伝子のシーケンスを決めて疑わしい家系を淘汰してしまえば、有効性の疑わしい(・・・というか、科学的には有効といえない)BSEの全頭検査よりも、長期的にはより低コストで、より効果的に変異型プリオンを持つ可能性が高いウシを排除できることになる。
 
  なお、この論文で報告されたE211K(プリオンタンパクの211番目のアミノ酸が、E(グルタミン酸)からK(リシン)に変異している)の変異(21Kと呼ばれる)の発見される頻度は、アメリカでは2000頭に1頭以下とされている   (日本では分からない)。
 
  遺伝子を調べるのであれば屠殺場で血液サンプルをとればできるので、日本でも主要な家系の代表だけでも良いので、こういうサーベイをやっておいた方が良いのではないだろうか。
 
  もっとも、原発性のBSEが発症したケースは10歳(120ヶ月!)という超高齢のウシなので、大抵のウシが生後20-30ヶ月程度で食肉になってしまうことを考えると、原発性BSEに対するもっとも実効性のある対策は高齢のウシを作らないこと、なのかもしれない。
 
  人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!  

2008年9月12日 (金)

「立入検査」の権限は、これを犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

御政道向きの話をすると、お上の監視の目が厳しいらしい。

だが今般は報道の論調に頷けないところが多々あるのでメモしておこう。
---
様々な業界に対して監督官庁は法律によって与えられた立入検査の権限を持っている。今般、 三笠フーズに対して農政事務種が過去96回の立入検査をしたのに不正を見抜けなかったと報道されている。

しかし、過去に農政事務種が行った立入検査は非食用米の転用の有無を調査する目的で行われたものなのだろうか?というか、 法律ではそういう検査を行えるようになっているのだろうか?

農林水産省職員に食料用の米、麦を扱う事業者に対する立入調査の権限を与えている法律と言えば、
主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律だろうか。 この法律の立入検査に関する条文は以下の通り。

   
    第五十二条   農林水産大臣は、この法律の施行に必要な限度において、機構若しくはセンターその他業として主要食糧の出荷、販売、輸入、加工若しくは製造を行う者に対し、その業務若しくは資産の状況に関し報告をさせ、又はその職員に、これらの者の事務所、営業所、販売所、事業所、倉庫若しくは工場に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。  
 
 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、     関係者に提示しなければならない。  
 
 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。    
 
 
  他の法律でも、官庁の調査権限については「立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。」とされているはずだ。ちなみに、「覚せい剤取締法」でさえ、通常業務に関する立入検査については「前二項の規定は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」と書いてある。
 
  # もっとも、マルサの国税庁の立入りについても同じなのかどうかは知らない。  
 
  行政調査は通常業務の範囲にある行為について「間違い」がないかどうかは監督官庁の権限で検査するためのもので、「最初から意図的に違法行為を行う」こと、すなわち犯罪に対して監督官庁が捜査権限を持っている訳ではない。  
  「間違い」か「犯罪」かの線引きは、性善説に基づいており事業者意図次第なので甘いと言えば甘いのだが、私は公権力が肥大して何でもかんでも犯罪捜査として強制できる事の方がよほど恐ろしい。  
 
  基本的に、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律に基づく立入検査では、”主要食糧の出荷、販売、輸入、加工若しくは製造を行う者”が検査の対象だ。従って、仮に、この法律に則って非食用の米麦についての立入検査を行うには相応の覚悟がいる。不服申し立ての訴訟を起こされた場合に負けることも覚悟しなくてはならないからだ。  
 
  というわけで、「96回も立入検査したのに分からなかったのか!」とマスコミに責められる次官は気の毒だ。そうやって監督官庁を責めると、結果として役所の権限と業務の拡大に繋がっていく可能性が高いと言うことが、マスコミは分かっていないのではないだろうか。それは誰にとっても幸福な未来ではない。  
 
  とはいえ、非食用米を食用米に偽装して転売していたのだから、食用米の流通に関してきちんと把握できていなかった点については瑕疵を認めた方が良い。そこは他人事ではない。
 
  人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!  

2008年9月11日 (木)

酵母とネズミ

遺伝子組換え生物の不適切な扱い再び。あとを絶たないですね。

毎日新聞より。

遺伝子組み換え:不適切な取り扱いで厳重注意 文科省

 文部科学省は9日、遺伝子組み換え生物の不適切な取り扱いがあったとして、独立行政法人酒類総合研究所(広島県東広島市) と熊本保健科学大に文書で厳重注意した。いずれも環境への影響はないという。

 酒類総合研究所は4月、遺伝子組み換え酵母を使った発酵実験の際、 使用した容器の洗浄液の一部を滅菌処理せずにそのまま下水に流していた。酵母は下水処理の過程で死滅するという。

 熊本保健科学大では3月、遺伝子組み換えラット6匹を実験に使用した際、逃亡防止措置を取っていなかった。 実際に逃亡はしなかった。【西川拓】

文部科学省のプレスリリースはこちら

特に繁殖能力の旺盛な遺伝子組換え酵母でも無い限り、その辺ではびこることはまずありません。酵母の場合、 遺伝子組換えのようなそうで無いような・・・という微妙なものも作れます。 酒類総合研究所のはそうではなかった、ということでしょう。ともあれ、どんなお酒を醸していたのか興味津々ではあります。

遺伝子組換えラット、というのは組換えマウスほどポピュラーではないのですが、こちらのホームページによれば2003年に初めて作られたとのこと。 実験室の出入り口にネズミ返しを設けるのと、”P1A (遺伝子組換え動物飼育中)” の張り紙1枚でクリアできる規制で厳重注意されてしまうのは残念な限りです。

安全性に問題が無いとしても、法令は守らなくてはいけません。ま、カルタヘナ法に限った話ではありませんけどね。

知らない法律は守れませんので、業務従事者の教育訓練は怠りなく!

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!

2008年9月10日 (水)

カンゾウの甘味成分、グリチルリチンの合成系遺伝子の同定

 横浜市大、理研、千葉大グループの成果です。 シトクロームオキシダーゼP450の一種”CYP88D6”をカンゾウから単離しました(カンゾウ=甘草です。 肝臓ではありませんのであしからず)。

 理研のプレス・リリースはこちら PNASの論文もオープンアクセスになっていますので、ご家庭でも手軽に読めます(・・・読まないか)。

 グリチルリチンはトリテルペン・サポニンの一種。生体内での合成経路には大方の目星は付いていたところなので、 触媒する酵素がシトクロームオキシダーゼ P450の一種であることは最初から予想できたでしょう。問題は、 グリチルリチンでは糖鎖の付いている特定部位について、その前駆物質で酸化しておく酵素が見つからなかったこと、だそうです。この論文では、 単離した遺伝子の構造からP450であることを確認したもの(”CYP88D6")について、 試験管内と組換え酵母とで酵素活性を確認しています。


# 遺伝子の単離自体は、力仕事なので動機と財力があれば多くの研究室でやれるだけの潜在的な能力はあるでしょう。しかし、 この活性の確認の部分はメタボローム解析のノウハウがないと一朝一夕にはできるものではないでしょう。


横浜市大、天然甘味成分の酵素遺伝子を発見 大量生産に道

9月9日8時49分配信 産経新聞

 砂糖の150~300倍の甘さを持つ低カロリーの天然甘味成分「グリチルリチン」を作る酵素遺伝子の一つを、 横浜市立大学と理化学研究所などのグループが突き止めた。医薬品としても需要があるグリチルリチンの大量生産に道を開く成果で、 米科学アカデミー紀要(電子版)に近く、論文が掲載される。
 グリチルリチンはマメ科植物のカンゾウ(甘草)の根や地下茎に含まれ、肝機能補強や抗ウイルスなどの効果も知られる。
 横浜市立大・木原生物学研究所の村中俊哉教授(植物生理学)らは、 カンゾウの根と地下茎で活発に働き地上部ではほとんど働かない遺伝子の中から、 4段階からなるグリチルリチン合成の最初の段階で働く遺伝子を特定した。2番目の遺伝子もほぼ明らかになっているという。
 栽培種のカンゾウでは、グリチルリチンの蓄積量が少なく甘みが足りないうえ、収穫までに数年を要する。 野生種は乱獲で絶滅が懸念されている。今回の成果は、栽培種の品種改良や人工合成につながると期待され、村中教授は「第一歩だが、 全部の遺伝子の特定も間近」と話している。



 グリチルリチンの大量生産・・・までは、全合成経路の再構築ができないとなかなか難しいところ。また、 製造にあたっては遺伝子組換え技術が使われることになるでしょうから、食品安全委員会の評価が前提になります。

 天然のカンゾウの採取による環境破壊も馬鹿にならないご時世なので、 間接的に遺伝子組換え技術が環境保全に貢献することになるのでしょうか。

 

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!

 

2008年9月 9日 (火)

アグロバクテリウム法で遺伝子組換え作物を開発している人には微妙なニュース

まれなケースではあるものの、新しい知見。

Nature Biotechnology 26, 1015 -   1017 (2008)  
Published online: 31 August 2008 | doi:10.1038/nbt.1491
T-DNA–mediated transfer of Agrobacterium   tumefaciens chromosomal DNA into   plants

Bekir Ülker, Yong Li, Mario G Rosso, Elke   Logemann, Imre E Somssich & Bernd Weisshaar

アグロバクテリウム法で作成した、アラビドプシスのタグラインのT-DNA領域近傍の染色体DNAを調べてみたら、 遺伝子を含むアグロバクテリウムのゲノム DNAが検出された、と言う論文。375,000個体以上の形質転換体を調べて、 検出頻度は約1/250 (0.4%)、ゲノムDNAの断片長は最大18 kbp (結構大きい)。アグロバクテリウムのホスト・ ストレインはC58株を使用した。
---
アグロバクテリウム法でしばしば起きるベクターの挿入から見れば低頻度なので、事実上それほど問題になることは無いだろうと考えられる。 今の日本の規制ルールでは、 食品として組換え作物を開発する場合に導入遺伝子の挿入部位の両側の塩基配列をしっかり調べておくことが必須なので、 仮に運悪くT-DNAの近くでアグロバクテリウムのゲノムDNAの混入が起きたとしても、わかった時点で淘汰することはできる。

アグロバクテリウムのゲノムは4つの複製単位(レプリコンと言う。線状DNA、環状DNA、2つの大型プラスミド)からなるが、 このうち線状DNAに由来する挿入配列がもっともよく見られる。

このアグロバクテリウムのゲノムDNAの挿入が起こった機構については、T-DNAの組込の際に認識される25 bpのRB配列と似た配列(完全に同じものではない)が、ゲノム上に散在していて、 その配列を介在してT-DNAと同じ機構でゲノムに組み込まれることが理由と著者らは考えている。

これは、またT-DNAとは独立に、 RB配列と似た配列を媒介したアグロバクテリウムのゲノムDNAの挿入の可能性を示唆すると著者らは書いている。

・・・実に嫌なところに着目している。もしあったとしても-おそらくこれも低頻度だろうけれども- そのような現象を効率的に探し当てる方法は今のところ無いので、仮にこちらの方は起きていてもわからない。

いずれにしてもアグロバクテリウムは健康な人に対する病原性は無いし、作成された組換え体の栄養組成は実測することが義務づけられている。 従って、この論文で示された事実は、感染性や栄養欠損という面では、直ちに食品衛生上の危害要因にはならないと考えて良い。

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!

2008年9月 5日 (金)

HHV6は一般的な内在性ウイルスか?

先のエントリーにコメントを戴きました。

latent protein …「潜在タンパク質」

というのが,ヒトDNAに組み込まれた内在ウイルス遺伝子のタンパク質だとしたら,この記事で間違いではないのかも(いい文章ではないですが)と思いました。

とのことですが、うーん・・・。私はウイルスの専門家ではないのですが、教科書的にはHHV6などのヘルペスウイルスのゲノムは2本鎖の線状DNAで、核内に局在します。ですので、相同組換えでヒトの染色体内に内在化(integration)しないとは言い切れないのですが、なにせヘルペスウイルス属のゲノムサイズは一般的に120 kbp以上(HHV6Aでは159,321 bpというのがあります。こちら)とウイルスとしては巨大な方なので、よくあるレトロウイルスの内在化のような現象は起こりにくいのではないかと思います。

・・・とおもって調べてみると、そう言う内在化の事例がありました。こちらなど。

1: Daibata M, Taguchi T, Nemoto Y, Taguchi H, Miyoshi I.
Inheritance of chromosomally integrated human herpesvirus 6 DNA.
Blood. 1999 Sep 1;94(5):1545-9.
PMID: 10477678 [PubMed - indexed for MEDLINE]

2: Morris C, Luppi M, McDonald M, Barozzi P, Torelli G.
Fine mapping of an apparently targeted latent human herpesvirus type 6
integration site in chromosome band 17p13.3.
J Med Virol. 1999 May;58(1):69-75.
PMID: 10223549 [PubMed - indexed for MEDLINE]

3: Daibata M, Taguchi T, Kubonishi I, Taguchi H, Miyoshi I.
Lymphoblastoid cell lines with integrated human herpesvirus type 6.
J Hum Virol. 1998 Nov-Dec;1(7):475-81.
PMID: 10195269 [PubMed - indexed for MEDLINE]

などなど。しかし、いずれもレアケースなので、レトロウイルスの内在化のように誰にでも起きている現象という訳ではない模様です。つまり、HHV6に感染しているヒトは少なくはないにしても、内在化を起こしているケースは希であると考えた方が良いでしょう。

となると、先のニュースのlatent proteinの一件は、ヒトゲノムに内在化したHHV6由来のタンパク質に限定されるものではなく、やはり、ヒトに感染したHHV6に由来する”HHV6のタンパク質”と言うべきだと思います。

また、HHV6は慢性疲労症候群との関連も言われておりますが(因果関係はまだ決定的ではありません)、このblogでも取り上げた新聞記事から得られる情報で、FFがヒトの一般的な疲労のセンサーになっているという解釈はしない方が良いと思います。

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!

2008年9月 4日 (木)

タンパク質は疲労を感じない

見出しを見て疲労のセンサーとして機能しているタンパク質を発見したのかと思ったが・・・。 朝日新聞より。

疲労感じる原因たんぱく質を発見 慈恵医大教授ら

2008年9月4日3時0分

 疲れを感じる原因となるたんぱく質を、東京慈恵会医科大がマウスを使った研究で突き止めた。 このたんぱく質は、徹夜や運動の直後に心臓や肝臓、脳などで急激に増え、休むと減る。元気なマウスに注射すると、急に疲れた。 疲労の謎を解く鍵として、科学的な疲労回復法の開発につながりそうだ。沖縄県名護市で開かれている国際疲労学会で4日、発表する。

 近藤一博教授と大学院生の小林伸行さんは、 人が疲れると体内で増殖するヘルペスウイルスに関係するたんぱく質に注目、 疲労因子を意味する英語からFFと名付けた。水があると眠れないマウスを、 底に1センチほど水を張った水槽に一晩入れて徹夜状態にし、その直後に臓器を取り出し、FFの量を調べた。

 その結果、睡眠をとったマウスに比べ、徹夜マウスでは、FFが脳、 膵臓(すいぞう)、血液で3~5倍、心臓と肝臓では10倍以上も増えていた。2時間泳がせた場合も、同様に変化した。 どちらも休息後は平常値に戻った。

 さらに、FFを元気なマウスに注射すると、 大好きな車輪回し運動をほとんどしなくなった。疲れの程度に応じて増減し、かつ、外から与えると疲れが出現するという 「疲労原因物質」の二つの条件を満たした。

 FFは、細胞に対する毒性が強い。心臓、肝臓で特に増えるため、 過労に陥ると心不全や肝障害が起きやすくなる、という現象に関係している可能性が高い。

 人が疲れを感じる仕組みは、まだ十分解明されていない。 運動疲労の原因とされていた乳酸は、運動すると筋肉中に増えるが、疲労の程度とは関係せず、筋肉に注射しても疲れが出現しないため、 原因物質ではないことが数年前に実証されている。

 近藤教授は「FFは、疲労が起きるとすぐに反応するため、 疲労に対し最初に働く回路だろう。正確な疲労の測定装置や、科学的な疲労回復法の開発につながる」と話す。(編集委員・中村通子)

次は、”ヘルペスウイルスに関係” するFFを過剰発現する疲労モデルマウスを開発して抗疲労薬の開発か?あるいは、 FFをノックアウトした疲れ知らずのマウスや新手の遺伝子ドーピング時代の始まりか?・・・とも思ったのですが、 国際疲労学会のプログラムを見ると様子が違うようです。

国際疲労学会プログラムより

9:10 S2-03 Identification of novel HHV-6 latent protein associated with mood disorders and molecular
mechanism of fatigue due to overwork
Kazuhiro Kondo

新聞記事で言うFF というのが、"HHV-6 latent protein"であれば” ヘルペスウイルスに関係するタンパク質”ではなくて、”ヘルペスウイルスのタンパク質” と言うべきです。これは、内生の”疲労を感じる原因たんぱく質”ではありません。なぜならば、 疲労を感じる仕組みはヘルペスウイルス(HHV-6)に感染していようが、感染していまいが、 全てのほ乳動物にもともと備わっているものだからです。

FFは疲労マーカーにはなるだろうし、外から与えると疲労が起こるのであれば疲労原因物質の” 一つ” であることは間違いありません。問題は細胞内にFFが蓄積した場合に、 内在性の遺伝子発現やタンパク質の相互作用がどう変わって、FFによる疲労シグナルを全身に伝えているか、です。 外部から与えたFFが疲労を起こすのであれば、FFは哺乳動物がもともと持っている疲労を起こす信号伝達の経路の入口で、 哺乳動物が元々持っている疲労物質と同じように作用しているはずですから。

疲労タンパク質の本命は、”FFと相互作用する動物側のタンパク質”に対して、信号伝達経路の上流で相互作用するタンパク質、 でしょう。

 

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!

 

2008年9月 3日 (水)

ホモ接合で離婚のリスクが高くなる遺伝子

9月2日の時事通信より(読売新聞の記事より格段に良く書けているので) 。

遺伝子の個人差で離婚危機2倍=スウェーデン男性900人調査

 草原などに生息するハタネズミ類で固定した夫婦関係(一夫一婦制)を好むかどうかを左右する遺伝子がヒトにもあり、男性ではこの遺伝子が特定のタイプの場合、そうでない場合に比べ、結婚より同居を選んでいたり、離婚や別離の危機を経験したりする確率が2倍高いことが分かった。スウェーデンのカロリンスカ研究所や米エール大などの研究チームが2日までに調査した。論文は米科学アカデミー紀要の電子版に掲載される。
     この遺伝子「AVPR1A」は、脳神経で神経伝達物質のアルギニン・バソプレシン(AVP)を受け取るたんぱく質(受容体)を生み出す機能がある。ハタネズミ類ではAVPが多かったり、受容体がよく働くタイプだったりすると、社会性が高く、 一夫一婦を好むようになることが実験で確認されており、ヒトでは自閉症の発症リスクに影響する可能性が指摘されてきた。    
     研究チームは、パートナーがいるスウェーデン人男性約900人を対象に、2本がペアになっている12番染色体にあるこの遺伝子の一部DNA塩基配列が特定のタイプかどうかを調査。その結果、2本とも特定タイプの男性が結婚ではなく同居している割合は32%、過去1年に離婚や別離の危機を経験した割合は34%と、2本ともそうでない場合の17%、15%の約2倍だった。(2008/09/02-20:26)

オリジナルはこちら。  

どうしてバソプレッシン受容体に目をつけたのか?というところがまず不思議なのですが、 2004年Natureにハタネズミ属(Vole)のバソプレッシン受容体遺伝子と婚姻形態の関連を研究した論文が載っていたようです ()。

関連した情報では、

  1. Variation in the vasopressin V1a receptor promoter and expression: implications for inter- and intraspecific variation in social behaviour. Hammock EA, Young LJ., Eur J Neurosci. 2002, 16:399-402.    
  2. AVPR1A and OXTR polymorphisms are associated with sexual and reproductive behavioral phenotypes in humans. Mutation in brief no. 981. Online. Prichard ZM, Mackinnon AJ, Jorm AF, Easteal S., Hum Mutat. 2007 28:1150.      

など、いくつか先行した仕事があって、 AVPR1A遺伝子はホルモン受容体でありながら、同時に5'上流域にマイクロサテライトがあって非常に多型的であることが知られています。 最初は、ハタネズミでは多型的マーカーとして集団遺伝学的解析に利用されていたのでしょう。

また、 動物ではバソプレッシン受容体が繁殖行動に関連しているという傍証があって、そういった積み重ねの上で、 ヒトに対しても当てはまると考えたのでしょう。

一方、 このPNASの論文の背景には色々面白そうな事情がありそうです。たとえば、

     
  • スウェーデンは同棲の割合が高い。というか同棲してから結婚というつきあい方が一般的だそうです。なので、「結婚ではなく同居している割合は32%」という日本的視点からは、あらら、と言う状況が出現しうる。           
  • スウェーデンはプロテスタントが多い。これがカソリックが多い国だと、社会的に離婚が認められないため、”離婚の危機”と言う認識に対する閾値が高くなるので、こういうデータには「この程度では離婚の危機とまでは言えない」と言う認識にかたよる強いバイアスがかかる。
  • スウェーデンは女性の社会進出が世界一進んでいるので、女性が経済的に自立している()。なので、女性が経済的理由で結婚生活にしがみつく必要がないので、そうでない国よりは離婚しやすい。   
などなど。

人間を調査対象とする場合、 実験動物と違って生活環境や社会環境をコントロールできませんので、文化的な要因にも注意を払わないと、 こういう研究は成立しにくいのでしょう。

さて、結局のところ、 離婚リスクが高くなる対立遺伝子の遺伝子頻度とホモ接合率ってどのくらいなんでしょう。また、 浮気の虫も遺伝子のせいであれば仕方がないと考えるべきなのでしょうか。色々と考えさせられることの多い論文です。

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!

 

2008年9月 1日 (月)

文部科学省研究二種告示改訂の意見募集

福田総理辞任のニュースが飛び込んできた。短命な政権だった。次の総理も難しい国会運営を強いられるのは明らかだけど、 景気対策だけはしっかりやっていただきたいところ。補正予算はどうなるのだろう?

折りしもアジアの株式市場は全面安の展開で、日本の株式市場も混迷を深めることは必至。

---

さて、8月27日から、ひっそりとカルタヘナ法、 研究目的第二種使用にかかわる告示の改訂についてパブリックコメントが募集されている。

パブコメのURLはこちら

改定の内容は、ウイルスの追加と名称変更、学名の修正など、あまり大規模な改訂では無い。 幾つか気になる点があるので、メモしておく。

     
  1. サルモネラ属細菌は原則クラス2、クラス3にSalmonella paratyphi A型、   Salmonella typhi、クラス1に、Ames testに使用するS.   typhimuriumのTA98株及びTA100株はクラス1に位置づけてあるのは、改訂されずにそのまま。・・・ですが、    このところのSalmonella属細菌の分類では、この学名はもはや推奨されていない。一応、   スタンダードな学名を記載した”The Approved Lists of Bacterial Names”   には残されているので使用することはできる。しかし、最近の分類では、パラチフス菌(Salmonella paratyphi A型)は"Salmonella enterica subsp. enterica serovar Paratyphi   A"としてS. entericaの亜種の一つに統合。チフス菌も”     Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhi ”になった。 そのへんの命名についてはこちらのホームページに詳しい。 その結果、一つの種内に病原性の異なる血清型が含まれる状況になっており、ウイルスのワクチン株とそうでない株の関係のように、serotypeやgenotypeを決めないと実験分類がわからないという、若干困った状況。
  2.  
  3. 自立増殖性ウイルスの中で、大臣確認が不要なものをリストアップした別表3が改訂されている。 これをいじる場合に気をつけないと、これまで大臣確認が不要だった物にいきなり規制がかかることがあるので要注意。
  • (旧)「5 ファージ及びこれらの誘導体(別表第一に掲げる宿主のうち細菌を自然宿主とし、哺乳動物等に対する病原性を付与しないものに限る。)」→「5 バクテリオファージ及びこれらの誘導体(哺乳動物等に対する病原性を、細菌に持たせないものに限る。)」とある。
  •  
  • 基本的には変わらないのだが、以前から加えた方がいいのにな、と思っていたものが入っていない。バクテリオファージの宿主であるバクテリアの範囲を真性細菌と考えるとアーキアを宿主とするファージはこれに入らない。また、藻類を宿主とす組換えファージも大臣確認が必要なままだ。分類学上の立場が三界説だというなら話は別で、藻類を宿主とするウイルスも植物ウイルスに入れられるのだが、今時この考え方はかなり厳しい。藻類自然宿主とするファージは、別にリストアップした方がよいだろう。ミクロキスティスなどアオコに寄生するファージを材料とする研究者は、それらのファージがアオコにしか寄生しないという論文等を添えて要望を出しておくべきだろう。また、真菌類を宿主とするウイルスについても大臣確認は必要。

  • ちょっと気になるのは、酵母のキラー因子は、「外被を持たない二本鎖RNAウイルス」と言われているが、これも大臣確認が必要   (それってウイロイドじゃないのか?どうなの、酵母なヒト)。

実際のところ、哺乳動物等への病原性等の特段のリスクが無いにも関わらず大臣確認が求められるウイルスはまだ結構有るように思う。 昆虫や植物のウイルスは自律増殖性でも大臣確認が要らないのだから、古細菌、真菌、 藻類のウイルスについても同様の扱いをしても良いのではないだろうか。

# 魚類のウイルスはちょっと微妙ですが。

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!

« 2008年8月 | トップページ | 2008年10月 »

twitter

  • Bernard_Domon

Ranking

  • にほんブログ村 科学ブログ 生物学・生物科学へ
    日本ブログ村
無料ブログはココログ