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2008年8月15日 (金)

Molecular gastronomy的? トマトソースのレシピ

仕事のメモではありませんが、業務上得た知識と関係なくもありません。

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庭先のクッキングトマトが500 gほど収穫できたのでトマトソースを作ることにした。デルモンテのイタリアンレッドを2株栽培しているのだが、 今年はもう 2 kg以上収穫できた。CMVワクチン接種苗(*) なので少々値段は張ったのだがもう元はとれた。

* 弱毒CMVを農薬だと考えると、農薬登録されていない気がするのでちょっと微妙な技術です。   家庭菜園用なら無登録でも良いのでしょうか。弱毒ウイルス製剤を販売していないにしても、種苗として販売するための育苗は”業”なので、    農薬取締法の使用規制の対象ではないかと思うのですが。ZYMVについては登録農薬があるのですが。

トマトソースの作り方は数々あるが、トマトという植物の化学的組成や生物としての特性に着目した調理法はあまり知られていない。以前、 NHKのためしてガッテンという番組でトマトソースの作り方を特集していたのだが、固形成分の歩留まりに問題がある様に思ったので、 製造プロセスの改良を試みた。

ガッテンのレシピはこちら。 抜粋すると以下の通り。   

  • 材料   
    • トマト 6個
  • 作り方
    1. トマトのヘタをとり八つ切りにし、ミキサーで粉砕する。       
    2. [1] をこしきでこし、フライパンに入れて20分弱火で加熱する。
    3. ヘラで字がかけるくらいになったらできあがり。
      ※冷蔵庫で1週間ほど保存できる

生化学的な実験では細胞を破砕する(こわす)場合には、水溶液のpHを調整するための緩衝液や、 各種の酵素の阻害剤を加える。その目的は、細胞内では糖、有機酸、ポリフェノールといった様々な物質が膜で仕切られており、 酵素と接触しない様になっているのだが、細胞を破壊するとそれらの物質が酵素と接触したり、空気中の酸素と反応して一期に変質するので、 それを防ぐことにある。

たとえば、リンゴをおろし金ですり下ろしてガーゼなどで絞り汁を濾過すると、 絞り汁はリンゴそのものの果肉とは似てもにつかない褐色になる。これは、リンゴの細胞内に含まれるポリフェノールオキシダーゼという酵素が、 空地中でリンゴの細胞が壊れた際に放出されるポリフェノールを酸化した結果、 ポリフェノールの酸化物が私達の目には茶色に見えているのだと考えられている。

もちろん、酸素と接触して成分が変化すること自体が調理する上で必ずしも悪いことではないし、 鍋で加熱するとどのみち酸化するので、今回の製造プロセスの改良の眼目はそこではない。それに、 料理の際に緩衝液や酵素の阻害剤を入れると、それは料理とは”別のもの”になりはててしまって、 もう食べられない。

問題は、ステップ2.にある。生のトマトの細胞は、細胞壁の間にペクチンがあり、 糊のように機械的に細胞をつないでいる。ペクチンは加熱調理によって低分子化する(野菜を煮ると柔らかくなるでしょ?ま、 加熱で変化するのはペクチンだけではありませんが。そういう論文もあるんです)。生のトマトを、 ミキサーで破砕すると、機械的に細胞を壊すことはできるが、この時点ではペクチンの低分子化はまず起こらないだろうと考えられる。

その結果、ミキサーにかけた生のトマトは、塊のままの細胞がトマトジュースに浮遊している状態になる。 これをこしきで漉すのだが、生の細胞が固い上、よほど強力なミキサーでなければ繊維分が十分に切り刻まれないために、 こしきの上に結構な量の残渣が残ってしまう。トマトがあまり熟していない場合や果実内の成熟が不均一な場合には、この残渣が増える。 逆にトマトが完熟している場合は、 トマト自身が生産したポリガラクチュロナーゼ(PG)という酵素によってペクチンの部分分解が起こっているために、 果実が柔らかくなっており残渣は少なくなる。

このような経験を踏まえて考えてみると、ミキサーにかける前にペクチンが低分子化していれば、 こしきで漉す効率が高くなり加工歩留まりが向上すると考えられた。そこで、以下のように加工プロセスの改良を試みた。

  • 材料         
    • トマト 6個
  • 作り方
    1. トマトのヘタをとって4つ切りにし、食塩適量と共に真空パックして95度のお湯で5-10分間加温する。       
    2. 真空パックを50度以下まで水道水で冷却、又は空冷してミキサーで粉砕する。
    3. [2] をこしきでこし、中華鍋に入れて15分中-弱火で加熱する。
    4. ヘラで字がかけるくらいになったらできあがり。
    5. 保存容器に入れ、表面に厚さ1-2 mmのオリ-ブオイルの層を作り、殺菌のため電子レンジで2分間加熱し、自然冷却する。
    • 保存期間は保障しませんが、ガッテンのレシピよりは保つはずです。

裏ごし歩留まりの評価を定量的に行っていないため、 こちらの方がどれだけ歩留まりが良くなったかは評価できないが、裏ごし操作に必要な所要時間は1/2程度にとどまる(それに、 固形分が柔らかくなっているので力が余りいりません)。裏ごしされた液体は、生のままミキサーにかけた場合よりもとろみがある (粘度の測定は行っていない。というか家のキッチンの設備ではできません)。すでにペクチンが可溶化されているためであると考えられる。

加熱にはフライパンではなく中華鍋を使用しているが、中華鍋の方が熱効率が良く、 粘度のあるトマトソースでも対流が起こるため、焦げ付かずに濃縮できる。そのため、加熱時間は若干短縮できる。

一方、お湯を沸かす必要があるため二回加熱することから、 CO2排出量はオリジナルのレシピより増えてしまう欠点があるものの、加工中の食品残渣は改良プロセスの方が少なくなる。

肝心の食味は、変哲のない普通のトマトソースです。もちろん、 生のトマトから作っていますので缶詰では楽しめない香りがあります。

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トマトを栽培していない方が、以上の加工プロセスをより簡便に、かつ安価に行う為には、 ホールトマトの缶詰を買ってきてミキサーにかけるとより簡単です。また国内でのCO2排出量を増やしたくないと言う方は、 本場イタリア産のトマトソースの缶詰がお勧めです。加熱調理の際のCO2排出量はおそらくイタリアが負担してくれますし、 工場で加工する方が家庭のガス器具よりも熱効率は良いでしょう。なお、 缶詰の内側のコーティング剤からは微量のビスフェノールAが溶出されることが知られていますが、 缶詰1個から溶出するビスフェノールAの女性ホルモン活性の方が、 納豆1パックに含まれるダイズ由来のゲニステインの女性ホルモン活性よりも低いのではないかと思います。 どちらも通常の食品として問題のないレベルです。

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