減反緩和の意味するもの。
私も農政の素人ですが気にはなっていたので。日本経済新聞より。
自民・加藤氏、減反見直し「全く逆」 官房長官発言に
自民党の加藤紘一元幹事長は1日のフジテレビ番組で、 町村信孝官房長官がコメの減反(生産調整)政策見直しに言及したことについて「全く逆の方向にいっている」と指摘した。加藤氏は 「コメは余っている。大豆や小麦を作らないとだめだ」と強調、コメを増産すれば米価が急落するとの懸念を示した。
町村長官は5月31日の講演で「世界で食料不足の国があるのに日本でコメの減反をしているのは誠にもったいない話だ。 減反政策を見直していく必要があるのではないか」と述べていた。(20:48)
「食糧不足の国があるのに、我が国はコメを減反している」これは事実。で、 食糧不足の国に対して日本が何かをするとして、とるべき施策は次の内どれか。
-
減反を緩和してコメを増産して、日本のコメを食糧不足の国に輸出する。
-
日本が大量に輸入しているダイズ、小麦の輸入を減らして国産比率を高める。
1.は町村官房長官のプラン。国産のコメは国際価格の数倍します。減反廃止で国際価格並になると、採算割れで廃業する農家が出てきて、 一部の強い農家だけが生き残るでしょう。市場原理ってやつです。そうそう、町村官房長官の選挙区は北海道でしたね。
結局、少数の大規模農家が生き残って、中小規模の多数派の稲作農家は経営が苦しくなるでしょう。デカップリングで所得保障するか、 価格政策で国内価格を統制するかですが、後者は10年以上前に廃止された食管法時代への逆戻りなので、今更それはありません。 所得保障をしておけば選挙民が与党を支持するという目算もあるのかもしれません。
1.のプランをとる場合、コメの国内価格を国際価格並に引き下げないのであれば、 政府が日本の高価なコメを買い取って食糧不足の国へ輸出するくらいなら、同じ額の外国産米を買い付けて輸出した方がずっと効果的です。 なので、減反廃止による米価の大幅な切り下げを行うのであれば、デカップリングによる所得保障は必須。さらに、 食糧支援という施策の効率を考えるのであれば、余剰の日本産米は高値で中国にでも売って、 売買代金で買ったタイのコメを支援に回した方が良いでしょう。
2.は加藤議員のプラン。加藤議員は減反の是非とダイズ、コムギ増産についてのみ発言しているので、以下のダイズ、 コムギ増産と食糧支援との関係は私の予想です。
日本がダイズや小麦の輸入を減らすと国際価格が多少は下がるかもしれません。しかし、小麦はともかく、 食糧不足の国がダイズを買うでしょうか。ダイズは国際的には家畜の飼料か油量原料ですので、 食生活が貧困な国はそもそもあまり輸入していないのでは無いかと思います。ですので、価格的に調達しやすくなったからと言って、 急に買うことはないでしょう。また、支援のつもりで送ったとしても、 普段からダイズを食べる習慣のある文化圏は東アジアのごく一部でしかないので、アフリカの方がたなんて、もらっても困るでしょう。
小麦については有効な施策かもしれません。ですが、転作水田の小麦は品質的には結構困りもので、 普段から小麦を作ったことのない素人のような農家が急に作り始めてもろくな品質のものができないのではないかと心配です。 今更農林61号なんか増産されても、食品業界が困ってしまいます。それを行政指導で製粉業界に買い取らせるのだとしたらあんまりです。 かといって、バイオエタノール原料に回すようでは自給率向上に繋がらないし。
量産されている国産の中力コムギはパンや中華麺には向いていないので、各地域向けにそのあたりの品種の育成も必要です。
えー、結局のところ、減反政策と困っている国の食糧の安定供給の話をつなげたところにそもそも無理があるように思います。
食糧自給率を上げたければ、ダイズ、小麦の増産というのは筋は通っています。ダイズの自給率はわずか5%、小麦は10%程度。 ちょっと考えれば分かることですが、ダイズの自給率低下は国産ダイズの減産の影響は確かにありますが、 主に油糧や飼料の需要拡大によるもので、消費量の大幅な増大が主な要因です。 農水省の発表している過去の統計でも消費量の増大は明らかですが、われわれは毎日てんこ盛りのダイズを直接消費している訳ではありません。
でも増産したところまた別の問題が発生します。昨今の原料高から分かるように、 増産したダイズは飼料用あるいは油量用並みの価格で取引されないと、畜産農家や食用油メーカーが泣きを見ます。かといって、 生産補助金を付けたり、買い取り価格にプレミアを付けたりするとWTOで叩かれるかもしれませんので、こちらも、 デカップリングしないといけないような・・・。
減反維持か緩和か、そう簡単に結論が出る問題ではありません。しかし、自給率向上を政策目標にするのであれば、 ダイズやコムギは効果的なターゲットです(価格政策と所得保障を切り分けて考えるのであれば、ですが)。
人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!
| 固定リンク


コメント